かなーリ久しぶりの投稿になるのでプロットを見直し&描き方がだいぶ変化しているような気がしています。すいません!
これからはなるべく早く投稿できるように頑張りますが、3章は早足になってしまうかもしれません。
目が覚めるとそこは白い部屋だった。
部屋には大きなテーブルが一つと、それに合わせた様にいくつかの椅子が並べられていた。
ここはどこだと辺りを見渡していると、声が聞こえた。
『やぁ、元気そうだね』
気が付くと誰もいなかったはずだった、対面の席に一人の人間が座っていた。
声の主はどこかの民族風な仮面をかぶり、表情は読み取れない。わかるのは白い長髪の、男性ということだけだろうか。
この自身が置かれた状況に加え、目の前の異質な人物にいつものシャオンならば怪しむが、しかし、なぜか初めて聞く声にもかかわらず、その声は懐かしく、不思議と警戒心は抱けなかった。
――貴方は?
『ボクはボクさ。それ以外の何者でもないよ』
――なんじゃそりゃ
答えになっているのかわからないような返答に、呆れていると。仮面の男も呆を含めた様に肩を落とす。
『その質問をするって言うことは……まだ、目覚めてないか。急いでくれよ?』
――急ぐ、とは?
『それじゃあまた今度話そう。なに、
目の前の男はシャオンの質問には答えず、ただ指を鳴らした。
乾いた音ともに、白い部屋に罅が入っていく。
待ってくれ、の一言を言うよりも早く世界が崩壊するような感覚と共に視界が暗転する。
『さぁ、大罪が動いた。
一瞬だけ見えたもの、それに驚愕する。目の前の仮面の男の顔、意識が消える一瞬見えた仮面の奥の顔。
それは――――自分と同じ顔だったのだ。
■
「……うあー?」
「なにがうあー?、すか可愛くないっすよ」
わき腹を小突かれ、意識を取り戻す。
まるで長時間の眠りから覚めたような感覚に、思わず変な声をこぼす。
「……ここは?」
「どしたんよ、急に。どこって言うならまぁ、ウチの屋敷やけど」
おぼろげだった意識が徐々に覚醒し、朝の光と、黄色い髪をした少女アリシアの姿が目に入った。そして彼女の姿を目にすると同時に両肩を掴み、距離を詰める。
「な、なんすか? 」
「――体、大丈夫か?」
「はい?」
怒られるとでも思っていたのか身構えていたアリシアは、シャオンの気遣う声に目を丸くした。
そんな様子を無視して、シャオンはアリシアの様子を確認する。記憶に残ったボロボロの彼女はそこにはなく、健康的な姿が代わりにあった。
安堵するとともに周りを見渡す。
そこにいるのは驚いた顔のアナスタシアと、ルツ、そしてシャオンのファンになった獣人たちだ。
それらを鑑みて今の状況をまとめ、確信する”スバルが死に戻った”と。
「あんな? いちゃつくんなら別のところでやってほしいんやけどな?」
「ははは、それはすいません。そしてもう一つ謝ることがありまして……この竜車を使うのもう少し待っていただけませんか?」
「別にかまわへんけど……なんでなん?」
アナスタシアの疑問はまっとうなものだ。
記憶が正しければシャオン達はこの竜車を使用し、今まさに屋敷へと向かおうとしたのだ。それを何のきっかけもなしに少し待ってほしいというのだから。いや、実際にはきっかけはあった、シャオンとスバル以外には感知が出来ないものだが。
――さて、どうしたものか。
素直に話すことはもちろんできない、嘘を吐くならしっかりとしたものでなければ彼女の自身ら、しいてはエミリア陣営への不信感へとつながってしまうかもしれない。
考えすぎといわれてしまえばそれまでだが、可能性があるのだったら軽々しく行動はできない。
どうすべきかと内心悩んでいると、救いの手は意外なところから現れた。
「なんか事情があんのか?」
声の主はアナスタシアの横で様子を見ていたルツのものだ。彼の表情は先ほどまでのモノとは違い、歴戦の戦士だということを思い出させるほどの圧力を含んでいた。
その視線を真っ向から受け止め、小さく首を縦に振る。それを見て数秒の間を置いた後ルツは一度目を閉じると、いつもの人懐っこい笑みを浮かべアナスタシアへと向き直る。
「お嬢、事情はあまり訊かないでやってくれ」
「……別にえーよ。もともとそんな根掘り葉掘り聞くつもりはあらへんし」
「ってことだ。あまり長くはかからねぇんだろ? だったら事情は聞かねぇし」
不機嫌そうに口をすぼめる彼女にルツはケラケラと笑う。
「ありがとうございます、ルツさん」
「いいってことよ、同じ酒を飲んだ仲。こまけぇことは気にしねぇ」
胸板を強く叩き、豪快に笑うルツに心の底から感謝を述べる。
正直今ここで膠着状態になるのは避けたかったのだ。
「な、なにがなんだか」
「事情は後で話す今はとりあえず――戻るぞ、スバルのところに」
「うぅえ!? 急すぎないっすか!? いったい何が」
全く訳が分かっていないアリシアの手を無理やり取り、走り出す。
確か、スバルは現在レムと共にクルシュの屋敷のはずだ。記憶にある限りだと、あの白い壁に殺され、シャオンの命は終わった。だが、こうして世界が再び始まったということはスバルも死んでしまったのだ。
ならば、詳しい話、顛末を聞かねばならない。
「……せめて話くらいはしてくれよ?」
喧嘩別れではあったがこの事態ではスバルもこちらと協力するだろう。
不謹慎だと自分を叱りながらもシャオンはスバルとレムがいるクルシュ邸に向かうのだった。
◆
「……レム嬢、状況説明」
「これはもう正直、お手上げって言うしかにゃいかなぁ……」
シャオンの問いかけにレムが答える前に頬に指を当てながらフェリスはそう断言した。
ネコミミを触りながら、栗色の髪の獣人は寝台に横たわるスバルを見たあと、ため息をつく。
「ほーんとっ! なにがあったのやら!」
現在スバルはクルシュ邸のベットで横になっていた。
眠っているわけではない。彼の目はしっかりと開かれ、じっと真上にある天井を真剣に見つめている。時折、思い出したようにひきつったような笑みを浮かべ、それが済むと突然に泣き出したりもする。不安定な状態が続いていた。その姿はまさに『廃人』といえるものであった。
「正午過ぎに王都の下層区を散策していた間は……いつもと変わりはありませんでした、なにか、切っ掛けがあったようには……」
スバルの様子が豹変した瞬間、レムが一番近くにいたのは間違いない。そして、今のスバルを一番気にかけていたのも勿論レムだ。そんな彼女がそういうのだ、恐らく間違いない。
「こんにゃこと言いたくないけど、どうするの?」
「原因がわからないことには対処のしようが……フェリックス様にはご迷惑を」
「んーん、それは別にいいんだけどネ」
ほとんど無反応で、寝たきりのようなスバルを見下ろしながらフェリスは「でもでも」と言葉を継ぎ、
「治療、続けてもいいのかにゃって思って」
「……どういう、意味でしょうか」
顔を上げ、スバルの無表情から視線を外すと、レムはようやくフェリスを見る。その視線を受け止め、フェリスは「怒らにゃいでほしいんだけど」と前置きして、
「スバルきゅんのゲートを治療するのって、この子が今後の日常生活に支障をきたさないようにしてあげるための計らいでしょ?」
「はい」
「もう、日常生活なんてまともに送れにゃいんだから、体だけ治しても仕方にゃいんじゃないかにゃーって」
「フェリス、言葉を選べよ?」
シャオンの言葉に「こわいこわい」と冷やかすように体をよじらせるフェリス。しかしそんな態度を取りつつも声色は冷淡だった。
「でも事実でしょ? それともまだ終わってにゃいって言うの? この状態を見て? 本気で?」
あくまでフェリスは疑わしげな態度を崩さない。彼のスバルを見下ろす視線には、はっきりそれとわかる侮蔑の感情があった。
そんなフェリスの態度に押し黙るこちらにフェリスは「誤解しにゃいでほしいんだけど……」と苦笑して首を振り、
「別に、フェリちゃんはスバルきゅんが憎たらしかったり、殊更に嫌ったりしてるからこんな風なこと言ってるわけじゃにゃいからネ」
「嘘つくな」
「ウソじゃにゃいよー、正確にはスバルきゅんが嫌いなのは事実だけどね。でも今回の問題はスバルきゅん個人がどうこうって言うんじゃにゃいんだヨ?フェリちゃんはたーだ、純粋に『生きる意思』に欠けてる人間が嫌いにゃの」
唇を尖らせ、フェリスはスバルを指差し、
「フェリちゃんが魔法でできるのは、傷を癒したりするぐらいのものだから。そんなフェリちゃんだけど、それなりに忙しく色んな人にこの手を使ってあげてるわけ。みんな生きるのに必死だし、その手伝いをするのは別にいいんじゃにゃい? 感謝されるの嫌いじゃにゃいし、偉い人に貸し作ってクルシュ様のお役にも立てるし?」
「――――」
「でも、生きようとしない人間の体を治すために力を使うにゃんてのは嫌。前に進もうともしない、向こうともしにゃい人間の命にゃんて終わっちゃいにゃよ。んーん、終わってしまってるの」
ぴしゃりと、そう告げてフェリスはつんと顔を背ける。
言い方こそ軽薄さを装っていたが、それは彼がそれまでに見つめてきた生と死から学んだ、彼の中で確立された死生観なのだ。
そして、そうした確固たるものがある人物に対し、考え方を変えさせることは難しいのだ。
ちらりとスバルを見る。スバルは自分が話の中心になっていることにも気付かず、今は聞く者の心に引っ掻き傷を残すような、途切れ途切れの笑声をかすかに漏らしていた。
「馬鹿が、くそ」
そんなスバルの額を軽く小突く。当然、反応はない。
癒しの拳などというものを持っているのに、友人一人救えない、その歯がゆさに下唇をかみしめる。
「――少しばかり、フェリスの意見は厳しすぎるところがあるな」
声は唐突に、気まずい沈黙が流れた室内に朗々と響いた。
意識が思考に沈み、その人物の来訪に気付かなかったレムは弾かれたように顔を上げる。対し、ノックしてからの来室に気付いていたフェリスは涼しい顔だ。否、来訪者に彼が向ける瞳は、静かに熱を帯びた心棒者のものであったが。
「クルシュ様」
「弱さが罪である、とまで私は言わない。もっとも、弱いままでいることを是として、それを正さずに現状に甘んじることが罪である、ということには同意見だが」
入室したクルシュは長い緑髪を揺らしながら寝台の横へ。そして、今も凶笑に歪むスバルの顔を見下ろし、
「なるほど。これは確かに由々しき事態だな。原因はわかっているのか?」
クルシュの問いかけに、フェリスは「いーえ」と肩をすくめてお手上げと手を掲げる。
「北方の……呪術といったものの影響を受けた可能性は? 考え難い話ではあるが、グステコ側から王選関係者への干渉があった可能性がある。あるいは別の陣営の示威行為というのもあるか」
その言葉にシャオンは首を横に振り答える。
「どっちも考え難いですね。仕掛けてくるには時期が悪すぎる」
それに、その可能性は少ないのだ。いや、少ないというのは語弊があるだろうか、シャオンの頭の中では、確実にその示威行為である言う可能性はなくなっている。なぜなら――
「そもそもスバルきゅんを狙っても誰に得が? 関係者ならスバルきゅんの醜態っぷりは周知の事実ですし、そもそも呪術含めて魔法的干渉が見当たりません」
言いづらそうにしているシャオンの気持ちを察してか、それともただ単純に嫌がらせなのか、こちらと同じ考えを口に出す。
そう、スバルを狙う必要性、メリットが考え付かないのだ。
示威行為を示すならばもう少し、殺して
単純に騎士を愚弄したスバルに対する報復という線も考えられなくはないが、ユリウスによる決闘での顛末を見て更に追い詰めるような人物はいないと考えたい。それに、魔法に詳しいフェリスが干渉が見当たらないというのだ。示威行為の可能性は0と言いきって問題ないだろう。
「フェリスはこう言っている。そして、フェリスが力になれないのであれば、当家でナツキ・スバルの治療ができるものはいない。及ばず、すまない」
「――いいえ、こちらこそ寛大な処置に言葉もありません」
屋敷の主人の謝罪に対して、レムは丁寧にお辞儀して応じる。
事実、言葉を尽くしても礼を尽くしても、返し切れない温情を受けたのだ。
フェリスが手を抜いたなどとは思わないし、クルシュが政治的な敵対者となるエミリアの関係者に恣意的な判断をしたということもない。
フェリスの技術の高さも目にしている、その上でスバルの身に起きた異変にそれが意味を為さないこともわかっている。
クルシュの人格についても、誠実で実直な人柄である点は疑いようもない。つまり、彼女らに落ち度など微塵もない。
この現状はなるべくしてなったどうしようもない状況なのだ。だから今の段階では打つ手がないのは仕方ない、ただ――
「――魔女」
そう、スバルに寄り添うレムの一言が、いやに頭に残った。
後日添削などを行いますが、誤字脱字、矛盾、質問があれば報告お願いします。久しぶりの投稿なので適宜見直して修正いたしますので。