艦隊楽戦~善吉ハーモニー~   作:宵闇@ねこまんま

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6日目―『最悪』の登場―

『マイクネット』を使った演奏はまた一段と変わったものになった。

 調律され、尚且つその存在を知らしめるように、アイオワのピアノはホールに響く。

 アイオワが肉体を作り、秋津洲が鼓動を打ち、皆の演奏で踊る。

 皆の演奏が一つになったことをさらに確信した。

 あと半日、それだけあれば、さらに良くなる。

 善吉はそう確信し、今日の練習を止めにすることにした。

「みんな、お疲れ。今日はここまでにしよう」

「もうそんな時間なんですか?」

 実際、時間で言えば既に夜の八時、普段の練習ならとっくに解散している時間だ。

 しかし、皆がそれに気づかなかったのはつまり、それだけ集中し、練習を楽しんでいたということに他ならない。

「あぁ。あんまり根を詰め過ぎても良くない。まだ一日、正確には半日残ってるからな」

「お腹減ったぁぁぁ」

 時津風はピッコロを床に投げ出し、食堂に向かって走った。

「こら時津風、楽器は大切に扱え」

「まぁまぁ善吉君。後の片付けは僕がやっておきますから、皆さんは食堂へ」

 眉間にしわを寄せながらも、疲労を感じていた善吉は大嵐の言葉に従った。

「すいません、あとはよろしくお願いします」

「はい。それでは」

 残された頼卯は、それぞれの楽器を一か所に纏める。

 二日ほど前から始まった頭痛は徐々に強くなっていた。

 特に夜など、あの日の悪夢ばかり見るようになっていた。

 明日の練習もこのホールで行う予定だ。

 別室に移動させる必要はないと判断し、ホールの隅にケースに入れ置いておくことにした。各楽器それぞれに軽いメンテナンスを行い、大きな異常は見られず、そのまま片付ける。

 ケースが余ったところで、楽器が二種類足りないことに気づいた。

「大嵐さん……」

 その声に、大嵐は肩を震わせた。そして、ゆっくりと振り返る。

「――すず」

「お仕事、一段落着いたら、私達の演奏聴いてもらってもいいですか?」

 大嵐を遮り、声をかけたのは照月だった。

 各々の楽器を携える、照月と初月の姿がそこにあった。

「姉さん、もう遅いんだし」

「でも、明日はもう練習最終日で、いつ聴かせられるか分からないし……」

 呆れ顔の初月と、申し訳なさそうな表情の照月。

 それを呆けた表情で大嵐は見つめていた。

「……大嵐さん?」

 照月の不安そうな声で我に返った大嵐は、思案する。

 今日の仕事はこれで終わる予定だ。

 明日の『準備』も既に終わっている。

 断る理由はない。

 それでも素直に了承の言葉はでてこない。

 その理由は分からないが、照月を見ていると胸がざわつき、頭痛が酷くなる一方だ。

 申し訳ないが、断ろうとした時、隣から声がした。

『いいじゃないか。聴いてあげるくらいさ』

 虚空から響いてきたような、不気味な存在感を持つ声に、大嵐は思わず数歩退いた。

『おいおい、初対面の人間にその態度はないんじゃないの? 僕じゃなかったらきっと、顔を真っ赤にして怒ってるよ』

 大嵐のその反応に、声の主は機嫌を悪くしたような口ぶりで、しかし一切の感情は感じられない文句を零した。

 それはどんな怒声や罵声、叫びよりも、大嵐の胸中を抉った。

「君は……誰だい?」

 大嵐の言葉には、疑問よりも嫌悪感が含まれていた。

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