バトルガールハイスクール Re:road   作:直田幸村

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四回目の投稿です

今回は、説明がほとんどになってしまいましたが、お楽しみください


第3章

 イロウスの大群に囲まれるという最大級のピピンチをどうにか乗り越えた僕ら。しかし、僕らは、まだ目的を達してはいなかった。

「大型のイロウスは、常に小型のイロウスを数体つれている。大型のイロウスを倒さない限り瘴気は晴れず、瘴気やイロウスを阻むための結界を張ることもできない、か」

「はい。大型のイロウスだけでも倒せれば結界を張れるという言い方もできますが、逆に言えばいくら小型を倒しても大型を倒さない限り意味はない。ということですね」

「成海。ズバズバ言ってくるね。まあ、実際その通りなんだけど」

 そして、早くも息詰まっていた。

 さっきやっとの思いで逃れてきた小型イロウスの数を考えると、大型イロウスも複数存在していることが考えられる。小型のイロウスでも、危ないところまで追いつめられたのに、大型まで複数いるとなると、正攻法では

 太刀打ちできないだろう。

 そこで、まずは状況を整理するために作戦会議を行っていた。ちなみにこんな時こそ頼りたい八雲たち指令室へは、予想外に複数出現した大型イロウスの発する瘴気によって通信障害を起こしていた。

 そこで現在頼れるのは、今までイロウスと戦ってきたみきたちと、風蘭から渡されたタブレットのみだ。

 そのうち頼れる仮生徒には、現実的な分析をいただき、残る希望はタブレットのみとなっていた。

「そういえば、それぞれ必殺技みたいのが使えるみたいだけど、それってどんなものなんだ?」

 星衣に付いての説明の中に見つけた機能。星衣に蓄えられたエネルギーと星守自身がもつエネルギーを用いて放つ、星衣固有の必殺技のようだ。

 それは、星衣のエネルギーを使用するため、使用後は著しく星衣の耐久性が落ちてしまうという諸刃の剣。しかし、個々に威力には差があるもののその破壊力は絶大。使用者によっては、大型のイロウスをも一撃で倒してしまえるほどのようだ

 この威力や攻撃範囲によっては、この状況を大きく変えられるかもしれないという可能性を感じていた。

「ああ、それですね」

 僕の問いに三人はそれぞれ違った反応を見せた。

「あたしのはすごいですよ。一撃で大型だってしとめる自信あります」

 彼女たちの中で一番攻撃力の高そうな昴は、自信満々に大型の一発KO宣言をする。

「私たちがスキルと呼んでいるものですね。あれは、攻撃以外にも星衣によって異なった効果を得ることができますが、・・・・・・あまり使いたくないですね。隙は大きいですし、使用後は動きが鈍くなりますし。すごく体力を使ってしまうので、その一撃で勝負が決するくらいの場面でなければ、使用することは現実的ではないです」

 一方遥香は、先ほどの冷静な指摘同様希望的観測を一切交えない意見を述べる。

「スキルですか? 私のはその・・・・・・、かっこいいですよ。あと・・・・・・すごいですよ。・・・・・・え、威力ですか? とにかくすごいですよ」

 最後のみきは要領を得ないけど、自信がないと言うことだけはすごく伝わってきた。

「そうか。そうなると、撃てる回数も限られるのか」

「そうですね。エネルギー効率などにも大きく影響されるので、人によって使える回数は違います。私やみきは、せいぜい一回。昴は、私たちより体力があるので二回というところでしょうか。でも、この数字もその日のコンディションで変わってくるので過信はできません」

 

「先生。私、良い考えがありますよ」

 打開策が見つからず、堂々巡りしていた思考の間に、みきの明るい声が割り込んできた。

「みき。何? 良い考えって」

「ええとですね。今一番あのイロウスに対抗できる力を持っているのは昴ちゃんですよね」

「そうだね。武器的にも相性がいいみたいだし」

「ですから、私がおとりになって小型のイロウスを引きつけている間に、昴ちゃんたちが大型のイロウスを倒してくれれば良いと思うんですよ。ね、良いかんがーー」

「ーーみきはだめよ!」

 自信満々なみきの主張を遮るように、反論したのは遥香だった。

「なんで、遥香ちゃん? 大型を倒せばそれで終わりなんだから、それでいいでーー」

「あなたはさっき、怪我したのを忘れたの? それに、大型を倒したら終わりだって言うけど、倒したあと逃げることとか考えてるの?」

「うっ・・・・・・。ええと」

「結界を張れたとしても、中にいるイロウスがすぐにいなくなる訳じゃないのよ。大量のイロウスに囲まれた状態で、どうしようって言うの?」

「それは、・・・・・・まあ、何とかなるって」

「真剣に考えて。みきが頑張り屋なのは知ってるけど無茶しすぎよ。さっきだって、結果的に何とかなったけど一歩間違えたら・・・・・・」

「それは、・・・・・・ごめんね。心配かけて」

 出会ったのは、ついさっき。そんな短い期間でしかないけど。その短い時間の中で、彼女たちのことが少しわかったような気がする。

 みきは、遥香も言っていたけど明るい性格で頑張り屋。いつも笑っていて、見方によってはへらへらしていると思われることもあるかもしれないが、決めたことは最後までやり抜こうとする根性がある。しかし、その性格のせいか少々を無理をしたり無謀な行動をとってしまうことがあるようだ。その無謀な行動によって命を救われた手前言いにくいが、周りとしては心配が絶えないだろう。そんなみきを涙目になりながら諭す遥香は、慎重で冷静でありながら、心配性のようだ。みんなが怪我をするたびに、小さな傷に対しても少々大げさなくらいに反応していた。

 それを見れば、昴が一番冷静なのかもしれない。彼女は、二人と比べて体力があるが、その分自分にできることをわかっているように見える。

 最初に思った印象と、少しの間でも大きく変わってきた気がする。

 今まで知らなかったこと。こんな短時間でも、多くのことを知れた気がする。知らなかったことを知れば、それだけチームワークもよくなるだろうし、指示の出し方にも応用できる時が来るだろう。

 そして何より、彼女たちの弱点となることは早めに知っておかなければならないと感じた。

 特に、みきの無謀さは、目に余るものがあると僕も感じていた。

「確かに、みきが言うとおり、誰かが引きつけておければ楽に大型を倒せるかも知れない。でも、それはもっと人がいて初めてできる方法だよ。今まで君たちがどう戦ってきたかはわからないけど、僕がいる間は誰かが犠牲になるような作戦は許さないからな」

「・・・・・・はい。ごめんなさい」

「わかればいいよ。それより、作戦を考えよう。全員がなるべく安全に戦える方法をね」

 みきは、反省したように目に見えてしょんぼりしている。でも、それは仕方のないことだ。どんなに良い作戦だって何だって、誰かが犠牲になって得た勝利なんて意味がない。残されたものの苦しみを僕は、五年前から味わってきているんだから。

「以外ですね」

 ふと、誰かの視線を感じた。その視線の方を見ると、興味深そうに僕を見つめる遥香と目があった。

「何が意外なの?」

「いえ、先生がそんなことを言うとは思わなかったもので」

「え、そんなに冷たい人に見えたかな。ぼく」

「別にそういうことではないんです。ただ、ほかの先生はそんなこと言ってくれなかったので、なんか嬉かったです」

 そうつぶやく遥香の顔は、すこし悲しそうな顔をしていた。

 また一つ、問いたださなきゃいけないことが増えたなと思いながら、本当に勝つための方法を思案する。

 安全なだけではだめだ。奪還できなければ、来た意味がなくなる。ただの骨折り損なんてことにしちゃいけないんだ。

 さっきまでの話で、大型イロウスをしとめるための方法はわかった。問題は、王手までの道筋だ。依然として、小型イロウスの大群を交わすための手だてが見つかっていなかった。

 

 と、そういえばさっきも知らなかったことを聞いた気がした。

「そういえば、さっきの橋を壊したあれ。あれも相当すごかったけど、あれがスキルってわけじゃないよね?」

「ええ、もちろん。危なかったとはいえ、小型になんか使ってられませんからね」

「それじゃあ、あれはいったい何だったの?」

「あれは、チャージです」

「チャージ?」

「あれはですね・・・・・・」

 聞き慣れない単語を聞いて聞き返すと、昴に代わって遥香が説明をいてくれた。

「・・・・・・スキルと同様に、星衣のエネルギーを消費して使用する技です。攻撃系のスキルと比べれば威力は劣るものの、通常の攻撃とは比べものにならない威力を出すことができます。ですが、出そうと思ってすぐに使うことのできるスキルとは違い、使用するときにはエネルギーを溜めることが必要です。これがチャージという名前の由来なのですが、チャージを行っている間、使用者は動けず無防備になってしまいます。ですので、

 先ほどのように大量の敵に囲まれた際などには使えません。」

「そうか。それに、結局エネルギーを消費しちゃうんじゃ、スキルと同じで使いにくいんだね」

 いくら強力とは言っても、隙が大きいならスキルとあまり変わらない気がする。僕は、落胆しかけていた。でも、

「いえ、そこはスキルと大きな違いなのですが、チャージの方がスキルより消費するエネルギーが格段に少ないんです」

「それって、つまり・・・・・・」

 続く情報に希望が少し見えてきた。

「・・・・・・そうか。それなら、スキルと比べて何回も使うことができるのか」

「はい。ですが、それだけではありません。そもそもここで使うエネルギーですが、体力と同じように使わなければその分回復していきます。スキルは、使用時に一瞬で大量のエネルギーを消費するため、すぐに使えますが体に負担がかかります。一方チャージは、使い始めてからゆっくりと少しずつエネルギーを集め手放つので、すぐには使えませんが体への負担が少なく、何よりすぐ回復することができます」

「すぐに回復できる。ってことは、最初はチャージを織り交ぜて戦って、ここぞって時にスキルでとどめを刺すって訳だね」

「はい、それが私たちの本来の戦い方なんです。あのときは、予想外のイロウスの数に、本来の戦い方をできませんでした。それに、戦いの最中では私たちは多くのことを考える余裕はありません。何か、あの小型イロウスを大型から引きはがす策があればいいのですが・・・・・・」

 一撃必殺のスキルと、威力は劣るが何度も使うことができるチャージ。突破口となり得る力を知ることができたものの、結局元のところに戻ってきてしまった。小型のイロウスがどうしても厄介。

 結局、小型のイロウスをどうにかしなければならない。

「――、――」

「ん、なにか聞こえないか?」

「ええと、そうですね。インカムからでしょうか。何かザーって」

 頭を悩ませていると、ふと、不快な音が耳に入ってきていることに気づいた。

 大気中に漂っている瘴気は、電子機器を狂わせる。特に、無線通信機器は、通信障害を起こしてしまい、遠隔操作する機器は暴走してしまう。

 当時、様々な兵器を使ってイロウスに抵抗していた。ミサイルなどの兵器は、威力でもかなわなかっただろうが、そもそも自動照準が狂って墜落し、イロウスに着弾させることもかなわなかったのだ。

 現在使っているインカムも、近い位置にいるみきたちとは通信できるものの、大気圏よりさらに上にいる八雲たちとの通信は今までできておらず、通信が完全に切れている状態だった。

 そんなインカムから流れる砂嵐のような音が意味するものは何か、僕はその雑音に耳を傾けた。

「――あ、――聞こえ、ます――」」

「ん? なにか聞こえ……」

「先生、聞こえますか?」

「八雲先生ですか?」

「ああ、先生。やっとつながりましたか」

「なんで八雲先生が。瘴気のせいで通信ができないんじゃ……」

「あなたたちが、瘴気の濃いエリアから離れたため、通信ができるようになったんです。それよりそちらの状況はどうですか?」

「ええと、みきがイロウスから少々傷を受けてしてしまったが、みんな無事です」

「みきさんが怪我を?」

「大丈夫ですよ、八雲先生。私、ぴんぴんしてますから」

 怪我と聞いて狼狽する八雲に、みきは自分の無事を伝えた。

 僕は、八雲の声を聞いて思い出した。彼女ら星守の教育者は、みきたちを戦わせるために普通の女の子であることを捨てさせた。

 そんな八雲が怪我という単語に狼狽していることが、僕には意外だった。

 そして、僕の中に期待が顔を出してきていた。やはり、生徒が傷ついて平気な教師がいるはずはないと。

「そう、無事なのね」

「はい。問題ありません」

「……ならまだちゃんと戦えるのね」

「あ、はい。大丈夫です」

 ――それが、怪我した生徒にかける言葉なのか。

 僕は、そう言いかけて飲み込んだ。

 結局、八雲は、みきたちを兵士としか見ていないのか。

 落胆するとともに、みきたちを八雲に任せてはいられないという気持ちも芽生えてきた。

「で、なんですか。慌てていた様子でしたが、何かあったんですか?」

「いえ、通信が途切れてから状況が分からなかったので」

「そうですか。では、僕らは早く大型のイロウスを倒さなえれはならないので」

 僕が、話を切ろうとすると、

「周りの状況を把握できていますか? こちらで観測しているデータを送りましょうか?」

「……、お願いします」

 そんな魅力的な提案に、ささやかな抵抗をしようとしていた僕はあっさり折られた。

 そうはいっても、ここから無事に生還するには、情報は多い方がいい。利用できるものはできるだけ利用するべきだろう。

 僕は、自分にそう言い聞かせる。

 データは、間をおかずに僕の端末に送られてきた。

 送られてきたデータは、地図データだった。しかし、ただの静止画ではなかった。

「その丸印があなたたちの現在位置。網掛けされている部分が瘴気の濃い部分です。そして、三角印は観測できる小型イロウスです」

 この地図は、現在観測している渋谷周辺の状況をリアルタイムに反映しているようだ。

「この三角は、イロウス一匹一匹を示しているわけではないですよね」

「はい。一つで数十匹の集団を表しています」

「そうですか」

 八雲に手を貸してもらったというのは気に食わなかったけど、現在の敵の位置がわかるのはでかい。

 これなら、さっきのように不意打ちを受けることはないだろう。それに、少数の敵の位置がわかるなら、いくらかやりようはある。

「よし、これでいけるかもしれない」

「相手の位置はわかるようになりましたが、気を抜かないでください。敵に近づきすぎて瘴気が濃いエリアに入ってしまえば、また通信が途切れてしまいます」

「わかってます。それよりも、みき、遥香、昴」

 僕は、八雲の忠告を聞きながら、三人の生徒に向かい合う。

「さっきは、僕のせいで危険な目にあわせてしまったけど、今度こそできるだけ安全に倒して行こう」

「はい。ちゃんと指示をくださいね」

「うん。全力を尽くすよ」

 僕は、何度目かみきたちと結束するために声をかけた。でも、今回は少し意味合いが違ったと、心なしか思っていた。

 きっと、八雲が言いているからだ。僕は、彼女にみきたちとの会話を聞こえるようにわざと改めて口にしたんだ。

 彼女の指導に任せてはいられないと、僕が教師になったならみきたちをただの兵士のようにはさせないと。

 そんな、意思を表明するためのせめてもの抵抗だった。

「先生……」

「なんですか?」

「……いえ、なんでも。……あなたには期待しています。私たちも全力でサポートしますので何かあったら何でも言ってください」

「ありがとうございます。ですが、僕の試験でもありますので、できるだけ僕の力だけで進めたい。いいですよね」

「……ええ。まあ、いいですが」

 できるだけ、力は借りない。借りたくない。そのためにも自分だけでうまく奪還までこぎつけなければ。

 僕は、タブレットを凝視しながらみきたちとともに動き出した。




なかなか話が進みませんでしたが、次はまたバトルに入れると思います。

お楽しみに
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