Re:ゼロから寄り添う異世界生活   作:ウィキッド

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本日二話目です


少女は決意する

――これは、いつの記憶だろう。

 自分がいるのはとある病室。白い白い病室だ。自分は横になっている。

 

『お兄ちゃん、大丈夫?』 

「これが大丈夫に見えるか、妹よ」

 

 心配しているのは愛する妹だ。その小さな体にはどうしても長すぎるマフラーを身に付けてリンゴの皮を剥いている。

『はい、お兄ちゃん』

 

 切り分けられたそれを受け取り、口にする。まだ熟れていなかったからか甘味は少ないがこれはこれでいい。

 

『髪切らないの?』

「お前が言ったんだろ? 切るなって」

 

 あれはいつだったろうかは覚えていない。ただ髪質がいいから伸ばしてよという無茶な要望に従ってから長髪のままにしている気がする。

 

『律儀に私との約束を守ってくれるんだ』

「珍しいお前の我儘だからな」

 

 苦笑すると妹も同調するように笑みを浮かべ――

 

『――うそつき』

 

 その声と共に世界は変動した。

 病室は沼のように粘り気を持つ液体に包まれ、今まで食べていた果実は石のように硬いものに変わる。

そして目の前で会話していた妹は、顔面が黒く塗りたくられその空洞から声が漏れる。

 

『バカジャナイノー』

 

 からかうような、それでいていて機械のような冷たさも秘めたような声で少女は笑い、そして、世界は完全に歪みきり、終わった。

 

 

 意識の覚醒は海上への浮上に似ている、というのはスバルと話し合ったことだ。

 確かに似ている部分はあるだろう。では眠っている間は海の奥底にいるのと同じ体験をしているのだろうか?

 結局のところどちらも体験した意識はないのだから判断できないという結論になったはずだった。 

 そんなことを思い出しながら瞼を開き、挿し込まれる夕日に焼かれながらシャオンはわずかにだるい体を起こす。

 そして意識を覚醒させるまでに数秒かけ、目を限界まで開き叫ぶ。

 

「ねすごしたっ!」

 

 時刻は夕方、すでに一日の半分は終わっている。このままではレムやラムどころかスバルにさえ文句を言われてしまう。

 慌ててベッドから飛び降り、そこで気づく。

 

「あれ? ここ、は?」

「目を覚ましたっすか」

 

 シャオンが今いる部屋はロズワール邸にある自身の部屋ではなく、どこか日本を思わせるようなそんな部屋だった。そして、アリシアの姿を見てようやく思い出す。

 

「そっか、いま俺王都にいるんだったな」

「寝ぼけてるんすね。そんな姿見るの初めてっす」

 

 口元を押さえて笑う彼女にシャオンは自分の頬に熱が集まっていることが嫌でもわかってしまった。

手でそれを隠しながら熱が引けるのを待つ。

 

「決闘はシャオンの勝ちだったっすよ」

「そう、か」

 

 あれを勝ちと言い切ることは腑に落ちない。

 倒す気でいたのに結局一撃当てることしかできなかった。そもそも勝利の条件を決めていなかったこともあるがそれでも納得はいっていない。

 

「どうやら起きたようやな」

「アナスタシア嬢」

 

 すっきりとしないまま、現れた来訪者はアナスタシアだった。

 彼女は意識があるシャオンを見てまずは安堵したように息を吐いた。

 

「まずは謝罪させてもらってもええ?」

 

 アナスタシアの深々と頭を下げるその姿に目を白黒させてしまう。

 

「”部下が勝手にやった”内輪揉めに巻き込んでしもたようなもんやからな、これは借りとさせてえな」

 

 確かにアナスタシアにとってこの事件はエミリア陣営に対して大きな借りを作ったこととなる。ただ、これはそう簡単な話ではない。

 なぜならあの決闘を申し込んだのがアナスタシアの部下であるルツで、受けたのがエミリアの部下ともいえるシャオンだから。つまりは、これは陣営同士の争いと考えていいものなのか判断が難しいことなのだ。

 アナスタシアの言う通り内輪揉めに巻き込まれただけとも考えられるが、そもそも決闘を受けたのはシャオン自身の意思だ。いくら脅しを受けたといってもそれを本気でとるかどうかは結局はこちら次第。

 それに彼女は止めなかっただけで、直接指示を出している場面をシャオンは見ていない。もしも必要以上に責めた意見を述べれば、彼の独断専行だったと言われて、それまでだ。

 そしてそうなれば後はトカゲの尾切り同じようになる、ということだ。相変わらず知恵が回る。

 

「とりあえず、この件は私一人では解決できません。一応エミリア嬢に……」

 

 ――何かが引っかかった。

 エミリアに報告する。つまりは陣営のトップに報告をするわけだ、今回の騒動を。彼女は怒るだろう。だがそれはまだなんとかなだめることができる。問題はそこではない。

 

「シャオン?」

 

 第一、今回の決闘の黙認の理由はなんだ? なにか利があってのことのはずだ。戦力の把握、アリシアを引き込んだことによるアナスタシア陣営での不満解決。

 思いつく限りはこのあたりだろう。あとは考えられるのは、

 

「繋がり、か?」

 

 そもそもアリシアを屋敷で雇っている時から繋がりは出来ていたとも言えなくはないが、今回の件でそれがより確実でより強固なものとなってしまった。

 正直な話、彼女の陣営といい関係になるのはこちらとしても悪い事ではない。目立った恩恵としては鉄の牙の幅広い能力を借りられる可能性があるからだ。

ただそれを差し置いてもアナスタシアとの、油断できない相手との関係だということが不安要素として残っている。

 特にエミリアはそういった騙し合いや取引には向いていない。だからアナスタシアとは相性が悪い。

 ロズワールがいれば大丈夫だろうが彼はあくまでパトロン、王選参加者同士のみの話し合いとなればエミリア単身で彼女との話し合いをしなければならないはずだ。そうなれば後はアナスタシアの都合のいいようにできる。

 要約するとこの決闘を黙認した理由は――エミリア陣営とのシャオンとアリシアを通したパイプ作りの可能性が高いのだ。

 

「そういうこと、ですか」

「んー? 何のことかわからへんよ」

 

 アナスタシアは真正面でそれを受け、笑顔でとぼける。その張り付けた笑みの下ではどのような策略を練っているのかは未熟なシャオンに読み取ることはできそうにない。

 そして断定できることでもないので追及もできない。下手に藪をつついてわざわざ蛇を出すこともあるまい。

 

「寝起きにこんな話すると頭痛くなりますね」

「うん、なら小難しい話はこれぐらいにしとこか。それに聞き耳たてとるのもいるようやしな」

 

 アナスタシアは部屋の入り口に目を向ける。するとその視線に従ったかのように扉が開かれた。

 

「うわぁ!」

「団長! なにするんです!」

 

 襖に似た扉が開かれるとそこには大勢の獣人たち。白い装束を纏ってはいないが、恐らく鉄の牙のメンバーだろう。

 彼らは扉を開けたであろう人物、リカードに抗議の視線と声をぶつける。しかし彼はそれを受けて逆に大声で答えた。

 

「お前らがそんなところにいるんが悪いんやろが!」

 

 その一言は正論で、団員は大声も合わさってか黙ってしまう。だがそれもわずかのことですぐに団員たちはシャオンに向かって駆け寄ってくる。

 

「すごかったですよ! 団長補佐に一撃当てるなんて!」

「私”ふぁん”になっちゃいました!」

「は、はぁ」

 

 大勢の鉄の牙の団員に詰め寄られ、握手を迫られる。まるで有名人にであった人みたいで何とも言えない気持ちなる。正直言うならば居心地が悪いというか、照れ臭いというべきか。

 

「ああこらこら、病み上がりのヒナヅキくんにそな詰め寄ったらあかんよ」

 

 アナスタシアがシャオンの心情を察したのか、離れるように指示する。すると不満そうではあるが皆離れてくれた。

 

「さて、主役が目覚めたんや。やることあるやろ?」

 

 アナスタシアの言葉の意味が分からず首をかしげていると、奥から一人の男が現れる。そしてそれはシャオンをこんな目に合わせた人物、

 

「――宴の始まりだ」

 

 酒瓶を持ったルツの姿だった。

 

 

 案内されたお座敷では見たこともない豪華な食事が用意されていた。

 ロズワール邸で出されたものとは方向性が違い、魚介は使っていないが和食寄りに近い。これもやはりカララギの影響を受けているからだろう。

 洋食ばかりで飽きていたシャオンにとっては驚きと共に懐かしさを感じさせた。

 

「飲め飲め飲めぇー!」

「団長補佐の秘蔵の酒だぁー! 飲まなきゃ損やぞ!」

「皆好き勝手やってるなぁ」

 

 隣に座ると言っていたアリシアはシャオンのために遠くの料理を持ってくると言って席を立ったので 喧噪の中一人座っていた。

 先ほどまで集まっていた団員達も流石に迷惑だと思ったのか近づいてこない。逆にそれはそれで寂しいと感じている。

 

「……何か食べるか」

 

 今気づいたがシャオンは今日まだ何も口にしていない。腹はすいているが最初に入れるのがこのような豪華な食事で胃が驚いてしまわないか心配ではある。

 

「ヒナヅキくん、食べとる?」

 

 そんな心配を抱いていると、隣に座ってきたのはアナスタシアだ。

 手に持つは御猪口、つまりは酌をしてくれるということだろうか。

 

「え、悪いですよ」

「これぐらいさせてよ」

 

 有無を言わさずに注がれる酒。こぼれる寸前まで注がれたそれを静かに口にし、とりあえずはこぼすことは防げた。

 

「なんか、すいませんね。主さんにこんなことさせちゃうなんて」

「別にかまへんよ、ウチもウチで打算なしにやってるわけじゃないもん」

「はい?」

 

 訊き返すとアナスタシアは腕を絡ませ、体をこちらに、預ける。

 密着しているわけだから必然的に彼女の温もりを感じ、心音が高まる。

 

「あの……」

「正直、一撃当てるとウチも思ってなかったからな。ヒナヅキ君に対する評価は変えへんとなぁ」 

 

 にこやかに笑うアナスタシアではあったがその瞳に隠れている感情は完全に獲物を狙う動物そのもの、つまりは引き抜きのターゲットとして狙われているのだろうか?

 

「お待たせっす、色々とごちそう持ってきた――シャーっ!」

「ああん、冗談やって」

 

 アリシアが戻り、蛇のような鳴き声を上げてアナスタシアとシャオンを引き離し、そしてそのままシャオンの隣に勢いよく腰を落とす。仕方なくアナスタシアは反対側に座り直す。

 

「なんすか? 色仕掛けっすか?」

「べつにそんなこと企んではおらへんよ? ただ頑張ったヒナヅキ君にはこれぐらいの褒美をしてあげてもいいかなぁおもて」

 

 火花が散っているのが見えるが片方はどう見ても政治的な目線での誘惑だろう。もう片方は何とも言えないが、どちらにしろ意味が違う上での争いではあるようだ。

 

「ふん、まぁ? 貧乳体系のアナには無理だと思うけど?」

「それはお互いさま。ウチもアリィも年のわりに育ってないやん」

「うぐっ、いやシャオンがロリコンだったらまだ可能性は……!」

「確かに! その可能性は考えてなかったなぁ」

「あの、そんな会話はしないでくれます? 俺の前で」

 

 目の前で反応に困る内容の会話をされてしまっては気まずさがMaxで、落ち着かない。誰かに助け舟を求めるが皆酔っぱらっていたり、関わらない様にしていたりとしている。そんな中、

 

「ゆ、ユリウス」

 

 対面に座るユリウスに気付き、視線で助けを求めるが、彼は同情したような目線をこちらに一度向けると軽く頭を下げ、それ以降こちらを向くことはなかった。なるほど、見捨てやがった。

 最優の騎士も見放すことがあると知ったが、この事態を解決する方法は知らないままのシャオンは身じろぎすらできずに二人の女性の反応に困る会話を聞いていることしかできなかった。

 

 

「ふぅ、そろそろいいかな」

 

 ふとアリシアが、息をこぼしたかのような声を出す。そして頬をたたき立ち上がった。

 

「皆、話がある!」

 

 大声で、今もなお騒いでいる団員に声をかける。すると彼らは先ほどまで騒いでいたのが嘘だったかのように、静まり、視線をアリシアに向ける。

 

「アリィ、ええの? もうちょっと待っても別にええんやけど」

「ううん、これは早く決断しなくちゃいけないことだから」

 

 アナスタシアの気遣いを断り、彼女はもう一度息を吸って、宣言した。

 

「アタシは――エミリア陣営に入る」

 

 その言葉を聞いた者の反応は様々だった。納得していた、動揺していた、意味が分からないといったもの。ただ、アナスタシアだけは冷静な声で訊き返す。

 

「後悔は、あらへんな?」

「ううん、後悔はあるよ」

 

 その言葉にアナスタシアの眉がわずかに動く。そして彼女の口から言葉が出るよりも早く、アリシアは続きを口にする。

 

「だって家族同然の人たちと離れ離れになるんだから後悔はあるよ。でも、アタシは騎士になりたいから」

 

 決闘の際中に見た弱りきった様子は見せず、今目の前にいる彼女はいつもと、いやいつもよりも力強く意思を示す。

 

「目標もない、力もない。立派な騎士になれるとは自分でもまだ思えてない」

 

 でも、と言葉を繋ぎ、

 

「アタシは騎士を目指して一生懸命身を削って努力してきた。だから頑張りたい、その努力を無駄だと思いたくないからアタシは騎士を目指したい」

「悪いが、俺はお前を認めたわけじゃないぞ?」

「うん、それでもいいよ頑固親父」

 

 厳しい表情でアリシアを否定するルツ。だが、彼女はそれすら笑顔で受け止める。今までとは大違いのその様子にルツも驚きを隠せないようだ。

 

「否定してくれる人だけじゃなくて、肯定してくれる人もいるって、わかったから。アタシの努力は無駄じゃないって言ってくれる人がいたからさ。だから、頑張る」

「辛い道だぞ?」

「上等。トラウマを克服できていない時点でそれは覚悟のうえだよ」

 

 拳を振り上げやる気をあらわにする。 

 

「それに、身を張ってアタシに教えてくれたんだもん。だったらアタシも頑張らなきゃ、ってね」

 

 ちらりとこちらを見るアリシア。今思えば自分は恥ずかしいことを口走っていたような気がする。そう思い返すと、照れ臭くなりつい目をそらしてしまう。

 そしてそれを見てアリシアも気恥ずかしくなったのか目線を逸らし、体を縮ませ静かに元の位置に戻る。

 

「い、いじょうです」

 

 僅かの沈黙の後、絞り出された彼女の声を皮切りに鉄の牙の団員たちが一斉に瓶に入った酒を注いでくる、シャオンの頭に。

 

「ぎゃあああああ! な、なんだ!? 酒?」

「なんやなんや! いい雰囲気やな!」

「だが残念! そんな雰囲気を許すわけにはいかない!」

「おらおらおら! 飲めっ!」

「ちょっ! アタシも!?」

 

 その被害は隣にいたアリシアにもおよび、周囲は酒の臭いで満たされる。

 

「うるせぇ! そんな雰囲気にさせたお返しだ!」

「なにそれ理不尽っ! ゴボボ」

 

 抗議の声は新たな酒でふさがれ、おぼれそうになるその姿を見て座敷は笑いに包まれる。

 

「あーあ、後片付けが大変そうやなぁ」

 

 ただひとり、いつの間にか被害が被らないように離れていたアナスタシアだけが泣き言を口にしていた。

 

 

 座敷では無茶な飲み方をしていたからか、大勢の人が酔いつぶれてしまっていた。

 そんな中シャオンは踏まない様に慎重に座敷から外へ出る。

 

「うぅ、飲みすぎた。というより浴びすぎた。」

 

 いまだにとれない酒のにおいをどうにかするため、風呂を借りようとしたが場所がわからずに迷っていた際、その足が縁側で止まった。そこに一人の人物が座っていたからだ。

 

「よお、シャオン」

 

 声の主はルツ、シャオンの記憶では同じく酔いつぶれていたはずだったが今は酔いもさめたのか赤みが抜けた顔でこちらに声をかける。

 

「あれ、ルツさんここでなにを?」

「月見酒」

「ああ、確かにいい月ですね」

 

 ルツにつられて視線を向けると、黒い世界には満月が一つ浮かんでいた。高く、高く浮かんでいるそれは確かに酒の肴とするには最高だろう。

 酒はこれ以上飲むつもりはないが、せっかくなので月を見ていこうと腰を下ろす。

 

「……あいつが、騎士を目指す理由は俺は知ってるよ」

「え?」

「メアリア……俺の妻に憧れたんだよ。そして、それこそが剣を握れない理由にもなっちまった」

 

 酒を注ぎながらも彼は唐突に話を切り出した。

 一瞬ついていけなかったが、すぐに話を聞く体制をとる。

 

「剣を握れない理由、ですか?」

「俺の妻が、剣を持って敵を斬る姿がアイツの知っている姿とかけ離れすぎてて怖かったんだとよ。それ以来妻は剣を握らなかった。だから、死んだのかねぇ」

「……すいません」

「俺が勝手に話してんだから謝んなよ」

 

 聞いてはいけないことを聞いてしまったようで謝罪をするがルツは気にしていないようだ。

 それでも空気は一度変わってしまうとそう簡単には元通りにならないのが世の性だ、どうやっても暗くなる。

 

「そうだ、気になってたんだがよ。お前なんで決闘を続けたんだよ」

「はい?」

 

 それでもどうにかしようと話題を変えようとしたルツに乗っかる、だが言葉の意味が分からず頭の中に疑問符を浮かばせてしまう。

 

「そもそも受けたのが理解できないが、続けたのももっと理解できない。降参の一言でも出せばすぐに辞めたんだぜ?」

「いろいろ理由はありますけど」

 

 小さい理由ではあるが数えれば多すぎるくらいの理由はある。だが、一番の理由としては――

 

「まぁ、罪滅ぼしってところですかね」

「あん?」

「娘さんを誑かした覚えはありませんが、それは結局感じ方次第ですし。貴方が誑かされたと思えば、やっぱりそうなんでしょうから」

 

 王都に来てからカドモンが娘を大切にしている場面を見て、ロム爺の娘がいなくなり寂しくなっている姿を見て、やはり親にとって子が危険な目に合うのはどんな理由があっても嫌なことのはずだ。

 そして話を聞く限り、シャオンと出会う前と出会ったとではアリシアの考え方は大きく変わってしまったようだ。つまり彼女が危険な目に合うかもしれなくなってしまった一応の責任はこちらにある。殴られるだけでそれが何とかなら好きなだけ殴られてもいい。

 

「それで気が済むまで殴られようと? 死ぬ可能性もあったのに?」

「それはうそでしょ。だって親父さん、途中から殺す気失せていたでしょう?」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったようような表情で黙ってしまうルツを見てしてやったりと笑う。

 戦闘の際中、始めは死を感じていたが途中からはその気配はなくなっていた。スバルほどではないが死の体験はこれでも豊富なのだ。間違いなく、途中から手を抜いていた。

 

「なんでぇ、つまんねぇの」

 

 言い当てられことに拗ね、猪口に酒を注ぐが、中身がほとんどなくなったようで猪口の中はあまり満たされてはいなかった。

 

「……いいこと教えてやるよ、これでお前はお嬢に大きな貸しを作れた。だが、必ずお嬢は逆にそれを利用する。お前のその様子だと気づいているようだが、気を付けろよ。意外とやるからな、お嬢は」

「ご忠告痛み入ります」

「脅かすようなこと言っちまったが、正直責任とれって言われなくて助かったぜ。腹切り覚悟してたからな」

 

 そう笑うルツではあったが、冗談を言っているようには見えず本当に命を絶っていた可能性もあったわけだ。流石にそんなことを目にしてしまっては胸糞が悪い。

 

「それじゃあな、お前も早く寝ろよ、シャオン」 

 

 酒がなくなったからか、それとも照れ臭くなったからかルツは足早に縁側から離れる。そしてその背中は大きく、よく怖気づかずに戦えたものだと改めて思う。

 

「父親、か」

 

 寂しくつぶやいた言葉にどんな意味があったのか。それは、まだわからなかった。




アナスタシアが決闘をして得た利益
・シャオンの手札の把握。
・アリシアとルツの問題解決。
・エミリア陣営とのパイプ作り

シャオンが得た利益
・アリシア
・アナスタシア陣営の評価
・鉄の牙の力について
・陣営同士のパイプ作り
・貸し


まとめるとこんなところでしょうか。
アドバイスや文章の間違い、途切れ、感想があればお願いします。
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