終戦後の世界   作:綿あめ

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カレーってなんだろう



カレーってなんだよ

それは実に呆気ないものだった。

私達が戦っていたのは抗えるはずもない存在。圧倒的な戦力の前に命を落とす人間さえもいた。沈んでいった同胞もいた。相手は目に見える敵だと決まった訳ではなかったから。

 

私達が戦っていたのは『海』そのものだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海のすぐ近く、機械音が鳴り続けていた工廠があり、今は普通のお風呂として使われている入渠室があり、船を迎える母港を兼ねそろえている元鎮守府、彼はそこに住んでいる。

 

戦争を終え、多くの提督は運営からの援助金を得て隠居等する者が多かったがここの提督は鎮守府に残った。

『住み慣れていて、案外暮らしやすいものだからさ』と本人は言っているが本心はわからない。

 

艦娘の艤装を解けば人間になる事は証明された世界で、色々な人生を進んでいく艦娘達だったがここの艦娘が人間になっても残っているのは、この提督との絆故なのか。

まぁ私もその1人であることには変わりないが。

 

この提督は戦争に終止符を打った三人提督の1人、御国もこの提督には頭が上がらないみたいでね。ここで艦娘と暮らすと言った時は生涯の金銭面を保証するなんて言われてさ。正直驚いた。脅しなど使わずにあんな待遇をされるなんて。

 

まぁそのおかげもあって私達はここで楽しく過ごせているんだから感謝しないとね。ってこんな事言うのももう2桁後半を超えてるか。

 

ナレーション役なんて買わなきゃ良かったよー。私にはちょっと難しいや。何が言いたいかと言うと、とにかく終戦後も楽しく過ごせてるってこと!見るより観る方がわかりやすいよね。

 

1人の少女は微笑む。

周りを包む騒音にも聞こえる拍手。

物語は新しい幕を開ける。

『飛龍』は1度礼をした。

 

 

―提督が起床しました。

―これより幸せな1日が始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何かがおかしい。」

 

元執務室。今では提督の私室。艦娘のたまり場。

特に予定のない艦娘数人と提督はそんな部屋でゴロゴロしている所だった。

 

「ん?どしたの提督ー。あ、おはよー。」

「おはよう。…なぁおかしいとは思わない?ここさ、一応俺の寝室な?なんで目を覚ましたらお前ら普通なノリで遊んでんの?」

「え?そんなの提督やってる時からじゃん。」

「言葉遊びありがとう鈴谷。でも納得はいってないからな?」

 

漫画を読んでる漣と曙。ゲームをしている鈴谷。ティータイムをする熊野と金剛。トランプをしている第六駆逐隊の子。

 

「good morningデース!提督ぅー!」

「あぁ、おはよう金剛。ついでに俺にも紅茶をいれてくれ。もう、なんか寝起きなのに疲れた。」

 

金剛が席を立ち紅茶の準備をする。…椅子が3つある事から提督が起きたら一緒に飲む予定だったんだろう。その予定通りか提督は特に不思議がる様子もなく、空いている席に腰を下ろす。

 

「あら、私には挨拶なし?」

「はいはい、おはよう熊野。」

「あらあら、おはようございます提督。」

「…陸奥かお前は。」

「ヘーイ!提督の紅茶デス!」

「ああ、ありがとな。」

 

金剛が席に着くのを待ってから紅茶をいただく。茶葉の香りの楽しみ方なんて知らない提督は普通に味わう。無論、おいしい。

 

「っと、ところで他の姉妹はどうしたんだ?」

「比叡達ですカー?榛名も霧島も比叡のカレー作りを手伝ってますヨー。みんないい子ネ!」

「お前はいいのか?」

「私は味見します!どんな味になりますかネー。もとい、毒見になりますかネー…。」

 

金剛さんまじお姉さん。1番危険な役を買ってでるとは…。そろそろ比叡も自分の殺人カレーがやばいことに気がついてまともなカレーを作ろうと努力してんだな。1番はもう作らないって決断に至るところなんだけど、まぁ嫁の貰い手を考えるなら上達しないとな。

 

「…さて、ご馳走様。」

「お粗末様デス。どこかにおでかけデスカー?」

「ん?あー、朝食を取るだけさ。」

「いってらっしゃい、あ・な・た・♡」

「奥さんならここでご飯を用意しとくものだ。」

 

金剛のおでこをツンっとつついてから提督は執務室を後にする。「ひどいデース!」なんて声も聞こえるが無視だ、無視。ひどいと思うなら大和撫子について勉強しろ。…いや、金剛なら案外嫁の貰い手なんて簡単に見つかりそうだけど。

 

窓から差し込む陽の光は快晴だと告げんばかりに暑苦しい。廊下に備え付けられている窓を開けると少し涼しい海風が髪を揺らしてくる。和気藹々と追いかけっこ等して遊んでいる駆逐艦を見ていると、こう、父性をくすぐられる…と考えたところで窓を閉めて食堂に足を運ぶ。駆逐艦に混じってる背丈の大きい戦艦が見えたのは幻覚だ、幻覚。戦時中に最前線で戦った勇ましき日本の誇りがあんな顔で駆逐艦と遊ぶはずがない…遊ぶはずが…。

 

 

 

 

 

 

「あら、提督。おはようございます。」

「ああ、おはよう間宮。なんか、適当にご飯をくれ。」

「お顔が疲れてますね?どうかしましたか?」

「聞かないでくれ…。廊下でいろんな奴に絡まれてここにたどり着くのに1時間かかったところなんだ…。」

「はぁーい。」

 

クスクスと笑いながら間宮は調理室に入っていく。ふと時計を見てみれば時刻はもう11時、もう時期昼時で艦娘達が溢れ返ってくるか。起きる時間が遅かったといえ、これは遅すぎる朝ごはんか。いや、早い昼ごはんか。

 

「あ、提督だー!一緒にご飯食べるっぽい!」

「間宮さん、ごめんね。提督と同じのを2つお願いします。」

「おぅ、しぐぽいコンビ。他の姉妹とは一緒じゃないのか?」

「白露姉さん達は街に買い物にね。僕は夕立の子守りかな。」

「夕立は子供じゃないっぽい!」

 

たまたま早めの昼食を取りに来た夕立&時雨の犬コンビが提督と同じ席につく。夕立はすんすんと調理室から漂う匂いをかいでるところを見ると本当に犬に見える。ちなみに犬と遊ぶ時に使うボールを投げると取ってくる。何が言いたいかと言うと犬だ。

 

「にしても二人とも昼食早いな。これからでかけるのか?」

「散歩に行くからね。」

 

お前もか、時雨。

 

「もちろん夕立のね。」

 

それはひどいな。

 

「楽しみっぽい!」

 

いい加減自重しろよ。

 

「まぁ、お前達が楽しいならいいんだ、楽しいなら…。」

「もちろん楽しいさ。戦時中はこんなにのんびりできなかったからね。今の時代が平和だって痛感できるよ。」

「まぁ、そうだな。」

 

…お前ら戦時中も非番の時に散歩してたろ。知ってるぞ、しっかりと夕立にリードまで付けてたの。

 

「はーい、今日のお昼ご飯はカレーよ。」

 

犬コンビと談笑していると間宮がご飯を持ってきた。やけに早いなと思うとまぁカレーならそうなるかと理解した。

 

「と、提督さんはこちらのカレーね。とある艦娘さんから食べて欲しい!って言われちゃったの。」

「ん、そうか。頂くよ。」

 

ふむ、とある艦娘か。まぁうちの艦娘達のほとんどがカレー作りが得意だから誰かまではわからないか。その大半がおいしいカレーを作るし、犬コンビには悪いけど、絶品カレーを頂くぜ。いや、別に間宮のが絶品じゃない訳じゃないけどな。

 

「もぐ…もがっ!?ぐぉぉぉぉ…!!!」

「て、提督!?どうしたっぽい!?」

「み、水水水!!!」

「はい!水だよ!」

「ありがと…っ!」

 

な、なんだこのカレー…は…!?

いや、カレーかこれ!?

カレーじゃねぇよ!

カレーってなんだよ!

カレーってなんだよ(哲学)

カレーってなんだよ…(白目)

 

「ま、間宮…誰のカレーだ?」

「比叡さんのですよ?」

「金剛ぉ!!!」

 

提督の叫び声は鎮守府中に響き渡った。

 

 

 

「おっと…提督に見つかる前にでかけるとするネ。」

 

今日も鎮守府は平和だ。





カレーってなんだよ
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