艦隊楽戦~善吉ハーモニー~   作:宵闇@ねこまんま

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7日目―集う夢のチケット―

「な、なら! これあげるかも!」

 そう言ったのは、秋津洲だった。

 秋津洲は少し震えた手で、三人に二枚のチケットを差し出した。秋津洲のチケットにはまだ何も書かれていない。

「でもそれじゃ秋津洲さんに悪いです……」

「気にしないで欲しいかも。あたしは別に招待したい子もいないし、それに――」

「それに……?」

 言葉を言い澱んだ秋津洲はちらと善吉、アイオワに目を向け、勇気を振り絞り口を開いた。

「せっかく友達になれたんだから、友達には喜んでほしい、かも」

 紅潮した表情で言い切った秋津洲に、雪風は飛びついて答える。

「ありがとうございます、秋津洲さん! とても嬉しいです!」

 頬ずりされながら秋津洲は安堵したような、恥ずかしがっているような笑顔を浮かべていた。

「秋津洲ちゃんがそうなら、私もあげるわ。陽炎型の子達にはいつもお世話になってるし」

 陸奥もそう言いながら、チケットを二枚差し出した。

「本当ですか? でも陸奥さん、すごく嬉しそうにしてたじゃないですか」

「そうなんだけどね。私が『招待したい人』は招待できないらしくて」

 冗談まじりのしかめ面で大嵐を睨むが、大嵐は苦笑いでそれを受け流す。

「さすがに提督を呼ぶことはできません。申し訳ないです」

「――で、長門は一緒にいるし、他に呼びたい艦娘もいないし、どうせなら陽炎型を勢揃いさせた方が面白いかなって」

「そういうことなら、ありがたく頂きます」

 天津風が嬉しそうにチケットを受け取った。

「ならこの長門も一枚渡そう。一枚は酒匂に渡すつもりだったが、もう一枚はまだ悩んでいたんだ」

 陸奥に続いて長門も天津風にチケットを一枚渡す。これでチケットは十枚。

「なら私もいいですか?」

 次に名乗りを上げたのは照月だった。手に握るチケットは二枚。

「照月さんも……いいんですか?」

「私は秋月姉も初月も一緒だし、演奏を聴いてもらいたい人も一緒に来てくれるし」

 照月はチラリと大嵐に目をやり、悪戯っぽく微笑む。

「ま、まぁそういうことなら、ありがたくいただきます。ありがとうございます。これで十二枚……」

 慌てて取り繕う大嵐に皆が苦笑する。

「それなら次の一枚は姉さんに続いて僕が渡そう。僕も呼びたいのは五十鈴だけだからね」

 時津風にチケットを握らせ、照月と初月は微笑む。

「これで十三枚……。あと一枚で……」

 善吉のその言葉を境に、誰も言葉を発さなくなってしまった。

「……善吉は? 誰か呼ぶ人いるの?」

「善吉は指揮者であり、私たちの責任者なんだから大人しくチケットを渡すべきかも」

「お前ら本当に俺に対して口悪いよな」

 時津風と天津風は憎まれ口を叩きながらも善吉の背中におぶさる。

「ねぇいいでしょー」

「かもー」

「ダメだ。俺にも招待したい人が二人いる。大親友と、惚れた女の子にな」

「うわーくっさい。言ってて恥ずかしくないの?」

「恥ずかしいわけないだろ。惚れた腫れたを恥ずかしがるのは中学生までだぜ」

「ふーん」

 善吉の堂々とした言い分に、時津風はつまらなそうな様子だ。

「他のみんなはどうなんだ?」

「私は鳳翔さんと矢矧に贈るので……」と大和。

「私は麻耶と清霜にな。久しぶりに顔が見たい」と武蔵。

「私も力になりたいのですが……朧さんと瑞鶴さんにぜひ私の演奏を聴いて欲しいんです」と秋月。

「Meも力になりたいのですが……、コンゴーとBismarckにぜひ会いたいのデース。海外艦のよしみでネ」とアイオワ。

 皆がまた黙り込んだところで、ふと善吉が首を傾げる。

 一人、何も答えない、気分屋でマイペースが過ぎる少女がいる。

「……おい島風。お前は誰に贈るんだ?」

 連装砲ちゃんと戯れているところを不意に声をかけられたので、島風は驚いた様子で目を丸くしていた。

「え? 長波にだけど?」

「……あとの一枚はどうした?」

「いらないからそこに置いてあるけど」

 島風の言葉に周囲が唖然とする中、善吉は溜息一つで事態を飲み込む。

 この一週間の慣れの賜物だ。

「それ、貰ってもいいか?」

「うん」

 それを茫然と呆ける雪風に渡す。

「これでチケットは十四枚。お前達の姉妹を呼べるぞ」

「――はいっ!」

 三人の返事を皮切りに、食堂はまた一段と騒がしくなっていった。

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