【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第12話 入部しやがれ

フェイトが人生初めての闇鍋に挑戦する。

カミナやキタンたちもワクワクしながらフェイトが掴むものに注目する。

部屋は薄暗いが鍋の場所や人の顔が見えないほど暗くは無い。

しかし、何故かフェイトには鍋が未知の暗闇の世界に見えた。

どす黒い鍋の中に箸を入れ、フェイトが掴み取ったもの、正直何だかわからない。

あまり気は進まないが、ここは我慢しようと、フェイトはその食材を口に入れた瞬間、口の中がネチョネチョと気色悪い食感が広がった。

 

「・・・・・・なんだい・・・これ・・・・甘くて・・・・スポンジのような・・・」

「うおお、ひょっとして俺が入れたチョコレートケーキじゃねえか!? 畜生、取られた!」

「なるほど・・・確かに言われれば・・・・・・・・・ッ!!??」

 

バリンボーが悔しそうに叫び、フェイトもなるほど、これはチョコレートケーキかもしれないと思った・・・・いや・・・・

 

「いや・・・ちょっと待ちたまえ・・・何故鍋の中にチョコレートケーキなんて入れるんだい?」

「ん? 甘いものも欲しいだろ?」

「そうじゃなくてそれはデザートにすればいいじゃないか。チョコレートやクリームが溶解して鍋のダシと混ざると思わないのかい?」

 

闇鍋初心者のフェイトは信じられないという感じだが、ヨーコやキタンたちはさも当たり前のような顔だった。

 

「あら、別に良いじゃない。ちょっとぐらい甘くなっても気になんないわよ。お腹に入れば同じでしょ?」

「贅沢なこと言うな~、新入り、ひょっとしてお前ボンボンじゃねえのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・君たち・・・大丈夫かい?」

「おらおら、フェイ公が終わったから、次はザジだ! ほら行って来い!」

「・・・・・・コク・・・・」

 

もはやフェイトも開いた口がふさがらず、フェイトの苦情もアッサリ流されて二番手のザジが鍋に箸を入れる。

無言で鍋の中に箸を入れ、彼女は掴み取った食材を食べて呟いた。

 

 

「・・・・・・蟹・・・」

 

「「「「「「「蟹ッ!?」」」」」」」

 

 

何とザジは蟹を引いた。その瞬間全員が身を乗り出した。

 

「ちょっと待て、蟹なんて高級なもんがあったのか!?」

「あっ、そうそう。ニアが冷蔵庫に入れてた蟹をくれて、私が切って入れといたわ!」

「ニアちゃんが!?」

「はい、シモンに食べさせてあげようと思って以前買って冷蔵庫に入れていた蟹です。ヨーコさんに切ってもらいました。ザジさん、おいしいですか?」

「・・・・・・おいしい」

「よかった。た~んと召し上がれ」

「ちょっと待ちたまえ。蟹があるなら普通の鍋をすればいいじゃないか。大体僕はチョコレートケーキで何故彼女は蟹なんだい?」

「いいじゃないか別に。次にまわってきたらフェイトも取れば」

「・・・・君たちの感覚は・・・もはや理解しがたいね・・・・」

 

ニアがほほえみ、ザジはほくほくと蟹を食べ、どこか満足そうな表情をして、フェイトは一人不服そうだった。

流石は家出中とはいえ大金持ちのお嬢様。その瞬間ダイグレン学園の生徒たちは瞳を炎のように燃え上がらせた。

 

「流石ニアだぜ」

「へへ、蟹まで入ってるとはやる気が出るぜ! 天国か地獄!」

「しかし、一度目で蟹を引くとはザジちゃんか? 君もやるじゃないか」

「おう! だが、次はそうはいかん!」

「俺も取る! 俺も取る! 俺も取る!」

「へっ、ゾクゾクしてきやがる」

 

キタン、キッド、アイラック、ジョーガン、バリンボー、ゾーシイもまるで喧嘩前のような笑みを浮かべている。

 

「これは負けてられないわね」

「おう、このカミナ様も蟹をいただくぜ!」

「よ~っし俺もやるぞ~」

 

ヨーコもカミナもシモンも気合を入れる。

闇鍋のテンションはたった二人目が箸を入れただけで最高潮になる。

 

「よし、次は俺だな」

「おういけシモン! お前の箸で何かを掴め!!」

「男を見せろ、シモン!」

「シモン、がんばってくださいね」

 

続いてシモンが箸を入れる。

心を躍らせて、これだと思うものをシモンは取り上げ、それをすかさず口に入れた。

それを食べているシモンの口の中がジャリジャリと音を立てて、何かとんでもない食材かと予感させる。

しかし皆の予想とは裏腹に、食べたシモンはとても笑顔で叫んだ。

 

「おいしい! これ、すごくおいしいよ! これ・・・ロールキャベツだ!」

 

どうやら当たりのようだった。

しかしその瞬間、キタンたちは顔を見合わせて不思議そうな顔をしていた。

 

「俺たちそんなもの買ってきてないぜ?」

「ああ、本当にロールキャベツなのか?」

 

何と買い出し班のキタンたちが入れたものではないそうだ。

では誰が入れたのかと首をかしげると、再び彼女が口を開いた。

 

 

「あっ、それ今日の夕飯にしようと思っていた私の作ったロールキャベツです!」

 

「「「「「「「ッ!!??」」」」」」」

 

「良かった、シモンが取ってくれて。やはり私とシモンは繋がっているのです」

「そ、そうかな~。でも、これ本当にすごくおいしいよ」

「うん、ありがとうシモン」

 

シモンとニアの甘い甘いラブラブ空間が作りだされた。

フェイトはそれをくだらないと溜息つくが、周りを見渡すと二人以外のダイグレン学園の者たちは、驚愕の表情を浮かべて箸がプルプル震えていた。

 

「こ、・・・こんなかに・・・・ニアのて・・・手料理が・・・・」

「やべえ・・・・これはロシアンルーレットどころの騒ぎじゃねえ・・・」

「・・・生きるか死ぬか・・・それが問題だ・・・」

 

彼らはまるで何かに恐れているかのように鍋を睨んでいる。

 

 

「「?」」

 

 

フェイトもザジもどういうわけか分からず首をかしげたまま、闇鍋は進んでいく。

 

「おっしゃあ、唐揚げだ!!」

 

カミナ・・・

 

「おっ、これは魚肉ソーセージじゃねえか!」

 

キタン・・・

 

「ん~、これ・・玉子ね・・・」

 

ヨーコ・・・

 

「甘い・・・これ、パイナップルです。甘くておいしいです」

 

ニア・・・

どんどん皆が箸をつついて闇鍋が進み、ついにフェイトの2周目が来た。

 

「フェイト、ニアのロールキャベツがおいしいよ。がんばれよ」

「シモン・・・そうか・・・ならばそれを狙ってみよう・・・」

 

2周目が来たフェイトは鍋を睨み、今度こそまともな食材を取ると誓った。

 

(これまでの経過を見ると、それなりにまともな食材も多い。ジョーガンという彼が消しゴムを引いて、バリンボーという彼が紙皿を引いた以外はまともに食べられるもの・・・・って・・・)

 

そこでフェイトは我慢できずに物申す。

 

「何故消しゴムや紙皿が鍋の中に入っている? 食べるものではないと思うんだが」

「やーね、きっとテキトーに入れてたときに混ざっちゃったんでしょ? 大体消しゴムとか紙皿を煮込んで食べるバカがどこに居るの? 常識で考えなさいよ。ほら、あんたの番よ? さっさと取りなさいよ」

「・・・・・・君たちの常識が分からない・・・」

 

やはり不安だ。これほど食べ物を粗末にする料理がこの世に存在するのかと、フェイトはまるでカルチャーショックを受けたように顔を落とす。

だが、落ち込んでいる中で頭を働かせ、この状況からの活路を考える。

 

(このルールでは箸を鍋の中に入れて直ぐに取り上げなければいけない。つまり箸の感触で食材を探してはいけない。蟹は箸で挟んで持ち上げる分、コンマ数秒のタイムロスがある。つまり一発で当てなければすぐにバレる。そのタイムロスを無くすには箸を突き刺して持ち上げられる食材が良い。ならば順当にいけばシモンが言ったロールキャベツを狙うべきだ。僕ならば・・・一瞬の感触で当てられる・・・コンマ数秒で見極める) 

 

フェイトはカッと目を見開いて、箸を鍋の中に突き刺して全身系を集中させて一つの食材を鍋から出す。

それを見た瞬間、フェイトは小さく笑った。

 

 

「どうやら・・・当たりを引いたみたいだね・・・」

 

「「「「「「げっ!?」」」」」」

 

 

それは紛れもなくロールキャベツだ。

フェイトは少し本気を出せばこのようなことは造作も無いと、少し勝ち誇りながら、ロールキャベツを口に入れた。

だが、フェイトは知らなかった。

何故、ニアの手料理が入っていると分かった瞬間、ダイグレン学園の生徒たちの表情が強張ったのかを。

そして実はシモンがものすごい味音痴である事を。

 

 

「fh9qほkんッ!?」

 

 

フェイトはロールキャベツを食べた瞬間、撃沈した。

それはこの世のものとは思えぬとんでもない味がした。

刺激・異臭・食感・全ての感覚がブチ壊されるかのようなもの。

 

(な、なん・・・だこの料理は・・・この世の全てをひっくり返すかのような・・・)

 

魔法や凶器にも匹敵する最強の破壊力。

意識が朦朧とし、胃が焼けるような感覚だった。

 

「フェイトさん、・・・おいしくないですか?」

 

ニアが無言のフェイトに不安そうに尋ねてきた。

さて、フェイトはここでどうするのか。

箱入りお嬢様のような彼女がシモンという、愛する人のために心を込めて作った手料理をフェイトは口にしたのだ。

そんな手料理の感想を純粋に聞いてくるニアに面と向かって「まずい」と言えるのか?

 

「いや・・・・わ・・・・・・・・・・・悪くないね・・・」

 

ようやく搾り出した言葉でフェイトは確かにそう言った。

 

 

((((((フェイト・・・お前は漢だッ!!))))))

 

 

シモンとニアを除いたダイグレン学園の不良たちは、涙を流しながら親指を突き立てて、フェイトの男ぶりに心から賞賛した。

 

「・・・・・・豚肉・・・」

「おっ、ザジちゃん、蟹に続いて豚肉とはスゲー引きの強さじゃねえか!」

「おいしい・・・・」

 

それを聴いた瞬間、フェイトは更に不機嫌になった。

そこから先は、何でこんなことになっていたかは分からなかった。

誰がどんな食材を引いても、それが当たりでも、ハズレでも、とにかくみんなで大盛り上がりだった。

当たり食材を引いたものにはみんなが笑いながらブーイングし、ハズレ食材を引いたものには拍手しながら食べさせた。

いつの間にかフェイトもザジも帰るどころか、みんなの輪の中に居て、決してそれが不自然な光景には見えなかった。

 

 

(・・・・・何をやっているんだ僕は・・・使命を放棄してこんなくだらないことを・・・)

 

 

本来の目的を見失うどころか、何故自分はこんな所で闇鍋などしているのか? 思い出した瞬間、自分自身に呆れる。だが・・・

 

 

(しかし・・・まあ、・・・今日だけなら・・・)

 

 

ほんの一時の取るに足らぬ無駄な時間だと思えば良いだろう。フェイトはそう思うことにした。

心から笑いあうシモンやカミナたちの中で、少し胸がチクリとしながら、今だけは表情を変えずにその場の空気に流されることにした。

 

 

 

「フェイト、ザジ、おなかは大丈夫?」

 

鍋がすっからかんになり全てを食べ終えて満足し、再び電気をつけたシモン部屋で、シモンはフェイトとザジに苦笑しながら尋ねた。

 

「まあ、途中からまともな食材も引けたからね・・・なんともないよ・・・」

「おいしかった・・・です・・・」

「それは良かった!」

 

最初はどうなるかと思ったが、何だかんだでフェイトもザジも最後まで付き合った。それが何だかうれしかった。

 

「ねえ、ザジは本校の中学生だって分かるけど、フェイトはどこの学校なの? その制服見たこと無いけど・・・」

「ああ、これは制服じゃないよ。言ってみれば僕の存在証明のような服だ。まあ、君には関係のないことだけどね」

「そ、そう・・・じゃあ、学校は?」

「行ってないよ。僕にそんなものは必要ないし、他にやるべきことがたくさんあるからね」

「やるべきことって?」

「それは・・・シモンには関係のないことさ」

 

ニアやヨーコたちが片づけをしている間、ようやく落ち着いたこともありシモンがフェイトのことを尋ねるが、フェイトは変わらず自分のことは話さなかった。

少ししょぼくれるシモンだが、相変わらずのフェイトにカミナが告げる。

 

「まっ、お前の使命とやらがなんだろうと、確かに俺らにゃ関係ねーな。だが、それがお前の絶対に譲れねえものなんだとしたら、何でも構わねえ、がんばんな! 俺たちゃ応援してるぜ!」

「・・・・・・えっ・・・・」

「あっ? 何だよそのアホ面は。よく分からねえけど、やらなきゃなんねー事があるなら応援してるって言ってんだよ」

 

フェイトは目を丸くした。

 

「何故・・・応援するんだい? 僕が何をやるかどうかも分からないのに・・・」

「あ? んなもんダチだからに決まってるじゃねえか」

「・・・・・・・・・・!」

 

カミナはフェイトの問いに不思議そうな顔して当たり前のように答えた。

対して言われたフェイトの内心が揺らいだ。

 

「バカなことを・・・」

「あん?」

「バカなことを言わないでくれ」

 

そして激昂した。

 

「ふざけるな・・・今日会ったばかりの君たちと・・・僕を何も知らない君たちがどうして友になりえるんだい?」

 

表情は変わらない。相変わらずの無表情。

しかし口調の強さと、部屋全体を震え上がらせるほどの圧迫感はシモンたちがこれまで味わったことのないほどの、住んでいる世界が違うと思えるほどの存在感だった。

 

「へっ・・・へへへ・・・俺様が震えてやがる。テメエ、やっぱ只者じゃねえみてえだな」

「うん、そうだよ。僕は君たちとは違う」

 

カミナは汗をかいて震える手をギュッと力強く握りながら引きつった笑みを浮かべた。

気づけばキタンやヨーコたちも表情を変え、ただ黙ってフェイトを見つめた。

 

「僕は君たちと違う。君たちは普通に生まれ・・・普通に育ち・・・普通に学校に通う。しかも君たちはその持っている権利を当たり前のように思い、それをいい加減に過ごしたりバカなことをしたりして駄目にしている・・・僕はそういう当たり前の権利をもてない人たちを多く見てきた・・・そんな君たちと僕が・・・どうして相容れることがある?」

 

冷たく重い言葉には、フェイトの背負っているものの大きさ、自分たちには想像もつかぬほど大きな世界を感じさせた。

だが・・・

 

「だから、何だ?」

「・・・何?」

「相容れることだ? んなもん誰が決めたんだよ! そいつとダチになれるかどうかは、俺様が決める!!」

「・・・・・・・・・・・はっ?」

 

ヨーコたちはため息をついて苦笑した。

 

「よ~っし、フェイ公、テメエの言い分は分かった。要するにテメエは俺たちじゃ何もテメエのことを分からねえから、ダチにはなれねえって言いたいわけだな?」

「まあ・・・掻い摘んで言えばね・・・」

「そうと聞いたら答えは一つだ! フェイ公、お前・・・ダイグレン学園に編入しやがれ!!」

 

・・・・・・・・間。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」

 

フェイトは目が点になった。

 

「俺たちがテメエを理解できねえかどうかは、俺たちと一緒に過ごしてから決めやがれ! テメエを知らねえとダチになれねえなら知ってやる! 意地でも知ってやる! 俺たちを誰だと思ってやがる!」

「・・・・・なんで僕がそんなことを・・・・大体君たちのような者と友にはなりたくないよ」

「よ~っし、そうだシモン。ついでにこいつをお前の部活に入れてやんな! 青春じゃねえか! それに部員はそれで揃うんだろ?」

「えっ・・・アニキ? いや、そんな強引に・・・それに部員は最低5人で・・・」

「ん? そうか・・・じゃあ、ザジ、お前も入ってやれ」

「・・・・・・・・・・え?」

「がはははは、これでお前の部活は成立だな! 弟分の部活設立に協力し、新たなダチも手に入れた! ハッハッハッ、これからまた楽しくなりそうだぜ!!」

 

人の話を一切聞かずに一人で強引に話を進めていくカミナは一人高らかに笑っていた。

最早言葉が浮かばずに呆気に取られるフェイトに、どうして良いか分からずザジはシモンを無言でじ~っと見つめた。

シモンももはや何年一緒に居ても驚かされるカミナのメチャクチャさに、改めて呆れてしまったのだった。

 

 

 

翌朝・・・

 

ネギはダイグレン学園に向かう前に学園長質に呼び出された。

何やら緊急事態ということで、良く分からないがとにかく急いだ。

 

「でも、一体どういうことでしょう。私たちまで呼び出されるとは・・・」

「へっ、なんかおもろそうなことが起こっとるんかもな。昨日のヘルマンのおっさんも結構おもろかったし、この学園はホンマに退屈せんな。転校してきて良かったで」

「うん、良かったね、小太郎君」

 

ネギと共に走るのは刹那と犬上小太郎という転校生。

普段はこの場に居るであろうアスナは一緒ではない。

何やら学園長には絶対にアスナは連れてきては駄目だと言われたからだ。

どういうわけかは分からないが、とりあえず言われたとおりアスナには黙って、ネギたちは急いで学園長室に向かう。

 

「せや、ネギ・・・お前の耳に入れとかなあかんことがある。実はな・・・今回のヘルマンのおっさんの襲撃・・・お前らの京都での事件・・・多分黒幕は・・・あいつや」

「あいつ?」

「フェイト・アーウェルンクス・・・・あの白髪のガキや」

「・・・あの・・・あの時の子が?」

 

小太郎の話をネギは聞きながら、頷いた。

 

「確かそれは修学旅行で小太郎君たちと居た・・・あの時の子が黒幕だったんですか?」

「ああ・・・お前らと修学旅行で戦った後、反省室に入れられとる俺の前にアイツが現われたんや。ネギを闇討ちにしたら出してやるって言われてな。勿論断ったけどな」

「そんなことが・・・」

「ああ、気をつけろやネギ。あいつは得体が知れん。何考えてるのかもサッパリ分からん。いつ・・・どんな手でお前の前に現われるかも分からん。用心しとくんやな」

「うん。分かった。ありがとう、小太郎君」

 

ネギは小太郎の言葉を聞き、自分を狙う脅威の存在を知って心を引き締める。

ここには大切な人たちが山ほど居る。

誰一人失わず、傷つけないためにも、絶対に生徒たちは守って見せると心に誓った。

そして小太郎の話が終わったとほぼ同時にネギたちは学園長室の前にたどり着いた。

たどり着いた彼らは軽くノックをして中に入る。

中には何人もの教師や生徒たちが居た。しかも全員只者ではない。

恐らくこの学園全土に散らばる魔法先生、魔法生徒が集結しているのだろう。

ネギも小太郎も刹那もその顔ぶれに息を呑む。

しかしどういうわけか、室内はかなりギスギスした雰囲気だ。

タカミチなど両手をポケットに入れながら、まるで憎っくき敵でも見るかのような形相で、正直寒気がした。

 

「あ~・・・・・・・ネギ君・・・・その~・・・ちょっと言いづらいんじゃが・・・・」

「?」

「これがどういうことか・・・君には分かるかの~」

 

学園長が何か言いづらそうに尋ねてくるが、正直何のことだかサッパリ分からない。

そしてネギと小太郎と刹那は少し首をかしげながら部屋を見渡し、丁度タカミチが鋭い目で睨んでいる視線の先に目が止まった。

そこに居たのは白髪の少年・・・

 

「「「・・・・・・・・・・・・・えっ!!??」」」

 

まさか・・・そう、思った瞬間ネギたちは震えた。

正直間違いであって欲しい。他人の空に出会って欲しいと願うが、その願いは無残にも砕け散った。

白髪の少年が振り返り、何だか気まずそうな表情をしながら、ネギを見ながら口を開く。

 

 

「今日から・・・・・・麻帆良ダイグレン学園に編入するハメになった、フェイト・アーウェルンクスだ。とりあえずイスタンブールの魔法協会からの留学生で、飛び級・・・・・・そういうことで誤魔化されてくれないかい?」

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

何が何だか誰にも理解できず、頭を皆が抱えてしまった。

とりあえず何とか搾り出せた言葉は・・・・・・

 

 

「「「出来るかァッ!!?」」」

 

「・・・・・・・・・やはりそうだよね・・・僕もそう思うよ・・・」

 

 


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