艦隊楽戦~善吉ハーモニー~   作:宵闇@ねこまんま

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これで終わりぃぃ!



エピローグ3―箱庭学園理事長室にて―

 日中は学業に励む生徒達の喧騒が、夕方も部活動に励む生徒達の騒乱が煩い学園も、夜になれば静寂が支配する。そんな箱庭学園の中心、理事長室に二人の姿があった。

 箱庭学園理事長である黒神めだかと、その幼馴染である人吉善吉だ。

 約一週間ぶりに顔を合わせた二人だが、表情は柔らかくない。

「さて善吉よ。今回の仕事、よくぞやり遂げたと、褒めておこう」

「そりゃどうも。こっちこそ、良い経験をさせてもらったぜ。で、めだかちゃんに聞きたいんだが……今回の仕事、どういう意図があったんだ?」

 善吉はめだかに質問を投げかけた。それは試練を乗り越えた勇者が王に質問する権利を得るような、当然の権利のようなものであり、王であるめだかは答える義務があった。

「ま、善吉の中では既に答えが出ているのだろう? それでも、私が答えるのが道理だと、そう考えている」

「さすがだぜ、めだかちゃん。その通りだ。特に聞きたいのは、艦娘を絡めた理由だ。それだけがはっきりと分からない」

 善吉は途中から疑問に思っていた。今回の仕事をめだかが善吉に任せたのは、善吉自身に溜まっていたフラストレーションを発散させるという目的が先頭に立っていた。

 だが善吉はふと気づいたのだ。

 フラストレーション解消のために労働をする、というのは善吉にとっては非常に理にかなった方法だ。しかし、それならばマグロ漁船にでも放り込んで、夏休みを過ごさせればよい。言い方は乱暴だが、つまり、『既存の仕事』を善吉を任せればよいのだ。

 そこで今回の仕事に話が戻る。

 今回の『艦隊楽戦』は箱庭学園が主催となる『新規の仕事』だ。

 それは黒神グループ傘下の箱庭学園が主催とはいえ、グループでも類を見ない、新規事業。それを一介の高校生に任せる理由が、ない。

 そこで善吉はある仮説に辿り着く。

 今回の仕事は『人吉善吉のために提案された仕事』なのでは、と。

「善吉の考え通り、今回の仕事は私監修の貴様のための仕事だ。理由は――」

「俺が将来、黒神グループに入った時のコネ、実績ってところか?」

「正解だ。貴様は私の幼馴染という伝手を使うことに抵抗があるだろうし、そんなものを頼りにする男なぞ、こちらから願い下げだ。しかし、黒神グループで出世するにはそれなりの結果が必要だ。貴様なら着実に実績を積むであろうが、貴様にはなるべく早く私の隣に来てもらいたいのでな。『高校時代に黒神グループの新事業を成功に導いた』という実績があれば、出世スピードも幾分か早くなるだろう」

 楽器選定にめだかが携わっていた理由も、これで納得がいった。

「カッカッカ。全てめだかちゃんの思い通りって感じか」

「いやいや、そうではないぞ。実際今回の仕事が成功する確率は良い所で五分といったものだった。それに球磨川の襲来なぞ、予定にはまったくなかったからな。成功させたのは貴様の実力だ」

「そりゃどうも。球磨川は想定外だったのか。てっきりそれも筋書通りなのかと……」

「あの男の動向を予見できたなら高貴やもがなちゃんを同行させるくらいの配慮はしたさ。ま、それができないからこそのマイナスなのだが」

 めだかはどこか嬉しそうだった。卒業式以来、いや壮行会以来顔を合わせていない球磨川が、生きているというだけで少し安心したのだ。

「で、艦娘を絡めた理由は? それが一番知りたい」

「あぁ。そっちはもっと簡単な理由だ」

 めだかは席を立ち、棚から一枚のスクラップファイルを取り出した。そして一枚の切り抜きを善吉に見せた。

「『人知れず人々を護っていた存在、艦娘の謎に迫る』か。どこかの週刊誌か? 中身がえらい世俗的で確証のない情報ばかりに見えるが」

 艦娘と一週間、密に寄り添った善吉にとってその記事は不快そのものだった。政府の陰謀や宇宙人説、人類の敵など散々なバッシングだ。今となっては表立ってこのような記事を書く者はいないが、それでも艦娘はまだまだ理解されていない。

「中身については同感だ。私も好きになれない。それでも、この切り抜きを保存しているのはな、見出し、タイトルが気になったからだ」

「人知れず人々を護っていた……なるほど」

「分かったようだな。そうだ。その謳い文句を背負い、三年間箱庭学園を護った偉大な先輩がいるだろう。この記事を見た時、それを思い出した」

 日之影空洞という、男がいた。

 余りに強大な力を持つ彼を、誰もが本能で畏れ、その存在を見て見ぬふりした。脳が存在を拒否したと言っても過言ではない。

 彼は強すぎるが故に、誰からも認知されることはなかった。

 彼はその強さを武器に、箱庭学園生徒会長として三年間、誰からも認められず、誰からも認知されないまま、箱庭学園を護っていた。

 そんな彼を見つけたのは、めだかだった。

 めだかだけが彼の存在をどうにか認識し、拳を交え語り合った。

 だから、めだかは知っている。

 誰からも知られずに戦う男の背中を。

「それで沢山の人に、艦娘に理解を持ってほしい、知ってほしい、認めてほしいと思ったってことか」

「まぁな。人知れず人々を護るという行為は英雄的だ。だが同時に、それほど寂しいこともあるまい。私達は知っている。日之影先輩が流した涙を。英雄は英雄であり、同時に人間でもある。艦娘らの存在を知って思ったよ。これは人々が知らなくてはいけないものだと。だから常々考えていた。彼女らを陽の当たる場所へ、暖かい場所へ連れ出せないか、とね」

「その第一歩、か」

「あぁ。さっき連絡が入ったんだが、コンビニや遊園地からも早速コラボの話が届いているらしい。これから艦娘はより世間に知られ、認められる存在になるだろう」

 めだかは満足そうだ。

 そしてそれを聞いた善吉も、心が震えるほどの喜びに満ちていた。

 艦娘らは皆、それぞれに重い過去を持っていた。それでも気丈に振舞い、仲間と笑いあえる強さを持っていた。そんな彼女達が認められる日々が目前に迫っている。

 その事実に、目頭が熱くなる。それでも善吉はまっすぐにめだかを見つめた。

「それなら、またいつかあいつらに会える日が来るかもな」

「そう遠くない未来でな。その時はまた善吉に頼むかもしれん」

「おう。楽しみにしてるぜ」

 それは確かな未来への一歩であり、その未来は輝きに満ちている。

 箱庭学園の理事長室で二人は語り合った。

 艦娘のことも、将来のことも、何もかも。

 その全てがハッピーエンドであり、眩しいもので、中には恥ずかしくなるくらいの結末もあった。それでも二人の会話は途切れない。

 夜の箱庭学園に、二人きりの喧騒が響く。それは暖かく、得難い幸福の喧騒だった。




ここまで読んでいただきありがとうございます。本当に。
気が付けば、今年も艦これオーケストラ。そして富士急。僕は就活。あ、内定はなんとかいただけました。ここで言う話ではない?すいません。
有言不実行な僕ですが、一年と二ヶ月程時間はかかりましたが、なんとか書き終わりました。やったね。13万文字オーバーだよ。記録更新!
拙い文章であり、期間が開くこともしばしばあったので、内容が伝わりにくくなってるところもあったと思います。それでも書ききれたことで自身を持つことができました。
それは一重に、皆さまのお気に入りや感想、評価などのおかげです。
年に一本書ければいいかなー程度の物書きですので、また次皆さんに会えるか分かりませんが、もし会えたなら、その時はよろしくおねがいします。
それでは、またいつの日か。
あ、感想くれ。
P.S.めだかボックスで一番好きなキャラは日之影空洞で、二番目に善吉君です。
世間では色々言われてるけど、異能力バトルものとして凄く面白いので皆読んでね!
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