東京駅に一時間早く着いた八幡は、駅長室を訪問した。
自らの言動を「自発的なものではない」と疑えてしまえるNPCの駅長を相手に、八幡は感情や意思の何たるかを説く。
昔からロボットや、過保護な親に育てられた子供が直面してきた問題だけに、結論こそ出なかったものの。そして、いくつかの発言はブーメランとなって八幡にも突き刺さったのだが。
駅長には満足してもらえたようだ。
この世界の現状やゲーム世界との断絶を教えられた八幡は、最後に特殊な能力を一つ授与された。
運営命名の『観光モード』を発動すると、一時的に周囲の人を消すことができる。正確には自分たちが異空間に移動するのだが、要は観光地を貸し切り状態にできる能力だ。
駅長の存在を覚えておくと約束を交わした八幡は、心の中で改めて二件の依頼と向き合った。自分のやり方で解決できそうな時は躊躇なく動くと、同じ部活の二人に誓いを立てて。
新幹線に乗り込んだ八幡は、早々に眠りの世界に旅立った。
三人席を向かい合わせにして、女子四人がL字型に、そして残りの二席に男子が座っている。
教室で交わすのと大差ないやり取りをくり返しながら、居心地の悪そうな川崎沙希にも配慮しつつ、由比ヶ浜結衣は無難に会話を進めていた。
「サキサキは気分悪くなってないかな。隼人くんととべっちは……大丈夫そうだね」
「いやー、新幹線ってテンション上がるっしょ。気分悪くなってる暇ねーべ」
「戸部が相手だと風邪のウイルスでも逃げ出しそうだよな。俺も大丈夫だよ」
「そりゃねーべ隼人くーん」
乗り物には強いからと言って、川崎は男子と並んで逆向きの席に着いてくれた。
戸部翔は無駄に元気で、葉山隼人は言葉だけを受け取るとトゲがあるようにも思えるが、口調は平穏そのものだ。男子だけでいる時には、いつもこんな感じのノリなのだろう。
自分たち女性陣を前にしてのこの発言から、葉山も常とは違って気分がうわつき気味なのだろうなと由比ヶ浜は思った。
「あーし、早く富士山が見たいし」
「分かるっ。噴火寸前の俺の富士山を見てくれと……」
「姫菜。今にも暴走しそうな感じがしたんだけど、ホテルで寝て過ごしたくないよね?」
「え。今のもそういうあれ?」
窓側に三浦優美子が、由比ヶ浜をはさんで通路側に海老名姫菜が座っているので、海老名の制御は由比ヶ浜が担当だ。不穏な気配を感じて先んじて注意をすると、川崎が引いていた。
「あ、ちょっとあたし、ゆきのんと三日目の話があるから抜けるね。姫菜が詰めて、サキサキもこっちに来たら?」
あたしだって詳しい意味は分かんないけど、雰囲気でそう思ったんだって。そう心の中で言い訳をしながら、由比ヶ浜は慌てて立ち上がる。
富士山が何の隠喩なのか、冷静に考えればすぐに分かりそうな気がして、意思の力で思考を止める。頬を少し上気させた由比ヶ浜は、逃げるようにして通路に出ると、そのまま前へと歩いて行った。
車両を出てデッキでメッセージを送ろうと考えていた由比ヶ浜だが、自動ドアの手前で見知った顔を見つけた。三人席の真ん中に比企谷八幡が、奥には戸塚彩加がいて、二人ともよく眠っている。
「ちょっと座らせてね」
小声でそう言って手刀を切って、由比ヶ浜は通路側の席に腰掛けた。さっと周囲を見回して、特に誰からも注目されていないと確認する。この手の用心は、すっかり習い性となってしまった。
自分が何号車にいて、隣では八幡と戸塚が寝ていること。できれば中間ぐらいのデッキで落ち合いたいとメッセージを送って。背もたれに身体を預けて両手を前に突き出して、んっとのびをした由比ヶ浜は、横目でちらりと同級生を見やる。
寝姿はとても静かだ。口を開けるでもなく、寝言やいびきもなく、行儀よく眠っている。表情は穏やかで、やる気のない濁った目は今はしっかり閉じられている。普段よりも数歳ほど幼く思えて、なんだか可愛らしい。可愛いとか幼いは男子には禁句らしいので、後で口にしないように気をつけないと。
奥の席を見ると、身体を丸めた戸塚が隣席の友人と寄り添うようにして眠っている。なぜか仲の良い兄妹みたいに思えて、でも実際はもっと距離が近いのだろうなと思い直す。八幡は妹となら緊張することなく、肌を触れ合わせて仲睦まじく眠るのだろうなと。その光景を想像して、思わず笑みがこぼれる。
「んっ?」
気配を感じたのか視線が気になったのか、八幡が小さな声を出した。起こしたら申し訳ないなとか残念だなとか思いながら眺めていると、ゆっくりと両目が開かれた。まだ半分は眠っているのか、焦点の合わない潤んだ目は何も見ていない。いつもと違った澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。
そのまましばし時間が過ぎて。
「寝てたか」
「……ヒッキー、寝過ぎ」
犬のように、くあっとあくびをして。続けて猫のように、んにゃっとのびをする八幡に吹き出しかけて。由比ヶ浜は感情を抑えながら短く話しかけた。過剰な反応をよこす八幡に、「そんなに驚かなくても」「でも、いつものヒッキーだ」などと思いながら、話を続ける。
「あ、富士山が見えるよ」
八幡と雑談を続けていると戸塚も目を覚まして、三人での歓談となった。六人席の状況を話していると、戸塚がそう言って二人を手招きする。
窓側に身体をぴたっと寄せて、頭をヘッドレストに押し付けるようにして。小型の窓をできる限り遮らないようにと身体をそらしている戸塚は、女性の目から見ても庇護欲をそそられる。両の拳をぎゅっと握りこんで胸の前でそろえている姿たるや、八幡が奇行に奔るのも仕方がないと思えるほどだ。
たぶん、暴走しないようにと身構えているのだろう。八幡は少し震えながらもゆっくりと、戸塚が空けたスペースに身体を近づけていく。「ほう、これが富士」などとつぶやいて余裕を見せようとしているが、微笑ましいことこの上ない。
だから、由比ヶ浜も動くことができた。
「ね、あたしにも見せて」
そう言いながら、おっかなびっくり八幡の右肩に手を乗せる。そのまま身を寄せると、右肘から手首までが背中にぴたっとくっついた。八幡の体温が伝わってきて心臓が跳ねそうになるが、びくっと反応した直後から身体が硬直しているのも感じ取れて、おかげで何とか平静を保てている。そっと左手も肩に乗せて、身をよじる。
八幡と戸塚の頭が視野を遮っているものの、少し首を伸ばせば窓の外が見える。そちらに意識を移すと、朝日に映える富士山が目に飛び込んできた。思わず「わあっ」とつぶやいて、八幡がくすぐったそうに身じろぎしたのであわてて口を閉じる。
なにかを言いたい気持ちはあるのだけれど、この体勢でしゃべると八幡の左耳にささやくような形になってしまう。さっきは意識してなかったから大丈夫だったけど、今となっては気恥ずかしい。
もう少しだけ、あとちょっとだけと。無言で景色を堪能しながら両手の感触を確かめていると、ふと気づいたことがあった。
もしかして、何もしゃべらなくても息づかいが伝わってるかも。
それほど息を荒げてはいないつもりだが、急にほっぺたが熱を帯びてきた。呼吸が激しくなるのも時間の問題だろう。そう考えた由比ヶ浜は、八幡を少し押すようにして急いで距離を取ると、いったん通路側の席に座った。ふう、と一息ついて肩の力を抜く。
「やっぱり綺麗だね。じゃ、あたし行くね」
深呼吸をしたぐらいでは、とても冷静には戻れなかった。由比ヶ浜はなんとかそう口にすると、八幡の反応を待たずにデッキに出た。
座席では、八幡の心臓が早鐘をつくように乱れ撃っている。由比ヶ浜が押したことで覆いかぶさるような形になったので、戸塚の呼吸も荒い。
少し時間をかけて、何とか二人が落ち着きを取り戻したのも束の間。少しばつの悪そうな表情で、二人を混乱におとしいれた張本人が戻ってきた。
「あ、あのね。ゆきのんが集まって話をしないかって。だからヒッキーと、良かったらさいちゃんも一緒にどう、かな?」
蚊の鳴くような声でそう言われると、また羞恥心がわき起こってくる。頭をむりやり縦に動かして、目だけで戸塚を促して、八幡はぎこちなく立ち上がると由比ヶ浜の後を追った。
***
雪ノ下雪乃とは、すぐ近くのデッキで合流した。
八幡と戸塚が起きていれば一緒にと、そう由比ヶ浜に指示を送った雪ノ下が間を置かず行動に出たからだ。
「由比ヶ浜さんの話だと、いつもと同じような雰囲気だと考えて良さそうね」
「だねー。修学旅行だーって感じは全然なくてさ。優美子はもちろん姫菜や隼人くんも、旅行気分みたいなのは伝わって来るんだけどね」
「まあ、普段どおりにしかならないって戸部に理解させるには、良いかもしれないけどな。でも告白の延期まで行けるかっていうと、どうだろな」
「それってさ。えっと、見込みはない、ってこと?」
戸塚にそう確認されたので、雪ノ下が現状を説明する。
明言こそしないものの、由比ヶ浜と海老名は互いの状況を把握できている。
戸部が奉仕部に依頼をして、三人が「相手のことをより詳しく知る」という方針を掲げ課題を与えていることも。告白されればきっぱり断って、人間関係の変化にも責任を持つつもりの海老名だが、丸く収めるには告白回避が良いのではと気持ちが揺れていることも。
奉仕部の対応も、ここに来てどっちつかずの状態だ。
告白の機運を高めないようにしながらも、戸部と海老名が一緒に過ごす時間は増やしてあげたいという、風見鶏のような応対になっている。
「とべっちに漫画を読んでもらったのは良かったと思うのね。やっぱさ、ノリで返事をするのと、作品を知ってて何か言うのって違うなって、横で聞いててもそう思うもん。でも、旅行中に読むのは無理だろうし、ネタが尽きちゃった感じでさ」
「読んだ翌日の昼にはもう喋ってたからな。旅行前に話し尽くすって、まあ戸部らしいけど。どうしたもんかね」
「戸部くん頑張ってるし、いい結果になって欲しいってぼくも思うけど、無理強いはしたくないもんね」
「海老名さんの気持ちが揺るがない以上は、どうにもできないのよね」
そう言って黙り込む四人のところに、タイミング良くメッセージが届いた。無言のまま送り主を確認すると、生徒会から全校生徒に向けた通知だ。
中を開いてみると、生徒会長に立候補した生徒の氏名と、今後の大まかな日程が書かれていた。立会演説会や投票の詳細は、二年生が修学旅行から帰る今週末に通知するとのこと。
「まさか、一色さんが立候補するとは思わなかったわね。生徒会に取られる形になったのは残念ではあるのだけれど」
「ゆきのんのディナーを食べた時は、そんな感じじゃなかったよね?」
「サッカー部のマネージャーはどうするんだろ。ぼくグラウンドで何度か見たんだけど、気配りもできるし仕事はてきぱきしてるし、ちょっと羨ましいなって思ってたんだけど……辞めちゃうのかな?」
「もしかしたら、あえて葉山と距離を取ったのかもな。マネージャーと部長って関係をいったん清算して、違う立場で関係を作り直すとか……まあ、分からんけど」
戸部の依頼のせいなのか、何でもかんでも色恋沙汰に関連づけるのは良くないなと八幡は思い直した。体育祭で交わしたやり取りは今なお意味不明な部分が多々あるのだが、あの時の姿を見ている八幡は、以前とは違うことを始める彼女に違和感を持たなかった。
戸塚には、八幡の説明が腑に落ちた。文化祭で劇の主役を務めたり、体育祭で現場班の統率をしたりと、立場が変わるたびに周囲との関係も微妙に変化した。そんな経験があるだけに、彼女の新たな挑戦を理解できたからだった。
雪ノ下は、もし獲得できるのなら
「それって、優美子にも影響が出るよね。うーん、でもさ。ちょっと、いろはちゃんらしくない気がするんだけど。急にどうしたんだろ?」
三浦の言動は分かりやすいし、この面々には危惧を伝えても大丈夫だと考えて。由比ヶ浜はまず八幡に確認を入れた。だが、続く言葉はとぎれとぎれで迷いが窺える。彼女らしくない気はするが、さりとて立候補したのは事実だしと、そこで由比ヶ浜の思考はどうどうめぐりになる。旅行が終わってから当人に話を聞いてみようと、そう結論づけるしかなかった。
程なくして立候補のいきさつを知った生徒会長が、「せめて旅行中は何も知らせずに、京都を満喫してきて欲しい」と考えたために。奉仕部の三人が事の次第を把握するのは千葉に帰ってからになる。詳細は伏せられ、情報は生徒会役員だけに共有された。
「まあ、考えても分からんもんは分からんし、帰ったら嫌でも分かるだろ。戸部と海老名さんのことも、なるようにしかならんしな。雪ノ下が言ってたように、俺らは旅行を楽しんで、あの二人にも旅行を楽しんでもらって、その上でどうにかなるならどうにかなるんじゃね?」
「言っていることは思考放棄とも受け取れるのに、たしかに正論ではあるのよね……」
雪ノ下が久しぶりに額に手を当てて苦笑していると。
「ぼく、聞いてて思ったんだけどさ。二人が前よりも仲良くなって、でも付き合うわけじゃないって関係に落ち着いたら、だいたい丸く収まるんだよね。だったら、やっぱり八幡が言ったとおり、二人に修学旅行を楽しんでもらうのが一番じゃないかな」
「うん、さいちゃんの言うとおりかも。こっちが『何かやらなきゃ』っていちいち手を出すのも、よく考えると違う気がするしさ。でも、旅行を楽しんでもらうためだったら、やりやすいし気も楽だよね」
そんな感じで話がまとまってきたので、八幡と雪ノ下も頷くことで賛同の意を伝える。
ほっとしたからか、八幡はふと関係のない話を思い出した。
「そういや、関東と違ってあっちのほうは、都市部を中心に点々と実装してるだけらしいぞ」
「人が足りないと運営のスタッフが悲鳴を上げていたわね。それに、世界が広がってもう十日以上が経つのに表立った不満が上がっていないのは、少し飽きられているのかもしれないわね」
「あれっ。ゆきのん最近スタッフの人と会ったの?」
「ええ。いつだったか、お悩み相談メールが届いていたでしょう。京都の猫鼻付近を作りに行って、その時に聞いたのよ」
運営を手伝えなくて申し訳なかったなと今朝がた反省していた八幡とは違って、雪ノ下は猫の名を冠した地域を他人に委ねる気はないらしい。ちょっと引く。
「てか、飽きられてるって発想は無かったな。運営の方針転換も、それを見越してなのかもな」
「それって、さっき八幡が言ってた『点々と実装する』ってことだよね?」
「ええ。純粋に仕事が追いつかないという事情もあるとは思うのだけれど。私たちの文化祭で、部分的なログインに問題が無いと実証できたでしょう。だから運営の方針が、この世界に常住する方向から、この世界に一時的に滞在する方向にシフトする可能性は大いにあるわね」
「まあ、腹が立つけど俺らとしては、運営様の言うとおりに過ごすしかないしな。部分的なログインがメインになるんだったら、早いとこ開放して欲しいもんだわ」
そう言いつつも、八幡の顔は晴れない。
もしも、現実の世界に帰れたとして。この世界に巻き込まれたことが「無かったこと」として扱われるのなら。その時は、俺は……。
「ね、ヒッキー。前に東京わんにゃんショーで約束したよね。現実のサブレに会って欲しいって。あの約束、今も続いてるよね?」
「あー。……いや、忘れた」
「比企谷くん、貴方……」
「まあ、あれだ。この世界から解放されるってなったら、そん時には思い出すんじゃね。だから、今は知らん」
由比ヶ浜に、そして確実に雪ノ下にも。不安を察知されたのが悔しくて、面映ゆくて、厄介で、残念で、ちょっと嬉しくて、少し安心して、でも自分が情けなくて。思いっきり捻くれた言葉を返してみた。
二人はもちろんのこと、戸塚からも生暖かい目で見られて居心地が悪い。半々かそれ以下の確率だろうなと思いながら、ダメ元でじろりと部長様を睨んで助けを求めると。
「では、由比ヶ浜さんと比企谷くんは三日目に。こちらでも行き先を絞っておくけれど、希望があれば早めに教えてくれると助かるわね。戸塚くんも旅行を楽しんで。それと、
めずらしく助け船を出してくれた雪ノ下がそう締めくくって、四人の集まりはお開きになった。
***
京都駅からバスで清水寺に向かった。
お寺の入場口から延びる長い列に、おとなしく並んでいる八幡に声をかける。
「ヒッキー、ちょっとこっち」
近くにいる同級生に話しかけて、列をキープしてもらう代わりに別の場所で借りを返す形で、素早く話をまとめた。八幡の呆れ顔がちょっとつらい。
「面白そうなとこがあってね。姫菜ととべっちも先に行ってるしさ、別にいいじゃん」
そう言うと、一瞬だけ不満そうな表情を浮かべるものの、結局はついて来てくれる。
葉山と三浦にも声をかけたこと、川崎は陶器を見たいと言って一人でぶらっと去って行ったこと、戸塚が運動部の部長たちに捕まっていることなどを話しながら小さなお堂に入ると、四人が待っていた。
「随求堂の胎内めぐり、か。んじゃま、行くか」
葉山と三浦、戸部と海老名の順に入って行く。その二組を見送って、少し緊張しながら八幡の様子を窺っていると、思ったよりも前向きな声でそう告げられた。勢いよく頷いて、すぐ後に従う。
中に入って数歩進むと真っ暗闇になって、数珠状の手すりだけが行き先を教えてくれる。目を開けても閉じても、何も見えない。
「暗い暗いやばい暗いやばい」
少し離れたところから、三浦のおびえる声が聞こえてきた。ほっぺの辺りの緊張がとけて、気持ちも楽になった気がする。葉山の冷静なつぶやきや、戸部のさわがしい声、海老名の投げやりなあいづちは伝わってくるが、八幡の声も息づかいもまるで聞こえない。
もしかして、はぐれちゃったのかな。
「うおっ?」
手すりに沿って手をうんと先に伸ばそうとしたら、意外と近いところで生温かいものにぶつかった。同時に八幡の声がしたので、そちらに意識を奪われていると。今度は身体全体が、大きくて温かい何かとぶつかった。立ち止まって自由なほうの手でぺたぺたと確認しながら、名前を呼ぶ。
「えっと、ヒッキーだよね?」
「お、おう。これ、手すりのほうも由比ヶ浜か?」
「うん、ほら。こっちはヒッキーの背中だよね、あ、ここから腕っぽい。あってる?」
八幡の問いかけに、手首のあたりを手すりに残して、指の先でちょんちょんと温かいものを突っついた。逆の手を横に動かしていくと感触が変わったので、予想を口にしてみると。
「はあ。まあ、いいわ。ぶつかったの大丈夫か。大丈夫なら先に進むけど」
「え、うん、大丈夫だけど。じゃ、ゆっくり進もっか。ちょっとごめんね」
なぜかため息を返されたので、暗闇の中で首をこてんと傾ける。腕じゃないなら、まだ背中なのだろうか。とはいえ正解にこだわる気もないので、意識を入れ替える。
またぶつかったり、はぐれるのは嫌だなと思って、ブレザーに軽く沿うようにして手を下のほうに。裾の辺りをちまっと掴んだ。でも、背中にしては少し違和感がある。これ、やっぱり背中じゃなくて……。
「ひゃっ……ってこれ、ちゃんと答えなかった俺のせいなのかね。あー、由比ヶ浜。さっきのは腕であってる。だからお前が今持ってるのは、裾じゃなくて袖なんだが」
また手が触れないように、可能な限り逆側に寄せているのが感覚で分かる。ドキドキするのは由比ヶ浜も同じなのだが。相手が慌てていると、なぜかそのぶん冷静になれる。
「うーん、でもさ。手を離しちゃうとちょっと怖いから、このままでいい?」
「あー、まあ、お前が良いなら良いか。誰も見てないし」
最後は小声だったが、こんな環境だからかしっかり聴き取れた。
誰が見てなかったらいいの、とは訊けなかった。尋ねるつもりもなかったけれど。
慎重に足を進めていくと、二人の手は何度か偶然かすった程度でそれ以上の進展はなかった。とはいえ八幡の反応がなくなると急に恥ずかしさが込み上げてきたので、由比ヶ浜としてもこれでもう充分という心境だ。
歩いていると、仄かな灯りが見えてきた。名残惜しいが袖から手を離す。
「あそこで石を回して、お願い事をするんだって」
「ほーん」
気のない返事だが、頭の中では真剣に考えているのが分かる。ずっと暗いところにいたせいか、表情の一つ一つを細やかに見分けられる気がする。たぶん今は、妹想いのお兄ちゃんの顔。だからお願い事も、おそらくそれだろう。
「決まった?」
「ん。お前は?」
「うん、大丈夫。じゃ、一緒に回そっか」
石を二人で回しながら、お願い事を真剣に思い浮かべる。
『二月の中頃に、いいことがありますように』
これならたぶん、八幡の願い事と重なるだろう。きっと、妹の受験合格を願っているのだろうから。あたしのぶんのお願いも合わせて、いい結果になって欲しい。それに二月の中頃には、あのイベントもある。
その頃に、いいことがあるといいなと思いながら。石を回し終えた由比ヶ浜は大きく柏手を二回。もう一度、心の中でお願い事をくり返しながら、短い時間だけど手を合わせて真剣に祈る。
「よし、じゃあ行こっ!」
再び暗闇の中に戻るも、すぐに出口が見えてきた。先行の四人と合流して、ほっと一息つく。
列をキープしてくれている同級生から「もうすぐ入り口」と連絡が来たので、一同は急いでそちらに向かった。
***
先程からの流れで、由比ヶ浜は八幡と並ぶようにして清水の舞台に立った。
こちらに気を遣って距離を取ることも、いつの間にか消え失せるようなこともなかったので、ほっと胸をなで下ろす。
「ねね。ヒッキー、写真!」
そう言うと無言で頷きながら距離を空けられ、「ピーナッツ」という合図とともに写真を撮られた。とっさにポーズを取ったものの、まったくもって解せない。
「じゃなくて。あと、さっきのかけ声はちょっと……」
「ばっかお前、千葉県民のたしなみだろ?」
よく分からないことを言っている八幡を手招きして。隣に立って、カメラの自撮りを試みる。
「もうちょっと近づいてくれる?」
「あ、おい、お前……」
意図したわけではなかったけれど、軽く腕が絡まった。後で写真をあげることを考えながら、今の気持ちにぴったりの笑顔を浮かべる。
「ありがと。後で送るね」
「ん、まあ、そのうちな」
いつもながらのよく分からない返事だったが、今更その程度のことは気にならない。ぱっと腕を離して、リズミカルに数歩進んでターンする。
「じゃあさ、優美子と姫菜を呼んでくるから、もうちょっと写真撮ってくれる?」
「ほいよ。ここにいれば良いんだよな?」
「うん、お願い」
八幡が三人の写真を撮っていると、葉山や戸部も近づいてきた。他の班になった大岡や大和も来れば、文化祭の実行委員長様とその取り巻きまで現れて。最終的にはF組の半数ほどが集結した。
俺は雇われのカメラマンじゃなくて、お前らの同級生なんだが。そんな不満を小声で呟きながら、八幡は戸塚の写真を心の糧にして、なんとか全員分を撮り終える。川崎から緊張の面持ちで撮影をお願いされたのが印象的だった。
「なあ、由比ヶ浜。これ、写ってる全員に送るべきなんだろうけどな。正直、顔と名前が一致してないやつも多いし、頼まれて欲しいんだが?」
「うーん。じゃあさ、あたしたちの班とヒッキーの班の八人と、あと大岡くんと大和くんには送れるよね。さがみんはどう?」
「お前に任せる」
まさに即答だった。相変わらず不幸体質は健在らしい。
「でもさ。写真を送ったあと、できれば削除はしないで欲しいな。せっかく撮ったんだしさ、残しておいてくれると嬉しいんだけど」
「まあ、そっか。そうだな」
実は言われずとも、八幡はそうするつもりだった。その理由は、目の前の同級生にある。
大半の写真に参加していた由比ヶ浜は、撮られるごとにその表情をくるくると変化させていた。嬉しいや楽しいを表現するのにこれほど多くの顔つきや仕草が存在するのかと、八幡は撮影しながら感嘆の声を上げそうになったほどだ。
本人に黙って写真を保存しておくのは、気がとがめるけれど。こうして許可を得られた今となっては、写真を削除するつもりなどさらさらない。
帰ったら妹にも見せてやろうと考えながら、八幡は由比ヶ浜と連れ立って、経路に沿って進んで行った。
本殿のすぐ北側にある地主神社は、縁結びで有名だ。縄文時代から伝わるという二つのご神石の一方から他方に向けて、目をつむって歩く。
およそ十メートルほどの距離を、誰からも助言を受けずに一度目でたどり着いた強者が、たった今あらわれた。
「ねえ、あれってさ……」
「言うな。つか、なんでここでも白衣を着てるんだろうな、あの顧問は」
「でもさ。一度目で成功だから、恋の成就が早いんだよね。お祝いって、なにがいいかな?」
「さあな。助言を受けずに成功って、人の助けを借りなくても余裕って意味らしいけど。変な相手と成就しても困るだけだし、もう少し人の意見を聞いたほうが良い気がするけどな」
同級生の前で挑むと、意中の人がいるという意味に受け取られそうなので。由比ヶ浜も八幡も、二つのご神石を遠巻きに眺めていた。
すると、見知った顔が挑戦者として名乗りを上げる。
「おいおい、戸部がやるのかよ」
「まあ、とべっちだしさ。なにもなくてもやると思うよ」
周囲の声にさんざん惑わされたあげく、最後には葉山に助けてもらって何とか向こう側のご神石にたどり着いた戸部。
結果はともかく道中を見る限り、思った以上に霊験あらたかなのかもなと八幡は思った。
「あそこで、おみくじが引けるみたい。ヒッキーは?」
「俺は遠慮しとくわ。ん、今ちょうど引いたの三浦じゃね。その後ろ海老名さんっぽいし」
「あ、ほんとだ。じゃ、あたしもちょっと行ってくるね」
ぱたぱたと走り去る由比ヶ浜を、八幡はのんびり歩いて追いかける。聞き覚えのある騒がしい声が後ろから聞こえてきたので、おみくじの辺りで再集合となりそうだ。
「じゃあさ。いっせいにばっ、って開けよっか」
おみくじを手にした女子三人が、そんなふうに盛り上がっている。川崎は「あたしはいいよ」と一歩引いて見守っていて、その横では戸塚が少し羨ましそうな顔をしている。おみくじを引きたいのかなと八幡は思うも、何となく勧める気が起きなくて、その横顔を眺めるだけだった。
「よしっ、大吉だし!」
「あー、私は凶かぁー」
「あたしは末吉、ってなんか微妙?」
いそいそとおみくじを折りたたみ始める三浦。声のトーンとは裏腹に、どんよりした気配を一瞬だけ漂わせた海老名。そして由比ヶ浜は首を傾げて困っていた。
「最終的には吉になるってことだし、かえって良いんじゃね?」
「だべだべ。海老名さんもさ、今が凶なら後は上がって行くだけっしょ」
「優美子はずっと大吉が続いてる感じだよな。俺もあやかりたいよ」
軽い口調で八幡がフォローをすると、意外にも戸部が続いて海老名を元気づけていた。その発言は女王のお怒りを呼びかねない側面があったのだが、さすがに如才なく葉山が場を収める。
だが、八幡は何かが引っかかった。
戸部には「海老名さんのおみくじを結んでやったら」と提案して、念のために少し後ろに下がりながら。小声で葉山に話しかける。
「さっき戸塚が運動部の部長連中に捕まってたって聞いたんだが。お前は、そっち方面の付き合いは大丈夫なのか?」
「ああ。春に優美子がサッカー部の見学に来た話は知ってるかな。あれで、実質的には運動部のほとんどが救われたんだよ。だから俺が優美子と一緒にいるほうが、あいつらも気が楽みたいでさ」
八幡に合わせるように、他の面々から数歩下がって。葉山は何でもないような口調でそう答えた。
人気者の葉山が、今日は朝からずっと三浦と一緒に過ごしている。そこに引っかかりを覚えた八幡が無難な問いを投げかけてみたのだが、さすがに話が早い。だが、ここには微妙な問題が潜んでいる。それを白日の下にさらしても良いのだろうか。
「噂でしか知らん上に、俺の場合は又聞きだからな。なんか部員のやる気を出させたとか、そんな感じだったか?」
「当たり前のことを当たり前のように指摘できるって、すごいことだと思うよ。特にあれは、この世界に巻き込まれた直後だったから、よけいにね。だから優美子が運動部の連中に人気なのも分かるし、俺も感謝してはいるんだけどさ」
この話はここまでだと、葉山に言われた気がした。軽く頷いて了承の意を伝える。とはいえ八幡にはもう一つだけ尋ねておきたいことがある。
「お前は、立候補の話は聞いてたのか?」
「ん……ああ、そういえば千葉村でも一緒だったし、文化祭の打ち上げもそっちに行ってたな。いろはの立候補には俺も驚いてるよ。結衣と雪ノ下さんと、どんどん仲良くなってたから、その影響かなって。それぐらいしか推測が立たないな。もしかして、君の影響かい?」
八幡との繋がりを知らなかったのか、最初は怪訝な顔をされたものの。すぐに自分で納得して、知る限りのことを教えてくれた。最後のからかいは余計だったが。
「んなわけねーだろ。お前が言うとおり、うちの部長様がご執心でな。サッカー部から引き抜けるなら引き抜きたいとか、のたまってたんだが。まあ、辞めるわけないだろって結論だったし、しょせんは戯れ言だから勘弁してやってくれ」
「今いろはに辞められると困るから、帰って早々に話を聞こうって戸部とも話してたんだけどさ。奉仕部もいろはの立候補を把握してなかったってことだよね。……ちょっと、引っかかるな」
らしくないと述べた由比ヶ浜に続いて葉山にまでそう言われると、八幡も口を真一文字に結んで厳しい表情にならざるをえない。
「つっても修学旅行の間は他の学年との連絡は禁止だし、それが分かってるから帰って話すって言ってるんだろ。規則だけならこっそり破れば良いんだが、システム的に不可能だからな。年子の家族でもいれば、そこ経由で連絡を取れないことも……あ。まあ、真相究明を急いでも意味はないだろうし、帰ってからじっくり話してみりゃ良いんじゃね?」
「そうだね。病欠の時に、許可した人を除いて連絡不可になるのは分かるんだけどさ。落ち着いて眠れないからね。でも、修学旅行で連絡禁止は意味が分からないな。システムの前に規則があるんだし、無意味なものはさっさと撤廃しておくべきだね」
目下の問題を考えつつも、二人は同時に別のことも考えていたりする。噛み合っているのかいないのか、よく分からない二人の会話は続く。
「ふたを開けてみれば、単にサッカー部が見限られただけって話かもしれんしな。まあ週末のお楽しみで良いんじゃね?」
「どっちにしても、奉仕部に行く気がなかったのは間違いないんじゃないかな。たしかに面白そうな組み合わせだとは思うけどね」
別のことは考え終わったのか、二人は目下の問題を名目に一太刀ずつ浴びせ合っている。仲が良いのか悪いのか、よく分からない二人の会話は続く。
「ちょっと思ったんだが。万が一何か問題があったとして、その場合はうちとお前らの合同チームが問題解決に当たるわけだろ。そう考えたら、あんま心配しなくても良いんじゃね?」
「なるほど。サッカー部と奉仕部が同盟を組んだら、たいていのことは何とかなりそうだね。だから、今の段階では気にしすぎることはない、か」
現実には起こり得ない組み合わせだが、二人はそれを百も承知で話を終わらせるために利用する。
お互いにあと一つだけ、話題の彼女のことをどう思っているのか目の前の男に訊ねてみたいという想いはあるのだが。知りたい以上に知られたくなくて、二人はともに口をつぐむ。
沈黙の先では、戸部がせいいっぱい背伸びをして、海老名のおみくじを高いところに結び終えていた。一歩前に出て、元の立ち位置に戻ろうとしたところで、葉山の声が小さく聞こえて来た。
「そういえばさ。同じ班になってくれて助かったよ。あのままだと、機運ばかりが高まって、ろくな結果にならなかった」
「つっても、まだどうなるか分からんぞ。行動に出る可能性は高いままだしな」
「正直に言うと、結果が出た後のほうが動きやすいんだよね。それは結衣も、雪ノ下さんも同じだと思うけど」
「それな。未然に防ぐのって一番難しいよな」
ぼそぼそと話を続けながら、絵馬を見ていた三浦と由比ヶ浜が帰ってくるのを眺める。
同じタイミングで戻ってくる戸部と海老名を、由比ヶ浜がちらっと見たので。「戸部には触れ合いの機会を与え、海老名さんには凶のおみくじを合法的に処分してもらっただけだ」と目で伝えておいた。伝わったかどうかは分からない。
順路に従って拝観を続けていると、やがて音羽の滝が見えてきた。
滝は三筋に分かれていて、向かって左は学業成就、真ん中は恋愛成就、右は延命長寿のご利益があるのだとか。
由比ヶ浜がガイドブック片手にみんなに説明しているのを、聞くとはなしに聞いていると。右側の滝に、どこかで見たような見たくなかったような男子生徒を見つけた。
あわてて視線をそらしたものの、やつは見られている感覚には敏感だ。きょろきょろと辺りを見回していたかと思うと、材木座義輝が正確にこちらを射すくめてきた。といっても特に怖くも何ともないのだが。
「八幡よ、そして戸塚氏も久しいの。我としたことが、とんだ醜態を晒すところであった」
「いや、お前の場合は年がら年中、醜態を晒し続けてるだろ。つか、なんで延命長寿なんだ?」
「あ、ぼくも知りたいな」
「ほむん。伝承によると封じられし我の真の力は、九百年を経て鼓動を取り戻し、九十年を経て理知を取り戻し、九年を経て……」
「そのまんまパクリじゃねーか。心頭を滅却して反省しとけ」
聞いて損したし、そもそも今朝がた褒めてやって損したと、心の中で悪態をつきながらも。その設定で延命長寿の水を飲むのはちょっと面白いかもしれないなと、中二心を揺さぶられる八幡だった。
水を飲み終えている材木座と別れて、長い列に並んだ。とはいえ近くには戸塚もいるし、由比ヶ浜が話題を切らさずみんなを飽きさせないので、待ち時間はあっという間に過ぎた。
他の連中を先に行かせて、しんがりを務めようとぼけっとしていると。
「優美子とサキサキとさいちゃんが学業で、隼人くんと姫菜は長寿かあ。恋愛はとべっちだけだね。うー、悩むなぁ……」
三択で悩む由比ヶ浜が残っていた。
マークテストの時にもこんなふうに最後まで迷っているんだろうなと、思わず笑みがこぼれる。むっと睨まれたので、助言でもしてやるかと口を開く。
「他のやつがどれ選んだとか、誰に見られてるとか気にしねーで、好きなもん選べ。周りに選ばされるよりも自分で選んだほうが、後で後悔する時でも気が楽だぞ」
「ふんふん、って途中まではいい話だったのに、結局は後悔しちゃうんだ……」
何やらご不満のようだが、どんな選択をしたところで後悔はついて回るものだと八幡は思う。だからこそ、という意味で話してみたのだが。まあ本意は伝わっているようだし、由比ヶ浜が不満を抱いている先はそれではないと分かるので、八幡にも反論はない。
「じゃあヒッキー、先に行くね」
そう言って滅菌棚から柄杓を取った由比ヶ浜は、それを迷わず真ん中の滝に突き出した。ちょろちょろと水が貯まるのを待って、柄杓を口元に寄せると髪をかき上げてこくりと一口。白い喉が動く様が艶めかしくて、思わず八幡は視線をそらした。
「ん。これほんと、おいしい」
そっぽを向いていた顔を戻すと、目を輝かせている由比ヶ浜。なんだか微笑ましい気分になる。
じゃあ俺もいただきますかねと思いながら滅菌棚に向けて足を踏み出すと、由比ヶ浜がまた真ん中の滝から水を受けている。まだ飲み足りないのかと、さすがに呆れる気持ちがわいてきたのだが。
「はい。ヒッキーのぶん、汲んどいたから」
そう言いながら柄杓を渡された。思わず受け取ってしまったものの、対応に困る。
「いや、これはちょっと、あれだ……」
「んっ、と……あっ!」
分かってくれたのは重畳だが、覆水が盆に返らないのと同様に柄杓の水も滝には戻らない。それを捨てるなんてとんでもないと怒られそうだし、八幡にできるのはこの水を飲むことだけ。
せめて、同じ場所は避けようと考えて。八幡は柄杓の柄を向こう側に向けて、柄に頭をぶたれるようにして水を飲み干した。全く味がしないのだが、それよりも早くこの場から立ち去りたい。
顔を赤らめる由比ヶ浜を一睨みして、八幡は南禅寺から哲学の道を抜けて銀閣寺へと向かうのだった。
次回は一週間後の予定です。
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追記。
窓側→通路側など、誤記を二つ修正しました。(9/8)
変な改行と細かな表現を修正しました。(9/12,10/9)