【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
世界有数の巨大学園都市でもある麻帆良学園。
敷地内には学校が複数存在し、研究所や機関など様々な設備も整っている。
部活やサークルに同好会の数は多く、その数は三桁を超える。
当然部によっては実績や規模の差はあるものの、どの団体も十分すぎる設備や施設が与えられ、学生たちが満足のいく学生生活を送る要因の一つともなっていた。
「っというわけで、今から散歩部と一緒に回りながら、シモンさんがこれだと思える部活を探す会を始めたいと思います!」
「いえーーーい♪」
「がんばりましょうね~」
「ウチも手伝うえ~~!」
放課後の世界樹広場にて、ネギに拍手をして盛り上げる散歩部の鳴滝双子姉妹。二人ともネギの生徒である。
そして、木乃香。さらに、少し難しい顔をしてシモンを睨むアスナと刹那が控えていた。
「えっ、ええ~ッと、俺は一応皆より年上だけど、その~、分からないところいっぱいあるから、教えてくれたらうれしいな」
少し照れながら自己紹介をするシモン。
ネギの提案により、放課後はシモンが打ち込めるものを探そうということになり、しかしまだネギ自身も学園内の団体にはそれほど詳しくないため、助っ人を募った。
それは散歩部でこの学園を日々歩き回って、詳しい鳴滝双子姉妹だ。
「OK~! ネギ先生の頼みだし、ボクたちにど~んと任せてよ!」
「い、一生懸命お手伝いします~」
元気よさそうな僕ッ娘が姉の風香で、礼儀正しいのが史香。
二人とも信じられないぐらいの低身長で中学生というよりネギの同級生といわれても不思議ではないと思ったことはシモンの秘密だ。
そして彼女たちの後ろで同じく今回の集まりにやる気を見せている木乃香。
しかし一方でアスナと刹那はどこか警戒したような顔でシモンを睨んでいた。
「あの~、何でアスナさんや刹那さんも? 僕が呼んだのは風香さんと史香さんなんですけど・・・」
「何言ってんのよ、バカ! あんたがダイグレン学園の人をつれてくるなんて言うから、心配できたんじゃない! 何されるか分からないでしょ!」
「ウチはアスナも行くし、ネギ君が元気か見たかったから来たんよ」
「不良がいるところにお嬢様が行くというのに、私が行かないわけにはいきません」
どうやらネギが鳴滝姉妹を呼ぶ際に、ダイグレン学園の生徒を連れて行くと言ったのだろう。
それがアスナたちに知られて、こういう結果になったのだった。
ドッジボール対決のときにシモンたちを睨んでいたように、その警戒心は解けることもなく、アスナたちに睨まれてシモンは少しビクッとなった。
「これでも委員長たちに知られたら、また騒ぎになるから内緒で来たんだから、感謝しなさいよ?」
「でもアスナさん、そんな顔しなくてシモンさんは怖い人じゃありませんよ」
「ま、まあ・・・それは見りゃ分かるけど・・・、っていうか、アンタ本当にダイグレン学園なの? どう見たって普通の学生じゃない」
「へっ? う、うん・・・そうだけど・・・」
「男ならもっとシャッキッとしなさいよ! とんでもない凶暴な不良が来ると思って身構えてた私がバカみたいじゃない!」
悪評高いダイグレン学園の生徒にしては、シモンはあまりにも普通すぎる。
少しアスナたちも肩透かしを食らったような気分だが、それでも油断だけはしないように、まだ警戒しているようだった。
「は~、でっ、シモンさんだっけ? ネギはイジメられないでちゃんとやってるの?」
「あっ、うん。その~、流石にまだまともな授業はやってないけど、クラスの人たちも何だかんだで先生のことは一目置いてると思うよ」
「ふ、ふ~~ん。でもさ、そんな中でアンタは何でいきなり部活に入ろうと思ったの?」
「え~っと・・・それは・・・」
「せやな~、シモンさんは中学のときには部活には入っとらんかったん?」
「何か人に言えない事情でも?」
「え~っと・・・」
いろいろと質問攻めに合うシモン。普段は同世代の男子とは別の校舎なために、彼女たちも少し興味津々のようだ。
しかしたくさんの女性に詰め寄られて少し照れて口がうまく回らぬシモンの代わりに、ネギはにこ~っと笑って言った。
「シモンさんは、ニアさんっていう素敵な恋人とつりあうような人になりたいからだそうです」
「ちょっ、先生!? 俺そんなこと言ってないよ!?」
「えっ? でもニアさんの信頼を受け止められるぐらいの男とか・・・」
「そうだけどそうじゃないというか・・・それじゃあ、少し意味が違うというか・・・」
「何アンタ、彼女いるの? 居そうに見えないのに!」
「シモンさんって意外と進んどるんやな~」
「恋人が居るのですか。でしたらお嬢様たちと行動しても、少しは安心かもしれませんね」
「え~っと、だから、その~、俺が言いたいのは~」
「ね~っ、早く行こうよーッ!」
「もう色々な部活が始まってますよ~」
「あ~~~もう、何でいつもこうなんだよ~~」
いきなりネギの問題発言で場が盛り上がりだして出発に遅れてしまったが、今日の目的はシモンの部活動探し。
この広い学園をぶらぶらとし、アスナたちの質問攻めに合いながら、シモンたちは学園の中を歩き回り始めた。
まず最初は・・・・
「え、え~っと、ダイグレン学園のシモンです。い、一応初心者で仮入部ですがよろしくお願いします」
「ほ~い、しかし高等部の、ましてやダイグレン学園の生徒が来るとは思わなかったね」
麻帆良学園の体育館。
部活としては定番な場所にシモンたちは訪問した。
とある部活の顧問に頭を下げて挨拶するシモン。
その周りではレオタード姿の少女たちがダイグレン学園という名前を聞いただけで途端に嫌そうな顔をしてヒソヒソと小声で話している。
「ネギく~ん、あの人大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ、まき絵さん。シモンさんは怖い人じゃありません」
「いや、ネギ。まき絵が思ってるのはそれだけじゃなくって、何で新体操部なのかってことよ」
体育館でシモンが先に訪問したのは、何と新体操部。特に理由はない。
自分に何が出来て何が出来ないかを判断するには、とにかく手当たり次第に挑戦していこうというシモンの意思だった。
シモンは新体操というものをまったく知らずに、とりあえず顧問の二ノ宮に頭を下げる。
「んじゃ~、ちょっと運動神経を見たいから、なんかやってくれる? いきなりタンブリングやれとか言わないから」
「・・・タンバリン?」
「・・・は~~・・・宙返りでもバク転でも倒立でもなんでもいい。力や人と呼吸を合わせるのが得意なら、男子なら団体で組技というのもあるぞ?」
新体操部の規模は大きく、麻帆良の中でも強豪の部類に入る。
そのためいきなり初心者の、ましてや素行の悪いダイグレン学園の生徒など迷惑極まりなく、顧問の二ノ宮は露骨に面倒くさそうだ。
一方で、シモンは顔を叩いて気合を入れる。
「そういえばアニキも言っていたな。男の合体・・・それは気合、そして宙を舞う美しさだって・・・・よ~っし」
体育館のフロアマットに上がるシモンに、注目する麻帆良新体操部員たち。
「シモンさん頑張ってくださーーーい!」
「しっかりやんなさいよーー!」
「ファイトやーー」
「がんばれーー」
ネギたちも声援を送る。その声援にシモンも頷き、さあ、シモンの演技が始まった!
・・・・・・・・・
「シモン、パスだ、パス回せ!」
「は・・・はい! い、いっけええーー!」
「バカやろう! バスケのパスは相手が取りやすくなきゃ意味ねーだろうがー! 何で無駄にドリル回転させるんだよ!」
バスケのコートで怒鳴られるシモン。
その様子を眺めながら、女子バスケ部の明石裕奈は申し訳なさそうに、ネギにひっそりと告げる。
「ネ、ネギくん・・・言っちゃ悪いけど・・・・あの人・・・多分バスケは駄目かにゃ~」
「ゆ、裕奈さん・・・そんな・・・」
プールでは・・・
「あいつ溺れたぞーーー!」
「アキラ、早く助けてやれ!」
「は、はい!」
プールで全力で泳いでいたら足が痙攣して溺れたシモンを、ネギの生徒の大河内アキラは慌てて飛び込んで救出した。
「い、息が・・・しっかりしてください。今・・・じ、人工呼吸します」
「しっかりしてください、シモンさ~ん!?」
「シモンさんは、水泳部も無理そうやな~」
校庭では・・・
「よっし、キーパーと一対一だ! 絶対に決めろよ、シモン!」
「よ、よっし! 今度こそ決めてやる! アニキのように気合を入れて! いくぞ、漢の魂完全燃焼、キャノンボールアタッーー・・・って、ボール取られちゃったよ~」
「バカやろう! 必殺技がなげーんだよ!?」
サッカー部のゲームで怒鳴られているシモンを眺めながら、サッカー部マネージャーの和泉亜子は頭を下げる。
「スマン、ネギ君・・・あの人多分無理やわ・・・」
「っていうかアイツ、スポーツ向いてないんじゃない?」
「せっちゃんの剣道部はどや?」
「申し訳ありませんが100パーセント無理です」
同じく校庭で・・・
「確かに男子のチアも最近はあるけど・・・」
「う・・・うん・・・」
「ちょっとキツイかな~」
苦笑しながらやんわりと断る柿崎美砂と釘宮円に椎名桜子。
「そ・・・そう・・・・」
がっくりと落ち込むシモンだった。
その後も色々な部活を回った。
運動部からサークルや同好会に至るまで手を出した。
しかしシモンの気合が空回りし続け、変わりたいと思う一方で人はそう簡単には変われぬと思い知らされる散々な結果になってしまった。
全てが駄目駄目という結果にショックを隠しきれず、最初の世界樹広場にてシモンが小さく体育座りをして落ち込んでいた。
「ここまで何にも出来ないやつは珍しいわね」
「運動系の部活なら仕方ないかもしれませんね」
最初はシモンに嫌悪の眼差しを見せていたアスナと刹那も、シモンの駄目駄目ぶりにとうとう同情し、いつの間にか真剣に部活探しに協力していたのだが、このような結果になりシモンを苦笑しながら哀れんでいた。
「ボクたちも歩きすぎて疲れたよ~」
「シモンさんもあんなに頑張ったんですけどね~」
「う~ん、せやけどこれじゃシモンさんが可哀想や」
ここまで一緒に協力した風香も史香も木乃香も少し疲れが見えるものの、シモンが納得いく結果が出ないことを自分の事のように悲しんでいた。
「せめてスポーツ経験があれば・・・」
「私も男子バスケ部の先輩にお願いしたんだけどね~、こればっかりはどうも」
「うん・・・私も力になりたいけど・・・」
「ウチはマネージャーやからそんなに入部の事に関しては言えんし・・・」
いつの間にかシモンの部活探しに協力しだした、まき絵に裕奈にアキラに亜子も、少し申し訳なさそうな表情をしていた。
「皆さん、今日はシモンさんのためにありがとうございます。でも・・・シモンさん・・・自信なくしてしまって・・・これで本当によかったんでしょうか? ボクが部活だなんて言わなければ・・・」
ネギは協力してくれた生徒たちに軽くお礼をした後、縮こまって落ち込んでいるシモンを見て、自分は安易な事をしてしまったのではと、少し後悔していた。
「そんな、ネギ君は一生懸命したんでしょ?」
「そうだよ、それにまだまだ部活はいっぱいあるし、私たちもあの人に協力するよ」
まき絵たちは全力を尽くして努力しているネギを慰めている。
そんなネギと落ち込むシモンを交互に見て、アスナはため息をつきながらシモンの元へ行き、隣に腰を下ろした。
「あ~もう、あんたもいつまでも落ち込んでんじゃないわよ。一応私たちの先輩なんでしょ? あんたが落ち込むと、ネギまで落ち込んじゃうんだから」
「うん・・・俺の所為で・・・」
「あ~もう、そんなこと言うんじゃないわよ。それに・・・迷惑どころか・・・ちょっと私もあんたを見直したんだから」
「えっ?」
アスナの言葉にシモンは顔を上げた。
「ほら、ダイグレン学園なんていい噂聞かないし、どんな奴なんだろうかと思ってたけど、こんな風に恥をかいたり、人に笑われたりしても、がんばってどうにかしようって気持ちは伝わったから、ちょっと見直したって言ってるのよ」
アスナはシモンの隣に座り、少し照れながらシモンに言う。その言葉に刹那も近づいてきて、頷いた。
「私もそう思います。その・・・最初は睨んで申し訳ありませんでした。その・・・私たちも時間があれば協力しますので、いい部活を探しましょう」
アスナも刹那も自分を元気付けようとしているのだ。
笑って励ましてくれるその笑顔が、何よりもシモンの心に染み込んだ。
「ありがとう・・・俺・・・まだまだがんばるよ」
「そうよ、その意気よ!」
「はい、やはり男性はそれぐらいでないと!」
シモンはいつまでも落ち込んでいられないと、顔を上げて笑顔で頷いた。アスナも刹那もホッとしてその言葉に頷いた。
だがその時、アスナは笑顔を見せるシモンの顔を、ジ~ッと見つめてきた。
「・・・ところであんた・・・今思ったんだけど・・・・どっかで私と会ったことない?」
「えっ? 無いよ? 俺君とは今日初めて会ったし」
「う~ん、私もそう思ってたんだけど・・・あんたをよく見ると・・・どっかで・・・」
アスナがシモン顔を、目を細めながらジ~ッと見る。
シモンも少し照れて体をのけ反るが、アスナの顔が余計アップに見える。
刹那は少し顔を赤らめてアスナを止めようとするが、集中しているアスナはシモンとの顔の距離を気にせず、余計近づける。
少し角度を変えれば、勘違いされても仕方ない。
だから・・・
「・・・むっ!? アスナさん、危ない!」
「・・・へっ?」
「はあああ!!」
刹那がアスナに飛んできた何かを切り落とした。
あまりにも突然のことでビックリして何が何だか分からぬアスナに木乃香たち。
刹那はゆっくりと自分が切り落としたものを見下ろし、目を見開いた。
「これは・・・螺旋鏢!?」
ライフルの弾のような螺旋状の鏢を指で弾いて撃ちぬく武器。
「誰だ!?」
こんな危ないものをいきなり撃ったのは・・・
「放課後は用事があると・・・一人で帰れと言い・・・自分は隠れてこれ程多くの女性と何をやっているのです、シモン?」
氷のような冷たい瞳と圧迫感で、夫の浮気現場を見つけた妻。
「く、黒ニア!?」
「・・・ニアは騙せても・・・私は騙せません。そしてそこのあなた・・・シモンに顔を近づけて・・・何を?」
「へ、へっ? 私!?」
黒ニアがシモンの前に、そして3-Aの生徒たちの前に現われたのだった。
彼女はシモンとシモンの回りにいる女生徒たち、特にアスナには一段と鋭い目で睨んだ。
「なあ、ネギ君、あの人もダイグレン学園の生徒なん?」
「はい、シモンさんの恋人です」
「えええーーーーッ!? ちょっ、こいつの彼女ってあんたなの!?」
「こんな凄い美人が!?」
「う、うそ・・・」
今は黒ニアモードで、非常にクールで冷たい表情をしているが、それでも彼女の美しさは誰もが分かった。
「恋人ではありません。妻です」
「「「「「「「「「「ええええええええええ~~~~ッ!!??」」」」」」」」」」
さらには、これ程何事も駄目駄目なシモンを、ここまで愛している女がいたなどとは思っていなかったため、彼女たちの驚きの声が広場に響き渡ったのだった。
「黒ニア・・・その・・・これは誤解なんだよ。彼女たちにはちょっと協力をしてもらって・・・」
「協力? 何のでしょうか?」
「えっと・・・それは・・・・・・・」
ネギとシモンは現れた黒ニアに所々を隠しながらも、今日一日の部活探しの話をする。
だが、全てを聞き終わった黒ニアだが、納得するどころか逆に不愉快そうな表情を見せる。
「シモン・・・何故部活なのです? 部活に入れば私と一緒にいる時間は減ってしまいます。今も私とニアで時間配分を公平にあなたと接しているのに、これ以上時間が減るのは・・・嫌です」
そして次の瞬間、黒ニアの表情が変わる。
「私も嫌です。シモンは私と一緒は嫌なのですか? 黒ニアが怒るのも分かります。どうして相談してくれなかったのです? 私はシモンに隠し事をされたくありません!」
黒ニアからニアにチェンジした。
「分かりましたか、シモン。部活などやめて私とニアと一緒にいるのです。クラブ活動など必要ありません」
「えっ? でも、クラブ活動というのは私も興味はありますよ? 私も入部できるのなら、シモンと一緒にやりたいです」
「甘いです、ニア。他の生徒たちもいるのであれば、シモンと二人きりの時間は減ってしまいます」
奇跡の人格シャッフル会話。
二重人格を苦ともしないニアだから出来る芸当。
ニアと黒ニアが代わる代わるに出て会話していた。
「ネ、ネギ・・・・な、なんなのよあの人?」
「その~、ニアさんは・・・かくかくしかじかなわけで・・・・」
結局、ニアと黒ニアの話し合いが終わるのに、数十分かかった。
何だかんだで分かったのは、黒ニアもニアもシモンと一緒の時間が減るというのが嫌だということだ。
会話を全て聞いたアスナたちは、もはやダイグレン学園だとかそういう世間一般の評価など忘れてしまい、このラブラブなバカップルに苦笑しながら、女としてどこか憧れたりもしていた。
「・・・・・・というわけで、シモン。人数が少なく、忙しくもなく、私も入部できる団体であれば許可します」
「く、黒ニア・・・いいじゃないか俺の自由にしても! 俺のことなんだから、俺が決めるよ! こればかりは黒ニアやニアが決めることじゃ・・・」
「シモン、うるさいです」
「は・・・・・はい・・・」
とてつもない覇気に当てられて縮こまるシモン。
本当に自分は愛されているのだろうかと疑いたくなるが、アスナたちはニヤニヤ笑っていた。
「尻に敷かれてるわね~♪」
「せやな~、ホンマにシモンさんが好きなんやって、よ~分かるわ」
「う~ん、言っちゃ悪いけど、どこがいいのかな~」
「しっ、まき絵・・・殺されるからそれは聞かないようにしよう」
同じ女性だからだろうか、シモンが怯えるほどの黒ニアの傍若ぶりを、愛からくるものであると理解し、シモンやネギと対照的に、ほほ笑ましそうに眺めていた。
「ええ~っと、つまり話を整理すると、黒ニアさんもニアさんも、条件さえ守れば、シモンさんが部活をやることを許可してくれるんでしょうか?」
「ええ、そうなります」
とりあえずこれまでの話をまとめるネギ。
だが、まとめた後で、ネギたちも少し難しそうに唸った。
「う~ん、アスナさん。確かクラブの最低人数は5人ですよね?」
「そうよ、しかも忙しくないって意外と難しいわよ?」
「せやな~、もう直ぐ学園祭やし・・・せっちゃんはどう思う?」
「難しいと思います。大体そのような部活に入っても、それはシモンさんの求めるものではなさそうですしね」
「ええ~~、無理じゃーーん!」
黒ニアの最低限の譲歩だが、それもまた難しい条件だった。
シモンは「そんな~」と落ち込み、ネギたちも難しいと頭を悩ませる。
これはもうお手上げなのか?
シモンの望みは叶えられないのか?
しかし、誰もがそう思いかけたとき、天から声が響いた。
「ハハハハハハハハ、お困りのようなら私が良い案を持っているネ!」
それは、自分たちの真上から聞こえた声だった。
全員が驚いて見上げると、世界樹の木の上から一人の女生徒が飛び降りてきた。
「あっ!?」
「あなたは!?」
「フフフフ、ある時は謎の中国人発明家! ある時は学園NO1天才少女! そしてまたある時は人気屋台『超包子』オーナ! その正体は・・・・何と火星から来た火星人ネ!」
その女生徒もまた、ネギのクラスの生徒であり、アスナたちのクラスメートでもある女性だった。
「ちゃ・・・超さん!?」
超鈴音が笑いながらシモンの前に現われたのだった。
「誰?」
「超鈴音さん。僕のクラスの生徒です・・・」
現われた超は、ゆっくりとシモンの前に立ち、シモンを下から覗き込む。
「あ・・・あの~」
「・・・・・・・・・・・・・」
少しドキッとするシモンに、無言で眉がピクリと動く黒ニア。
すると超は笑いながら、戸惑うシモンに対して口を開く。
「道が無ければこの手で創る! そう思わないか、シモンさん?」
「えっ、何で俺の名前を・・・」
「ふふふふ、実はダイグレン学園のシモンさんには、いつかこうして話をする機会がないかとずっと待ってたヨ。・・・って、恋愛がらみではないので黒ニアさんも睨まないで欲しいヨ」
「・・・・・・・・・・・そうですか・・・」
何と超鈴音はシモンのことを知っていたようだ。
これにはネギもアスナたちも素直に驚いた。
「でも、超さん。シモンさんに用ってどういうことですか?」
「それに案って何なのよ?」
疑問を述べるアスナたちに超鈴音は不気味に笑った。
「ふふふ、勧誘ヨ!」
「「「「「「「「「「勧誘?」」」」」」」」」」
超鈴音はシモンに一枚の紙を差し出した。
その紙には大きな字でこう書かれていた。
「これは・・・新クラブ設立申請書?」
それは、新たなクラブを作るための申請書だった。
「そう、私とシモンさんとニアさん。後二人の部員と顧問を募って、新しい部活を設立するヨ!!」
「あ、新しい部活を作る!?」
それは正に発想の転換だった。ネギやアスナたちも驚きを隠せない。
無ければ作るという発想は、まったく考えもしなかった。
「それってどんな部活なんだ!?」
シモンはワクワクしながら顔を上げる。
すると超鈴音は途端に後ろを向いて空を見上げる。
「シモンさん・・・螺旋というものは・・・世界の真理だと思わないカ?」
「ハッ?」
「遺伝子の形・・・文明の発展・・・石油などのエネルギー資源の発掘・・・この世界と人間の進化には、常に螺旋が関わっている・・・」
何か背中を向けて壮大なことを語りだした超鈴音。
しかしシモンもネギたちも期待が膨らんでいる。
「螺旋の力があれば世界が変わる。ならばそれは世界を救うことにも使えるとは思わないカ?」
「す・・・救う?」
超鈴音はニヤリと笑ってシモンを見る。
「そう、例えば現在途上国では砂漠に井戸を掘るためにドリルが活躍している。もしそれが更に進化し、火星のような不毛地帯だろうとも、大地を掘り、資源を生み出せるようなドリルを生み出せれば・・・ワクワクしないカ? 世界の新たな明日を掘り出す。私はそんなドリルを開発したいヨ。だからこそ、ドリルの扱いに長けているあなたの協力が必要ネ」
それは正に夢物語。
しかし学園最強の頭脳を誇る超鈴音の口から語られると、壮大なプロジェクトのように聞こえてくる。
「ド・・・ドリルを開発する? 俺の特技を活かせる・・・部活・・・」
「そう! その名も・・・世界を救うドリルを研究し、開発する部! その名もドリ研部(仮)ネ!! 名前は随時募集中! 部員は後2名必要ヨ!!」
これが運命の分岐点だった。
この時の超鈴音と出会い、更にまだ見ぬ新たな部員との出会いが、シモンのこれからの人生を大きく変えるきっかけになるのだった。