本作、初投稿です
題材は、スマートフォンアプリのバトルガールハイスクール
通称バトガの小説を探してみるも、なかなか少ないみたいで……。なら私が書いてみようということで書き出した次第でございます
まだ執筆初心者故、至らぬ点多々あるとは思いますが、頑張って書いていくのでよろしくお願いいたします。
それは、何度も見た夢。
僕は教師。僕が担任するのは十五人の少女たち。
女子高であるその学校唯一の男の教師に、少女たちは戸惑い警戒する。それでも真剣に向き合うことで、徐々に打ち解けていく。そして、ときには笑い、ときに泣き。僕たちはかけがえのない日々を重ねていく。
それは、幸せな光景。ずっとこのまま続いていけばいいと僕は願う。
でも。
同時にもう見せないでくれと胸をかきむしる思いで叫ぶ。
どうかこのまま終わってくれ。どうかこのまま幸せな日々のまま終わらせてくれ。
ご都合主義のアニメや映画よろしく、ハッピーエンドで終わらせてくれと、そう叫ぶ。
しかし、それはかなわない。いつもの夢はいつも通り、いつもの終わりへとコマを送る。
彼女たちの死という最悪の幕引きへ。
桜が風に乗ってゆらゆらと舞い落ちる。
空は晴天。どこまでも澄み渡る空は、曇りなくすがすがしいが、同時につかみどころのなく不安な僕の気持ちを表しているようだった。
目の前の校舎からは、巨大な樹がそんな空を貫かんばかりに高くそびえ立っている。
その樹は、高さからも普通の木ではない。校舎に覆いかぶさるように青々とした葉を広げているが、しかし影を落とすことはなく、むしろ優しい光に満ちているように見える。そんなどこか神秘的な雰囲気から、ここに生きる人たちを見守る守り神のように見えた。
いつから、この木を眺めていたのだろうか。僕は、意を決して校門の敷居をまたいだ。それは、今までの生活との決別を意、己が目的のためにすべてを捨てる覚悟を表していた。
今日、僕はこの神樹ヶ峰女学園の教師として赴任する。
警備に身分証を見せ、いくつかの確認を終えるとようやく中に入ることができた。
ここは女学園と名にあるように、生徒は女子しかいない。さすがに警備は男性がほとんどだが、教師陣も今回赴任することとなる僕を除いては全員女性で構成されているそうだ。つまり、男子禁制の花園ということだ。
僕も、ここでしか果たすことのできない目的がなければ、この学園に入ることはなかっただろう。そう言った意味でもこの学園に足を踏み入れるということは緊張する。
大きく手を広げ、深呼吸一つ。
優しい光を放つ大木のおかげか空気が澄んでおり、心が洗われるようだった。
「あの、ここは男の人は立ち入り禁止ですよ?」
「え?」
突然声をかけられ、不意を突かれた僕は、素っ頓狂な声をあげてしまった。
まだ空は白んでいる。吐く息は白く、肌寒い。一般生徒が登校してくる時間より早い時間を選んできたつもりだったが、どうやらずいぶんと早起きな子がいたようだ。
声の主は、ピンクのシュシュのワンポイントが目を引く、赤毛のショートヘアの少女だった。
彼女と目が合ったとき、一瞬、時が止まった気がした。
初対面なのに、すでに何回もあったことのあるような錯覚。
見たことなどないはずなのに、僕は知っていた。彼女の怒った顔も、泣いた顔も、笑顔も。全部見たことがあった。一年前、一週間前、昨日。いや、今朝にも見た気がする。
「き、君は……、夢の」
思わずつぶやく。そうだ、夢だ。確か、夢の中で僕の生徒だった少女だ。
僕の担任していた十五人の少女の中の一人。名前は……。
そんな風に夢の記憶を掘り起こそうとしている間に、少女はすぐ目の前まで来ていた。
彼女は、僕の方へ物怖じせずに向かってくると、子供を叱るときのような態度で声をかけてきた。
「ちょっと、聞いてます? 勝手に入ってきちゃだめですよ」
「え? ……ああ、いや。勝手に入ってきたわけじゃないんだ。実は……」
「実は、なんですか? もしかして、実は女なんだっていうんですか? いくらなんでもあなたを女の人とは間違いませんよ」
「だから違うんだって。ここが普通は男子禁制だっていうこともわかってる――」
「男子禁制だってわかってて入ってきたなんて……。もしかして、不審者さんなんですか? 不審者さんなんですね」
「ちょっと落ち着いて。僕は不審者なんかじゃ……」
「わわ、すみません。警備員さんこっちです! ここに不審者さんがいるんです! 助けてください!!」
「ちょっ。なに言ってるの!?」
「わーわーわー。やめて、たーすーけーてー」
赴任初日。いろんな決意とか心構えとか様々な準備をしてきた努力してきた。
それが僕の説明を全く聞かずに暴走する少女のおかげで一日にして無に帰した。
僕は、騒ぎを聞きつけた警備員に取り押さえられ、本日二度目の身分証明をする羽目になった。
「ごめんなさい。まさか、新任の先生だったなんて。ははは、ははは……」
「ははは、じゃないよ。僕の説明も聞かずに騒ぎ立てるんだから。」
「ははは、は、は……。ごめんなさい」
「全く、なんだかんだ普通に生徒の登校時間になってるし、なんか周りの生徒たちから白い目で見られてるし」
「返す言葉もありません」
二度目の身分証明の後、事情聴取で一時間くらい消費してしまい、結局早く来た意味がなくなってしまった。いろいろ準備しようだとか、この学園について調べようだとか考えていたのだけど。しかも、もはや尋問のような事情聴取を受けたせいで疲労困憊。これからが本番だというのに、もう今日一日やっていけるかどうかも不安になっていた。そんな不安の原因を作った張本人である彼女も、最初は親切で声をかけてきてくれたことは理解していたから、責めるわけにもいかず難儀していた。
「まあ、気にしなくていいよ。突然男の人が入ってきて驚いたんだろうし」
「ごめんなさい。お詫びのしるしに、わ、私にできることがあれば何でもしますよ」
「何でもって……。そうは言われてもなぁ」
何でもといっても、本当に何でもというわけにはいかない。彼女にできる範囲ってということもある。でも、ここで頼まないというのは彼女が納得してくれなさそうだ。なんでまた頭を悩ませてるんだと思いながらも適当なことを頼んで満足してもらうことにし阿多
「じゃあ、ここにくるの初めてだから、職員室まで道案内してよ」
「そうですね。わっかりました。どんと任せておいてください。ばっちり連れて行っちゃいますよ」
もちろん職員室までの道くらい、登校初日の僕にもわかっていた。当初は、誰に頼らずとも一人で向かうつもりだったのだから。でも、僕がした頼みに彼女は満足してくれたみたいだ。自信満々の笑みとともに、とんと胸をたたいた。
赤毛の少女につれられて、職員用玄関へ向かう。教師などの職員は生徒とは違う入り口から校舎へ入ることになっている。まあ、大体どの学校もそうなっているだろうか。
職員室までの道案内を頼んだものの、実際のところ案内は必要なかった。広いとはいえそこまで入り組んだ場所ではない。それになぜか、初めて来たはずの場所が、何度も来ていたかのようにわかる。それでも、なぜみきに案内を頼んだかといえば、こうしなければ彼女が納得してくれないという確信があったからだ。
職員玄関へ向かう間、彼女はこの学園について話してくれた。学園敷地内の中心からそびえる大木。この学園のシンボルとされているそれは神樹と呼ばれ、普通ではありえない高さと神秘的な雰囲気に相まって守り神とされている。神樹の元にこの学園が創設された理由には、神樹の研究および世話を行うためという側面もあるそうだ。また、この神樹ヶ峰女学園は、中高一貫であり校舎も隣接しているため交流が多い。中でも星守クラスという、神樹とともに守り神として語られる巫女を集めたクラスでは、本来一緒になることのない中学生と高校生が在籍しているそうだ。もちろんこれらの情報も、パンフレットを見ればわかる程度の知識だ。
そんな既知の情報にうなづいていたが、ふと彼女について疑問が浮かんだ。
そもそもなんで、生徒なんてほとんどいないくらい早い時間から校門付近にいたのだろうか。
「そういえば、君はなんで――」
「みきです」
「え?」
「私の名前。星月みきっていうんです。先生なら、今後お世話になることもあると思うので、よろしくお願いしますね」
「ああ、そっか。じゃあみき?」
「……ええと。いきなり呼び捨てなんですね……」
面食らったような顔をするみきを見て、自分の失言に気づいた。僕の記憶でも、ここまで夢を現実と混同したことはない。それでも今まで呼び慣れていた名前のごとく、自然と口から出てしまっていた。
「ああごめん。……星月さん」
「別にいいですけど。はい、何ですか?」
「君はあんな早い時間にあんなところに居たんだ?」
「人を待ってたんです。早く会って、学校を案内するように頼まれていたんですよ」
「そうだったのか、なら悪いことしたな。いいよ。自分でちゃんと行けるし」
「いえ。これは、私が先生に迷惑をかけてしまったことへのお詫びなんですから。先生は気にせずついてきてください」
「そ、そうか」
人。誰だろう?
今日は入学式だから、姉妹か親戚を待っていたのかもしれない。
見ず知らずの僕に道案内をしてくれることからも、みきは結構面倒見のいい性格のようだ。姉妹というのが濃厚かもしれない。でも、その性格のせいで自ら大変な事態に首を突っ込みそうで、彼女の先が思いやられた。
「ここが職員玄関です。ここで、室内履きと履き替えてくださいね」
「うん、ありがとう」
みきに促され、履物を変えた。
玄関から上がってすぐ目の前が職員室だ。その職員室の入り口には、少し童顔な女性が待ち構えていた。彼女は、僕を見つけると少し怒った様子で向かってきた。
「あなたが今日赴任する先生ですね。どうしたんですか? 少し遅かったですね」
「ええとすみません。ちょっとアクシデントがありまして……」
「まあ、初日ですし大目に見ましょう。私は八雲樹(やくもいつき)です。みきさん。先生を連れてきてくれたんですね」
「はい。さっき、ちょっと迷惑をかけてしまったので、そのお詫びも兼ねまして……。大丈夫ですよ。ちゃんと頼まれたことはやりますから」
みきは、それだけ言うと慌ただしく靴を履き替えるとかけて行ってしまった。
「ちょっと、みきさん? どこへ……。行ってしまいましたね」
「ええと。大丈夫ですか?」
「ええ。まあ、そのうち戻ってくるでしょう。それよりも、来る時間が遅かったので、少し急いであなたの業務について説明しますね」
「はい。すみません」
「ではすぐにラボへ向かいましょう。説明を終えたらそこで試験も行いますから、そのつもりでお願いします」
「……はい」
八雲先生がすたすたと歩いていくのを追いかけた。
着いたところは、神樹の根元。その大木を中心にして建てられた施設だった。一見、花や植物を育てるための温室のようにも見える。実際入ってすぐはただの温室だった。しかし、すぐにそんな生易しいところではないとわかった。
園芸部が活動を行っていたであろう室内菜園や花壇を通り抜け、床に描かれた円形上の装飾の上へ促された。八雲先生は、僕がサークル内に入ったことを確認をすると、抱えていたタブレット端末で何やら操作しだした。
次の瞬間、コマが変わるかのように景色が一気に変わった。
まず視界に飛び込んできたのは、壁一面くらいの大きさのモニター。画面は一面が紫色に埋め尽くされており、何が映っているのかわからない。
「では先生、下に降りましょう。足元には気を付けてくださいね」
「は、はい」
八雲先生の注意を聞いて、自分が展望デッキのように室内を見下ろせる高い位置にいることに気が付いた。
八雲先生の注意通り、足元には十部注意しながら階段を下りると、彼女の後ろについて行った。
デッキの下にはいくつものディスプレイが並んだテーブルが規則正しく並んでいた。
そこはロケットや人工衛星などに指示を送るための管制室のような場所だったが、ディスプレイに向かっている人も、インカムで指示を送っている人もいない。というか、人の姿すら見受けられなかった。
「では、適当にメインモニターが見やすい位置に座ってください。これから、大まかの業務の説明と試験の説明を行います」
「あ、はい。お願いします」
「ではまず、このモニターに映っているものが何かわかりますか?」
八雲先生は、レーザーポインターでモニターを指して僕に問う。
「いえ、その……。一面紫で何が何だか……。なっ――」
この部屋に来てから、モニターに移されて今まで、モニターに移されたものの意味を理解できていなかった。いや、実際は気づいていたのかもしれない。僕がここに来た意味、僕の役目を確認するための説明であることから考えれば、容易に推測できたことだ。
しかし、どこか楽観していたのかもしれない。僕の考えは甘かったのかもしれない。
霧が風で流動しているのか時折薄くなり、紫のベールに包まれたその向こうを露わにした。
そこに現れたのは荒廃した街並み。そして……
「イロウス……」
僕は、人類を地球外へと追いやった絶望の名をこぼしていた。
説明を受け終え、僕は適性試験のための準備のため、この施設に併設されているラボへ向かった。ラボでは、これから僕が所属する組織が使命を果たすための道具を開発しているとのことだ。
そこはおおよそラボには似つかわしくないところだった。中心にはモニタールームで見えたのと同じく神樹の幹が貫いていており、神樹が放つ神秘的な光によって照らされていた。
神樹の研究を行うためか、幹を囲むように丸い机やモニターが並んでいる。木を囲む機材の山を見ると、人類の命運を背負った施設というよりは、ちょっといい植物研究室といった感じに見えた。
モニターには、温度、湿度などの室内状況が表示されているが、その中には、人間のバイタルのように波打つ線もあった。まるで、神樹の脈でも測っているみたいだ。
未来的な光に満ちたガラスケースがいくつか並んでいた。中は何かの液体で満たされており、何かの実験の試験管のようだ。中に何が入っているのか覗き込んでみたが、どうにもスモークがかかったようで確認することはできない。隠されていると妙に気になってしまい、手で目の周りを覆ってさらに覗き込む。
「やあ、来たか」
「わっ――」
後ろから唐突に肩をたたかれ、ビクつきながら振り返る。視野を狭めていたから、気づかなかったのか。勢いあまって、先ほどまで覗いていたガラスケースに後頭部をぶつけてしまった。
「おいおい。そんなに驚くことはないだろう」
「……ええと、誰でしょうか」
一切の気配を感じさせずに現れたのは、白衣に身を包んだ女性だった。僕に親し気に迫るウェーブのかかったブロンドの女性は、どこかで会った気もするが、初対面のはずだった。しかし彼女は、僕の問を聞くと眉をひそめた。
「誰だって?」
「いや、すみません。どこかで会ったことがあるような気もしてるんですけど、思い出せなくって」
「……」
「……ええと」
「おやおや。これから教師になろうというものが、美人にあったとたんにナンパかい?」
「い、いや。そんなつもりでは……」
てかこの人、今自分のこと美人ていったか? 確かに美人ではあると思うけど。
「なに、軽い冗談だよ。初めまして。私は御剣風蘭だ。このラボの主任というやつだ。よろしく頼む」
「は、はい。よろしくお願いします」
「君は今回、適性試験を受けるだね。そこで、私から君にプレゼントがある。ついてきてくれ」
そういって彼女、は白衣をはためかせてラボの奥へ進んでいった。僕は、遅れて彼女の後を追う。
僕が連れていかれたのは、入った瞬間目を引かれた神樹の周りを囲むように配置されたデスクだった。改めてまで見ると、神樹は神秘的だし圧倒される。手を伸ばせば触れられてしまいそうな距離に間近で接近していることに少しの興奮といくらかの畏れを抱いていた。実際は、神樹との間はガラスのようなディスプレイによって隔てられているため、直接触れることはできない。
神と呼ばれる大木を目の前にし親近感を覚えつつも、同時に畏怖を感じていた。
僕が神樹に気圧されていると、いつの間にやら風蘭は、バックパックのようなものもってきていた。
「さあ、これが君へのプレゼント。御剣印の星守クラス担任入門セットだ」
「なんですか? その入学セットみたいなのは」
「君もこれから先生になるんだから、同じようなものだろう」
「まあ、そうですけど」
「それじゃあ、ざっと説明してしまおうか」
風蘭は、テーブル上のものをどかすと、そこにバックパックを置いた。
中から取り出されたのは、インカム、小型のタブレット、救急キット。そして、何かの木の実のようなものだった。
「まずこのインカムだが、これは指令室や、星守の生徒たちと無線を使って会話することができる。指令室との通信は、瘴気が濃くなるとつながりにくくなるから気を付けてほしいが、半径一キロくらいだったら問題なく話すことができる」
「これを耳につければいいんですか?」
「そうだ。マイクがついてないから心配かもしれないが、特定の音声を判別して拾うようになっているから、普通に話すだけできちんと遠くの人とも会話ができる」
僕は渡されたインカムを耳につける。つけても全く気にならないほど付け心地がよく、まるで僕に合わせて作られているかのようだった。
「次はこの端末だ。この中にはイロウスなど様々な情報が入ってる。関係者以外に見せるなよ? それとこれはお守りだ」
風蘭が指しているのは、バックパックに入っていた木の実のようなものだ。
「想像はつくかもしれないが、これは神樹の木の実だ。神樹には、結界を張る力がある。結界は、イロウスの侵攻を阻止し、瘴気を防いでくれる。これは木の実だから、イロウスを食い止めるだけの強力な結界は張れない。だが、範囲は小さいが瘴気を遮断する結界を張ることは可能だ。あちらへ行くときは、肌身離さず持っていてくれ」
「さて、これで簡単な説明は異常だ。何か疑問があったら、大概は端末に載っているだろう。それでもわからなければ、私たちにそのインカムで気兼ねなく聞いてくれ」
「わかりました」
八雲の説明を受け、風蘭からはいくつかの道具を渡され、準備が進んでいくにつれて裏腹に不安が募る。そんな僕の心境が伝わったのか、風蘭は突然、僕の肩に手を回してきた。腕に横から神樹の実とは比べ物にならないくらい大きくて柔らかい果実が当たる。
「君は合格するよ」
「そ、そうだったらいいですけど……」
「いや、もう決まっているんだ。気楽に行きたまえ」
「そうなったらほんとにうれしいですけど、どうしてそこまで言えるんですか?」
「ん? 何、簡単だよ」
首をかしげる僕に対し、風蘭はにやりと笑った。
「私の発明品を使って、試験するんだろ? そら、合格するだろう。いや、してくれないと困る。信用問題にかかわるからな」
「あ、はあ。そうですか……」
気遣ってくれているのかと思ったら、結局は自分の発明品のことか。
少し呆れつつも、気持ちが軽くなった気がした。
「そうだ、これをやろう」
「これは、時計ですか?」
時計だった。
「神授の実みたいに瘴気を払う機能はないが、お守りだと思ってくれ。まあ、失敗してもコンテニューすれば何とかなるさ」
「そんな、無責任なこと言って。まあ、ありがたくもらっておきますよ」
「ああ。困ったことがあったら、急がず焦らず私の発明品を頼れ。どうせ、君は直接的な加勢はできないのだからな」
「わかってはいますけど、どういうつもりですか?」
「なに。戦えないなら、戦えないなりにやりようはある。戦い方も人それぞれということだよ」
風蘭は、僕を研究室の出口まで誘導すると、僕の背中を押した。
「まあ、君を星守クラスの先生に推したのは私なんだ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ。私が見込んだんだ。自信を持て。よい報告を待っているよ」
「……はい。とりあえずありがとうございました」
まだ、不安だ。でも、研究室に入る前とは違って少しだけわいた自信を胸に、僕は指令室へ戻った。
「……では、説明も終えたところで、あなたの適性試験を始めましょう」
「はい」
「では、適性試験に協力してくれる生徒を紹介しましょう。では、来てください」
八雲先生が指す方を見ると、右肩から髪を垂らした穏やかそうな子とショートカットで活発そうな子が入ってきた。
「成海遥香(なるみはるか)さんと若葉昴(わかばすばる)さんと……みきさんは?」
「ええと、みきはちょっと……」
「遅れてすみませんでした!」
二人の後から遅れて生徒が入ってきた。
ピンクのシュシュのワンポイントが目を引く……、ってどこかで見たことがあるような……。
「それより八雲先生。ずっと待ってましたけど、誰も来ませんでしたよ。ってあれ? あの時の先生。なんでこんなところに……」
「何を言ってるんですか? みきさんが先生を連れてきてくれたじゃない」
「え? じゃあ、先生が……?」
まだ、理解できないといった表情で僕を見る。
僕は、なんとなく状況を察すると頭をかきながらぎこちなく笑った。
「ええと、そうみたい」
「ええぇぇぇええええええええええええ!!」
ラボ内にみきの驚嘆の声が響いた。
僕は、事前の説明の際に誰かが迎えに来てくれるなどということは聞いていなかった。一方、みきのほうも先生を迎えに行くということしか聞かずに出てきてしまったため、このような入れ違いが起きてしまったようだ。
「まさか、先生が私たちの担任だったなんて」
「まだ、完全に決まったわけではないけどね。これから行う試験っていうのは、そのための試験なんだよ」
「そうだったんですか。それで私たち呼ばれたんですね」
みきは、自分がここに呼ばれた意味にも気付いていなかったみたいだ。
「もうみき。八雲先生から連絡あったでしょ。聞いてなかったの?」
「そうだっけ昴ちゃん。ははは……」
「もう、みきはしょうがないわね」
「遥香ちゃんまで。……言ってたかな?」
二人に言われても思い出せない様子のみき。そしてふふふと笑いがこぼれた。彼女たちは、同学年だということだし仲がいいようだ。
試験は、僕の資質を試すものではあるが、合否は僕だけの能力で決まるものではなく、彼女たちのチームワークも大きく関係してくる。仲がいいということに越したことはない。
「試験には、星月さんたちの協力が必要になるから、よろしくね」
「はい、もちろんです」
「任せといてください」
「一緒に頑張りましょう」
突然現れた初対面の男に戸惑うかとも懸念していたけど、態度も友好的だし不安は少し消えた。
「先生、あなたたち、準備はできましたか? 準備ができましたら、そちらのサークル内に入ってください」
八雲先生は、施設の中心に近い場所に配置された円形のステージのような場所へ促した。この部屋に来た時とは違う装置だ。どうやら、とうとう試験の時が来たみたいだ。荒廃した地球に降り立つときが。
みきたち星守は、今までも地球奪還のために何度かこの装置を使ったのだろう。慣れた様子でサークル内に入っていく。それに倣い、僕もサークル内へ入った。
「では先生。こちらの三人と一緒に装置で地球に転送します。場所は渋谷。何かありましたら、インカムで遠慮なく聞いてください。最後に、試験ということもありますので、瘴気の薄い場所を選びましたが、油断しないように注意して頑張ってください。」
「はい、頑張ります。みんな、頼むよ」
『はい!』
「それでは転送を開始します」
八雲先生がテーブルに表示されたボタンを押す。その瞬間、真っ白な光に包まれる。その瞬間、僕らのいるコロニーから、地球への転送が開始された。
五年前、人類は、イロウスと呼ばれる正体不明の脅威によって地球からの撤退を余儀なくされた。地球をイロウスの放つ瘴気が覆い尽くしたことにより、人類が生活できない環境に変化したのだ。宇宙へ逃げ延びた人類は、コロニー、月、火星にそれぞれ分かれて生活をしているが、物資の不足などにより緩やかに滅亡へと向かっている。
そんな現在の唯一の希望は、代々神樹によって選ばれし巫女、星守の少女たちだ。まだ幼い彼女たちを指導し、地球を開放すべくともに戦うことこそ僕に与えられた使命だ。
これから始まるのは、人類の故郷、地球を奪還するための戦い。僕たちの生き残りをかけた戦いだ。
何とか世界観が伝わるよう書いてるつもりですがどうでしょうか。
とは言え、ここはまだ序盤も序盤。まだ本題まで全然到達していないので、まずはそこまで頑張りたいと思います。