【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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最終話 終わり良ければ全て良し!

今日でこの校舎ともお別れ。短い間ではあったが、実に密度の濃い日々だった。

この落書きだらけ、ヒビだらけ、破損が多い学校も見収めと思うと、少し寂しかった。

落書きの「俺たちを誰だと思っていやがる」という文字を見て、最初はどんなヒドイ学校なのかと緊張したのも懐かしい。

 

 

「お世話になりました」

 

 

ネギは校舎に振り返り、グラウンドの中央で頭を下げる。

すると、その目の前にはカミナやシモンたちを始めとする教え子たちが全員並んでいた。

 

 

「俺らも女子中まで一緒に行ってやる」

 

「すぐそこだけど、お子様がちゃんと迷子にならないように送り届けないようね」

 

 

カミナとヨーコが冗談交じりで言う。キタン達も照れくさそうに笑っている。

最後の最後まで、付きってやる。そんな表情だ。

ネギも涙が出そうになるのを堪えながら、笑顔で頷いた。

 

「ちょっと待ちなさいよーん。乙女を置いていくなんて、ヒドイじゃな~い」

「今日の授業は全部休講だ!」

 

校門から出ようとしているネギたちの後ろを、校長のリーロンとダヤッカが走って追いかけてくる。

息を切らせながら、自分たちも行くと、ネギたちに合流する。

みんな考えることは同じなのかもしれない。

ダイグレン学園の通学路から商業地区へ通ずる道、さくら通り、至る所を取る度に色々な人が声をかけてきた。

 

「おい、ダイグレン学園、貴様らそんなゾロゾロとどこへ行く気だ?」

「ん? そういえば、その小僧教師は今日で最後だったか。つまり見送りか?」

「クケー。そうか。なら、ドッヂボールをやったよしみだ。我らも共に行ってやろう!」

「はあ? なんかすげーめんどくさいね」

 

学校をサボって商業地区のカフェテリアでくつろいでいる、テッペリン学園のヴィラルやチミルフたち。

思えば、彼らと出会ったのは研修初日だった。あの時は、いきなりクラスの生徒全員がテッペリン学園との喧嘩に飛び出してしまい、教室の生徒がゼロという、教師生活初めての経験をした。

そのあと、皆を必死に説得し、喧嘩ではなくスポーツで決着をつけようと提案し、ドッヂボールが始まった。

思えば、あそこから自分のダイグレン学園の教師としての生活がスタートしたのだなと、ネギは感慨深くなった。

 

「ちょっと待ちなさい! 子供先生が、女子中に帰ると聞いて!」

「迎えに来ちゃった!」

 

麻帆良の高等部女子、ドッヂボール部。あのドッヂボール対決でテッペリン学園側の助っ人として現れた彼女たち。彼女たちもまた、あの一戦以来よくダイグレン学園とも交流するようになった。

始めは、麻帆良の面汚しと、ダイグレン学園を非常に毛嫌いしていた彼女たちも、今では楽しそうにダイグレン学園の生徒たちと関わっている。

それもネギには、たまらなく嬉しかった。

 

「おーい!」

「待ってくださーい!」

 

自分たちを呼びとめる声。振り返ると、ギミーやダリー、ナキムたち、アダイの生徒たちが駆け寄ってきた。

 

「先生、女子中に帰るんだって?」

「だったら、今日中に伝えておかなくちゃいけないことがあって・・・・」

 

ギミーとダリーがニッコリと笑う。初めて会った時は、冷めた瞳をしていた彼らだったが、彼らも実に堂々と笑顔を見せるようになった。

 

「俺もダリーも高校に進学することに決めました」

「勿論、ダイグレン学園に!」

「ッ!? そうですか! 良かった! いい学校を選びましたね、二人とも!」

 

ネギは嬉しそうに二人の手を握る。カミナ達も新しい後輩が出来たことにガッツポーズで大歓迎する。

ギミーもダリーも照れくさそうにしながらも皆に礼を言い、そしてネギにも頭を下げる。

 

「ほんとは、先生の授業も受けたかったすけど、今日でダイグレン学園は終わりなんでしょ?」

「だったらひと足早いですけど、私たちもダイグレン学園の生徒としてお見送りします」

 

一体、この集団は何なのだろう? 道行く人たちがこの奇妙な行列に振り返る。

誰もが笑顔で笑いながら、一人の小さな子供を先頭にしてその後に続いている。

ネギも道行く人の視線を感じながらも、少し後ろを振り返ってこの集まった人たちを見たときに感じる、誇らしさが大きかった。

そこに居るのは、仲間。

ほんのわずかな期間に出来たこれだけ多くの、そして頼もしく素晴らしい仲間たちを得た自分がとても誇らしかった。

だが、それでも別れの時間は近づいてくる。

 

「ここか。そーいやーくんのは初めてだな」

 

麻帆良女子中。ダイグレン学園の校舎とは天と地ほど差がある綺麗な校舎。しかも何だか良い匂いまでする。

 

「おお、そーいや、女子校だよ。女子校」

「うーむ、なんか緊張してきた」

 

キタンたちも女子校の雰囲気に僅かに緊張気味。

案の定、グラウンドで体育をしている生徒達等、大勢の男子が混ざった集団に、怪訝な顔。しかも明らかに不良のような生徒も混じっている。「なに? 殴り込み?」と、不安そうに遠くで話している声が聞こえる。

だが、その緊張感もすぐにほぐれる。

 

「お待ちしておりましたわ。そして、お帰りなさい、ネギ先生!」

 

昇降口から三十人近い女生徒たちが、ズラリとグラウンドに現れた。

真面目そうな子や、派手目の女の子など様々だが、その誰もが既にダイグレン学園も顔見知りだった。

 

 

「では、みなさん! せーの!!」

 

 

「「「「「「「「「「お帰りなさい、ネギ先生!!!!」」」」」」」」」」

 

 

大量のクラッカー。黄色い歓声。大勢の拍手。少女たちの嬉しそうな表情。

ネギが彼女たちを揃って見たのはほんの少し前だというのに、やけに懐かしく感じた。

 

「あ、ありがとうございます。みなさん! そして・・・えっと・・・・ただいま帰りました!」

 

ネギがほほ笑むと、待ちきれないとばかりに女生徒たちは駆けだした。

 

「おかえりー、ネギく~ん! スリスリスリ~!」

「やーん、ほんとにネギ君だ~。んも~、この感触久しぶり!」

「ねえねえ、向こうでイジメられたりしなかった?」

「よーし、ネギ君を胴上げだー!」

 

エネルギーマックス、元気全開の乙女たちはネギをもみくちゃにし、抱きしめたり抱きかかえたり、胴上げをしたり、頬をすりよせたりと過激なスキンシップをする。

 

「うお、うらやま、つうかハーレムじゃねえかよ、先公!」

「女子中学生相手に・・・響きがやらしいな・・・」

「うらやましいぞ、うらやましいぞ、うらやましいぞ!」

「この学園で一番モテるのは、フェイトとデュナ先公だと思っていたけど・・・すげえ・・・」

「というか、軽いセクハラじゃない? 最近の中学生も過激ね~」

 

ネギの人気、女子中学生たちがそろった時のパワーに、さすがのダイグレン学園も少し苦笑。

だが、同時にネギがこれだけ愛されている教師であることに、なんだか少し嬉しい気もした。

 

「ダイグレン学園のみなさん、私たちのネギ先生が大変お世話になりました」

 

まるでお母さんのようにネギのことで礼を言う、あやか。何だか照れくさそうになってきたが、悪い気はしなかった。

最初はあやかも、ダイグレン学園を心から毛嫌いしていたのに、今ではこの様子。ネギは、どっちも自分にとって大切な学校だから、その二つがこれからも仲良くしていてほしいと心から願った。

 

「ねえねえ、シモンさん、これからも私たち、たまに遊びに行くけどいいでしょ?」

「なあなあ、新婚旅行はどこに決めたん?」

「やはり、熱海でしょうか?」

「え~!? あっ、まあ、夏休みに色々と考えてるけど・・・」

 

アスナたちもすっかりシモンたちとは友達になっている。

それは、きっとこれからもまた続いていく日常だ。

でも今は……

 

「皆さん、ちょっといいですか?」

 

 今はまだ、ちゃんと終わっていない

 今日この瞬間まで一緒に来てくれた暑苦しい生徒たちとの別れがまだ済んでいない。

 だからネギは、女生徒たちの輪の中から抜け出して、シモンたちに向き合った。

 

「ネギ先生……」

「先公……」

 

 向かい合うネギの表情は十歳の子供の顔つきじゃない。

 一人の教師として、生徒と向き合う表情。

 その表情を向けられた生徒たちは、気づけば皆もマジメな顔をして向かい合い、騒がしかった場の雰囲気も静かになった。

 そして……

 

「皆さん。短い間でしたが、本当にお世話になりました。自分自身至らないところが多々あったと思いますが、その度に皆さんの個性的で、それでいてパワフルなエネルギーに助けてもらいました」

 

 堅苦しい挨拶から始めるネギ。しかし今は誰も茶化したりなどしなかった。

 

「僕が皆さんと一緒に勉強させてもらって学んだこと……それは……大切な仲間を想う心、決して屈っしないこと、細かいことなんて気にせずに自分の本気の想いを貫き通すこと……どれもが当たり前のことのようで、どんな時でもそれを貫き続けるというのは非常に難しいことばかりです。ですが、それを当たり前のように実践できる、自分が信じる自分を信じることの大切さ……僕はそれを学ぶことが出来たと思います」

 

 学んだこと、泣かされたこと、驚かされたこと、楽しかったこと、胸が熱くなったこと、熱くなったこと……熱くなったこと……

 その時、ネギとダイグレン学園生徒たちの脳裏にはこれまでの僅かな期間に起こった怒涛の日々がよみがえってきた。

 

「だから僕は、その学んだことを、今度は僕から誰かに教えられる……誰かに影響を与えることが出来る、そんな教師に……そんな男になりたいと思っています! 本当に、ありがとうございました!」

 

 もう一度、感謝を込めて頭を下げるネギ。

 だが、ダイグレン学園の生徒たちは皆思っていた。

 ネギの言葉。「誰かに影響が与えられる教師?」何を言っているんだと。

 もう、お前はとっくにそんな教師に……そんな男になっているだろうと。

 

「先生……礼を言うのは俺たちのほう……先生みたいに、自分で誰かを導けるような人になりたい……多分、俺たちはそう思っているよ」

 

 シモンが言う。すると、ダイグレン学園の生徒たちも皆気恥ずかしそうにしながらも、「そのとおりだ」と頷いた。

 

「へへ、なんかええな~、みんな」

「うん、ほんとーに仲良くなっちゃって」

 

 この光景にアスナたちが微笑ましそうにしながらも、この僅かな間にここまでの関係を築けたネギとダイグレン学園たちを羨ましいと思った。

 そんな想いが場を包んでいた。

 すると、そんな時だった。

 

「先生。今日は、先生に俺たちから……プレゼントがあるんだ。これを用意したのは、俺たちだけじゃなくて、先生の生徒の女子中の子たちの協力もあったんだけどね」

 

 今、この瞬間しかないだろう。シモンはそう思って手を上げた。その合図は、事情を知るアスナや木乃香、刹那たちも「待っていた」と頷いた。

 

「プレゼント……ですか?」

「うん。先生は、子供だけど先生で、大人で、でもたまに俺たちみんなと馬鹿みたいにはしゃいでいたけど……でも、先生にできないことがあった。それは、誰かに甘えることだよ」

 

 甘えること? 今の自分は相当甘ったれていると自分で思っていたネギには、シモンの言葉がよく分からなかった。

 だが、シモンは続ける。そして指さす。

 

「先生だって、誰かに甘えていいと思うよ?」

 

 ネギがシモンの指さす方向を見る。すると先から誰かがこちらに向かって歩いてきていた。

 

「うえ、誰、あの人? 見たことな~い」

「外人さんかにゃ? でも、超美人!」

「どなたかは存じませんが、たたずまいからとても気品を感じますわ」

 

 その人物を、この場に居るほとんどの者が分からない。

 分かるのは、ロングへヤーの若く美しい女が、ゆっくりとこちらに近づいてきているということだ。

 あの女は誰だ? 誰もが口をそろえてそう言った。

 勿論、ネギもその女を見たことがない。

 だが……

 

「あっ…………」

 

 しかし、ネギは想った。自分はこの女を知っていると。

 そう、知っているのだ。跳ね上がる自分の鼓動、震える体、何故かこみ上げてくる涙が、全てを物語っている。

 

「あっ……う、あ、あ……あっ……あっ……」

 

 涙でうまく言葉が出ないだけでなく、ネギはその女の名前を知らない。だから、その女をなんと呼べばいいのかも分からない。

 だが、それでもこの女を呼ぶとしたら一つの言葉しか思い浮かばなかった。

 まだ、一度も話したことのない、今初めて目の前に現れた女を、ネギは震える唇で呼んだ。

 

 

「お……かあ……さん……」

 

 

 写真でも、記憶でも、一度も見たことのない女。だけど、そう呼ぶしかなかった。それ以外の言葉でこの女を呼ぶことが出来なかった。

 当然、ネギの口からでた言葉に、この場に居た者たちは皆驚きを隠せない。

 しかし、ネギに「母」と呼ばれた女は、次の瞬間には駆け出して、幼く小さい我が子を強く抱きしめていた

 

「ッ、ネギッ!」

「お……おかあさーーーんッ!」

 

 もう、細かい話なんて無用だった。互いが互いの温もりを強く感じた瞬間、「一体どうして?」という事情なんてネギにはどうでも良かった。

 

「ネギ、すまぬ……すまぬ……すまぬっ!」

 

 現れたネギの母親、アリカ。

 アリカはただ強くネギを抱きしめながら、謝ることしかできなかった。これまで、親として、母として何も出来なかったこと。本来自分にネギの前に現れる資格などないのだと、アリカ自身が想っていた。

 だがしかし、目の前に現れ、そしてこうして抱きしめてしまえば、もうダメだった。自分はこの温もりがなくては、もう生きてはいけない。この最愛の子を二度と手放すことなんて出来ない。

 そう思いながら、アリカはこの宇宙で誰よりも愛しい存在を感じていた。

 

「おかあさん……」

 

 震えながら自分を抱きしめ、何度も謝る母に体を預けながらも、ネギは言わなくてはいけないことがあった。

 本当は「言うこと」よりも「聞きたいこと」のほうがたくさんある。

 でも、今は自分が「言う」しかない。聞きたいことならこれから聞ける機会がいくらでもある。何故なら、母と出会えたのだから。

 だから、今は自分が言うのだ。

 

「お母さん……見てよ……」

 

 ネギは言った。自分を見てくれと。言われてアリカが少し距離を離してネギを見る。互いに母と子らしく似たような泣き顔だ。そんな中で、ネギは自分をそして手を広げて自分の回りを見渡す。

 

「お母さん。これが、今の僕だよ? ここが……今の僕の居場所だよ? ここにいる皆さんは……僕の大切な……仲間だよ? この人たちに出会えたから……僕は強くなれたんだ」

 

 ネギが言いたかったこと。いや、知ってほしかったこと。

 それは、今の自分。今の自分の居場所。そして今の自分の大切な仲間たちだ。

 その全てをネギは、誇らしげにアリカに言う。

 そして……

 

「お母さん……僕はこれからも、強い男になるよ。だから……今日から僕がお母さんを守るよ」

 

 未だ帰らぬ父の変わりに、今日から自分が母を守る。

 辛い思いをさせてきたと自分を責めて来たアリカに、これ以上の言葉等あるはずがない。

 

「そうか……ネギ、……そうか……そうかっ……守ってくれるか……ネギ……」

 

 その時、アリカが微笑んだ。涙で腫らした表情でも、それでも最高の幸福に満ちた表情で笑った。

 その笑みを見て、ネギも微笑み返し、そして言う。

 

 

「当たり前だよ。僕を誰だと思っているの?」

 

 

 このとき、ネギは思った。シモンのプレゼントの内容が間違っていると。

 

 

「もう、シモンさん、なんてプレゼントをしてくれるんですか……僕が甘えられるプレゼントって……全然違うじゃないですか」

 

「先生?」

 

「こんな……こんなに嬉しい、最高のプレゼントを戴いたら……僕はもっとしっかりしないとダメじゃないですか!」

 

 

 そう、これからこの母を守るのは自分なんだ。だったら、自分がもっとしっかりして、もっと強くならなくちゃいけない。

 ネギはそう言いながら、アリカに今度は自分から抱きついた。

 

「ネギ先生、う、うううう、よかっ、よかっ……」

「ああ、良かったな、ネギくん」

「へへん、まったく世話の焼ける親子よね!」

「ったく、漢じゃねえか、俺らの先公は」

「ああ、本当にな」

 

 気づけば、回りの者たちも涙を流しながら、しかし嬉しそうに見守っていた。

 と、同時に、自分たちもまた、この親子を見守っていかなくちゃならない。この親子に何かあったなら、自分たちはいくらでも力を貸す。誰もがそう思っていた。

 そして……

 

 

「こ、こほん……ああ~……その、見苦しいところをお見せした」

 

 

 ようやくアリカがネギから離れ……と言っても、手はしっかりと握り締めているが、涙を拭ってようやくこの場に居た一同と向かい合い、皆に一礼する。

 

 

「シモン……アスナ……そして、この場に集ってくれた皆よ。今日まで、ネギと一緒に居てくれたこと、心より礼を言わせて欲しい」

 

「アリカ……」

 

「っ、至らぬ母ではあるが、今日から私も、ネギと共に過ごすことになった。学園側がどこかの部屋を用意してくれたようなので……そこで、これから二人で暮らしていこうと思う」

 

 

 皆が、「ああ」と頷く。これは別れではなく、「これからもよろしく」なのだ。

 別れるわけではない。ネギはこれからもこの学園都市に居るし、会いに以降と思えばいつでも会いにいける。

 でも、それでもどうしても切なくなってくる。

 自分たちのネギが、母と一緒に行こうとしている。

 そう思ったとき、誰もそれ以上言葉が思い浮かばなかった。

 この男を除いて……

 

「だ……ダイグレン学園野郎共、全員整列しやがれッ!」

 

 その時、カミナが叫んだ。

 そう、やはりカミナなのだ。

 本来、世界が認めるほどの騒がしい連中たちが、今この瞬間は誰もが口を閉じて、立ち去ろうとするネギを見ていた。

 ただ、ネギの受け持つ校舎が変わるだけ。会おうとすれば、いつでも会える。

 だが、それだけのことに、ダイグレン学園の生徒たちは、ネギを見送るその瞳に涙を浮かべていた。

 だからこそ、カミナなのだ。

 そんな状況を打ち破り、声を上げたのはカミナ。

 そして、ダイグレン学園生徒たちは、カミナの声を聞き、すかさずピシッと横一線に整列する。

 

「……カミナさん……みなさん……」

 

 ネギが顔を上げる。

 ほんのわずかな期間で数え切れない思い出を共有した生徒たち。

 その生徒たちが見せる初めての表情。

 そして、生徒たちは言う。

 

「ネギ先公に………いや……ネギ先生に礼ッ! あ……り、……ありがとうございましたーっ!」

 

 それは、兄弟分のシモンも、幼馴染のヨーコも、そしてダイグレン学園の悪友たちすら初めて目にする、カミノの姿。

 頭を下げる。

 

「「「「「ッ! ありがとうございましたーっ!」」」」」

 

 彼らも自然に頭を下げ、そして感謝の言葉を叫んでいた。

 そして、頭を下げた彼らは数秒後に顔を上げ、瞳は潤んではいるものの、いつものように笑った。

 

 

「またな、ダチ公ッ! いつでも遊びに来いよーッ!」

 

「せんせーい! 俺、絶対にニアを幸せにするからーっ!」

 

「ネギ先生―ッ! 私も、シモンと一緒に明日へ向かいますッ!」

 

「また、一緒に勉強してよねーっ!」

 

「うう、うおおおお、ぜってーまた遊びに来いよなーッ!」

 

「母ちゃんをしっかり守れよーっ!」

 

 

 大きく手を振り、別れを告げる生徒たち。次々と叫ばれるその言葉の一つ一つが、ネギの心に刻み込まれる。

 ほんの僅かな期間の、だけど決して忘れることの出来ない掛け替えのない日々。

 礼を言うのは自分のほうだ。止まらない涙を拭いながら、ネギは思った。

 

「ほら、ネギよ」

 

 アリカがネギの肩に優しく手を置く。

 自分も応えろ……アリカがそんな想いを込めて微笑んだ。

 ネギはアリカに頷き、そしてゴシゴシと涙を強引に拭って、自分も今出来る最高の笑顔を生徒たちに向けた。

 そして、ネギは指を天に向かって力強く突き刺して、叫んだ。

 

「友との出会いを力に変えて!」

 

 ネギがニッと笑う。その笑みを向けられてダイグレン学園は後に続く。

 

「背負った運命(さだめ)と明日を生きる!」

 

 カミナが応える。

 

「世界の道理が阻もうと」

 

ヨーコが続く。

 

「巨大な壁も空ごと穿つ!」

 

 シモンが誓う。

 

「「「「「進んで見せるぜ、己の明日をッ!」」」」」

 

 ダイグレン学園の生徒たち全員が天に向かって指を指し、世界に叫ぶ。

 たとえ、ネギが居なくなっても、これから先、誰が卒業することになっても、自分たちダイグレン学園は永久に不滅だと。

 

「「「「「それが、麻帆良ダイグレン学園! 俺たちを誰だと思ってやがるッ!」」」」」」

 

 世界に向けて叫ばれたその言葉は強く響き渡った。

 この場にいたダイグレン学園以外の生徒たちも同時に歓声をあげ、そしてこれからのネギとアリカにエールを送った。

 

「やれやれだな。フェイト。ついに、こんなことになってしまったな」

「ああ、そうだね、デュナミス。でも、今日はいいんじゃないかな? ハッピーエンドってことで」

「なははははは、デュナミス先生もフェイトさんも、しっかり染まってしまたネ。まあ、私も、この光景を見せられると、これで良かった……そう心から思うヨ」

「な~に、これから何が起ころうとも、妾らが力を合わせれば、本当にどんなことすら乗り越えられると思うぞ」

 

 本来であれば、世界そのものを左右させられる存在である、デュナミス、フェイト、超鈴音、テオドラの四人も、過去に互いに様々なことがあったものの、今この瞬間を同じ思いで受け入れ、そして同じ想いを抱いて今日を、明日を、そしてこれからを生きていこうと誓った。

 

 

 でも、それでもやっぱり寂しいという思いは変わらない。

 

 ネギとの別れを終えたダイグレン学園生徒たちは、少し重い空気のまま寮までの帰路についた。

 

「寂しくなりますね、シモン」

「ニア……うん、そうだね……そんなはずはないだろって言わなくちゃいけないんだけどね……でも、やっぱりそうだね」

「もう、シモンもニアも二人してそんな落ち込んでんじゃないわよ。あんたらバカ夫婦が盛り上げてくんないと、私らまで……ねえ」

「おうおう、尻デカ女の声がちっちゃくなってるじゃねえか」

 

 無理にでも元気で明るいところを見せなくちゃいけない。

 それは分かっている。それは分かっているが、それでもやっぱり寂しいことには変わりない。

 

「だがよ、俺らだっていつまで下向いてるわけにゃいかねえ! そうだろ、野郎共!」

 

 そんな中、カミナが声を上げる。上を向いて歩けと。

 そして……

 

「あの先公に笑われねえ男になる。俺たちには、そういう使命があるんだよ!」

「ちょっと~、私は女なんだけど」

 

 そうだ。ネギにあれだけのことを言わせたんだ。自分たちだっていつまでもウジウジしているわけにはいかない。

 それに、

 

「ええ、そうね。そのためにも……」

「俺たちも、卒業しなくちゃいけねえな」

 

 自分たちもいつまでも留まっていないで、明日へ向かう努力をしようと昨晩誓い合った。

 居心地の良い環境にいつまでも居ないで、世界から飛び出して生きていこう。

 だからこそ、いつまでも下を向くわけには行かない。

 カミナの言葉に、誰もが「その通りだ」と頷いた。

 

 すると……

 

 

「おお、そなたたちだな? この寮の生徒たちは。私は本日からこの寮の寮母として学園に雇われた、アリカ…………えっ?」

 

「「「「「…………………………………………えっ?」」」」」

 

 

 上を向こうと誓い合った生徒たちだが、次の瞬間、目が点になってしまった。

 それは、つい数分前に別れたばかりのアリカがエプロン姿で箒を持って現れたからだ。

 

 

「アリカ……なんで……」

 

「シモン……えっと……まさか……この寮に住んでいる生徒たちとは、おぬしらのことだったのか?」

 

 

 これは一体どういうことだ? 誰もが口開けたまま呆然とする中……

 

 

「ふえええええん、おかーさーーーーん! こ、ここって……学園長が紹介してくれた僕たちの新しい住居って……ダダ、ダ、ダイグレン学園の寮なんだけどーっ! ……あっ……」

 

「「「「「……………あっ……」」」」」

 

 

 そこに、さっきまで皆に見送られて立ち去ったはずのネギが、引越し荷物のカバンを背中に背負ったまま、慌てて寮から飛び出してきたのだった。

 

 しばしの沈黙が流れ、もはやどうすればいいのか分からなくなってしまった一堂だが、またカミナが一番に口を開いた。

 

 

「おい、野郎共! 新しい仲間の歓迎会だッ! 準備しやがれッ!」

 

 

 結局そうなるのだ。

 気づけば、みんな笑ってしまっていた。

 生徒たちは泣きながら笑い、ネギを揉みくちゃにして、ネギもくすぐったそうにしながらも嬉しそうに笑った。

 

 

「まっ、細けえことは気にすんな! 終わりよければ全て良しよッ!」

 

 

 天を見上げて笑うカミナの声が、世界に響いた。

 

 

 

 

 

 

 そして、このどこまでも満たされた幸福な世界と相反するように、数ある世界の中で最も過酷で、最も苛烈で、しかし最も熱き魂が燃ゆる世界の戦がようやく幕を開ける。

 




さて、書き始めたのは正直何年前だったのか分かりませんが、この物語はこれでいったん幕とさせて戴きます。

何年も前から至る所でちょこちょこと小説を書いておりましたが、今回を期に、一つの場所にまとめたいなと思うようになり、誰も読まれていないだろうと思いつつもコソコソと投稿しておりましたが、意外と「お久しぶりです」という方々多くて驚きました。

簡単なアフターストーリーぐらいは今後も書けるかもしれませんが、とりあえず今は「書いた作品をハーメルンにまとめる」という作業を行いたいと思います。

では、また会おう日まで。

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