【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第23話 番町喫茶全開

「やっぱ超は凄いな。凄いドリルが大好評だったな」

「・・・そうだね・・・」

 

祭りの人ごみの中、シモンはフェイトと並んで歩き、先ほどの出来事を振り返る。

 

「色んな大学生や教授が質問攻めしてたしね。ドリ研部の宣伝は大成功だったな!」

「・・・・・そうだね・・・」

 

超の開発したドリルにより、宣伝はバッチリだったと大喜びのシモン。シモンは超が手渡したドリルが新開発されたドリルではなく、何の変哲も無いただのドリルだとは気づいていない。

 

「後でニアに教えてあげよう! きっとニアは喜んでくれる」

「・・・そうだね・・・」

 

興奮気味に喋るシモンに対し、フェイトは至って冷静だ。

 

(分かっているのか・・・シモン・・・・君が一体どれほどありえないことをしたのか・・・魔法で作られたものを魔法の力を一切使わずに打ち消したということを・・・)

 

いや、冷静ではない。フェイトは表面上では分からぬほど、心の中では動揺していた。

 

「フェイト!!」

「ッ!?」

 

ボーっと考え事していた自分の目の前にシモンの顔があった。少し頬を膨らませてる。

 

「どうしたんだよ、さっきから『そうだね』しか言ってないじゃないか。俺の話し聞いてた?」

「えっ・・・ゴメン・・・聞いて無かったよ・・・」

「もう・・・とにかく、部活の方は一息ついて、早くアニキたちの手伝いに行こうって話だよ。あんまり遅いとアニキたちが遅いって怒るよ?」

「あ・・・そう・・・だね・・・」

 

シモンに言われてハッとなったフェイトは先ほどまでの考えを頭横に振って捨てた。

 

(ふっ・・・僕は何を考えている・・・どうでもいいじゃないか・・・そんなこと・・・シモンが何者であれ、シモンが気づいていないことを僕が気にする必要は無い・・・)

 

甘い。

 

(甘いな・・・未知のものに対してこういう考えは非常に危険だ。いつから僕はこれほど甘くなった?)

 

だが、どうしてもこれ程重要なことも、細かいことだ、気にするなとフェイトは思うようになってしまった。

 

(彼らに・・・毒されたか?) 

 

頭の中で思い浮かぶのは、ダイグレン学園の生徒たちが腕組んで笑っている姿。

 

(だが・・・悪くは無い・・・。シモンは大丈夫だ・・・シモンは僕の・・・・・・・敵ではないからね・・・)

 

その姿を思い浮かべてため息が出そうになるが、フェイトは小さく笑った。

 

「じゃあ、行こうか、シモン。カミナたちのことだから、やりたい放題しているかもしれないからしっかりと見張っておかないとね。そういうときのためにヨーコも居るけど、彼女も熱くなったらカミナたちと同じようになってしまうからね」

「はは、そうだな。ヨーコって昔からああなんだ。いつもいつもアニキのやることを止めるくせに、最後は結局手助けしちゃうんだ。ヨーコは多分アニキのこと・・・、俺はそんな二人を小さいころに見ていたとき、独りぼっちな気がして少し寂しかったな・・・」

「そうか・・・でも、今の君にはニアが居るんだろ?」

「まあね、フェイトは居ないの? 幼いときから一緒だった人とか・・・」

「・・・・僕は・・・」

 

自分たちのクラスの出し物が行われている場所へ向かう途中の何気ない会話の中、シモンの言葉でフェイトはとある少女たちのことを思い出す。

 

「幼馴染でも恋人というわけでもないが・・・幼いときから僕の後ろを付いてきてくれた娘たちは居たね・・・」

「へ~、今はどこに居るの?」

「ちょっと遠いところに今はいる。この間撮ったプリクラを張って久しぶりに手紙を書いたよ・・・まあ、元気だと思うよ」

「フェイトの家族みたいな人たちか? ふ~ん・・・いつか会ってみたいな・・・」

「いつか・・・そうだね・・・僕も何だか彼女たちにダイグレン学園のようなメチャクチャな学校に入れたらどういう反応をするのか見てみたくなったよ」

 

フェイトは頭に浮かんだ少女たちがもしもここに居たらと想像する。今の自分を見たら怒るかもしれない。しかし彼女たちも変わるかもしれない。

それは絶対にありえないことだとフェイトは思っている。

だが、そんなもしもの世界も悪くは無いなと思うのだった。

 

 

「オラオラテメエ! なんでこんなに金置いてやがる!」

 

 

フェイトとシモンが何気ない会話で盛り上がっていたら、広場から大きな声が聞こえてきた。

 

「この声・・・」

 

キタンの声だ。

 

「キタンだね・・・何かもめているみたいだね」

 

彼は番長喫茶に訪れた客と何かをもめているようだ。

お会計のためにお金を置いた生徒の胸倉をキタンが乱暴に掴み、掴まれた生徒は何が何だか分からずに怯えていた。

 

「えっ? だだ・・・だって・・・ココ・・・コーヒーは400円だって・・・」

 

怯える生徒に対し、キタンはぶっきらぼうに顔を横に背けて呟いた。

 

「馬鹿やろう! そりゃ~通常の価格での話だろうが! ・・・ダチには・・・ちっとぐらい・・・サービスさせろ」

「・・・えっ?」

「ああ~~~、うるせえ! とにかくだ、この100円はいらねえって言ってんだろ! ほら、さっさとうせやがれ!」

 

意外性のある斬新な喫茶店ということで、少々混雑しているようだ。

オープンカフェのように本校の敷地内に設置されたダイグレン学園番長喫茶のテリトリーには面白いもの見たさの野次馬までもが集まり、番町喫茶の番町の接客に皆が注目していた。

 

「あ、・・・ありがとうございます・・・・」

「へっ、小せえことは気にすんな。まっ・・・またいつでも遊びに来いよ」

 

立ち去る客に軽く手を上げて背を向けるキタン。その背中には、男の何かを感じさせた。

 

「「「「「「「「「「オオオオオオオオオオオオッ!!」」」」」」」」」」

 

その瞬間、客や野次馬から歓声が上がった。

 

「きゃーーー、渋い!」

「なんだよ・・・番長かっけーじゃねえか!」

「こんなサービス初めて!」

 

普通は演技に見えるのだろうが、彼らダイグレン学園がもとからの不良ということもあり、この彼らの接客がやけにリアリティーを客に感じさせた。

更に、普段は怖くて近づけない不良をこんな形で見ることができ、更には彼らの意外な一面などを接客を通じて知ることが出来、この番長喫茶を経て意外とダイグレン学園の高感度アップに繋がっているのだった。

そうとは知らずにダイグレン学園の生徒たちは接客に力を入れる。

 

「あん? 麻帆良の格闘団体と仲が悪いだ~?」

「そうなんすよ。カミナ番長。手を貸してくんないすか?」

「馬鹿やろう! テメエの喧嘩はテメエの手でケリをつけやがれ! テメエの喧嘩を肩代わりさせるヤツはダチなんかじゃねえ!」

「そんな~・・・・」

「へっ、上を向け。言ったとおり手はかさねえ。だが、そいつが終わったらいつでも言いな。貸さなかった代わりに、何か奢ってやらァ!」

 

そして全員ノリノリで、その言葉がワザとらしくなく・・・

 

「ほら、気合入れて食べなさい! あんたみたいにナヨナヨした男じゃ、そっちの彼女を守ることはできないわよ?」

「う・・・うぐ・・・ヨ、ヨーコ番長・・・」

「か、彼女って・・・そんな~・・・ちょっと照れちゃいます」

「はいはい、ご馳走様。ホラ彼氏も、値段サービスするから、黙って食べる! いーい? 女の子はね・・・好きな人の前でぐらいお姫様になりたいときもあるのよ。だから男はしっかり守ってやんなさいよ?」

「あの~、ヨーコ番長もそういう時があるんですか?」

「私? 無い無い! 私はね、守ってもらうよりは好きな男の人と肩を並べて一緒に戦いたいぐらいだわ。か弱い乙女なんて嫌だからね。でも・・・そうね・・・そんな私みたいな可愛くない女でも守ってくれる男には・・・ちょっとぐらい・・・ねえ?」

「ええ!? ヨーコ番長はとても綺麗ですよ? お化粧とか教えましょうか?」

 

客として訪れた人たちも彼らの人間性に触れて、みるみるうちにこの空間に溶け込まれていた。

 

「すごいや・・・メニューの値段をワザと高く設定して、接客しながら正規の値段まで下げて、サービスをした振りをする作戦だったけど・・・」

「うん・・・好印象を受けているね・・・それにノリノリだね・・・」

 

意外と繁盛して、うまく機能している番長喫茶の状況を眺めて、シモンとフェイトは素直に感心した。

だが、感心していたのだがここにきて・・・

 

「番長喫茶? 何だ、このフザケタやかましい店は?」

「ケケケケ、ウケ狙イナ店ダナ」

 

超ゴスロリファッションに身を包んだ金髪幼女と不気味な人形が出現し・・・

 

「ふう・・・学園祭の飲み物巡りのつもりが、随分と珍妙な店です・・・ダイグレン学園? それはネギ先生の・・・」

「さて、ようやく入った休み時間と思って来たが・・・ふむ・・・中々面白そうな・・・」

 

幼女に続いて珍妙な客が二人して同時に現われた。

 

「ん・・・貴様ら・・・」

「あっ、エヴァンジェリンさん・・・それに龍宮さん・・・」

「エヴァンジェリンに綾瀬か・・・偶然だな」

 

エヴァンジェリン、綾瀬夕映、龍宮真名、ネギの生徒3-Aの生徒の3人。とりたててこの3人に接点は無い。

接点は無いが偶然同じ瞬間に店の前に現われたため・・・

 

 

「おうおう、数集めりゃいいってものじゃねえぞ! だが、どれだけやるのか見てやらァ! おらァ、とっとと座りやがれ!」

 

「「「・・・?」」」

 

 

三人組の客と勘違いされ、普段クラスでも集うことの無い3人組まとめてテーブルに着けさせられるのだった。

 

「何だ・・・随分とこの私に偉そうだな・・・」

「そういう趣向なんだろ、エヴァンジェリン。まあ、一々文句を言ってやるな」

「まるでやかましいチンピラのようです・・・」

 

やけにクールな客だなと、新規の客をシモンが眺めていると、横に居るフェイトが顔を逸らしていた。

 

「フェイト?」

「何でも・・・(闇の福音に僕のことがバレたらややこしくなりそうだ・・・)」

 

エヴァンジェリンにバレぬように顔を隠しているフェイトだが、フェイトはまだ知らなかった。

ややこしいことなど、なるに決まっているということを。

 

「はっはっはっはっはっは、チビにガングロにデコか・・・随分とキャラに富んだ奴らが乗り込んできたじゃねえか!」

 

この珍妙な三人組の接客に着いた番長はカミナ。

 

「チビ?」

「ガ、ガングロ・・・」

「デ・・・デコ・・・・・・・」

 

既にややこしくなりそうな匂いが漂っている。

 

「何だ~、つまらねえツラしやがって、もちっと楽しそうにしやがれ!」

「・・・・・・・・・きさま!」

 

それはカミナが何気なく笑いながらエヴァンジェリンの頭をクシャクシャ撫でた瞬間に起こった。

 

「なっ!?」

「失せろ・・・・・」

 

龍宮に夕映は「あちゃ~」という顔をしているがもう遅い。

撫でられた腕を掴み取ったエヴァは、そのままカミナをぶん投げた。

 

「うおおおお!?」

「ア、 アニキ!?」

「カミナ!?」

 

ぶん投げられたカミナが他のテーブルに激突したりして大きな音を立てた。

対してぶん投げた張本人のエヴァは優雅に飲み物を飲みながら一言・・・

 

「カスが・・・私に気安く触れるな。私の頭を撫でていいのはこの世でただ一人・・・・って、ブホオオ!? 何だこの飲み物は!?」

 

かっこ良く決まらなかった。

一睨みしてクールに飲み物を飲もうとした瞬間、エヴァは飲んでいるものを盛大に噴出した。

コーヒーか紅茶かそのような類のものだと思って目の前にあったカップの中身を確認せずに飲んでしまったエヴァは、予想とはまるで違う味や匂いや刺激が口の中に広がり、思わず噴出した。

噴出したものが自分の可愛らしいファッションに染み付いた。

かかった物体にエヴァが静かにプルプル震えていると、ぶん投げられたカミナは無傷で立ち上がり、盛大に笑った。

 

「はっはっはっは! 見たか! これが時間差カウンターアタック! 男の飲み物、ニンニクカレーだ!」

「カ・・・カレーだと・・・って、アホかァ! 飲み物でカレーを出すアホが居るかァ! どーしてくれる! 私のお気に入りの服がカレーで染み付いてしまったぞ! 匂いもついてしまったぞ!? しかもニンニクだとォ!? よりによって私が一番苦手のものを!?」

「へっ、体が小せえからって小せえことは気にすんな。身についた染みは勲章だと思え! 苦手は克服してなんぼだろうが!」

「アホかァ! 親指突き立ててうまい台詞を言ったつもりかァ!? 大体カレーの染みを勲章などと死んでも思えるかァ!!」

 

思わぬ攻撃にダメージを受けたエヴァは気品も誇りも感じられぬ、ただのやかましい子供のようにギャーギャーと叫ぶ。

 

「ほう・・・あのエヴァンジェリンを一瞬で乱すとは・・・」

「これがダイグレン学園・・・ネギ先生はこんなところに押し込まれていたですか? ・・・・っ、はっ!?」

「ん? どうした綾瀬、急に顔を隠したりなどして・・・誰か知り合いでも・・・・ふむ・・・なるほど」

 

ダイグレン学園に呆れていたところで、夕映は誰かの存在に気づき、思わず顔を隠した。

龍宮はその視線の先を思わず見ると、そこには初々しい雰囲気を出す二人の若き男女が入店してきた。

 


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