俺の青春ラブコメはこの世界で変わりはじめる。   作:clp

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今回は久しぶりの依頼です。


06.そこでは活発な議論が交わされる。

 この日の放課後は常と違って、普段の2倍の人数が奉仕部の部室に詰めかけていた。最初に到着したのはいつもの通り部長の雪ノ下雪乃であり、次に現れたのは材木座義輝であった。もっとも彼は雪ノ下が1人待ち受けていることを確認した時点で入室する意思をすっかり喪失してしまい、廊下で友人の登場を待ちわびていた。

 

 彼にとっては気の毒な事に、友人たる比企谷八幡はこの日はなかなか姿を見せなかった。先刻の休み時間に体験した至福のひと時がその後も頭から離れず、他人から見れば気持ちの悪い思い出し笑いを何度となく繰り返しながら、机に座ったままなかなか動こうとしなかったからである。

 

 それに対して、普段は放課後に教室に残って長々とお喋りをしている仲良し3人娘はこの日は楽しげな雰囲気もなく、事務的とも思えるやり取りを男子グループと交わしただけで、すぐさま席を立った。そして幸せに浸る八幡を半ば引き摺るようにして、揃って部室へとやって来たのである。

 

「ちょ、お前らいきなり何なんだよ」

 

「いいから、さっさと歩くし」

 

「正直に言うと絵柄的には、とつはちはイマイチなんだよねー。傍目からすると健全すぎて面白みに欠けるっていうか」

 

「と、とにかく早く部室に行こっ!」

 

「分かったから、頼むから引っ張るなって!」

 

 由比ヶ浜結衣に制服の袖を掴まれたまま連行される八幡は、先程までは戸塚に惑って脳内がピンク色だった事もあり、事態の急激な変化を把握できず戸惑ったままである。少し恥ずかしそうに、ちょこんと彼の袖を握る由比ヶ浜の様子にもまるで気付かず、自分が見目麗しい女子生徒3人に囲まれている事も自覚できぬまま、彼は部室の前に姿を現した。それを見た材木座が思わず魂を飛ばしかけてしまうのも無理のない事であろう。

 

 こうして、久方ぶりに大人数が参加した部活が幕を開けたのであった。

 

 

***

 

 

 廊下での騒ぎから予測はしていたものの、実際に5人の生徒が一気に部室へと入ってくる光景を見て、雪ノ下は少し呆気に取られた表情を見せる。約1名を除き、そして部員の片割れは仕方がないと諦めるとして、普段であれば残りの顔ぶれは彼女にとって親しい面々であり、彼女らが突然部室にやって来たからといって唖然とする彼女ではない。つまり雪ノ下は彼女らの来訪そのものではなく、やってきた彼女らの雰囲気が予想外で少し固まってしまったのである。

 

 問題を早急に解決したいと意気込んでいる三浦優美子とは対照的に、海老名姫菜は普段通りマイペースの様子である。そして由比ヶ浜は怒っているのか恥ずかしいのか、その他にも焦りや苛立ちの表情も窺えて、一見しただけでは事情が全く判らない。とりあえずは席に落ち着かせてからだと考えて、来訪者を招き入れながら各々の配置を指示する雪ノ下であった。

 

 

 全員が椅子に腰を落ち着けている間に部長自ら淹れたお茶を出して、ひとまず教室内の空気は一息ついた形になっている。いつもと同様に雪ノ下の右手に由比ヶ浜が座り、その後ろに三浦と海老名が座る。それはいつかの材木座の依頼の時と同じ配列だが、今回の彼は依頼人ではないので八幡から見て左手に座っている。八幡の右手側のお客様席には、由比ヶ浜が椅子を準備していた。それをお茶を準備しながら確認していた雪ノ下は、最初にその疑問を口にした。

 

「それで、今日は誰か依頼人が来るという事なのかしら?三浦さんと海老名さんが参加してくれる事を歓迎したい気持ちはもちろんあるのだけれど、良かったら事情を教えてくれないかしら?」

 

「あ……。詳しい事は後で話すから、ちょっとだけ待って。もうすぐ隼人くんが来ると思うから」

 

「そう。由比ヶ浜さんがそう言うのなら、詳しい話は彼が来てからにしましょう。今は平塚先生のところかしら?」

 

「うん。依頼の許可を貰いに行ってる」

 

「あーし達も一緒に行くって言ったけど、先に部室に行って欲しいって言われたし」

 

「雪ノ下さんとヒキタニくんに先に話をしておいてくれって言われたんだけど、でも隼人くんが来てから話を始めた方が良いよね?」

 

「……そうね」

 

 普段は合理的な行動が多い葉山隼人だが、今日はどうにも納得できない事が多い。数日前からクラス内で囁かれていた噂を今日になって問題にし始めたり。三浦と海老名はともかく、部員の由比ヶ浜と一緒に平塚先生のところに行った方が依頼の許可がスムーズに下りそうなものなのに、独りで職員室に行く事に拘ったり。

 

 3人娘が不思議そうな表情で彼の今日の行動を振り返っている一方で、雪ノ下には彼の意図が理解できた。おそらく彼が突然この部室に現れる事になるのを避けたかったのだろう。つまり、前もって彼女達の口から、彼の来訪を自分に告げさせるのが目的だったのだろうと雪ノ下は結論付けた。彼女と彼の過去の関係は、未だこの教室に居る生徒達には知られていないのである。

 

 

 少しだけ気を取り直して、しかし苛立った感情は完全には抑えられないままに、彼女は次の疑問へと話を進める。

 

「では、そこの彼の用事を先に片付けたいのだけれど」

 

「おい、そろそろ放心状態から戻って来い。あと、俺は別に裏切ってねーからな。どっちかって言うと、不幸な事に巻き込まれまくってる感じが強いんだが」

 

「ほむん。不幸体質とは、貴様が全てを打ち消す能力に目覚める時が近いのやも知れぬな」

 

「頼むから空気を読め。なんか知らねーけどいつもより口調が厳しいから、てきぱき答えた方が身の為だぞ」

 

「む。だが我って特に言うほどの用事は無かったというか、我の前途が開けた事を貴様に自慢したかっただけで御座候」

 

「はあ……」

 

 期せずして八幡と雪ノ下の溜息が重なる。すっかり興味を失って物思いに耽る雪ノ下と、葉山の様子について小声で語り合うのを再開した3人娘を横目に眺めながら、「職場見学の行き先が出版社になったのでコネができる」「コネを使って作品を売り出して貰える」「売り出した作品が大ヒットして我の前途は洋々だ」という材木座が主張する謎の三段論法をそっくり聞き流す八幡であった。

 

 

***

 

 

 ノックの音がして、1拍遅れて雪ノ下が入室の許可を告げる。それに「お邪魔します」と涼しげな声で返事をしながら、予想通りの人物が奉仕部の扉を開けて教室の中へと入って来た。少しだけ教室内を見渡して、そこに居る顔ぶれを確認しながら各々に笑顔と軽い会釈をして、葉山は用意された椅子へとゆっくり歩いて行く。「ここ、いいかな?」と一言確認を取って、彼は依頼人席へと腰を下ろした。

 

「無事に許可は取れたし?」

 

「ああ。平塚先生に話してみたら問題ないと言われたよ。ただ、事態がエスカレートするようなら教師の立場で介入すると、一応は釘を刺されたけどね」

 

「じゃあ、隼人くんに説明をお願いしても良いかな?」

 

「俺から奉仕部への依頼だし、問題ないよ。結衣に橋渡しして貰って助かった。雪ノ下さんもヒキタニくんも、お世話になるけどよろしく」

 

 流れるような口調で会話をリードする葉山に対し、呼び掛けられた八幡は不器用に頷くことしかできない。しかし雪ノ下は珍しく硬い表情を浮かべて彼に話を促す。

 

「……能書きはいいから、本題を」

 

「ああ、そうだね。……実は最近、うちのクラスで変な噂が流行っててね。教室の空気も少し前とは違って重い感じだし、俺と仲のいい連中が悪く言われてるから腹も立つしさ」

 

 冷たい声で話し掛けられたというのに、葉山の表情は微塵も揺るがない。まるで前もって彼女の反応が判っていたかのように、彼は平然と事情を説明し始める。雪ノ下の口調に少し驚いていた面々も、葉山の対応があまりに平常通りだったので、いつしか彼が語り始めた内容に意識を移してしまった。

 

「噂を流した犯人を見付けて糾弾したいわけじゃないんだ。ただ、こうした噂を流されるのって気持ちのいい事じゃないし、できれば丸く収めたいんだけどさ。俺たちと一緒に対策を考えてくれないかな?」

 

「なるほど。つまり、事態の収拾を図ればいいのね?」

 

「うん。俺たちもできる限りの事はするからさ。奉仕部にも協力して欲しい」

 

「なら、犯人を捜すのが一番だわ」

 

「え……。できれば穏便に済ませたいんだけどな」

 

「自分は矢面に立たず、卑劣な噂を流すだけの連中に思い知らせるには、面と向かって()()()()()のが一番効果的なのよ。悪意を持って噂を広める連中も面倒だけれど、中には善意で噂を流す輩が居るという事も知っておいた方が良いわよ?」

 

 その教室に居た誰もが、彼女のお願いとは脅しの事だろうと脳内でツッコミを入れたが、幸いな事にそれを口に出す蛮勇を発揮する者はいなかった。それに、溜息混じりに話す彼女の様子を見るだけで、特に女性陣には彼女が過去に同種の体験をした事を嫌でも悟れてしまう。

 

 

 沈黙する女性陣と、思わぬ展開に頭を悩ませる葉山を尻目に、何故か大きく頷きながら口を開く者がいた。

 

「ふむ。確かにそれは正論であろう。我も『あいつの相手をするな』と善意で噂を広められた過去があるからの」

 

「あー。そういや俺の場合も、『比企谷菌が伝染るから』ってクラスに広めてた奴はたぶん善意の行動だったんだろうな」

 

「貴方たちの場合は当然の帰結ではないかしら?日頃の行いに原因があるのだから、性根を入れ替える事をお薦めするわ」

 

 せっかくの賛同者を一刀両断する雪ノ下であった。さすがに不満げな表情を浮かべて、しかしちょっと怖いので小声になりながら、八幡は精一杯の抗議を行う。

 

「お前、虐げられている者の味方なのか敵なのかどっちなんだよ……」

 

「そうね。貴方の味方でない事は確かなのだけれど……」

 

 素敵な笑顔を八幡に向けながら雪ノ下は返事を返す。しかし彼女の発言はそこで終わらず、朗々と続きの言葉を宣言するのであった。

 

「一応の形の上ではうちの部員でもあるのだから、それを根拠なく悪く言うのは許せないわね」

 

「ゆきのん……!」

 

 何故か感動した様子で目を潤ませている由比ヶ浜に呆れながら、「これって俺の肩書きが自分に関係してるから怒ってるだけで、奉仕部の部員じゃない俺に価値はないって言われてるよね?」と密かに落ち込む八幡であった。

 

 

***

 

 

 その後の会話によって噂の内容が教室内の生徒達に共有された。噂で悪く言われているのは、戸部・大和・大岡の葉山グループ3名と八幡の計4名である。

 

「比企谷くんの噂だけなら放置しておいても問題は無いと思っていたのだけれど。早めに動くべきだったのかしら」

 

「あ、さっきも思ったけど、ゆきのんってヒッキーの噂を知ってたの?」

 

「ええ。といっても今日のお昼に知ったばかりで、動きようが無かったのだけれど」

 

「そうか。国際教養科にまで広まっていたとなると、ますます早く動いた方が良いね」

 

「そういえば、隼人が今日になって急に動き出したのは何故なんだし?」

 

 少しだけ返事が遅れたものの、素直に話すべきだと思ったのだろう。葉山は簡単に事情を説明する。

 

「……うちのマネージャーが噂を聞いたみたいでね。一年にまで広まるようでは看過できないと思ったからさ」

 

「あー。いろはちゃんって顔が広いから、誰かが教えたんだろうね」

 

「結衣、わざわざ名前を出さなくても……」

 

 海老名が小声で注意をしているが、実は三浦としてはそれほど気にしていない。部活に関する事は口を出さない代わりに、放課後を待たずクラスに押しかけるなどの行為は慎むようにと手打ちが行われていて、彼女らの関係は平衡状態にあるからだ。それに彼女としても、今すぐ葉山と付き合いたいとまでは思っていない。今の関係を維持しながら彼をより深く知りたいというのが彼女の本音であった。

 

 

 ともあれ、葉山の急な行動に納得ができた事で、話し合いは今まで以上に熱気を帯びて来た。それぞれ思いは異なるが、仲の良いクラスメイトを悪く言われて怒る者たち。自らの下僕もとい部員を貶されて立腹する者。悪い噂を流すという武士の風上にも置けぬ輩を成敗したい者。そして目立たぬようにこれだけ気を配りながら過ごしているのにまた悪い噂かと呆れる者まで、彼らは事態の収拾という目標を共有できていた。後はどう対処するかの問題だけである。

 

 八幡は葉山を尋問する雪ノ下の背後で調書を取っているような気持ちになりながら、当事者の情報を整理してみた。それは以下のようになっている。

 

 

 戸部の噂:ゲーセンで他校の生徒を脅したり暴力を振るっていた。

 葉山の評:見た目は悪そうだがノリの良いムードメーカーで、行動に積極的な良い奴。

 雪ノ下の評:騒ぐしか能がないお調子者。

 

 大和の噂:三股をかけている屑野郎。

 葉山の評:冷静かつマイペースで人を安心させる、寡黙で慎重な性格の良い奴。

 雪ノ下の評:反応が鈍い上に優柔不断。

 

 大岡の噂:練習試合で意図的にラフプレーをして相手エースを潰した。

 葉山の評:人懐こく気の良い性格で、上下関係に気を配って礼儀正しい良い奴。

 雪ノ下の評:人の顔色を窺う風見鶏。

 

 八幡の噂:純情な女子生徒2人の弱みを握って調子に乗っている卑劣漢。

 葉山の評:誤解されやすいが優しい性格で、読書量に裏付けられた幅広い知識を持っている良い奴。

 雪ノ下の評:人の好意を信じられない臆病者のくせに捻くれた思考を誇らしげに語り偏った読書遍歴によって得た偏った知識を遺憾なく発揮して日々を過ごすその姿は……(以下数千字ほど略)。

 

 

 八幡が整理したこれらの情報を教室に居る全員で回覧していると、ふと材木座が疑問の声を上げる。八幡の事を何度も裏切り者だと勘違いした彼だからこそ真っ先に気付けたのだろう。

 

「ほう。八幡、主の噂だけ他とは趣が異なるが、それをどう考える?」

 

「は?勿体ぶってねーで、どう違うのか説明しろ」

 

「ほむん。貴様が同じ部活のそこな女子2名とキャッキャウフフしている姿は簡単に確認する事ができる」

 

「お前、言葉の意味を知られたら命の危険があるって事を解ってんのか?」

 

「げふん。つまり主の噂だけは確認が容易であり、そして否定も容易であるという事だ」

 

「……なるほどな」

 

 

 納得の声を上げる八幡と同時に、他の面々も彼に見直したと言いたげな目を向ける。急に多くの視線を集めて挙動不審になる材木座だが、幸いな事に雪ノ下が口に出しながら考察を始めた事で、酷い有様になる事はなかった。

 

「確認という事で言えば、大岡くんの噂も同じ部活の生徒に尋ねる事ができるわね。それに顧問の先生に問い合わせても良いし……」

 

「戸部や大和の噂は否定するのが厄介だし」

 

「優美子の言う通り、無い事を証明するのは難しいからな」

 

「じゃあ、ヒッキーとかより、とべっち達への恨みが重いって事?」

 

「……それはどうだろうな。噂の内容に強弱を付ける事によって、仲間割れとか狙ったのかもしんねーぞ。ま、俺は仲間じゃないから何で巻き込まれたのか意味不明だが」

 

「仲間割れをさせて、犯人にどんな得があるというのかしら?仲間がいないだがやくん」

 

「おい、名古屋弁を使ってまで俺の名前を弄る事はないだろ?」

 

「ほう。葉山グループが仲間割れで弱体化するとなると、我の天下も見えてくるやもしれぬな」

 

「ねーから。つかお前は適当な事を喋りすぎだ。団体行動ができないと大人になって苦労するぞ」

 

「貴方の約束された未来の話は今はいいわ。同族嫌悪とでも言うのかしら?この中で団体行動に一番向いていないのは貴方たちじゃない」

 

「ばっかお前、俺なんて集団から3歩下がって大人しく付いて行くぐらい団体行動に適した男だぞ。今度の職場見学だって俺の意志は全く反映されないだろうが、それを黙って受け入れる覚悟はできてるぞ」

 

「……あ!」

 

 

 すっかり雑談状態になっていた話し合いの場に、由比ヶ浜の鋭い声が響く。皆の注目を集める中、彼女は静かに語り始めた。

 

「えとね、仲間割れして誰が得するかだけど、今度の職場見学って3人1組なんだよね。つまり……」

 

「誰か1人が脱落すれば、他の2人は隼人と同じグループになれるし」

 

「となると、仲間割れで犯人が得をする事になるから、犯行の意図も理解できちゃうね」

 

 3人娘が納得顔で話を進めていくが、他の面々はどうにも納得できない。

 

「あの……そんな事でこんな噂を流すものなのかしら?」

 

「俺もそこが不思議なんだが」

 

「同志を陥れて、己のみ仲間面ができるものでござるか?」

 

 同じグループになる当事者ゆえに葉山も言葉にこそ出さないものの、彼女らの発想に疑問を持っている様子である。

 

「うーん……。一度ハブられると定着しちゃうし、そうなると後の人間関係にも影響しちゃうからね」

 

 とはいえ、そう由比ヶ浜に説明されると理解できる事でもある。意外な展開に教室内の空気は一気に重くなり、新たな仮説にどう対応したものかと誰もが頭を捻っていた。しかしこんな展開であっても、己を貫く少女には関係がないらしい。1つ大きく息を吸って、雪ノ下は口を開く。

 

 

「この仮説が正しいかどうかはともかく、彼らの関係性を確認しないわけにはいかないでしょう。正直に言うと、比企谷くんが巻き込まれた理由がよく判らないのだけれど」

 

「たぶんヒッキー、最近は教室で隼人くんとちょくちょく喋ってるじゃん。それのせいじゃないかな?」

 

「……マジか」

 

「……俺のせいでヒキタニくんまで巻き込んじゃったって事か」

 

「葉山くんが原因かはさておき、そう言われると更に説得力が出て来るわね。……グループの決定は明後日で間違いないかしら?」

 

「うん、どのクラスも同じだったと思うけど。……ゆきのん、何か対策があるの?」

 

「そうね。まず明日は被疑者たちの行動を観察して、容疑が固まれば直接の話し合いに持ち込むわ。絞りきれない場合はまた別の方法を考えましょう。とにかくもう少し情報が欲しいところね」

 

「いや……。俺はまだこの仮説に納得したわけじゃない。だからあいつらの無実を証明する意味でも、明日は俺なりに周囲に気を配って過ごしてみるよ」

 

 葉山にも意地があるのだろう。確かに筋の通った仮説ではあるが、友人を疑いたくもない。だからこそ事態の全貌を掴むべく、彼も真剣な表情を見せていた。

 

 同じクラスの生徒達が葉山グループとその周囲の様子を観察して、雪ノ下は噂がどこまで広がっているのか注意を払う。そうした方針を確認して、この日の部活は終了したのであった。

 




次回は週の半ばの更新になります。
ご意見、ご感想、ご指摘などをお待ちしています。

追記。
細かな表現を修正しました。大筋に変更はありません。(9/13,21)
約一年に亘って見逃していた由美子→優美子に修正しました。(2017/9/9)

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