【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第101話 最後の夜

時刻は深夜を回った。

大盛り上がりだった祭りは無事解散し、そのまま二次会三次会に突入するかと思われたが、今日は様子が違った。

おんぼろの男子寮。ドアも壊れて鍵の意味すら無くなった、狭苦しいシモンの部屋。しかし今、シモンの部屋にはダイグレン学園のいつものメンバーが集合して、神妙な顔で会議をしていた。

 

「そうか。先公のおふくろか」

「うん」

「まさか、ノリで月に行って相合傘堀っただけじゃなく、とんでもねえもん堀やがって」

 

シモンの口から語られた驚くべき情報。

ネギの実の母親であるアリカを発見し、一緒に連れ帰ってきたことを皆に報告した。

 

「焔くんたちまでそんなことをしていたとは・・・」

「申し訳ありません、フェイト様。その・・・ノリで・・・」

「しかし、あの封印を解除するとは・・・シモンやお前たちと一緒に、神楽坂アスナが同行したのもただの偶然ではないのかもしれないな」

「運命・・・と言ってしまえばいいカ?」

 

この事実にカミナやヨーコたちも驚き、フェイトとデュナミスは難しい顔で頭を抱えた。

 

「っで、今そのお母さんはどこに居るの?」

「とりあえず、高畑先生が学園長とアルに会わせるって。ただ、アリカ自身は先生とすごく会いたいみたいだけど、まだ色々と心の準備が必要みたい」

「ねえ、そもそも先生って、お母さんのこと何か知ってるの? お父さんのことは、すごかったとか、目標とかいつも言ってるけど」

「多分何も知らないネ。女子中に居たころから、ネギ坊主は母親の話題は口にしなかたからネ」

「んじゃ、いきなり私がママですよとか言っても、困るんじゃねえか?」

「問題は、彼女の生存と消息が大々的に知られてしまわないかだけどね。特にメガロメセンブリア辺りなどは、強硬手段に出るかもしれないからね」

「いや、それなら恐らく大丈夫では? かつて紅き翼だった、クルトあたりが政府にいるしな」

「フェイト、デュナミス先生、それってどーいうことなの?」

「ハッキリ言おう。実は、アリカ姫は・・・死刑囚なんだ」

「お前たちも行ったのであろう? 魔法世界。かつてアリカ姫はその世界にある国の王族であった。しかし、滅んだ。そしてその責任を取らされて死刑判決を受けた。まあ、実際には死刑直前に乱入した男が姫を救い、そのまま逃亡したのだがな」

「うわー、すっげ~、じゃあ、それが先生のお父さんってことかよ」

 

ネギとアリカを会わせる。ただその気持ちだけで連れてきたのだが、こうして全員で落ち着いて話していると、「よし、すぐに会おう」というわけにはいかなかった。

言葉の説明だけでは決して足りぬほど壮絶で過酷な、アリカを取り巻く状況が明かされる。

だが、それでも「二人を会わせるのはやめよう」という意見など彼らには無かった。

 

「だからこそ、今度は俺たちが守るんだ。俺たちが絶対に守ってやるって約束したんだ」

 

シモンは月での誓いを口にする。

自分の存在がネギに迷惑をかけると言ったアリカに対し、アスナ達と共にその全てからアリカを守ると誓った。

なら、カミナたちの答えも決まっている。

 

「なら、それで充分じゃねえか! シモンがやるって決めたんだ。当然俺もやってやるぜ!」

「おう、こらカミナ! お前だけじゃねえだろ、ボケ!」

「そうよ~、俺たち私たちでしょ?」

「ああ!」

「不思議なものだな、テルティウム」

「そうだね。かつてはあれほどの死闘を繰り広げた相手を、今では守ろうとしているのだから」

「だが、そんな自分が私は誇らしい」

「僕もだよ。悩むことなく、アリカ姫を守ろうとする自分が、嫌いじゃない」

「はい! フェイト様、私たちもついています!」

「うん、私たちが力を合わせれば、何が来たって怖くないもん!」

「なるほど。それなら無敵ネ」

 

気づけば、フェイトやデュナミスたちまで微笑んで頷いた。

昔ならありえないこと。しかし今では当たり前のこと。

こんな未来を誰が想像したか? いや、できなかった。それだけ未来は予想不可能なものだ。

だが、それでも確実に決まっている未来もある。

 

「んじゃあ・・・祭りも終わったし、先公のおふくろも見つかったし、いよいよ次は・・・」

 

キタンが途端に神妙な顔になる。それに合わせて皆も表情が少し暗くなる。

 

「うん。・・・・・・先生が、女子中に戻る日だ・・・」

 

ネギがダイグレン学園に来たのは、あくまで研修であり、期間は最初から決められていた。

あまりにも馴染みすぎて、もはや一緒にいることに違和感もなかったが、これだけは避けられない。

ネギには帰る場所があるのだ。

 

「寂しくなるわね・・・」

 

ヨーコたちは不意に思い出す。ネギと初めて出会った時から今に至るまでを。

見るからに子供っぽい子供。だが、内には力強い意志と信念を持っていた。

何度救われたか分からない。何度導かれたかわからない。どれだけ教えられてきたか数え切れない。

 

「俺さ。かなり胸が痛かったんだよ」

 

不意に、キタンが複雑そうに頭をかいた。

 

「祭りんとき、先公が言ったじゃねえか。いつまで居心地のいい場所にいるつもりだ。先のことばっか不安がっても仕方ないだろってさ」

「ええ、そうね」

「あの言葉、俺にも・・・俺たちにも言えることだった。だからよ、・・・ズキっと来たぜ・・・」

 

キタンの言葉に、キッド、アイラック、ゾーシイ、ジョーガン、バリンボーなど、ダイグレン学園で留年しまくっている生徒たちが気まずそうに俯いた。

ネギの言葉。何も言い返せず、悔しいと思うと同時に、正にその通りだと感じていた。

 

「別によ。俺らは将来にビビってるわけじゃねえ。だがよ、キヤルとか可能性が分からねえ世界に勇気出して飛びこもうとしてるってのに、俺らは何やってんだってな。偉そうにあいつの夢を後押ししてるが、そういう俺はちゃんとしてんのかってな」

 

居心地のいい場所。それは、ダイグレン学園のことだ。

留年とは、本来学生には一大事のように思えるが、彼らは今の学園生活を心から楽しんでおり、むしろ卒業するぐらいならいつまでも学園に居ても良いとすら思っている。だからこそ、嫌いな勉強もしないで、留年も停学も特に恐れない。

そう、いつまでも居心地のいい場所に居ようとしていた。

キッドたちも同じことを思い、その気持ちを告げる。

 

「いつもロシウに言われてたっけな。自分から退学した奴の方が、まだ潔いって」

「いつもは頭に来て、つっかかったり流したりしていたが・・・」

「俺らは現実見ないようにしてただけかもしれねーな」

「うう、そうだ情けないぞ!」

「情けないぞ情けないぞ情けないぞ!!」

 

そうだ。自分たちはギミーにもダリーにも偉そうなことを言える立場でもなかった。

いや、将来のことを不安に思うということは、ある意味将来を真剣に考えているからとも言える。

逆に、キタン達は将来のことを不安がっていないだけではない。ただ、現実から目を背けているだけかもしれない。

楽をし、今ばかりに目を向けて、将来のことを考えようとしなかった。

つい先日、ホームルームで提出した進路希望調査にだって、ふざけたことしか書かなかった。

 

「それに比べて、お前はエレーよな、ヨーコ。お前は将来のことを考え、そして自分と向き合って、テメエのやりたいことを見つけて努力をはじめたじゃねえか」

 

ヨーコも今年入学のために留年はしていないものの、自分たちと同じバカばかりの生活をしていた。

だが、その彼女も今では大学の教育学部志望という志を持ち、大学進学を真剣に目指している。

そう、彼女も自分の道を決め、居心地のいい場所から外の世界へ歩む準備をしているのだ。

 

「シモンは結婚して、家族を養うためにこれから頑張るだろうし、なんつーか・・・・・・な」

 

ネギの姿を見て、シモンもニアとの未来を真剣に考えた。

ネギに後押しされて、キヤルは自分の夢を挑戦し続けることを決意した。

そんなネギに心を動かされ、ヨーコは自分の道を見つけた。

なら、自分たちは? すると、ヨーコが小さく笑った。

 

「何言ってんのよ。私が将来を考えたのなんてつい最近よ。それこそ今まであんたたちと好き勝手やってきただけじゃない」

「まあ、そうだけどよ・・・」

「それに自分の道が分かるのってその人のタイミングじゃない? 人それぞれよ。私も、シモンもキヤルも、それに先生なんて10歳で道を決めてるんだから」

「か~、さすがセンセイ志望の奴は言うことが違え。それっぽくなってるじゃねえか」

「そう? だったらそれも、先生のおかげなのかもね」

 

そう、ネギのおかげかもしれない。だが、そのネギももうすぐ自分たちの学び舎からはいなくなる。

自分たちはネギに何を教わったか。ネギに何をすることができたのか

そして、自分たちはどうネギに応えることができるのか?

 

「今にして思えば、あれが先公の最後の授業だったのかもしれねえな」

「ああ」

「かもな」

「間違いねえ」

 

下を向いたアダイの子供たちを奮い立たせたネギの言葉。

 

――明日は変わらない? いいえ、変えられますよ。人の心なんて、自分で変わろうとすれば一分で変わります。心が変われば自分のやること、思うこと、見えている世界の全て変わります。だから、明日は変わらないなんて言わないで、変えてやりましょう!

 

自分の気持ち次第で明日を変えられるということ。

ネギが初めてダイグレン学園に来た日から、そのことを教えてくれた。

 

「今度は俺らの番なのかもしれねえな」

 

自分たちも変わらなければいけない時が来たのかもしれない。

キタンたちの瞳が決意に満ちていた。

 

 

 

 

その部屋は、幼女の機嫌悪い舌打ちが何度も響き渡っていた。

 

「チッ、チッ、チッ、・・・チイッ!!」

「・・・・・・・・・・・・・」

「チッ、チッ、チッ、チッ!!!」

「何故、そこまで舌打ちするのじゃ、闇の福音よ。私に何か恨みでもあるのか?」

「ああ? 恨み? この絶対無敵最強にて生物界の頂点に位置する誇り高き吸血鬼であるこの私が、貴様ごときに恨み? 没落した王国の皇女風情が何を自惚れている?」

「そ、そうか。・・・まあ、しかし、闇の福音とまで恐れられたそなたまでこの学園に居るとは・・・アーウェルンクスやデュナミスたちといい、この学園は一種の更生施設にでもなっているのか?」

「チッ、チッ、チッ、チッ!!!」

「だから、さっきから何なのじゃ!?」

 

恨みはないのだが、明らかにイラついている。

学園長室の応接用のソファーであぐらをかきながら、エヴァは正面に座っているアリカをジーッと睨みながら舌打ちを連発している。

アリカはいたたまれなくなって紅茶を飲んだり視線を逸らしたりするが、エヴァの舌打ちはどんどん大きくなっていく。

一体、自分が何をした? そう思ったアリカに、隣に座っていた人物が耳元で囁く。

 

「ふふふ、これは嫉妬ですよ」

「嫉妬じゃと?」

「エヴァはあなたの旦那さんが大好きなんですよ。ですから、その奥さんが目の前に現れたもので、イライラしているんですよ」

「ほほう」

 

その瞬間、エヴァは立ち上がった。

 

「キサマアアアアアアア、このエロナスビ!! はぐわあああ!?」

 

テーブルが勢いよく蹴り飛ばされ・・・たと思ったら、現在非力な最弱状態のエヴァではテーブルを蹴り飛ばすことはできず、逆に自分の向こう脛をテーブルに強打して、激痛でのたうちまわった。

 

「これが闇の福音か・・・なんともめんこいな・・・」

「なっ!? キサマア、初対面のくせにその上から目線は何だ!? ナギと結婚したぐらいで私に勝ったつもりか!?」

「いや・・・争ってもいないのじゃが・・・そもそも、私はそなたとナギの関係は把握していないのじゃから・・・」

「なっ!? あ、相手にすらしていないとは・・・き、貴様、それは余裕か!? 正妻だからって良い気になりおって!」

 

エヴァはテーブルを踏み台にしてアリカの胸倉を掴んでギャーギャー騒ぐが、アリカは大人の対応でエヴァの火に油を注がぬように宥めようとする。

しかしそれが逆に、エヴァに火をつけた。

そして、この女にも

 

「そうじゃ、エヴァンジェリンよ! 結婚したからと言ってそれでラブストーリーは終わりではない! 取られたら、奪い返してしまえばよし! それも文化の基本法則! そして妾の持論じゃ!」

「さっきまで屍みたいだったのに、復活早いですね・・・テオドラ皇女・・・」

「当たり前じゃ! よいか、タカミチよ! 結婚して離婚した夫婦が何人この世に居ると思っている。この間、シモンの部屋に会ったマンガにも書いてあった。諦めたらそこで試合終了じゃ!」

「いえ・・・ですが・・・さすがにこれは諦めないとかそういう次元では・・・」

 

部屋に同席していたタカミチが、窓の外を指さす。

そこには光り輝く丸い満月が世界を照らしていた。

その満月には、シモンとニアの名前が相合傘で・・・

 

「ぬあああああああああああああああ!?」

 

テオドラ発狂。

 

「まあ、いいじゃないですか。今はシモン君とニア君を祝福し、アリカ姫との再会を・・・話を聞いていますか? テオドラ皇女」

「燃え尽きる前に、消滅してしまった・・・妾は哀れなピエロじゃ・・・ただのエロ要員1号じゃ・・・安西先生・・・妾は・・・妾は・・・」

 

聞いてねえ。懐かしの旧友に十年ぶりに再会したというのに、テオドラは喜びも半分、全身の力を奪われて学園長室の隅でうずくまっていた。

 

「すまぬ、テオドラ皇女よ。まさかそなたがこの学園に居て、シモンへの想いを再熱させていたとは知らなんだ」

「ふははは・・・憐れみはやめるのじゃ。宇宙でラブラブバカップルのそなたには分からぬショックじゃ。リア充め」

「リア・・・? いや、少なくともそれほどバカップルというわけでは・・・」

「はあ? 初恋で~? 命がけで助けてもらって~? 誰も手の届かぬ月に二人で暮らして~? ラブラブで~? 契りまくって~? 妊娠して~? 子供生まれて~? それで何が満たされておらんのじゃ?」

 

アリカがどれだけテオドラを慰めようとも、テオドラからすればリア充の極みとも言うべきアリカの言葉など届かなかった。

だが、代わりに反応したのはエヴァだった。

 

「ち、契りまくっただと!?」

「は、反応するではない、闇の福音。そなたにはまだ早い!」

「私が子供の姿だからといって子供扱いするな! 私がお前の何百歳年上だと思っている! いいから、今のを言え! まくったのか!? ナギと契りまくったのか!?」

「な、何を破廉恥な、そのようなことを言えるはずがないであろう!」

「何回だ!? 一日に何回した!? 最低一回か!? 二回か!? 三回か!?」

「そんなに少なくは!? ・・・あっ・・・」

「おのれえええええええええええええええええええええ!? あのスケベナギめ!!」

「も、もう良いであろう。男どもの前でこの手の話題は・・・」

 

エヴァも発狂。アリカも顔を真っ赤にしてあたふたしている。

すると、そんな三人のやりとりにクスクスと笑みを抑えきれない男が一人いた。全身を真っ白いローブで包み、フードを深く被った男。

テオドラはイラッと来て、男のフードを乱暴に取る。だが、素顔を晒しても、男はクスクス笑ったままだった。

 

「おやおや、もっと真剣な話しが聞けると思ったら、随分と明るいガールズトークですね。しかし、これはこれで・・・」

「そして・・・何故、貴様までおるのじゃ、アル! 貴様が居ることは妾も知らんかったぞ!」

「ええ。言ってませんでしたから。それに世界樹に魔力が満ちる学園祭以外では、私もあまり活動しませんし」

「じゃあ、今はどうしてここに居る!?」

「いやー、堀田博士も随分性格が丸くなりましたね~」

「存在感アリマスンCか!? 仕事しすぎじゃろ、アンスパ!?」

 

そこに居たのは、アルビレオ・イマ。またの名をクウネルサンダース。

かつてのナギやアリカの戦友でもあった男も、アリカの復活を聞き、自ら学園長室まで足を運んだのだった。

 

「ふう、このメンバーで集まるのも久しぶりですね。ラカンさんも居たら、泣いて喜ぶでしょうね。詠春さんにも連絡したら、明日にでも来ると言ってましたよ」

「ふぉっふぉっふぉっ、賑やかなのは満たされている証拠じゃ」

 

この場にいるのは、学園長、タカミチ、アル、アリカ、テオドラ。ついでにエヴァンジェリン。

かつては世界を駆けまわった戦友であったが、運命は彼らを皆バラバラに引き裂いた。

しかし、再び時を経てこうして再会できた。ただ、彼らは純粋にアリカとの再会に喜んでいた。

そして、そういう気持ち、こんな状況を作り出してくれたのは誰か? 彼らの頭の中にそいつらの表情が思い浮かぶ。

 

「不思議なものじゃ。メガロメセンブリア、完全なる世界、多くのしがらみがアリカ殿を束縛し、ワシらがこうして集まることを世界が許さなかった。じゃが、こうして実際に会ってしまえば何て事は無い。何がかかってこようと何でも出来る。そういう気持ちにさせられるのう」

「僕もです、学園長。そういう気持ちにさせてくれたのが、ネギ君であり・・・そして、ダイグレン学園なのかもしれませんね。あの祭りは・・・僕は夢の中に居るような心地でした」

「ワシは居なくて良かったわい。びっくりし過ぎて心臓が止まりそうな光景じゃからな」

「私は残念ですね。実に興味深い席だ。私も是非参加させてほしかったですが」

「いやいや、アルよ。あのテーブルはマジで心臓に悪いぞ? 妾もガタブルじゃった」

「だが、拍子ぬけたとも言えるな。私を呪われた吸血鬼にした・・・奴を目の前にしても私は何もしなかったのだから・・・」

 

アルは自分も参加したかったと言うが、テオドラは「あの場に居なかったからそんなことが言える」と思いだしただけでもゾッとしていた。

祭りの席で作り出された各世界首脳の集まり。

 

「しかし、私もシモンやアスナの言葉を聞いただけでは信じられなかった。だがあれを見せられると・・・・・・」

「うむ、どうやら造物主ももはや世界をどうこうする気はないという言葉を信じて良いかもしれんな」

「アーウェルンクスやデュナミスが、シモンやネギ、そしてこの学園のものたちとの関わりを見て、私もそう思うようになった。時代はやはり変わったのじゃと。そして、奴らも変わったのだと」

「僕も賛成です。ただ、釘はさされましたけどね。それなら、世界はどうするのだと」

「しかし、タカミチくん。これは大きな前進とも言えますよ。顔を合わせれば凄惨な殺し合いしかしていなかった我々に、初めて造物主が顔を突き合わせて話をしたのです。そして、我々の意見も求めた」

「堀田博士も前向きじゃ。妾らがこうして一つになったのを見て、息子のためにも協力しようという感じに見えたがの」

「ふん・・・日和ったものだな・・・世界最強たちも」

「とりあえず、クルトたちにも騒ぎにならない程度にこのことを知らせましょう。そのうえで、正式に造物主たちと会談の席を設けて・・・」

 

 

「その必要はない」

 

 

「「「「「ッ!!??」」」」」

 

 

いきなり現れんなよ。そんなジト目で、急に学園長室に入って来た造物主とアンスパを一同睨みつける。

 

「別に良いが、堂々とし過ぎではないかの?」

「誰に遠慮をする必要があるというのだ? 私は自分のしてきたことに何も後ろめたいとは思っていないのだからな」

「私もだ。別に指名手配犯でもあるまい」

 

ある意味、指名手配犯より厄介な二人組ではあるが、もう過去の大きなわだかまりを誰も持ち出す気はない。

ただ、呆れたように溜息だけついて二人を迎え入れた。

 

「それで、会談が必要ないとはどういうことですか?」

「言葉の通りだ。テル・・・いや、フェイトやデュナミスがその席に出席する分は自由だが、私はまだ出る気はない。堀田も同じだ」

「うむ、我らはまだやるべきことがあるからな。それが終わってから、存分に参加させてもらおう」

 

やるべきこと? この二人が何をやらかそうというのだ? それだけで嫌な予感しかしない。

エヴァが造物主を睨みつけながら尋ねる。

 

「おい、何かよからぬことを考えているのではないだろうな?」

「心配するな、エヴァンジェリンよ。我らはただ、とある世界を見届けるために暫く不在するだけだ」

「見届けるだと?」

「ああ」

 

ますます怪しくなってきた。一体、このふたりは今更何を見届けるつもりなのか?

だが、その直接的な答えを言わないまでも、二人は少しだけ教える。

 

「それは、造物主という存在と世界が争いを続けていたらどうなっていたのか・・・・・・そして、それを世界はどうやって止めるのか・・・それを見届けるのが我々の最後の仕事・・・何年も続いた平行世界を渡る旅の最後の場所だ」

「とある平行世界で面白そうなことが起きようとしている。私たちはそれを見物に行こうと思っている。この世界が最も満たされた世界なのだとしたら、そこは星の数ほどある平行世界の中で、最も過酷な道を進み、最も激しく熱い世界になろうとしている世界だ」

 

それが一体何を示しているかは、結局誰にも分からない。

ただ、それはアンスパや造物主にとっては譲れぬ何かであるということだけは感じ取れた。

 

「息子と会わんのか? 結婚したのだ。おめでとうぐらいは言ってやらぬのか?」

「お前が言うか? アリカ姫よ」

「うっ・・・」

「私は着けねばならんケジメがある。それが終わればな・・・だが、お前は別だ。お前はこれだけお膳立てされたのだ。気にせず息子と会うがよい」

 

アンスパに言った言葉がブーメランで返ってきて、アリカも複雑そうな顔を浮かべる。

会いたい。だが、もし拒絶されたら? どうしてもそれが頭によぎり、アリカは両手を握ってモジモジする。

しかし、不安と同時に月での出来事を思い出す。

シモンに、そしてアスナに言われた言葉だ

 

「そう・・・だな・・・その通りだ・・・」

 

絞り出したその言葉に、タカミチたちの表情にも笑みが浮かぶ。

 

「ついに決心していただけましたか」

「うむ、うむ! ならば、妾らもサポートせんとな」

「ネギ君も喜ぶわい」

「ちっ、これで弟子が親に甘えてばかりのガキになったらどうしてくれようか」

「キティ、いいではないですか。今まで甘えて無かったのですから、しばらくは」

 

ついに決心して、自分の口からネギと会うと告げるアリカ。

もう、これ以上何も言うことはない。

今日は、世界にとっても彼らにとっても、大きな一日として刻まれることになる。

だが、その時、アリカの様子を見て、造物主は重い口調で語りかける。

 

「アリカ姫よ。なら、一つだけお前に教えておかねばならんことがある」

「なんじゃ?」

 

喜びで包まれた学園長室だが、次の造物主から放たれる言葉に衝撃が走る。

 

 

「貴様の夫であり、ネギ・スプリングイールドの父親。ナギ・スプリングフィールドについてだ」

 

「「「「「ッ!!??」」」」」

 

 

そしてこれが、造物主と呼ばれた存在が世界に存在していた、最後の日だった。

この日を最後に、造物主は二度と世界に現れることはなかった。

 

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