体育祭なくなった影響で色々仕事が降りかかってきそうです・・・地震の影響って凄まじいですね(熊本県民なのです)。
今回も、暴走気味です。
よろしければ、お楽しみくださいませ。
「がほっ、げほっ・・・うぇあ・・・」
呼吸が辛くなり、体を起こす。咳による反動で背中に痛烈な痛みを感じ、身を捩らせる。
「いっつ・・・」
痛みで意識を完全に取り戻すとは、また変な話だ。
胴防具は脱がされ、体は包帯でぐるぐる巻きにされている。靴と帽子も外されている。
擦過傷程度は身体中に無数にあるが、背中の傷らしきもの以外は、案外重症ではないようだった。背中が無事に完治したら、今まで通りの狩りもできるだろう。
どうにも呼吸に違和感があるが、あまり気にしたくなかった。
流石にしばらくは休暇が欲しいが。
ベッドの上に座り込み、記憶の糸を手繰り寄せる。
何があったのか。
何に襲われたのか。
考え事をしながら右手を腰元に伸ばす。あるはずの感覚がないことに驚愕するも、落ち着いて考えたらあるわけがなかった。
寝ていたんだから。
ならどこに俺の得物はあるのかと思えば、ベッドの隣の厚布に立て掛けられていた。
狩猟中には気づかなかったが、思いの外武器にダメージがあったようで、薬ビンの装填部が外れそうになっていた。しかも、スライド部も外れそうになっていた。戦闘中にとれなくてよかった。
変形しないスラアクなどなんと呼べばいいのだろうか。
加工屋直行だな。
「ニャっ!?アロン!まだ動いちゃダメニャ!!」
「がすっ!?」
ベッドから立ち上がり、外の空気を吸おうとしたら、不意に現れたアオに、思いっきり突き飛ばされた。ベッドに叩き戻される。
背中の傷が開くじゃねぇか。
「痛ぇなこの野郎・・・!」
「何してるのニャ!安静にしないと駄目なことくらい分かって動いたのニャ!?」
怒っているのか。そこまで心配をかけるほどの傷なのだろうか?
「いや、結構動けるしいいかなって」
「・・・狂竜症にかかってるのにそれを言うのかニャ?」
冗談を言えるくらいには元気なのニャ。
ベッドにぶっ飛んだままの俺を呆れるように見やがり、溜め息をつかれた。
「あのときアロンが庇わなければ、そんな怪我せずにすんだのニャ」
「ん・・・そんときの記憶があんまりないんだよな・・・」
「だろうと思ったニャ。親父さんから手紙も届いてるニャ、それでも読みながらのんびり思い出すニャ」
「手紙?昨日のか?」
狩場に手紙など、余程急いでいるときくらいにしか届かない。それほどの用なのだろうか。
『あー、アロン?すまないな、渡すべきキノコを間違えてしまったようだ』
・・・実にくだらない。
開いたことをそこそこ後悔した。
『間違ってドキドキノコを送ってしまったみたいだ。まぁ品種改良したし、見た目もそっくりだったし、許してくれ。で、だ。そのキノコは調合して、ラギアクルス亜種には食べさせたか?』
この親父は何を言っているのだろうか。確かにあの手触りはモドリ玉の調合の時の手触りとそっくりだった。もし、そのキノコが本当にドキドキノコならば、気にする理由もないはずだが。
ドキドキノコに限らず、指定のキノコ以外を調合して作った罠肉は、期待できる効果を望めなく、むしろ危険だとされている。
その中ではドキドキノコは食わせてもどうでもいいような代物だとされている。何故気にする必用がある?
『もし、奴が食べたのなら、異常な行動がないか確認してくれ。出来るだけ、詳しく頼む』
・・・流石に異変を感じた。
ドキドキノコは未だに効能が完全に解明されておらず、未知数の力が宿るとも唱える学者も多い。親父も、そのうちの1人である。
あるとしたら、新たな罠肉としての効果を確認しろ、ということか?食わせるということは内服することで効果を発揮するのかもしれない。新型の回復薬とも推測できる。
・・・それをわざわざ俺にやらせる理由が不明なのだが。一応親父もハンターだし、下手すりゃ俺より強い。
忙しいのだろうか。
『肉質や属性の通りも、感覚でいいから覚えておけ』
肉質か・・・若干軟化していたような気がする。
属性はわからないが、おそらく通りやすくなっているのではないだろうか。
もしもそのような効能が発見されたら、狩猟はかなり変わるだろう。何故、属性関連の効果が今までなかったはずなのに、唐突に出てきたのは疑問だが・・・
『あと、どうも物騒な乱入者がいるらしい。十分に注意して狩猟に望んでくれ』
もう襲われたっぽいんですけどね。
妙に多い書き直した跡のようなところや、雑過ぎて読めなかったところを除けば手紙はここまでだった。何か書きかけのものを破ったような紙だというのは珍しい。いつもはきっちりしているのに。
そして、この程度の内容しかないのに手紙を送ってきたのか・・・そんなに気になるんなら自分でやれや。
「づっ・・・まだ痛むな・・・」
背中が疼くように痛む。だからといって、このまま調査をしないわけにもいくまい。
シロにも示しがつかない。
「アオー、悪いけどちょっとキャンプ頼むわー」
「狂竜症にかかってるのに、何を考えているのニャ」
「え、そうなの?」
「自覚がないっていうのが一番厄介なのニャ」
狂竜症にかかる要素は無かった・・・訳でもない。
襲われた時に感染したとしても不思議ではない。
だが、キャンプで寝ていたんだし、むしろ治っていて当然のはずなのだ。
理由としては十分と思ったが、吐息が薄く黒く染まっていたことに今更ながら気づいた。
「これもキノコのせいだったりして・・・」
あの科学者が考えていてもおかしくない。
本当にキノコのせいだったら全力で殴ってやる。
「アカが狩場中のウチケシの実をかっさらってるニャ。行くとしても、絶対にそのあとニャ」
しぶしぶ上げた腰を下ろす。
いや、確かにこのままは流石にまずかっただろうし、納得はするのだが。
早く、シロに会いたい。痛烈にそう思った。
アカが帰ってくるまでにしばらく時間がかかりそうなので、武器を診ることにした。あまり技巧に関して詳しくないが、狩猟に支障がでないレベルには直せるように教えられていた。幸い、この武器は昔から使い続けているので迷わずに応急処置出来た。
ボーンアックス、パワーブロウニー、竜姫の剣斧、桜剣蒼斧。この次にあたると言われている月裂きディアーナ。
全てこの一振りで出会うことの出来た武器だ。
何十回も空に掲げ、何百回も研ぎ直し、何千回も振り回した。
他の武器なら別だが、スラッシュアックスならこの武器以外は担いだことがない。
それくらい特別な武器なのだ。
ビンを装填しなおすとき、手が震えた。
それが狂竜症の症状ではないことくらいは、俺でも分かった。
「そのくらい元気なら、これはいらないかニャ?」
気分転換に属性解放の構えをしていたら、ちょうどアカが帰ってきた。見つからずに焦っていたシルクハットの中には、山盛りのウチケシの実が入っていた。
「まぁ、いらないと答えても、強引に口のなかに押し込むけどニャ」
「やめろ、ウチケシの風味は苦手なんだよ」
抵抗むなしく、有無を言わさず口の中に叩き込まれる。なんとも言えない様々な味が口内を駆け回る。不味い訳じゃないのだが、どうにも好みではない。
胸の詰まりというか違和感は薄れてくれた。しかし、謎の胸騒ぎが急に強く感じるようになった。
10分後。
「よし、ウチケシの実もかじったし、元気もでた。背中は薬草貼りまくってどうにかしてやる。そら、準備しろい」
やる気と不安しかない。むしろ不安の方が強い。
嫌な予感が消えないのだ。
「・・・どうせ言っても聞かないんだろうニャ・・・分かったニャ」「包帯替えるニャ。背中出すニャー」
包帯と薬草を取り替えたその時。
ベシィッ!ガッスッ!
「痛っ!思いっきり叩きやがったな!?」
しかも武器でか。腹でも切れそうで怖い。
「うら、気合入ったニャ?ちゃっちゃと服着るニャ」「早くしないと置いてくニャよ?」
「服って・・・確かに防具よりは礼服に近いけどさ」
せめてはたく位にしてくれよ。
こいつらにはキャンプに残るという選択肢はないようだった。
こいつらが案外やる気なのは意外なところだった。
背中が擦れてひりつく。薬草がなかったらどうなっていたことか。
脱がされていた礼服・・・じゃなかったブナハシリーズを着て、動きを確認する。胴部位の背中がザックリ破れていたが、それ以外は無事なようだ。逃げるときが一番危険か。
壊れつつある桜剣蒼斧を担ぎ上げ、ゆっくりと歩き出す。
残ったウチケシの実を食べながら。
再び、エリア6。
変わらず、そこには何もいなかった。
「結局聞かなかったけどさ、俺ってどうなったんだ?」
ふと足を止め、質問する。
考えている途中に手紙が入り、聞かなかったのだった。
何で背中がこうなって、狂竜症に感染したのか。
「ボクとアカを庇ってぶっ飛ばされたニャ」「その時の傷が背中のそれニャ」
・・・庇ったのか。
「・・・一応言っておくとニャ、アイルーの体はハンターよりも丈夫だから、庇おうなんて考えるのは間違っているのニャ」「今度自分を優先的に考えなかったら、刃の方で叩いてやるニャよ?」
「・・・前向きに考えてみるよ。実行するかは未定だけどな」
「未定じゃないニャ。確定された未来ニャ」「やったら蹴飛ばすニャ」
そういえば、こいつらは庇われるのが大っ嫌いだったな。目線が過去最強クラスに痛い。
「悪かったな。でもな・・・いや、なんでもない」
「んニャ」「ニャ」
「・・・絶対に怪我すんじゃねえぞ?」
ぺしっ!だすっ!
さっきよりは大分優しく叩かれた。
「・・・愚問ニャよ」「・・・絶対大丈夫ニャ」
「・・・・・・」
「アロンは黙って前だけ見ていればいいのニャ」「背中は任せるニャ」
「・・・ありがとよ」
ウイルスについては今は聞くのはやめておいた。襲いかかった黒い影についてもだ。
ウチケシの実はまだ残っていたが、気付けば狂竜症も鎮静化していた。
オレンジの夕焼けに照らされ、俺らは再び歩き出した。
エリア7。
最後にシロと邂逅したエリアだ。
そこに転がっていたのは、無惨に引き裂かれた亡骸だった。
それがシロのものだと理解するのに、多少の時間を必用とした。
「どうして・・・こんな・・・」
アカの話によると、クエストの制限時間内には狩猟・・・というか、もう死に絶えていたらしい。
だが、その時にはここまでボロボロな雑巾みたいにはなっていなかったそうだ。
「・・・狂竜症に感染したモンスターは寿命が縮むニャ。勿論、腐敗速度もだって、アロンのお父さんも言っていたニャ」
アオは言いにくそうに伝えた。
「シロはそいつに襲われたのか?」
シロはそこらのモンスターとは段違いに強かった。それをここまで凄惨に葬っただと?
「俺たちを襲ったやつと、同じく?」
「おそらくニャ。勿論、あいつがそう易々とやられるようなやつじゃあないことくらい、アロンが一番知っているはずだニャ」
アカは淡々と伝えた。
死体となったシロを見つめ、ぼんやりと考える。
もし、俺と戦わなかったら、シロは生き残れたのだろうか?
勝手にライバル視し、勝手に好敵手と見た結果、勝手に死なれたのか?
正解など見つけられるわけがない。
それでも。
俺の手で、決着をつけてみたかった。
俺の手で、こいつと戦った誇りが欲しかった。
歯ぎしりしていたことに今更ながら気づいた。
「せめて剥ぎ取りくらいはしてやるニャ」「それがせめてもの意地ニャ」
「・・・あぁ」
足取りが重い。ここにくるまでのどの時間よりも重い。
剥ぎ取りを開始すると、明らかな違和感に首を傾げた。
妙に刃の通りがいい。むしろ良すぎる。
剥ぎ取りナイフはハンターの用いるなかでも最高級の切れ味を誇るが、以前突撃したときには軽く受け流されてしまうくらいには固かった部位もあった。
それがどうだ、おかしいくらいに切れる。
普段は剥ぎ取るなんて不可能な尖角さえ容易に剥ぎ取れたのだ。絶対におかしい。
狂竜症による肉質変化も、ここまであからさまではなかったはずだ。そして、シロの狂竜症の感染はすぐ最近の出来事だ。
疑問と体の確認をしようと今一度シロの死体を見つめるが、さっきは気づかなかったことに驚いた。
シロの体は、異様なほど薄くなっていた。
肉や骨ごと溶けたかのように。
「・・・?」
勿論、確認すれば骨も肉もある。だが、位置がおかしい。あるべき部位から落ちているようだった。
まさか、これがドキドキノコの効果なのか?
ドキドキノコには腐食効果でもあるのか、または狂竜症との併発によるものなのかはわからない。が、雄々しさに満ち溢れた体だったとは思えないくらいに萎んで薄くなっていた。
「なぁ、アカ、お前が見たのはこんな姿じゃなかったんだよな?」
「ニャ?まぁ、そうニャ」
だとすれば、変化が起こったのは死んだ後・・・ちょうど俺が寝ていたころになるのか。
周囲の確認をすると、左半身が異様に抉られていた。強引に引き裂かれたような・・・むしろ食い破られたのか?
頭部はあまり損傷はないようだが、身体中の鱗や皮は結構ダメージが多い。
死んだ後、小型モンスターにでも集られたか?
それとも執拗に、左半身だけを狙い、その結果この有様なのか?
どちらにせよ、想像しか出来ない上に今は考えたくもなかった。
「ニャ?アロン、あれは蒼玉じゃないかニャ?」
「ん?」
うろうろしていたアオが、何か発見したようだ。
指を指す先には蒼玉・・・のようなものがあった。
滅多に取れない希少素材だ。ちなみに一度も入手したことがない。
「あいつの形見だニャ。加工しちゃダメニャ」
「分かってるさ」
アクセサリーにでもして、肌身離さず持っていてやる。
蒼玉に手を伸ばし、ひっつかむ。
周りの肉も一緒に引き抜く。
・・・・その肉が人の腕だったとは、誰が想像しただろうか。
「・・・っ!?」
思わず手を離してしまう。
蒼玉らしきものは、手の甲に埋め込まれるように形成されていた。
病人のように真っ白な肌は、沈みつつある太陽の光をを反射している。その反射をより強くするのは、何やら不快な滑りをもった赤黒い液体だった。血と分かったが些細なことだ。
恐る恐るまた手を伸ばし、掴みなおす。
ゆっくりと引っ張ると、ぬるりと毛むくじゃらの球体が出てきた。頭と認識すると、首筋がピキリと鳴った。
「く・・・生首・・・?」
長く伸びた髪はクリーム色で、やはり血と何かで濡れていた。
顔は血と髪の毛で見えなかった。むしろ見たくなかった。
今度は手を離さなかった。
そのまま引き出すと人間が一人出てくると分かっていたのなら、思考時間ゼロで手を離して全力で走っただろうが、生憎俺に未来予知などは不可能である。
結果、引き抜いてしまったが。
「・・・死体か」
冷たい肌に触れ、誰に言うわけでもないのに呟いた。
白く、小柄な体。裸である。
真っ赤な血によってべったべただ。
恐らく、船に乗っているところをシロに襲われでもしたのだろう。何故こんなに保存状態がいいのかは不思議でならないが、たまたま丸飲みにしたんだろう。
胃液?そんなものは知らない。
蒼玉に関しては考えたくもない。早く逃げたい。
そのとき。
「・・・・・・ぁぅ」
「・・・!」
微かだが、確かに呻き声が聞こえた。喉元に軽く手を当て、脈を確認した。まだ生きている。
急いで顔色を見る。青ざめており、辛いように微かに顔を歪めている。
そういえば顔を始めて確認した。
女の子だった。
まぁ長い髪の時点で大体気付いてはいたのだが。
体は冷えているが、まだ息はある。口元から黒い吐息が漏れていることから、狂竜症と推察する。
早合点かもしれないが、遅いよりは断然マシだろう。
では何故狂竜症なのか?
「狂竜症患者・・・?」
噂に聞いたことがある。狂竜症には未だに有効な特効薬がないため、民間人が治療するにはドンドルマなどの大都市に行くしかないのだそうだ。
その航路には孤島海域も含まれているらしいが、そのときに襲われたのだろう。
とにかく、急いでキャンプに連れていかないといけない。
「アオ、アカ!急いで戻るぞ!道中の安全確保を頼む!」
「ニャ?何かあったニャ?」
「人っぽいやつ!分からんけど連れて帰る!」
アカはふっと溜め息をつくと、ジトリとした目を向けた。
「何で分からないものをわざわざ・・・まぁ、お父さんに渡せばなんとかなるんニャね」
「理由くらい後から付けりゃいいんだ!うれ、帰るぞ!」
「こうなったら聞かないニャ・・・分かったニャ、エリア3、1、2経由で行くニャ」
「おうよ!」
この物分かりのよさは普通のパーティではあり得ない。
本当に俺たちだけでよかった。
胴防具を脱いで軽く裂き、腰にくくりつける。インナーだけは少々肌寒い。傷口がペリっと鳴る。
「・・・づっ・・・」
やはり数日間は狩りに行けそうにない。
武器の調整も含めて、療養が必用なのは確実だった。
おんぶは流石に背中が死ぬので小脇に担ぐ。体が強ばっているので、袖口を結んで引っ掻けるとかなり移動が楽になるだろう。
ウチケシの実を一粒取りだし、口の中に押し込んでやる。咀嚼はしていないが、口に含んでいるだけでも変わるはずだ。
すでにアオとアカは道中の安全確認に行っているはずだ。今、このエリアには俺とこいつだけだ。
「・・・・・・ぅぁっ」
「もう少し我慢してくれよ、寝かせてやるからな」
言葉が伝わっているかは分からないが、答えずにはいられなかった。
ずん。
背後に圧倒的な存在感を放つ物体が発生した。
一瞬で顔がひきつったのが分かった。
軋む背中を気にする余裕もなく、全力で駆け出した。
エリア端で振り向き、今度こそ、その異物を視認する。
視線が交錯する。
紫と赤と緑と黒を重ね連ねた色のモンスター。巨大な質量に、息が詰まる。
恐怖を具現化したら、きっとあんな姿になるんだろう。
轟いた咆哮は、悪魔の慟哭と言われてもなんら違和感はなかった。
「いつか、相手してやっかんな!!それまで狩られるんじゃねーぞ!!このクソゴーヤがっ!!」
震え声で叫んだ。
こんな風に罵倒でもして気力を保たないとその場に崩れ折れそうな程の圧力だった。
本当に狩ることになったら、十中八九無理だろう。
それでも。
シロを狩りやがってくれた相手に挑まない理由はなかった。
突き刺さる視線を受けながら俺はエリア7を後にした。
憎いあの顔は忘れない。
無事にエリア1、3を通り抜け、ベースキャンプにたどり着いた。吐きそう。
「ニャ。思いの外早かったニャ」「お帰りニャー」
「・・・さっきは俺のこと心配してくれたんじゃなかったか・・・迎えに来てくれよ」
「アイルーは薄情なのニャ」「自然界は残酷ニャ」
「ちょっといい雰囲気だったさっきが台無しだよ」
急いで寝かしつけ、予備のインナーを荷物から引っ張り出して着せる。重ねてウチケシの実をかじらせる。噛んではくれなかったが、さっきよりは抵抗なく口の中に入れられた。
ウチケシの実の在庫はもう少し余裕がある。念のため調達を依頼したいが、さっきエリア中から探しだしたと言っていたか。厳しいだろう。
体に目立った外傷はない。所々擦過傷があるくらい・・・というか、こびりついていた肉を削いだときに、一緒に剥がれたところばかりだった。
削いだ部分はひとつ残らずちぎれるように、傷痕になっていた。
「まさか本当に・・・?」
「カンナの話でも思い出したかニャ?」「もしも本当だったらすごいニャー」
傷口に薬草と包帯を巻く作業に一段落ついた俺たちは、馬鹿話を始めた。
ベッドに座った一人と二匹。
平和だ。
「まぁでも、今回はアロンの男性機能を疑うニャ。薄めの防具であるブナハシリーズでも分からないレベルにしか反応しないのかニャ」
「緊急事態に反応するのは下じゃなくていい」
ブナハシリーズって薄いんだよな・・・そろそろ別のシリーズも本格的に作らないといけないか。
・・・別に隠したい訳じゃないよ?
狩り目的だよ?
「どうだかニャ。テントを張るのはキャンプだけにするニャ」
「だから張ってねえ!」
「ニャー」「ニャー」
「嫌な方を選ばせてやる。属性解放突きがいいか?切り上げがいいか?」
「地雷ってやつだニャー」「ユータって言われやすいタイプニャー」
「・・・こいつらっ・・・!」
本っ当に殴りたくなる笑顔と鳴き声だ。
こんな馬鹿話を気兼ねなく出来るくらいには、俺もこいつらも落ち着いたようだった。
あのぺしゃんこに縮れたシロを見たときには、こいつらの毛も僅かに逆立っていたしな。
僅かに逆立つ時ほど、こいつらの感情に衝撃が走ったときだからだ。
「ま、テント張る元気がないくらいに疲れてるってことだニャ。ほれ、隣で寝てくるニャ」「自分の疲れって案外自分じゃ気づけないものだニャ」
「んあ?」
さっき寝たんだし、そこまで疲れているはずはないんだが・・・と思い、力を入れてみたが、座り込んだ体はピクリともしなかった。
「あー・・・」
なるほど、確かに疲れているようだ。
体を倒すと、もうしばらくは起こしたくなくなるくらいの倦怠感が体を襲った。柔らかいベッドは、背中の傷を気遣うように、俺たちを優しく包み込んでくれた。
「クーラー湿布とホット湿布、どちらが好みかニャ?」
「ホットで頼む。なんとなく、そんな気分だ」
念のために後悔はない。湿布さえも持ってきてこそ狩人とカンナに言ったが、容赦なく一蹴された。
というか、あいつは湿布なんていらないくらいにサクッと狩りを終わらせるからな・・・ナルガ亜種10分という伝説があるらしい。
お前こそが人竜じゃねーのか。
「ほぁあ・・・」
「気持ち悪いニャ。変な声を出すニャ」
「ごめんなさい」
「感情がこもってないニャ」
湿布の気持ちよさが分からんとは、アイルーとは可哀想なものだ。
張るたびにその部位が禿げるし、しょうがないのか。
張られてリラックスするうちに眠くなってきた。
「すまん、やっぱり寝ていいか?」
「だからさっさと寝ろと何度言わせるニャ。マッサージもしてやるからニャ」「おやすみニャー」
了解を得ると、一気に瞼が重くなった。
さっき寝ていたとはいえ、あれはただ横にされていただけかもしれない。
この子についても、また考えないとな。
そんなことを考えながら俺は意識の海底遺跡に沈みこんだ。
夕焼けが眠る妨げになるのも気にならなかった。
走りましたね・・・ゴーヤって呼び方に過剰反応する人はTri で散々な目にあった人だとか、先輩が言っていました。もしくは極限狩りの4Gさん、とも。
『世界さん』というのもあったそうですね・・・やってみたかったです。
怒り狂う極限獰猛世界さん奇行種。
出てくれませんかねぇ。
あと、今回はクエスト名ではなく、BGM から取らせてもらいました。トラウマになった方も少なくないのではないでしょうか・・・私はしばらく孤島に行きたくない時期がありました。
こんな風な題名も、書くかもしれません・・・失踪しない限り。
それでは、あれば、また次回。
ありがとうございました!
評価もよろしくです!