Re:ゼロから寄り添う異世界生活   作:ウィキッド

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第3ヒロインであるエルザ誕生日記念です。短く雑ですがどうぞ。


番外編 いつか訪れるだろう化け物の願い

腸狩りのエルザは、傭兵だ。家庭を持つわけでもないし、特定の場所に住まいを持つわけでもない。

ただ、隠れ家はいくつか持ってはいる。そのうちの一つでの出来事だ。

 

「ねぇ、シャルン。貴方、精霊なのよね?」

 

 シャルンと呼ばれた少女は白い髪の中に一房ほど赤紫色の髪が混じった少女だ。

それだけでも珍しい特徴ではあるが、他にも彼女には目を引くものがある。

 それは瞳だ。 

 誰もが持つその両眼が黒一色に染まっているのだ。捉えようによっては不気味でしかないものだが、腸にしか興味がないエルザでも珍しく、その混じりけのない黒色は気に入っている。

 呼びかけられた彼女は読んでいた書物を優しく閉じ、エルザにその特徴的な瞳を向けた。

 

「人工、という言葉が入ればその問いには肯定です」

「割いていいかしら?」

 

エルザの言葉の意味は別に特別な意味はない、ただそのままの意味で"腹を割いていいか"と聞いているのだ。

当然、彼女は腹を裂かれたくはないので不満そうにしている。

ただ事情がわかっていないようでもあるので詳しく話すことにする。

 

「私、今日誕生日なの」

「……それで? 誕生日だからといって、なぜ私が臓物を引き出さなくちゃいけないのですか?」

「バカねぇ、シャル。エルザが言いたいことは簡単――祝ってほしいのよ」

 

背後から抱き着きながら現れたのはメィリィだ。

馬鹿にしたように笑いながら、メィリィはシャルンの髪をいじり始める。

 

「バカはあなたですメーリー。エルザにそんな乙女思考はないです」

「わたしはメイリィ! そんなふうに間抜けにのばさないでよぉ!」

 

頬を膨らませて、メィリィはシャルンをこづく。しかしシャルンもやられっぱなしではない、メィリィの頬を引っ張ることでやり返す。

それを姉のような立場から見守りながら、話をつづける。

 

「メィリィの言う通り、祝ってほしいの」

 

エルザの言葉に、メィリィは得意気に笑い、予想が外れたシャルンは拗ねたように口をすぼめる。

 

「腸を見せてくれないなら、別の祝い品でもいいわ」

「それで? なにをご所望ですか? 生肉? ああ、好物はモツでしたっけ。それだったらメーリーの魔獣の肉を――」

「いいえ、星を読んでほしいの」

 

エルザの言葉にメィリィとシャルンは顔を見合わせるーー彼女らしくないと、驚きの感情を抱きながら。

 

 

『星読みのシャルン』

 グステコでの依頼で出会った傭兵の少女で、彼女はエルザがもつ祝福とは違う特殊な能力を持っている。

どうやら、星が見える場所だったら先のことを見れる、つまりは未来を見通せるのだ。

後は嘘か本当かわからないが”人工的”な精霊らしい。といってもエルザにとっては違いがよくわからないが腸も大きく違うなら興味はわくが。

 

「あの、男の子。メイリィが恋している男の子について調べてほしいの」

「もうっ! エルザったら! そんなことあるわけないでしょ! それにあの胡散臭いお兄さんはエルザもあっているでしょ! なに? 好きになっちゃったの?」

 

顔を赤くして年相応の反応を示すメィリィにエルザは微笑ましげな表情を浮かべるだけだ。

 

「お父様が幸せになるなら私はどうでもいいです」

 

これまた数奇な運命で、エルザがルグニカ対峙した少年とメィリィがアーラム村で対峙した少年。

彼はシャルンの父にあたるらしい。

精霊の彼女の父ということ精霊ではないのかとおもうが、そこは人工精霊。なにか事情があるのだろう。

 

「それで! どうだったのぉ」

「近いうちに、また依頼があります――その時にお父様が、賢者候補を連れて聖域に」

 

星を読み終わったのか、シャルンは台本を読むかのように声を出す。

 

「聖域? どこよぉ、それ」

「そこまではわかりません」

 

メィリィの言葉に、シャルンは機械的に答える。彼女の能力はそこまで詳しくわかるものではないらしい。

 

「ねぇ、その依頼の情報。詳しく教えてくれないかしら」

「――場所はアーラム村。時期は――大罪が一つ落ち、魔女との決別を経て。盟友と獅子と、愚者を引き連れお父様が参ります……そこで炎の中、エルザとお父様が――殺しあっています」

 

その予言を聞いて、メィリィは驚き、エルザは、笑う。普通だったら、そんな予言を聞いてはいい顔をしないだろう。だが、彼女らは普通ではないのだ。

 

「よかったわねぇ、エルザ。ようやく死ねるかもしれないわよぉ」

「――ええ、楽しみだわ」

 

 ペロリと、舌で唇を湿らす彼女の姿は淫靡で、蠱惑的でそれであって――恋する少女のようだった。




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