俺の青春ラブコメはこの世界で変わりはじめる。   作:clp

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今回で材木座編は終了です。


14.しかして我は新たな病を発症する。

 今日の授業が終わって少し時間が経った頃、材木座義輝は特別棟の廊下を歩いていた。これは「少し奴らを焦らしてやるのも一興というもの」という彼の先程の呟きが理由ではない。それは単なる後付けもしくは捏造である。真実は、授業を早退したのに保健室に行かなかった昨日の行いがばれて、担任から大目玉を食らっていたせいであった。

 

 しかし、今日に限っては担任の苦言など、彼に何ほどのダメージも与える事はできない。なにせ、彼が書き上げたばかりの原稿を五人もの同級生に読んで貰えているのである。昨夜から彼は抑えていても沸き上がってくる興奮に身を焦がし、今や抑える必要のなくなったそれは彼の意識を妄想の彼方へと追いやるほどに成長していた。

 

 

 彼は同級生たちの絶賛の声をしっかりと聞き取る事ができた。一人の男子生徒は少しだけ悔しそうな表情をしているものの、自分など我に敵うものではないと悟り終えたような清々しさがあった。我は彼に鷹揚に頷き、そして我と我が原稿を褒め称える事を止めない女子生徒たちへと目を向ける。彼女ら一人一人が口にする感想を丁寧に聴きながら、それ程までに深く我が原稿を読み込んでくれた礼を述べる。

 

 そして我は次のステージへと向かう。もちろん、この世界に居ながらの作家デビューである。新人賞の賞金は全て、我を今まで育ててくれた両親にプレゼントする。それは瞬く間にニュースになって、多くの取材が舞い込む事だろう。しかし我の本業はあくまで作家である。一時の盛り上がりに自分を見失う事なく、我は原稿を書き続けるのだ。

 

 

 そんな未来を既に達成し終えた気持ちになって、彼は廊下を歩きながら高笑いする。そして目的の教室へと辿り着き、「頼もう」と声を出しながら、彼はドアを開くのであった。

 

 

***

 

 

 教室内には疲れた空気がみなぎっていた。部活が始まった時点で既に今のような雰囲気ではあったのだが、廊下から変な笑い声が聞こえて来た事で、それは更に酷いものへと退化していた。上機嫌な様子の材木座が意気揚々と昨日と同じ席に座るのを、誰もが虚ろな目で眺めていた。

 

 

「さて。では各々方、感想を聞かせて貰おうか」

 

「はあ……。では、仕方がないので私が進行役を務めるわね」

 

「む。我に異存はない」

 

 

 どこまでも偉そうな材木座に対し、部長の責任感から雪ノ下雪乃が司会進行を引き受けたものの、彼女の表情は暗く精神が摩耗しているように見える。それでも彼女は雪ノ下雪乃であり、自らの役割を果たすべく話を進めるのであった。

 

 

「まず初めに。昨日は由比ヶ浜さんと見学希望の二人と一緒に原稿を読めて助かったわ。三浦さんが言葉少なに指摘する事は的確だったし、由比ヶ浜さんの休憩を提案するタイミングは完璧だったと思うわ。そして海老名さんには、登場人物の言葉の言い回しが別の漫画やアニメのキャラクターのそれから引用したものだと教えて貰ったり、本当に御世話になったわね」

 

「ゆ、ゆきのん……!」

 

「ま、あれくらい当然だし」

 

「元ネタは有名作ばかりだったし、あの程度でお礼とか、別にいいからね」

 

 

 そんな三者三様の反応を比企谷八幡は横目で眺め、「なんか感動してるけど、由比ヶ浜のは別に褒められてなくね?」と思いながらも口には出さない。その由比ヶ浜結衣は感極まったように目を潤ませているし、三浦優美子はいつものように女王然としているが微かに照れているようにも見える。海老名姫菜は、昨日は気付かなかったが意外に本音が読めない気がしてきた。と、当の彼女が首を傾げながら彼に視線を向けて来たので慌てて目を逸らして、八幡は直前の思い付きを忘れてしまった。

 

 内輪の話題を出した事で首尾良く男子二人を疎外した雰囲気を作る事に成功した雪乃は、先程よりは少し顔色を良くして話を進める。

 

 

「では、どんな順番にしようかしら……。最初は三浦さん、お願いできるかしら?」

 

「了解したし。正直、めちゃくちゃ読みにくかったし。変な語順が多すぎだし、倒置が多すぎて何を強調したいのか判んなくなってたし」

 

「ええ。『てにをは』も無茶苦茶だったし、日本語の文法を理解しているのか疑ってしまうレベルだったわね」

 

「げふぅっ!」

 

 

 女王二人の豪華コンボを喰らって、一撃で瀕死に追いやられた材木座であった。が、彼の回復性能を見くびって貰っては困る。「落として上げる作戦であろう。全く最近のおなご共は駆け引きが上手くて敵わぬ」などと脳内で独りごちて、瞬時に全快する彼のたくましさは我々も見習うべきかもしれない。

 

 

「由比ヶ浜さんの感想を聞かせて貰えるかしら?」

 

「え、えっとね。読んでたらすぐに眠くなって来ちゃって。難しい本と同じだなって。す、凄いなって思っちゃった、かな?」

 

「ひでぶっ!」

 

 

 悪意が無いのが逆に辛いとはまさにこの事であろう。体力よりも精神力にダメージを受けた材木座だが、「難しい本……我もいずれはハードカバーで大著をものにできるかもしれぬ。そこまで我が未来を見通してくれるとはありがたい感想ではないか」と一瞬で思考を組み立てる。再び全快した彼のたくましさは我々も見習うべきかもしれない。

 

 

「では、海老名さんは?」

 

「うーん。私は()()()()ラノベに詳しくないんだけど……」

 

 

 とても自然に略称を口にする時点で絶対に嘘だろうと、お互いに気付きはしないが仲良く同じタイミングで、密かにツッコミをする雪乃と八幡であった。

 

 

「構わぬ。凡俗の意見こそ貴重なものだ。忌憚なく思う所を述べて呉れ給へ」

 

「正直、男キャラに魅力が感じられなかったなー」

 

「あー。作者本人が作品に出て来るのはアレだよな」

 

 

 思わず口を挟んでしまった八幡だったが、次の瞬間にそれを後悔する事になる。

 

 

「さすがヒキタニくん、分かってるね!時代の最先端は見た感じ誘い受けだけど鬼畜チェンジもできるハイブリッドかつリバーシブルなタイプだと思うんだよね。ヘタレで他の男から手を出されるのを待っているタイプの主人公は今の流行からは遠いんだよ。だからこの作品も主人公をヒキタニくんみたくして敵に隼人くんみたいなイケメン爽やか実は内心オラオラ系とか配置したらそれだけですっごく作品が良くなるというかそうなったらもうこれはキマシタワー!」

 

「……姫菜、擬態しろし」

 

「は、はは……」

 

 

 この世界でも鼻血とか出るんだなと、全力で現実逃避をしながら傍観者たろうとする八幡であった。だが現実はシビアである。彼は当事者である事を免れない。姫菜を介抱する優美子と結衣を眺めながら諦めの境地へと達した彼は、ようやく海老名姫菜という少女の本質を見た気がした。そして妄想の対象になるとこんな気分を味わうのかと、男子に人気のある女子生徒達に心からの同情を寄せる八幡であった。

 

 雪乃には姫菜が口にした言葉の意味がほとんど解らなかったが、何となく自分が関与してはいけない話題だと察して気に留めない事にした。彼女が鼻血を出した時は焦ったものの、優美子の対応が慣れたものだったので様子見に徹したのである。

 

 材木座には彼女の発言内容は理解できたが、突然すぎて思考が追いつかなかった。だが冷静さが戻るにつれ、二次元にしか存在しないと思っていたアングラに深い関心を持つ女性を現実に目の当たりにして、興味と拒絶と両極端の感情が彼の心には宿っていたのであった。

 

 

「ごめんごめん。真面目な話に戻すと、男同士でも異性関係でも、突き合いにはリアリティが伴っていないとダメだと思うんだ。主人公の前世からの妻とか、転生のたびに共に行動する相棒って設定は別に良いんだけど、その設定を物語の中で展開させるなら、やっぱり読む人が納得出来るだけの描写が必要だと思うんだよね。話が佳境に入るたびに、前世を理由に出して解決するのは止めた方が良いと思うよ」

 

「ひぎぃっ!」

 

 

 実のところ、暴走してしまった自分には内心で姫菜も驚いていた。確かに一昨日に夕食を共にして以来、雪ノ下とは良好な関係を築けていると思う。直接話をしてみると噂にあったような孤高な雰囲気を感じる事もなかったし、むしろ結衣との会話を聞いていると年相応の可愛らしい女の子という印象が強くなってくる。彼女なら、素の自分を見せても対応が変わるという事はないだろう。

 

 

 また、結衣の想い人である奉仕部唯一の男性も、雪ノ下や結衣との会話を聞いていると教室での様子が嘘に思えてくる。いや、確かに言葉の端々から教室内で孤立している彼に繋がる要素は色々と伝わってくるのだが、この教室での彼は気遣いもできるし言葉に複数の意味を込めた会話も普通にこなせている。おそらく結衣は飼い犬を助けてくれた恩だけでなく、彼のこうした内面にも惹かれているのだろう。

 

 態度には出さないが優美子と同様に、結衣が変な男に付き纏われない様に彼の為人を確認する必要があると考えていた姫菜だが、彼が相手ならそれほど悪い事にはならないだろうと判断した。彼が結衣の相手として相応しいかはまだ判らないが、普通に部活の仲間としてなら心配する必要はなさそうだった。

 

 

 だが、まさが自分が彼の言葉をきっかけに暴走してしまうとは姫菜も予想外であった。密かに彼と葉山隼人とのカップリングを検討していたのは確かだが、彼にはそうした一面を見せても大丈夫だという判断が、自分でも気付かぬうちに姫菜の中にはできていたのだろう。

 

 

「あ、そういえば。出席を取ってる時にはヒキタニって呼ばれてるからそれが正しいと思ってたんだけど、雪ノ下さんはヒキガヤって呼んでるよね。どっちが正解なの?」

 

 

 姫菜は瀕死のダメージを受けて土気色になった材木座に一切配慮をする事なく、室内の空気を全く無視して思い付いた疑問を口にした。

 

 

「あー、別にどっちでもいいぞ。一応ヒキガヤが正しいんだが、担任の中ではヒキタニで定着してるみたいだしな」

 

「じゃあ教室でもヒキガヤくんって呼んだ方が良いんじゃない?」

 

「……いきなりヒキガヤって呼ばれてクラスの注目を浴びるのもアレだし、その、なんだ。俺と教室で会話とかして、お前らが他の連中から変な目で見られるのもアレだしな。むしろ俺の心の安定のためにも、話しかけないでくれると助かるんだが」

 

「んー。話しかけないかは保証できないけど、じゃあヒキタニくんって呼ぶからよろしくね」

 

 

 一方その頃、材木座は「前世に頼らずとも我ならば上手く話を収束できるという信頼の裏返しだな。まったく、昨日会ったばかりの者にすら隠し通せぬ我が才能の迸りが、少しばかり恨めしいわ」などと妄想を働かせて回復を終えていた。三たび全快した彼のたくましさは我々も見習うべきかもしれない。

 

 

「では、そのヒキタニくんの感想を聞かせてもらえるかしら?」

 

 

 気のせいか普段より少しだけ厳しい口調で、進行役の雪乃が口を開く。彼女の圧力に少しびびってしまった八幡だったが、何とか返事が出来た。

 

 

「あ、ああ」

 

「は、八幡。貴様なら我が深遠なる物語の真価を説明してくれるであろうの」

 

 

 流石の材木座でも、雪ノ下に期待をするのは無謀だと理解しているのだろう。文字通り最後の砦となった八幡に向ける彼の視線は期待に満ちたものであった。しかし。

 

 

「……学園異能バトルを書きたいのは分かるが、禁書にハルヒを混ぜて百で割ったような薄い内容はどうかと思うぞ」

 

「ぴゃあっ!」

 

 

 作者への配慮が全くない実に客観的かつ適切な評価を受けて、材木座は遂に虫の息になる。しかし八幡の発言は止まらない。

 

 

「あと、パクリすぎ。もうちょっとアレンジする努力をしろよな」

 

「ぶふっ!?ぶ、ぶひ……」

 

 

 おお、ざいもくざよ。しんでしまうとはなさけない。脳内で呼び掛けられる声に応えて何とか立ち上がり、彼は四たび復活を果たす。よもや八幡が幻紅刃閃(ブラッディナイトメアスラッシャー)を繰り出してくるとは予想外であったが、我は何とかそれに耐えたのだ。死の淵から全快した彼のたくましさは我々も見習うべきかもしれない。

 

 

***

 

 

「さて。さすがに自覚できていると思うのだけれど、貴方の作品の出来は酷いものだったわ。文法も修辞も論理も落第点だし、登場人物の掘り下げは浅く、展開も陳腐だわ。他作品を安易に使い過ぎているという指摘もあったし、これを修正するよりは一から新しいものを書いた方が良いレベルね。結論としてはそんな感じになるのだけれど、何か言いたい事はあるかしら?」

 

「……また、読んでくれるか?」

 

 

 材木座の意外な言葉に、教室の中は静まり返った。容赦のない雪ノ下のまとめに内心で汗をかいていた面々だったが、今は誰もが呆気にとられた表情をしている。

 

 

「……どういう意味だ?」

 

 

 知り合いのよしみで八幡が尋ねる。それに答える材木座の顔は、珍しく現実のみを見据えた真面目な表情であった。

 

 

「いかに我とて、これほどの酷評には忸怩たる思いである。だが、我は同時に嬉しかったのだ。自分が書いたものを諸君ら五名に読んで貰えて。今の気持ちをどう表現して良いのか分からぬが、恥ずかしい評価を受けた事も含めて、我は我が作品に向き合ってくれた事を嬉しいと思うのだ」

 

「そうか……。お前はもう、作家病にやられちまったんだな」

 

「作家病?」

 

「……作品を書きたいって思いに取り憑かれちまった連中の事だ。こいつはもう手遅れだな」

 

 

 誰の呟きだったのか判らないが、八幡はその声に解説を返す。たった五名の読者でも、そしてこれほどの酷評でも、材木座にとっては何よりの価値があるのだろう。ならばそれを応援しないという選択は八幡には無い。

 

 

「じゃあ今からの議題は、こいつの作品を良くする為にはどうしたら良いか、だな」

 

「ぬぅぐ。このままでは駄目であるか?」

 

「ま、駄目だろうなぁ」

 

 

 八幡の返事に深く頷く女性陣であった。そして何かを思い付いたのだろう。結衣が口を開いて雪乃に向けて質問を投げかける。

 

 

「それってさ、この世界のスキルで何とかならないのかな。作家スキルとか、そういうのって無いの?」

 

「ええ。創作スキルとか作家スキルとか、その手のものは存在しないわね」

 

「え、どうして?料理とかはスキルがあるのに」

 

「……そうね。簡単に言えば、数字にするのが難しいからよ。例えば誰か好きな作家を想像してみて欲しいのだけれど、作品には名作もあれば駄作もあるでしょう?歴史に残る名作を生み出した作家が次に凡作しか書けなかったり、そもそも前作の評価に押し潰されて作品を書けなくなってしまう事も珍しくないのよ。かと思えば、それなりの質の作品を定期的に発表し続ける作家も世の中にはいるわよね。彼らを一律に数字で評価するのはナンセンスではないかしら?」

 

「うーん。……難しいところはよく分かんなかったけど、数字にして比べるのは変かなってのは何か納得できちゃった。ゆきのんって、どうしてそんなに詳しいの?」

 

「依頼人が来ない時には、ひたすらマニュアル解読に取り組んでいるからだと思うわ」

 

「……俺も同じだけの時間を費やしているはずなんだがな。もうお前ってユキペディアさんの域だろ」

 

「その変な呼び名は止めて貰えるかしら?努力不足谷くん」

 

「いや、さすがにそれは無理矢理すぎるだろ」

 

 

 奉仕部三名が本筋を離れて仲良く会話を続けていると、意外な人物が口を挟んできた。

 

 

「……それってさ、スキルがある事なら何とかする手があるって事だし?」

 

「そうね。スキルそのものには物事を覆す効果などは無いのだけれど、目安として意識する事で学習効果を高める事は出来ると思うわ」

 

「どういう事だし?」

 

「先日の由比ヶ浜さんの依頼の話をしても良いかしら?」

 

 

 由比ヶ浜に一言断りを入れて、雪乃はそのまま語り続ける。

 

 

「由比ヶ浜さんの依頼はクッキー作りだったのだけれど、彼女の料理スキルは少し、その、数字が低くて、改善には時間が掛かりそうだったのね」

 

「なにせマイナスだったからな」

 

「ヒッキー、なんでばらすし!」

 

「そんなわけで、彼女の場合はサブのクッキーのスキルだけに絞って改善を試みたのよ」

 

「ちょっと待つし。サブのスキルって何だし?」

 

「チュートリアルでスキルの話は聞いたと思うのだけれど、そこで説明されたのは親スキルと呼ばれるもので、その下には色んなサブの項目が存在しているのよ。マニュアルにサブの項目が存在する必然性を説明して合格を貰えたら、サブの項目も確認する事が出来るようになるわ」

 

「ふーん。それって、運動スキルの下にサッカーとかテニスとかって項目があるって事だし?」

 

「ええ。どちらもサブとして存在しているわね」

 

「じゃあ、結衣の場合はそのサブのスキルを何とかしたって事だし?」

 

「その通りよ。クッキー作りを基本通りに何度も繰り返して行う事で、彼女のスキルは数字として大幅に改善したのよ。それはおそらく、現実に戻っても有効だと思うわ」

 

「ん、だいたい解ったし。教えてくれて感謝するし」

 

「この程度でお礼とか、別にいいわ」

 

 

 少しだけ悪戯っぽい表情を浮かべながら、先程の姫菜の口調を真似て雪乃は返事をする。話の途中からずっと結衣に向けて平謝り状態だった八幡は、話題が一服した事で話を戻した。

 

 

「要するに、スキルの数字は正しい手順を踏めば上がっていくし、それが目安にもなるし励みにもなるって事だな。で、材木座の話なんだが……。俺が知ってるスキルだと文芸評論家スキルと、それからリベラル・アーツのうち文法と論理と修辞のスキルは使えねぇかな?」

 

「ええ。私も文法・論理・修辞の三学は考えていたのだけれど、文芸評論家スキルに目を付ける発想は面白いわね」

 

「んじゃ、それでいくか。材木座、お前は今まで通りに作品を書けば良いんだが、いま挙げたスキルの数字を定期的に記録して欲しい。多分、色んなものを読んだり書いたりしていると上がって行くと思うが……」

 

「三学って多分、書く能力を判定するんだよね?じゃあ文芸評論家スキルって?」

 

 

 話の内容に興味を惹かれたのか、姫菜が質問を出す。

 

 

「スキルの名前には評論とあるのだけれど、評論家スキルはその分野の知識がどれほどなのかを数値化したものね。既存の知識を色々と組み合わせて評論という形にする評論スキルとは、明確に差別化されているわ。彼には明らかに読書量が足りないから、それを改善する目安にしたいのだと思うわ」

 

「ま、そういう事だな。すぐには効果が出ないかもしれんが、まあ頑張れ」

 

 

 予想以上に多くの宿題を出されて途方に暮れる生徒さながらの表情を浮かべる材木座であったが、彼を親身に思っての提案である事は明確である。我にできるのかな?とちょっぴり涙目になる材木座だが、彼の表情は今までに浮かべた事がないほどに爽やかなものであった。

 

 こうして、材木座の依頼も部活見学も、全ては無事に終了したのであった。

 




ちょっと今回はスキルの説明が長くなってしまいました。
お詫び代わりになるか分かりませんが、書きながら何となく考えた材木座のステータスを書いておきます。

名前:よしてる
HP:無駄に多い
MP:魔法使いの資質はばつぐんだ!
攻撃:貧弱!
防御:貧弱ゥ!
特技1:もうそう(自分のHPを特大回復)
特技2:ねつぞう(自分のMPを特大回復)
使い方:瀕死→回復のループを利用して敵の足止めや陽動に最適。ただし逃げ足が速いので、玉砕するまで粘ってくれると期待していると裏切られる。

次回は週の半ばの更新になります。
ご意見、ご感想、ご指摘などをお待ちしています。

追記。
話の内容的にお恥ずかしい話ですが、「てにをは」を一箇所修正しました。(6/25)
細かな表現を修正しました。大筋に変更はありません。(2/20)

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