【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第19話 そしててっぺん越えた

「彼らのああいう力はある意味脅威だね・・・」

 

ネギを気の毒に思う一方で、フェイトはダイグレン学園の何故か逆らうことのできぬパワーに感心していた。

 

「うん、フェイトもそうやって無理やり編入させられたからな」

「おや、シモンさん。フェイトさんは自らの意思で編入したのではなく、ダイグレン学園の方が無理やりだたカ?」

「本当なん、シモンさん?」

「う~ん、大半はアニキだけどね。俺たちと闇鍋しているときに・・・」

 

超や刹那たちは目を丸くした。

 

 

「「「やっ、闇鍋!?」」」

 

 

何と今ダイグレン学園に手玉に取られているネギやアスナ同様に、フェイトまでもが翻弄されたというのである。

だが、確かにそうでなければフェイトが部活などをやる理由も思いつかず、何と滅茶苦茶なと思う一方で、何故か納得できてしまうために、もはや笑うしかない木乃香と刹那だった。

 

「まあ、確かに色々あったが・・・それでも今ここに居るのは僕の意思だ・・・まあ、そんなことは今はどうでもいい。超よ。せっかく役職は決まったんだから、そろそろ話してくれないかい? 結局ドリ研部はどういう活動をすればいいんだい?」

 

もうこの話はやめにしよう。

フェイトは話題を変えるべく、超にこの部の活動内容を尋ねる。

そういえばと、今更ながらシモンとニアも、当然ザジもそのことを把握していない。

役職決めたり親睦会をしたりしているが、結局何をすればいいのか分からない。

 

「ふっ・・・そうネ・・・」

 

すると超は笑顔の裏で、少し何かを躊躇っていた。

 

(さて・・・どうしたものネ・・・ここで世界がどうとか火星がどうとか言ってしまうと、皆はふざけ半分だと思うだろうが、フェイトさんは何かを感づいてしまう可能性は大ヨ)

 

超は警戒していた。

これまで冗談の中に本音を交えて、誰からもその本心を掴ませないように過ごしてきた彼女だが、今回はいつものようにとはいかないようで、少し言葉を躊躇していた。

 

「そうネ、活動内容は開発と研究と実験。例えば・・・人一人で動かせるドリル、機械の先に取り付けるドリル、大穴を開けるドリル、細かい作業もこなす万能型のドリル、ここではそういうドリルを開発したり、アイデアを提供したりして研究するのがメインネ。既に麻帆良の工学部で実験待ちのドリルがいくつかあるが、やはり工学部ではロボ開発がメインでドリルは二の次・・・だから私はドリルを専門的に扱う団体を作りたかたヨ」

「・・・へえ・・・研究者ではないシモンをワザワザスカウトしてまでかい?」

「ウム、ドリル=シモンさんというのは私も昔から聞いてたからネ」

「は~~、シモンさんそんなにドリルに関してはすごいん?」

「えっ? さ、さあ・・・昔からよく使ってはいるけどね」

「大丈夫、シモンにはピッタリだと思います」

 

活動内容を知ってシモンやニアに木乃香は「ほ~」と感心しているようだが、フェイトはどこか腑に落ちない様子だ。

 

「君は・・・「うわァアァァァァァァァん」・・・・」

 

感じた疑念を口に出そうとするフェイトだが、それを泣き叫びながら助けを求めてくるネギに阻まれた。

 

「うわ~~ん、シモンさ~~ん、助けてくらさいよ~~」

「せ、先生!?」

「ネギ君、どうしたん!? って、うわっ、酒くさっ!?」

「ネギ先生どうされたのです!?」

 

シモンに助けを求めるネギの顔は赤く、呂律が回っていない。

そして何より体から汗とともに発散される匂いはとても鼻につく。

そう、ネギは酔っ払っている。

 

「ちょっ、どうしたんだよ~、先生!」

「がっはっはっは、この程度で降参するとはまだまだ男としての道のりは先が長いぜ!」

「ちょっ、あなたたち、ネギ先生に何を飲ませたんですか!?」

「ネ、ネギ君が酔うとる!?」

「だっはっはっは、『ビ』と『ル』が付くジュースを飲ませただけだがな~」

「思いっきりお酒じゃないですか!? こ、高校生が学内でお酒を飲んでいいと思っているんですか!?」

「シモンさん! 刹那さん! 木乃香~、助けてよ~、もうこの人たちについてけないよ~」

「あ、アスナさんしっかり~~!?」

 

キタンたちの手によりベロンベロンになったネギに、そのネギを守るために一人果敢にダイグレン学園のメチャクチャと戦っていたアスナもとうとう降参した。

シモンと刹那と木乃香が援軍に入るものの、何の効果もない。

直ぐにキタンやカミナたちの馬鹿騒ぎに飲み込まれてしまった。

確かにここは学内だが、教職員も利用するために超包子ではお酒も扱っている。

本来生徒にお酒の販売は厳禁だが、一部のものたちが留年しまくって既に未成年ではダイグレン学園には無意味だった。

シモンと刹那も木乃香も巻き込まれて、ドリ研部で席に残っているのはフェイト、ニア、ザジ、超鈴音の4人。

 

「ニア・・・シモンが巻き込まれているけど、君は行かないのかい?」

 

シモンが行くところには常にべったりなニア。

しかし不思議なことにニアは気づけば無言で静かである。

 

「・・・む・・・君は・・・」

 

だが、そこでようやく気づいた。

ニアがいつの間にか黒ニアに変わっていることを。

 

「そうですね・・・行きたいのはやまやまですが・・・」

 

そして彼女は誰も寄せ付けぬような静かなる威圧感を出しながら、同じドリ研部の仲間に告げる。

 

 

「ある意味・・・これはいい機会かもしれません・・・本音を聞くには・・・・・・」

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

 

フェイト、ザジ、超の三人の表情も変わった。点心を食べる箸の手をピタリと止めた。

 

「シモン・・・そしてニアならばあなた方の存在も大して気にせず受け入れるでしょう・・・しかし・・・こうも異質な存在が揃うと、流石の私も見過ごせません」

 

黒ニアの言葉にザジ、超、フェイトはそれぞれの反応を見せる。シモンが居た時には見せなかった表情だ。

 

「・・・・・・・・」

「ふっ、言うネ」

「・・・それで・・・僕たちに何が言いたいんだい?」

 

黒ニアは面倒な言い回しはしないことにする。

シモンが居ない今こそ、核心を付くことにした。彼女の小さな唇から漏れた言葉はただ一つ。

 

「あなたたちは・・・・・・何者ですか?」

 

誰か一人に向けた言葉ではない。

黒ニアが向けたのは、フェイト、ザジ、超、3人全員に向けた言葉である。

何者か?

それほど単純でいて答えがたいものはないかもしれない。

ただの学生・・・そんな言葉で流されるほど、この三人は普通とはかけ離れている。

シモンやニアが気にしなくても、いや、ダイグレン学園の誰もが気にしなくても黒ニアだけは気にせずに入られなかった。

何故なら・・・

 

「何故僕たちにそんなことを聞くんだい?」

「簡単です。本当に・・・シモンとあなた方を近づけて良いのかを判断するためです」

 

全てはシモンのため。

 

「ふん・・・ドッジ部や私にシモンさんが取り合いになっているとき、いつも黒い嫉妬心をむき出しにするあなたがやけに静かだと思っていたが、なるほど・・・私やザジさん・・・そしてフェイトさんが気になってたカ?」

 

いつもはクルクルと人格が変わるニアと黒ニアだが、今日はやけに静かだった。そんな彼女の深層心理にはこれから多くの時間を過ごすことになるであろうこの三人に意識が向けられていたからだった。

さて、シモンやニアは大丈夫でも黒ニアは誤魔化せない。

半端な嘘や冗談では乗り越えられないだろう。

 

「私は・・・(さて・・・・どうするカ・・・)」

 

超も・・・

 

「僕は・・・(僕が・・・何者か・・・問われると中々答え難いものだ・・・)」

 

フェイトも・・・

 

「・・・・・・(・・・・・・・・)」

 

ザジも、どうこの問いを乗り切るのかを頭の中で考えていると、自分でもわからぬうちにポロっととんでもないことを口に出してしまった。

 

 

「未来から来た火星人ネ」

「世界征服をたくらむ、悪の組織の大幹部」

「・・・魔族・・・」

 

 

どうせなら、もっとふざけた口調で言ってくれればよかった。

しかし、あまりにも真剣な顔でアホらしいことを言う三人に黒ニアも呆れた。

 

「ふう・・・真面目に答える気は無いようですね・・・」

 

頭の固い黒ニアは三人が真面目に答えていないと決め付けた。

だが口に出した三人は心の中で自分自身に戸惑っていた。

 

(何故私は・・・言ってしまったネ?)

(嘘をつけなかった・・・結果的には良かったが・・・)

(・・・不思議・・・)

 

彼らがこのようなことを思っているなど、黒ニアには分からないのだろうが、黒ニアはこの場はそれで済ませることにした。

 

「いいでしょう・・・あなた方が神でも悪魔でも、もう問うことはしません。とにもかくにもドリ研部や新しい仲間が出来たシモンの喜ぶ顔に免じて、今は何も聞きません」

「まったく・・・君はシモンのお母さんかい?」

「ふっ、私たちの答えをどう処理するかはあなた次第ヨ。まあ、我々が何と答えようとも、黒ニアさんの信頼を得ていない今の状態で何を言っても意味が無いがネ」

 

超は内心では戸惑っているようだが、それを悟られぬように余裕の笑みを無理やり浮かべ、黒ニアもこれ以上は問わない。

ただし最後に一言だけ・・・・・・

 

「ただし・・・何も聞きませんが・・・他の誰よりも・・・もしシモンを裏切った場合・・・これからあなた方と私がどれほど仲良くなろうとも、どれほどの恩を受けようとも・・・」

「はっはっはっは、遠慮はしないカ? 結構結構。遠慮や気兼ねが要らないのが仲間の証ヨ」

 

シモンを裏切るなと釘だけ刺し、シモンの知らない場所で行われたこの四人の話し合いは幕を閉じた。

いつの間にか監視を解いて盛り上がっていた魔法先生たちはとんでもない話を聞き逃してしまったのだが、後の祭りだった。

記念すべきドリ研部の親睦会だが、シモンを除いたものにとっては腹の探り合いでもあった。

しかしその一方で、この空間が中々居心地のいいものと化し、いつまで続くのかは分からないが、全員がしばらくはこの一時を満喫しても良いと思うようになっていたのだった。

 

 

 

その数日後、一通の手紙が異界を渡る。

 

 

 

シモンやネギたちの居る麻帆良学園を現実世界と呼ぶのなら、その異界は魔法世界と呼ばれ、現実世界に対となって存在するもう一つの世界である。

魔法の国と呼ばれ・・・・・・まあ、よくわからんがもう一つの世界である・・・

その世界のとある荒野にて、周りに人や建物に文明すら感じさせぬ場所で、とある少女たちが己を高めるための鍛錬を重ねていた。

 

「はあ・・・はあ・・・まだ・・・まだまだァ!!」

「にゃっ、私だって負けないんだからァ!!」

「ふっ、暦・・・随分とがんばるではないか! だが、私だって簡単にはやられん!」

「私だって負けないよ、焔! 今度フェイト様と会ったとき・・・絶対に驚いてもらうんだから!!」

 

焔という少女に暦という少女。さらに・・・

 

「フェイト様の計画の実行がまだいつになるのかは分かりませんけど・・・暦や焔の言うとおり、私たちもそれまでは己を高めなければ・・・。私たちもがんばりましょう、環」

「勿論・・・調・・・鍛錬の続きデス」

 

調という少女に環という少女、彼女たちはとある信念とある男のことを想い続け、つらく激しい修練であろうと心を燃やして励んでいた。

彼女たちをそれほどまでにがんばらせる想いも理由も、その時がくるまでは分からない。

だが今日は、そんな彼女たちの元へ一通の手紙が届くのだった。

 

「みんなァーーー! 大変大変大変ですわ!!」

 

血相を抱えた一人の少女が、焔たちの下へと走ってきた。

 

「・・・栞?」

「どうしたんだろう・・・」

 

その少女の名は栞。彼女もまた焔たちの仲間の一人である。

そんな彼女が一通の手紙を振り回しながら、大声で叫んだ。

 

 

「ゲ・・・ゲートを通って・・・旧世界に居るフェイト様から手紙が来ましたァ!!」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 

その言葉には、先ほどまであれほど鍛錬に集中していた少女たちの意識を完全に向けてしまうほどのものがあった。

それどころか、鬼気迫るような彼女たちが一気に花が咲いたような笑顔を見せて、手紙を持って走ってきた栞に向かって全員が駆け出した。

 

 

「「「「フェイト様から手紙ッ!?」」」」

 

 

それが彼女たちにとってどれほどうれしいものなのか。

顔を真っ赤にして照れたように笑う彼女たちは、もはやどこにでもいる普通の少女たちにしか見えない。

 

「フェ・・・フェイト様からの手紙・・・まさか・・・計画の内容を?」

「何言ってるの、焔。そんな大事なことを手紙で送るわけないじゃん。やっぱり・・・私たちが元気かどうかを・・・」

「フェ・・・フェイト様・・・うう・・・涙が・・・い、急いで返事を書かなくては! たしかメガロメセンブリアに頼めば旧世界に手紙を送れるはずでしたね?」

「いっぱい書かないと・・・」

 

たった一通の手紙。

しかしその一通は彼女たちにとってはこの世のありとあらゆる金銀財宝よりも価値のあるものなのかもしれない。

たった一通の手紙が彼女たちには神々しく写っているようで、気づけば感動の涙とともに跪いたりしている。

 

「まあまあ、皆さん落ち着いて・・・とにかく・・・手紙を開封して中身を確認してもよろしいですわね?」

「う、うむ・・・き、緊張してきた・・・」

「いっせーのーせで、開封してね」

「はあ・・・フェイト様」

 

ハラハラドキドキうっとりと恍惚した表情で彼女たちはゆっくりと封筒を開け、中のものを取り出す。

 

 

「「「「「・・・・・・・・・・・えっ?」」」」」

 

 

すると中には手紙というより一枚の葉書が入っていた。

葉書に書かれていたのはたったの一言。

いや、本来ならそれだけでうれしいのである。

しかし今はそのことよりも葉書に書かれている文字の隣に貼り付けてある、シールの存在が気になった。

栞という名の少女は混乱した口調で葉書に書かれている一文を読み上げる。

 

「え~~っと・・・プ・・・プリクラというものを初めて撮ったので、君たちにも送ります。体調には気をつけて・・・・・・」

 

葉書に張り付いていたのは、二枚のプリクラ。

『新入り万歳!』と文字で書かれ、フェイトを中央に置いたむさくるしい男やら女やらがフェイトの周りを囲んでいる、とにかく色んな連中が密集して一人ひとりの顔がものすごく小さくなってしまったプリクラ。

そしてもう一枚は、フェイトともう一人男が写っており、さらに女三人が写った合計5人で取られたプリクラ。プリクラには文字でこう書かれていた。『ドリ研だ! 何か文句あんのかよ?』・・・・と。

 

 

「「「「「・・・・・・・プ・・・プリクラ・・・・・・・」」」」」

 

 

彼女たちはワナワナと震えていた。

自分たちは血反吐を吐くようなものすごい修練の日々を過ごしているのに、自分たちが心から慕う男はのん気に何をやっているのかと・・・

 

「プ・・・プリクラだと? こんなものが旧世界には・・・」

「写真とは違い・・・これほどの小さくお手軽なシール・・・」

「さらにこれほど鮮明な解像度・・・」

「わ・・・私も・・・・私も・・・」

 

のん気に何をやっているのかと・・・

 

 

「「「「「私もフェイト様とのプリクラが欲しい!!!」」」」」

 

 

・・・特に思っているわけでもなかった。

結局何かが起こるわけでもない。

何かが変わるわけでもない。

このままありふれた日常がいつまでも続くのだろう・・・少なくともこの時はまだ、そう思っていた。

写っている者たちは、それぞれ腹のうちで何かをまだ隠している。

しかしそれでもこのプリクラを撮っているときは悪い気がしていなかったはずである。

しかしフェイトと同様に葉書にプリクラを貼り付けた手紙が、とある男の元へ届いた瞬間、変わらないと思っていたものが変わりだす。

 

 

「部活に入りました・・・私は元気です・・・・・・か・・・・ニアめ・・・・・・」

 

 

シモンとニア。

ツーショットで『夫婦合体!』とシモンに抱きついてほほ笑むニアのプリクラを見ながら、男は一人呟いた。

 

「ニアめ・・・・・・いつまでもくだらぬわがままを通せると思わぬことだな・・・何が結婚だ・・・ワシに逆らってどうなるのか・・・知らんわけではあるまいな?」

 

歪んだ父の愛が大きな壁となって、男たちの前に現われる日が近づいているのだった。

 

「ワシですらまだニアと一度も・・・プリクラを・・・プリクラを撮ったことはないというのに・・・・・この・・・・小僧が!! ドリ研だ? 文句あるのかだと? ・・・・・・文句ありまくりじゃ!!」

 

矛先はシモンに向いていた。


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