【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第26話 ゴチャゴチャ考えてんじゃねえ

全てを捨てでも、その人と共に生きていきたかった。

 

「どうしてこんなことになったの? 私はただ・・・シモンや皆さんと一緒にいたいだけなのに・・・」

 

薄暗い部屋。

その細い体では持て余すほど大きなキングサイズのベッドに顔を埋めながら、ニアは闇の中に居た。

 

「それは・・・私たちが子供だからです・・・・ニア・・・」

「子供は好きな人と一緒に居てはいけないというのですか、黒ニア!!」

 

一つの体に宿る二つの精神。

二つの性格は非常に違う。

ニアは天真爛漫の純粋な世間知らずのお嬢様。

対して黒ニアは、冷たい氷のような表情と、常にクールな思考で物事を判断し、どこか計算高い腹黒さもある。

だが、そんな二人だが、まったく同じ気持ちを持っている。

それは同じ場所を愛しく感じ、同じ仲間たちから温もりを感じ、そして同じ男を愛した。

だからこそ、ニアが悲しければ黒ニアも悲しいのだ。

 

「しかし・・・私たちが帰らなければ、お父様は間違いなくダイグレン学園を潰していました・・・」

「分かっています! お父様は本気だということを! 私がどれだけ力が無いということを・・・ごめんなさい、黒ニア・・・あなたにはとても悲しいことをさせてしまいました・・・・・」

「いいえ・・・・・・ただ・・・・彼らは・・・・私たちのことをどう思うのでしょう・・・・何も言わずに立ち去った我々を・・・」

「分かりません・・・でも・・・・でも・・・・結果的に私はお父様を怒らせ・・・シモンたちを失いました・・・これからどうすればいいのでしょう・・・」

 

二人のニアは会話することも出来る。

だが、精神世界でも二人の表情は浮かないままだった。

 

「そういえばお父様を怒らせた・・・不純イセイコウユウとはどういうものなのです?」

「えっ!?」

「黒ニアは、私の眠っている間にシモンとしたのでしょう? それって一体何なのですか?」

 

ニアの問いかけに精神世界で黒ニアは真っ赤になった。

 

「し・・・していません・・・未遂です」

「だから何をです?」

「ニア・・・あなた本当は分かっているでしょう・・・・」

「分かりません・・・それに、どうして黒ニアは私が知らない知識を持っているのです?」

「それはキヨウたちの話や・・・シモンの部屋に泊まったとき、彼が寝静まったのを機に彼の部屋を大捜査して見つけた資料などから・・・・」

「それはどういったものなのですか?」

 

箱入り娘らしさが際立っている。表の人格は本当に大事に育てられたのだと伺える。

 

「だ・・・ですから・・・男女の営みというか・・・その・・・ですからシモンのドリルをまずはギガドリルにして・・・私の・・・に・・・それを・・・ね・・・ねじ込んで・・・」

「それの一体何が悪いことなのですか?」

 

黒ニアは指を伸ばしたり手で妙な形をさせたりして、クールな彼女が珍しくしどろもどろに説明する。

しかしまったく伝わっている様子は無い。

 

(くっ・・・駄目です・・・ニアは本当にこのような知識が乏しい・・・全てはハゲのお父様の所為なのですね・・・だからあれほどアプローチしているのにシモンと一線を中々越えられなかったのですね・・・・)

 

そこで彼女は決心する。

 

(仕方ありません・・・ここは私がハッキリと教えましょう・・・)

 

黒ニアが意を決して、絶対に言ってはいけないキーワードを言おうとするが・・・

 

「よ・・・・要するに、・・・せっ「ニアさまァアァアァアァアァア!!!!」 ・・・・・」

 

部屋の扉が乱暴に開けられて、その声を阻まれた。

 

「それ以上先は言ってはなりません! お嬢様の発言で、ロージェノムフィルタリングにかかる用語は全て記録され、全てロージェノム様からお叱りを受けてしまいます!」

「・・・・・・・・・・ヴィラル・・・・」

「はっ、この不詳ヴィラル。ロージェノム様の命により、ニア様のごえ・・・・ふごおおおおおお!?」

「聞いていたのですね?」

 

部屋に乱入してきたヴィラルだが、速攻で黒ニアは蹴り飛ばした。

 

「いいですか? 私は同じ部屋にシモン以外の男性と二人で居ることを生理的に受け付けません。以後気をつけるように」

「ご・・・さ・・・流石・・・黒ニア様・・・・」

「それと先ほどのフィルタリングの話をもう少し詳しく教えてもらいましょうか?」

「い、いえ・・・それはニア様の教育上よろしくないということで・・・うおお、黒ニア様、踏みつけないでください!」

「早く全て教えなさい。アディーネがする以上の体罰を与えますよ?」

 

まるで家畜を見るかのような冷酷な瞳でヴィラルを射抜く黒ニア。このときの恐怖をヴィラルは生涯忘れないのであった。

 

「ぐはああああああッ!?」

 

少々グロテスクな場面のためにしばらくお待ちください・・・

 

「とと・・・とにかく・・・黒ニア様・・・とにかくお元気そうで何よりです」

 

全身包帯だらけでヴィラルは苦笑しながら告げる。僅かな間にヴィラルの身に何があったかは秘密だ。

 

「元気ではありません。呼吸などの人体の生命活動を行ううえでの支障が無いというだけです。酸素より重要なものを奪われて・・・どうして健康だと言えるのでしょう・・・」

 

明らかに表情を暗くさせる黒ニア。そんな彼女の目の前で、ヴィラルは額が床にこすり付けられるほどの土下座をした。

 

「・・・・・申し訳ありません・・・私ではロージェノム様の命令には逆らえず・・・ニア様と黒ニア様のお気持ちを考えると、この私・・・この身が切り刻まれるような思いでした! 真に・・・・申し訳ありませんでした!」

 

だが、もう遅い。今更もうどうにもならない。ヴィラルを責めても仕方ない。

黒ニアは優しくヴィラルの肩に手を置いた。

 

「安心しなさい・・・あなたの所為ではありません」

「く・・・黒ニアさま・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ところで本音は?」

「はっ、ロージェノム様は、私が中間で赤点を取った科目を追試ではなくレポートで補ってくださると・・・・ぶほおおッ!?」

「なるほど・・・単位欲しさにあなたは私を売ったというのですね?」

「おっ、お待ちくだ・・・・これは誤か・・・・ぬわああああああ!?」

 

またまたしばらくお待ちください・・・・・・・・

とにかく何だかんだで少しは元気になったニアなのだった。

 

「と、とにかく・・・それほどのお元気があるようならば心配は要りませんね」

 

再びボコボコにされたヴィラルだが、これまで死んだように閉じこもっていたニアも少しずつ元気になったのではないかと安堵する。

しかしその言葉を聞いた瞬間、黒ニアは目に見えるため息をつき、人形のような生気の無い目で呟いた。

 

「さあ、・・・どうでしょう・・・。シモンの居ない今日も明日も世界も私には何の魅力も感じません・・・死んでいるのと変わらない気もします・・・・・・」

「う、・・・・・・黒ニア様・・・そのような意地悪は・・・ふっ、ならばこれはどうでしょう! 私がテッペリン学院の中から選りすぐった男たちと合コンなd、ぶごごおおおおおおッ! も、申し訳ありません、冗談です!?」

「・・・・・・・滅ぼしますよ?」

 

生傷の絶えないヴィラルであった。

 

「ところでヴィラル・・・一体何の用なのです?」

「はっ・・・申し訳ありません。あまりの出来ごとに本来の目的を忘れておりました」

 

顔面を黒ニアに踏みつけられながら、ヴィラルは本来の目的をようやく思い出し、少し殊勝な顔つきになった。

 

「ご報告があります。ロージェノム様の命により、たった一度だけお嬢様に麻帆良学園にもう一度行ってもらいます」

「・・・・えっ?」

 

その瞬間、黒ニアの人格がニアになった。

 

「それでは、もう一度シモンや皆さんに会ってもよろしいのですか!?」

 

目に見えて嬉しそうにするニア。だが、ヴィラルは首を横に振る。

 

「いえ・・・おそらくこれが最後です」

「えっ?」

「ロージェノム様は、シモンと学園祭の武道大会の前座の試合で一騎打ちをします。その場で全ての禍根を断ち切るおつもりです」

「シモンとお父様がッ!?」

「はい。ロージェノム様の力はお嬢様も存じているでしょう。ハッキリ言ってシモンなどでは、勝敗は最初から明らかです」

 

一体どういう話の流れでそのようなことになったのか・・・

だが、父とシモンが戦うというのであれば、それがどのようなことになるのか容易に想像できる。

 

「そ・・・・んな・・・・・・・・・」

 

ニアは立つ力を失うほど呆然とし、そのままヘナヘナと床に腰を下ろした。

再び人格は黒ニアに変わる。

 

「父はシモンを許さないでしょう・・・シモンに対する恨みは異常なものがあります・・・・・・・公衆の面前でシモンを痛めつけるつもりですね・・・」

「恐らくは・・・」

「・・・何故・・・ああ・・・何故このようなことに・・・」

 

黒ニアはギリッと歯軋りする。

 

「何故・・・・私は・・・シモンを傷つけないために私たちは・・・・」

 

そして頭を抱えて、再びベッドに顔を埋めた。

 

「ああ・・・・どうしてそのようなことに・・・・・シモン・・・」

 

愛しい男の名を何度も呟く。

ただ、そんなニアの姿にヴィラルは納得がいかなかった。

 

「どうされたのです・・・いつものお嬢様ならこのようなときでも、シモンなら大丈夫と仰っているはずですよ?」

 

それはいつもいつもニアの奪還に向かっては、カミナやシモンたちに返り討ちにされたヴィラルだからこその言葉。

しかし、そう言われた瞬間、黒ニアがヴィラルを睨んだ。

 

「ヴィラル!!」

「ッ・・・・」

 

黒ニアが珍しく声を荒げた。

 

「・・・申し訳ありません・・・今は少し静かにしていてください・・・・」

 

今は誰の話しも聞きたくは無い。

 

(ああ・・・・・シモン・・・・どうすれば・・・)

 

とにかく今はシモンだ。

シモンのことが気がかりで仕方が無い。

まるで戦場へ子を送った母親のような心境で、黒ニアは顔を落とした。

だが・・・

 

「・・・・・・・・・・・・黒ニア様・・・・いえ・・・・お嬢様・・・・」

「ヴィラル・・・今は・・・」

「黙りません。まことに申し訳ありませんが、無礼を承知で申し上げます」

「えっ?」

 

だが、そんな黒ニアを見ていて、ヴィラルはとうとう拳を握って、口を開く。

 

 

「ごちゃごちゃほざいてないで、黙ってシモンを信じろ! いつから貴様らはそんな世間にありふれた軟弱なカップルに成り下がった!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」

 

 

乱暴な口調で声を荒げるヴィラル。

黒ニアはあまりにも突然のことで、少し呆然としてしまった。

だが、それでも構わずにヴィラルは続ける。

 

 

「相手がどこの誰であろうと、あなたはシモンを信じ! それをシモンが応える! それがあなたたちの愛の形の夫婦合体ではなかったのですか? あなたがやつを信じないでどうするのです?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「私たちがどれほどお嬢様を取り戻そうとしても、シモンと共に乗り越えたのをお忘れですか! 奴は必ず壁を掘り抜けます。しかし、それはお嬢様の信じる気持ちがあってこそ! そうでなければ、奴との絆は本当に断たれてしまいますよ!?」

 

 

一頻り言いたいことを言った後、ヴィラルは一気に顔を青褪めさせた。

 

「・・・・・も・・・申し訳ありませんーーーー!? こ、この無礼は、せ、切腹してでもォ!?」

 

言って後悔したのか、直ぐに床に頭突きしながら何度も土下座するヴィラルだが、その気持ちは伝わった。

 

「・・・・・・・・・・・・当然です・・・・」

「・・・・えっ?」

 

黒ニアではなく、ニアが強い決意を秘めた目で立ち上がっていた。

 

「私はシモンを信じます。全力でシモンを信じます。それが私です。私を誰だと思っているんですか?」

「お嬢様・・・・・」

「ふふふ、黒ニアもそうでしょう?」

 

ようやく自分が何をすべきか思い出したニアはほほ笑み、忘れていた黒ニアは照れくさそうに顔をそっぽ向けた。

 

「なっ・・・・あ・・・・当たり前です」

 

だが、気持ちは再び一つになった。

 

「さあ、行きましょう、ヴィラル。シモンと・・・ダイグレン学園の皆さんの下へ!」

「ハイ! どこまでもお供いたします!」

 

立ち上がり、部屋から出ようとするニアはもう一度自分の部屋を見る。

薄暗く、広く、豪華な家具や骨董品などが置かれた部屋。

しかし最も欲しいものがこの部屋には無い。

一度手放しかけたが、もう二度と離さない。

ニアはヴィラルと、そして多くのSPに囲まれながら、愛する男の下へと向かったのだった。


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