【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第3話 それでもめげるな

 

その男、肌の上から直接に長ランを纏い、V字型のサングラスを掛け、いかにも男臭い男臭が漂う男。

 

「おう、シモン! 朝から男をしてるじゃねえか!」

 

ニアにベタベタ抱きつかれているシモンに、親指をグッと突き立てて、その男は笑った。

 

「アニキーーッ、何でいつもいつも普通に入って来ないんだよー! 何回ドアを壊せばいいんだよ~」

「馬鹿やろう! 男の前に扉があったら何をする? ノックか? 恐る恐る開けるか? 違うだろ、扉ががあったらまずはぶち破る! それが俺たちのやり方だろうが、兄弟!」

「手で開けろってことだよーー!」

 

シモンがアニキと呼ぶカミナという名の生徒。

遅刻していることなど微塵も気にするどころか、ドアをぶち壊した。再びネギの涙腺に涙が溜まった。

そして・・・

 

「あ~~あもう、うるさーーーい! 人が寝てるのに、いつもいつもうるさいのよ、カミナ! ここんとこ、ずっと私は部活の助っ人で疲れてるんだから、静かにしなさいよね!」

 

今度は今までずっと寝ていた女生徒が起きて、いきなりカミナに怒鳴り散らした。

 

「おうおう、これだからデカ尻女はよ~。デカイのはケツと胸だけで心は小せえな、ヨーコ」

「だ、誰が! 大体あんたといい、キタンといい、留年ばっかしないでさっさと卒業しなさいよね! っていうか進級ぐらいしなさいよね! 弟分とか妹と同じ学年で同じクラスとか、シャレにならないわよ!」

「か~、細かいこと気にしやがって、・・・それがどうした! 俺を誰だと思ってやがる!」

 

女性の名はヨーコ。赤い髪に鋭い瞳、大人びたプロポーションでありながら、美しさと少し幼さを感じさせる女だった。

 

「もう、アニキさんもヨーコさんも喧嘩はやめてください。今、新米先生の挨拶ですよ?」

 

ギャーギャー口論をするカミナとヨーコの間に、ニアが仲裁に入った。

 

「も~、ニアもこいつを甘やかしたらダメよ。直ぐ調子に乗るんだから。幼馴染の私が言うんだから、絶対よ。だからあんたも甘やかさないの。でないと、あんたのシモンもこいつに巻き込まれてとんでもないことになるわよ?」

「ったく、ヨーコはニアと違って男ってものを分かってねえ。ッてそうだ、ニアで思い出した。シモン、今朝テッぺリン学院の番長四天王のチミルフが麻帆良に乗り込んで喧嘩ふっかけて来やがった。手を貸せシモン!」

「えええ!? 無茶だよアニキーーーッ!」

「バカ野郎! テメエは自分を誰だと思ってやがる! 今はキタンたちがやってるが、かなり奴らも手ごわい! 加勢に行くぞ! ニア、シモンは借りていくぞ!」

 

遅刻に器物破損に違反制服の次は、早退に喧嘩。校則違反のオンパレードだった。

 

「冗談じゃないわよ! シモンの幼馴染として、そんなことは絶対にさせないわ!」

 

シモンを引っ張って無理やり連れ出そうとするカミナからシモンを引き離し、ヨーコはその豊満な胸の中にシモンを抱き寄せた。

 

「ヨヨ、ヨーコ!? むご・・・ごもごもごも」

「シモンのお父さんに頼まれてるんだから! シモンを喧嘩とかそんな危ない目には合わせないわ!」

「か~、これだから。テメエはシモンのことをな~んにも分かっちゃいねえ。男には引くに引けねえときがあるんだよ! 敵はテッペリン学院だ。あの理事長のハゲ親父の命令でニアを取り戻しに来たんだ! ニアを守るための戦い、シモンがやらねえで誰がやる!」

「そんなのあんたたちで勝手にやってなさいよ! 敵が来たら、シモンもニアも私が守るわ! 大体学園敷地内で喧嘩したら、また高畑に怒られるわよ!」

「む~~、もごもごもご!?」

 

 

シモンを胸にうずめてヨーコは放さず、カミナと口論の真っ最中だ。

シモンはヨーコの胸の中で呼吸が出来ずに苦しそうだ。

キヤルやキヨウはヨーコとカミナの喧嘩を「夫婦喧嘩か?」と言ってからかう始末。

しかしその時だった。

 

「・・・・・・・・・・・ヨーコ・・・」

「へっ? って・・・・わあっ!?」

 

冷たく抑揚の無い声が教室に響き、ヨーコに手刀が襲った。

ヨーコは抜群の反射神経で回避するが、「しまった・・・」といった表情で舌打ちした。

そしてネギは目を見開いた。

何故ならたった今ヨーコに手刀を繰り出した冷たい声の主は、なんとニアだったからだ。

 

「ヨーコ・・・シモンを抱きしめて・・・・・・あなたは何を?」

「ち、違うのよ! 誤解しないで! そういうのじゃないんだから!」

「ヨーコ・・・シモンに手を出すということは・・・・・・・絶対的絶望を与えられたいということですか?」

「だからそんなんじゃないんだってばーーッ!?」

 

ニアは先ほどとは180度変わり、まるで冷徹な感情の無い人形のような表情でヨーコを睨み、ヨーコはニアに対して慌てて弁明しているようだった。

 

「あの・・・ロシウさん? ニアさんはどうしてしまったんですか?」

 

教室の騒乱に、「もう嫌だ・・・」と頭を抱えて俯いていたロシウに小声で尋ねてみた。

 

「えっ? ・・・ああ・・・あれですか」

 

ロシウは後ろを見て、無表情な顔でヨーコに迫るニアを見て、ため息をつきながら答えた。

 

「あれは黒ニアさんです」

「・・・・・黒ニアさん?」

 

意味が分からなかった。

 

「はい・・・彼女は幼いときから親に溺愛され、窮屈な暮らしを強いられ、いつしかもう一つの顔が生まれました。要するに二重人格なんです」

「えっ!?」

「共通しているのは、どちらもシモンさんが大好きと言うことです」

 

普通は10歳児の教師ということで、これまではむしろネギが驚かせる側だった。

しかしネギはまだ数十分程度しかこの学園に来ていないのに、驚かされてばかりだった。

ネギが次々と明かされる問題に頭を抱えていると、黒ニアはシモンの手を引いて教室を出る。

 

「さあ、行きましょう、シモン。お父様にはそろそろ分かってもらう必要があります。私はここにいて良いのだと・・・」

「ちょちょちょ、黒ニアーーッ! 俺は真面目に授業受けて留年もしないで卒業したいんだよーーッ!」

「それは無理です。さあ、行きましょう、シモン。カミナも」

「おお、俺たちの熱い友情と愛の絆を見せてやろうじゃねえか!」

「ああ~~もう、分かったわよ、私も行くわよ! その代わりチミルフ倒したらさっさと帰るわよ!」

 

ニア、シモン、カミナ、そしてヨーコが退室してしまった。

 

「なあなあ、俺たちも行かね? 兄ちゃんたちも居るみたいだしよ~」

「そうね~、今日はダーリンの授業もないし、お兄ちゃんたちの加勢に行こうか」

「よっしゃあ、そうと決まれば、キノン! お前も乙女ゲームばっかやってないで、さっさと行くぞ!」

「えっ・・・へっ!? 私も!?」

 

キヤルにキヨウ、そして机に向かってこの騒ぎの中でも集中してゲームをしていたキノンと呼ばれる生徒まで手を引かれて退室した。

 

「ま、待ちなさい! 喧嘩のために早退など許しませんよ! って・・・・くそっ、何故喧嘩など・・・何故楽な道を行く。あなたたちは何も分かっていない」

 

そして最後にポツンと教室に一人取り残されたロシウは・・・・

 

「ネギ先生、必ず僕が皆を連れ戻してきます! これだからいつもいつも本校の人たちからダイグレン学園は白い目で見られるんだ・・・・・・」

 

ぶつくさ言いながら、ロシウは皆を止めるために教室から飛び出していった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そして最後に教室に残ったのは、教壇に立つ10歳の少年。

 

「皆・・・居なくなっちゃった・・・・・・」

 

あれだけ騒がしかった教室が、無人のために静まり返って、独り言の自分の言葉が良く響いた。

 

「今日来てなかった人たちも・・・・・あんな人たちばかりなのかな・・・・・」

 

研修初日、クラスの生徒の出席者ゼロというとてつもない経験をネギはしてしまった。

 

「うっ・・・・・・・うううううう・・・・・・・・」

 

真祖の吸血鬼や、伝説の鬼神やら、様々な怪物とも戦ってきたネギだが・・・

 

「うわああああああん、帰りたいよおおおおおお!! もう、嫌だよおおおお!!」

 

誰も居ない教室で、子供らしく泣きじゃくってしまった。

 

「こ、・・・ここで、数週間も!? 無理だよーーッ! それに評価がダメだったら、僕ってクビになるんじゃ・・・・それなのに初日にこれだなんて・・・うわああああああん、お姉ちゃーーーん、アスナさーーーん!!」

 

無理だ。

こんなとんでもないところで2週間もなんてとても無理だ。

しかも学園長はハッキリとは言わなかったが、ここで教師としての評価がダメだったら、自分は教師をやめなくてはいけないかもしれない。そう思うと、再び涙が溢れ出した。

教師生活生まれて初めて味わう学級崩壊。

ネギは今、教師としての壁にぶつかるのだった。

 

「うう・・・でも・・・泣いてちゃダメだ・・・僕は先生なんだから・・・」

 

鼻水と涙を拭きながら、ネギはなんとか心を持ち直す。

 

「よ・・・よ~し、とにかく喧嘩なんて絶対ダメだ! みんなを・・・みんなを連れ戻しに行こう!」

 

少年は涙で瞳を腫らしながら、ダイグレン学園に来てから一時間もしないうちに校舎から飛び出して走った。

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