Fate/Last Master   作:三代目盲打ちテイク

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絶対魔獣戦線 バビロニア 16

 どぶさらい。

 どぶさらい。

 どぶさらい。

 

 ――ごきっ……

 

「ぐうっ、腰が」

「む、大丈夫かね、マスター」

「そうです、無理は禁物ですよトナカイさん!」

「い、いや、大丈夫。ふー」

 

 最近、きちんと運動していたはずだが、どうにも腰が悲鳴を上げていた。それだけヘドロが重たいのだ。

 今日の仕事は、川の掃除。それを朝から続けてもう昼なのわけなのだが、終わりが見えない。

 今日の仕事である川を含めた水路の清掃、朝から、川が汚れているということで、カルデア大使館へ対処の依頼が来た。川掃除だとたかをくくっていたのだが――。

 

「終わらない……」

 

 ウルク中の水路を掃除しても掃除しても全然綺麗にならないのだ。ジャンヌとジェロニモ、二人のサーヴァントがいるのだから、もっと早く終わると思っていたのが、全然である。

 掃除し始めてから一時間あたりから思っていたことが、確信に変わりそうだった。いや、とっくに変わっていたのだが、見て見ぬふりをしたかったというか、またかというか。

 

「何か潜んでるんだろうなぁ……」

 

 なんとなくそう思っていたのだが、やはり厄介ごとである。どうにもウルクに来てからそういうことに巻き込まれ過ぎているような気がする。

 ヨヒメンの時とか。

 

「ふむ、やはりそうなのだろうな。しかし、悪い気配は感じない」

「そっかー、まあとりあえず見に行こうか」

「上流へ行くんですね、トナカイさん!」

 

 反対する者はいないので、川や水路の上流へと行ってみる。そして、近づくにつれて感じる酷い臭い。水路の水はどす黒くなっている。

 上流の川から水路に流れ込む基点。案の定、ここが汚染源であるようだ。

 

「トナカイさん! 見てくださいこれ! とてもかわいいです」

「なにこれ?」

 

 一言で言えばヘドロの塊、なのだが、どうにもゆるい。ゆるいというのは柔らかいとかそういう意味ではなく、ゆるキャラ的な意味でのゆるいだ。

 なにやらジャンヌから信じられないような発言が出たような気がするけど、気のせいだろう。

 

「ふむ、どうやら精霊の類であるようだ」

「かわいいです」

「ん?」

 

 えーっとジェロニモが言ったことはわかる。精霊。そうは見えないが魔獣のように敵意は感じないので、その手の類のものであることは推測できる。

 ……それで、ジャンヌはなんといった。かわいい? はて、かわいい? この前のは聞き間違いじゃなかったということか。

 

「かわいいですよ、トナカイさん!」

 

 それにしても。

 

 ――かわいい?

 

「ジェロニモ?」

「うむ、コメントは控えさせてもらうとしようマスター」

「あ、ズルイ」

「えー、可愛くないですか? とてもかわいいですよ、このゆるっとしたところとか! トナカイさん、飼っていいですか?」

「ダメ、元いた場所に置いておきなさい」

「飼いたいです!」

「ダメ」

「ちゃんとお世話しますから!」

「そう言って――ジャンヌならするだろうけど、これが安全かどうかもわからないし」

「ちゃんとしつけもしますから」

「ダーメ。ちゃんと元いた場所に返しなさい」

「マスター、それでは川が汚れたままだぞ」

「む……」

 

 ジェロニモの言う通りだ。ゆるっとしているし、敵意は感じられないがなぞの生物だ。ないより汚いので、これを持ち帰って飼うというのは遠慮したいところだ。

 

「ドクター?」

「…………」

「ドクター?」

「ああ、ごめんごめん、久しぶりのマギマリの更新だったからね、ついね」

 

 仕事中だけど、まあ、いいか。ドクターもいつまでも張り詰めていられたら困る。倒れられたら大変だ。

 

「それで、その謎生物だけど……一応、こちらでも解析してみるよ。なんだか、不思議な反応なんだ」

「不思議な?」

「そう。なんというか、高い魔力反応があるんだ。モニターしている限り危険はなさそうだけど、カルデアの司令官としては、あまり接触は推奨できないね」

「川掃除の為に何とかしたいんだけど」

「川掃除か。それなら仕方ない。ひとまず突っついてみて安全そうなら何かに移してみるというのはどうだろうか」

「駆除するにも何をするにもまずはそこからか。そういうわけだから、ジャンヌ、ひとまずって――アレ?」

 

 ジャンヌとヘドロな生き物がどこかへと消えていた。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 それは、水路の中で生まれた。より正確に言うのならば、川に落ちたあるものが原因で数か月前に生まれた。

 なぜ生まれたのか、何が原因で生まれたのかも不明。

 元は、何か、とてつもなく大きな力で作られた、■■のようなものだったことだけが、事実として存在していたが、今、その存在にとっては何一つ関係などなく、ただその胸中にあったのは、言い知れぬ感情であった。

 

 水路の中を流れながら、生きていたモノは、この街をずっとずっと見ていた。

 このウルクという街を治める王様をずっと見ていた。破滅の時の中でも、まっすぐさを忘れない人々を見ていた。

 

 その時、ソレが思ったことは何だっただろう。

 何を思ったのだろう。

 

 ――わからない。

 

 ソレには何一つわかることはなかった。何も知らないから。

 

 けれど、それは嫌なものではなく、むしろ抱くことが心地よいものであった。

 ソレは少しだけ手伝ってみようと思った。単純な思考だ。ずっと見ていた彼らの為に、自分も何かしたくなったのだ。

 

 泥であった自分にできることは何だろうか。考えた末にソレは水の浄化を始める。少しでも綺麗な水を使ってほしいと分体を作って水路から汚れを集めさせた。

 上流から流れる水を自分に通して綺麗にしていった。

 

 ウルクの人は喜んだ。それがなんだかよくわからないけれど、良いな、と思った。

 半年ほどだった頃、ソレは街に新しい人が来たことを知った。異邦からの来訪者。すごい力を持っている人たち。

 

 彼らは何か大きなものと戦っているらしい。ソレにはわからない。わかることはこの街の事とみんなが頑張っているということ。

 だから、自分も頑張った。そんな時だ。

 

「かわいいです」

 

 小さな女の子がやってきた。大人二人と一緒にこちらにやってきて、ソレを指して何かしら言っていて、次の瞬間にはソレを抱え上げていた。

 あまり川から離れたくはなかったが、動けなくなっていたところ。動かしてくれるというのなら、抵抗する気もなく運ばれている。

 

「この可愛さがわからないなんて、トナカイさんもまだまだですね。ねえ、ヘドロンさん?」

 

 ふむ、可愛いとはどういうことだろうか。ヘドロン? とりあえず名前だろうか。

 まあ、ヘドロっぽい生き物なので良いだろう。

 

「大人しい、良い子ですし、この臭いさえなんとかなれば、良いと思うのです。さあ、綺麗にしましょう!」

 

 洗ってくれるのか。

 

「ええとー」

 

 とりあえずと言わんばかりに綺麗な水をかけられるが、どうしようもない。それほどまでにヘドロンを覆う汚れは厳しいものだ。

 

「おや? どうしたんだいジャンヌ?」

「あ、博士! この子を洗ってあげてます! そうだ博士、この子を綺麗にしたいんですけど、どうにかなりませんか?」

「……そうだね。この薬を使えば綺麗になると思うけど、それとマスターが――」

「ありがとうございます!」

 

 何やら、ジャンヌと呼ばれた女の子が、ヘドロンに薬をかける。

 すると、見る見るうちに汚れが落ちるではないか。

 

「綺麗になりました! これならマスターさんも許可してくれるはずです!」

 

 きれいになった。これならまた働ける。

 

「さあ、行きましょう! ――あ、あれヘドロンさん?」

 

 さあ、行こう。仕事をしなければ。

 

「……行くんですか?」

 

 行くのだ。やるべきことがある。

 

「なら、少し遊んでいきませんか? せっかく出会えたんです。楽しい思い出を作りましょう!」

 

 少女が何を言っているのかはわからないが、もう少しだけ付き合おうとヘドロンは思った。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「それで? こんな時間までウルクの街で遊びまわっていたと」

「うむ、子供は元気でよいな、マスター」

 

 ジャンヌは、ジキル博士によって綺麗になったヘドロンとウルクで遊んでいたらしい。まあ、子供は遊んでいるのが一番だから、怒りはしないけど。

 

「それで、まだ飼いたいの?」

「いえ、ヘドロンさんはお仕事があるみたいなので」

「そっか……楽しかった?」

「はい、とても楽しかったですよ!」

「それは良かった」

 

 さて、それじゃあ帰るとしますかね。

 

「とりあえず報告しに行くか」

 

 というわけでジグラットにいる王様へ報告する。

 

「ああ、川掃除だろう。さっさと行け。貴様ら、少しは自分の臭いというものに頓着しろ」

「いえ、ヘドロンがいましてね」

「さっさと行け、見るに堪え――いや、待て。なんだヘドロンとは」

「あ、帰りますね」

「ええい、待たんか。どうしてこう、毎回毎回貴様らは、面白そうなトラブルに見舞われるのだ!」

「それこそこちらが聞きたいですよ、王様」

 

 しかし、王様も忙しそうであるが、ヘドロンとかの話に喰いついてくるあたり、この手の話が好きなのだろうか。

 いや、単純につまらない仕事ばかりだから、こういった話に飢えているのか。忙しいから遊びに行けないからだとか。

 

 まあ王様も大変だ。

 

「ふぅ……しかし、マシュは用事があるって話だったけど、なんだったんだろうな」

「なに、すぐにわかるさ、マスター」

 

 ? ジェロニモの意味深な言葉に首をかしげながらも、とりあえずはヘドロ汚れなどを落とすために公衆浴場へ行く。

 案の定男女の区分けなどない。だが、慣れたものだ。下手に恥ずかしがっては駄目、愉しむのだ。

 深夜のダビデ教育の成果が出ている。

 

 ――いやな、成果だなぁ……。

 

 だが、いつまでも恥ずかしがっていてはどうしようもなかったので、助かってはいるのだが複雑な気分である。

 

「ああ、こら、もっとしっかり洗って」

「くすぐったいです、トナカイさん――」

 

 ジャンヌの髪を洗ってやる。

 

「良し、綺麗になった」

「ありがとうございます」 

「ふぅ……」

 

 風呂から上がればミルクを飲む。最高の風呂上がりだ。

 

「ただいまー」

 

 カルデア大使館に帰る。

 その瞬間――クラッカーの音が鳴り響いた。

 

「わっ!?」

「誕生日おめでとうございます先輩!」

「へ? た、誕生日?」

「はい、ドクターにお聞きしました。今日は先輩の誕生日だと」

「あっ! そうか……そうだった……すっかり忘れてたよ」

 

 今日が誕生日だった。忘れていた。いろいろと会っていたし、レイシフトでいろんな時間に行くからそのあたりの感覚がなくなっていたが、今日は誕生日だった。

 

「じゃあ、今日マシュがいなかったのは」

「はい、ブーディカさんに教えてもらいながら先輩の為にお祝いのお料理を準備いたしました。どうぞ」

 

 食卓には豪勢な料理が並んでいる。

 

「生誕の日にお祝いをするということなので、今日は私からも、どうぞバターケーキです」

「うわぁ、ありがとうございます、シドゥリさん!」

 

 それはバターケーキだった。巫女の銀が十枚ないと買えない食べ物であり、お菓子としては最上級の品だった。

 

「まだまだあるよー。お姉さんも頑張ったんだから」

 

 さらにブーディカさんのケーキまである。本当に豪勢だ。

 

「聞ぃき、ましたぞムァスタァァァ!! 生誕の善き日、スパルタの戦士としてムァスタァ専用の盾を用意しました!!!」

 

 窓から飛び込んできた筋肉ダルマ、もといレオニダスがカルデアの意匠を施した盾を持ってきた。

 

「重たっ!?」

「ははは! それはそうでしょう。何せ身を護るためのものです。頑丈でなければ話になりませんからなぁ! だからこそ、まずはこの盾を掲げられるようになりましょう。努力と筋肉はムァスタァ! を決して裏切りませんぞ!」

「あ、ありがとう」

 

 せっかくの好意だ。それに盾が使えるようになればある程度はみんなの負担軽減になるだろう。

 

「――ッ!」

 

 と思っていたら早速役に立つ。

 突然、天井に穴が開いて、上から何かが堕ちて来た。破片を盾で防げたのでけがはない。

 

「牛若!?」

「ああ、マスター殿、間に合いました! どうぞ、これを」

 

 なにやら鉄くさいもので真っ黒な牛若丸。それが差し出してきたのは首だった。

 

「やはり、誕生を祝う儀ともなればやはり首を送るのが最高でしょう。兄上も大喜びでした!」

「いえ、あの笑みはひきつった笑みで――」

「何か言ったか弁慶」

「いえ……マスター殿、拙者からはどうごこれを」

 

 首の次に渡されたのは、白紙の勧進帳だった。

 なにやら、もう使用することはなかろうと弁慶からサインを頂戴したらしい。弁慶は彼自身だし、なにより「by」のせいでビタイチ信用ができないが、まあせっかくのもらい物だ。

 

「ありがとう」

「んじゃー、オレからはこいつだ」

 

 それはドルイドの杖だった。クー・フーリンがよく使っていたそれに似ているが、傷とかが違うし、新しい。

 

「わざわざ作ってくれたの?」

「色々とルーンで補強してあるからな、好きに使えよマスター」

「ありがとう――どうかな?」

 

 クー・フーリンのように杖を手に構えてみる。

 

「ま、それなりだな」

「ちぇー」

「次は、(わたくし)です。はい、プレゼントは、わ・た・く・しです!」

「お断りします」

「ああん、いけずなますたぁ。はい、もちろん、(わたくし)を差し上げたいのですけど、それが駄目そうだったのでこちらを」

 

 清姫のプレゼントボックスの中身は、鐘だった。ミニチュアの鐘。どうやら、安珍を焼き殺したあの鐘のようである。

 えーっと?

 

「お守りです。ますたぁ。文鎮としても使えるすぐれものですよ」

「ありがとう、清姫」

(アタシ)からはこれよ!」

「え、CD?」

「そう! マスターの為に歌った、マスターの為のシングルよ!」

「…………」

「なんで黙るのよ!?」

 

 いや、だってねえ? まあ、大丈夫なんだろうけど、ウルクにCDなんてもちこんで大丈夫なんだろうかと思ったり思わなかったり。

 まあ、大丈夫だろう。戻る時にちゃんとしておけばいいんだから。

 

「ほれ」

「わっ、わ、わわ!?」

 

 突然投げ渡されるナイフ。危うく落とすところだった。

 

「式!?」

「スペアのやつだ。護身用に持ってろ」

 

 なんというか、豪快というかなんというか……。

 

「えっと、ありがとう」

「私からはこれだ」

 

 スカサハ師匠が渡してきたのは、ゲイボルグ?

 

「え、は!?」

「作ったやつだから、くれてやる。護身用と思っていればよいが、弟子との合作でな放てば心臓に当たるから気をつけろ」

「いやいやいやいや!? なんてもの誕生日に贈ってくれてんの!?」

「ん? なんだ、足りぬか。しかし、それ以上になるとあとはケルト式の戦闘服くらいじゃが。うむ、良かろうしばし待つが良い、今から弟子とともに最上のものをつくりあげよう」

「いや、良いです!?」

 

 明らかに宝具クラスの何かだよこれ!? それがさらに増えるとか悪夢でしかないから、これでいいです! とりあえず置いておくのが怖いので、厳重に封印を施してから部屋の隅に置いておくことにした。

 これで一安心だ。

 

「わしからはこいつじゃ」

「火縄銃?」

「わしがあげれるものとか、こんなもんじゃしネ。銃は良いぞ。今、ウルクに流通させておるから、絶対魔獣戦線もまあまあやりやすくなるじゃろ」

「世界観変わりすぎじゃないですかね?」

「是非もないよネ!」

 

 そんな声出しても駄目ですよ。まったく。

 

「で……クロはいったい何してるの?」

「なにって? 呪いの接続先の書き換え? はい、完了! これであなたの痛みは私のモノ♪」

「は、い?」

 

 え、呪い? え、え?

 

「ええ、痛覚共有の呪いよ。一方通行だけど」

 

 痛覚共有ってことは、オレの痛みが、クロに行くってことか?

 

「ええ、その認識で間違いないわ。どうしてもするって聞かなくて」

「いや、そこは是が非でも止めてよ、アイリさん!?」

「いいのよ。私が望んだことなんだから」

 

 私が望んだ? つまり、クロは痛いのが好――。

 

「いや、好きじゃないから。誤解しないでちょうだい。自虐じゃなくて、ちゃんとした戦略よ、セ・ン・リャ・ク。

 イリヤと繋がってる時も悪いコトばかりじゃなかったわ。痛みは心を研ぎ澄ませてくれるし、おかげで逃れられた窮地だってあったもの」

「つまり、オレなんかの為に……?」

「そうよ、無茶ばっかりだもの」

 

 うぐ……それは、本当のことすぎて反論できない。

 

「だから、無茶防止のために、痛覚を共有させてもらったわ。まさか、私が痛くなるのに無茶なんてしないわよね、お兄ちゃん?」

 

 参った。まったくなんて小悪魔だ、この子は。

 

「わかったよ。クロの痛みがいかないように無茶はしない。約束する」

「うん、良いわ。誕生日おめでとう」

「ありがとうクロ」

「良かったわー。それじゃあ、アイリさんはこれよ!」

「え、なにこれジャージ?」

「ええ、本当はブルマがいいんだけど……」

 

 男のブルマとか誰得なんですか、というかなんでジャージなんですか。弟子だからですか、そうですかありがとうございます。

 

「私からのプレゼントはこれだ」

「なんという微妙な顔の汽車の人形なんだ!」

「私はサンタだからな。サンタは、子供たち専門だ。なに、それも悪くないものだ」

「トナカイさん、トナカイさん、私からはこれです!」

「レプリカの旗? ありがとう」

 

 アルトリアからは汽車の模型。ジャンヌからは旗のミニチュア。

 

「オレっちからはベルトだ、音も出る優れもんだ」

「うわー! ありがとう!」

 

 ライダーベルト。そのレプリカだが、決して子供向けの玩具ではない。大人もしっかり付けられる、本物志向の仕様だ。きっとダ・ヴィンチちゃんあたりがつくったものに違いない。

 

「我々キャスター全員で防御の魔術を付与した。きっとマスターの助けになってくれるだろう」

「ありがとうジェロニモ」

「私からはこれだ」

 

 それはモカシンだった。毛皮の靴だ。

 

「これは見本としておいてくれ。あとで作り方をおしえる」

 

 なるほど、毛皮があれば作れる靴か。何かあったときに使えるかもしれない。

 技術がプレゼントとはジェロニモらしい。

 

「私からはこちらをどうぞ、マスター」

「リリィ様とともに、あなたに似合う花を見繕いました」

 

 リリィとベディからは、大きな花束を。真っ白な純白の花がたくさんで、とてもいい香りがしていた。

 

「リラックス効果のある香とともにどうぞ」

 

 とても落ち着くプレゼントだった。

 

「じゃあ、僕だ。僕のプレゼントはすごいぞ。なんてったって土地だ!」

「土地……」

「ああ、ひそかに資金運用して手に入れた牧草地さ。そこで羊を何匹か飼っている。それらすべての権利はマスターのものだよ」

「あ、ありがとう、ダビデ」

 

 喜べばいいのだろうか。笑えばいいのだろうか。ともあれ、オレはどうやらこれで、地主になったらしい。

 

「ボクからは王の話をしよう。あれはそう、忘れもしない――」

 

 ぺらぺらとマーリンが語り始めた。それは王の赤裸々な話だったので、アルトリアとリリィがマーリンをぼこぼこにして、フォウ君がてしてし蹴っていた。

 相変わらずだな、マーリンは。

 

「……これを。みなさんには及びませんが……」

「全然嬉しいよ、ありがとう、アナ」

 

 それは、一輪の花だ。花束ではないが、それでも彼女からもらえたというのが嬉しかった。

 

「お誕生日おめでとうマスター。カルデアからも君のことをお祝いしている。私からは、君の肖像画だ。モナリザくらい本気出したから値打ちものだぞ」

「すげえ!?」

 

 モナリザくらい本気出したって言うだけあってダ・ヴィンチちゃんの肖像がすごい……。

 

「ごそごそなにかやっていると思ったら、肖像画を描いていたのかレオナルド。この後に発表するボクのがすごくアレみたいじゃないか」

「事実アレだからいいじゃないかロマニ」

「なんだとーぅ、ちゃんとボクだっていいもの選んだんだぞーぅ。ボクとボクらカルデアスタッフ一同からだ。君の為のマッサージチェアーとか、君の為の3DPVとかいろいろあるぞ」

「なんというか、ありがとうございます」

「いいんだ。友達の誕生日は祝わないとね。改めておめでとう。また歳を重ねたね。きっとこれから君はもっともっといろんな経験をするんだろうなぁ。うんうん、若いっていいね」

「君も十分若いだろうに」

「あはは、そうそうドクターも若いだからさ」

「いやいや、さすがのボクも十代には勝てないって」

「ははは――」

「では、最後に、わたしから――」

 

 最後にプレゼントを渡してくれたのはマシュだった。

 

「先輩、お誕生日おめでとうございます。大変めでたいので、国を挙げての祭日にするべきではないでしょうか」

「それは、さすがにやりすぎかな」

「そうでしょうか。わたしはそうは思いません。こうやって先輩が生まれてきてくれてたから、カルデアに来てくれたからわたしのマスターになってくださいました。

 わたしは、それにとても感謝していますから。こうやって先輩のお誕生日をお祝いすることができてとても嬉しいです」

「それは、こっちの台詞だよ。ありがとうマシュ。オレも嬉しい」

「わたしもです。それと、これはその、皆さんがとても素晴らしいプレゼントばかりで、喜んでくださるかわからないのですが……その、どうぞ!」

「開けていいか?」

「はい、どうぞ!」

 

 マシュから渡されたプレゼントの包みを丁寧に開いて行く。

 

「これは、本?」

「はい、先輩との旅の記録です。この旅をいつまでも覚えていたくて。すみません、こんなもので」

「いや、ありがとう。嬉しいよ」

「さあみんな食べようか。マスター、僕からはこのライスボールを贈らせてもらうよ」

「ありがとう、博士」

 

 とても豪勢な食事に舌鼓を打ち、酒を飲み、朝までどんちゃん騒ぎだった。

 部屋に戻った時、何やら偉く豪華なラピスラズリの腕輪が置いてあったがいったい誰の贈り物だったのだろう。

 

 それだけが謎だった。




遅くなって申し訳ない。
昨日が私の誕生日だったので、ぐだ男でも誕生日ネタを突っ込んでみました。
いやはや、一年が立つのは本当に早い。

さて、各自の誕生日プレゼントはいろいろとありますが、絆礼装ネタを使っているやつらがいますよね?
つまりそういうことです。
絆が10になっているということです。

リアルが忙しいし、いろいろと不安がばかりで逃げたいばかりの人生ですが、これからも頑張っていきたいと思います。
では、また次回。

次回は、絵のモデル。
粘土板世界とは。
不思議の国の正体とは。
赤の女王とは?

とか、そんな感じの予定です。
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