【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第31話 お前の明日は俺が創る

「うう・・・シ・・・シモ~ン・・・」

 

ニアは口元を手で覆い声を押し殺していたが、それでも嗚咽は止まらなかった。

 

「ごめんなさい・・・あなたがこれほどボロボロなのに・・・私・・・」

 

いつも自分はシモンに想いを伝えていたがシモンは照れたり笑ったりしただけで、シモンが自分をどう思っているのかは一度も言ってくれなかった。

 

「・・・あなたの・・気持ちが・・・うれしくてたまらないの」

 

だからこそうれしくて涙が止まらない。

あのシモンがこれ程の大観衆を前に、そして命を賭けてまで自分の事を好きだと言ってくれたのだ。

愛する男にここまでされてうれしくないはずがない。

 

『うおおおおおおん!』

『どうされました、豪徳寺さん』

 

解説者席に居る豪徳寺が涙を流しながら机を叩いた。

 

『自分は・・・自分は・・・自分から女に愛の告白をするような男は軟弱だと思っていました! ・・・男ってのは、口では愛を語らずに・・・でも、大事なものを守るためなら命だって投げ出す・・・それが男だと思っていました! しかし・・・しかし・・・・俺は今、猛烈に胸が熱くなっています! 畜生! シモン選手が眩しすぎて、目に染みやがる! これじゃあ、リングが見えねえじゃねえかァ!!』

 

命懸けの愛を口にした場面に遭遇し、心を動かされたのは彼だけではない。

 

「ぬああああああああ!!」

「い、委員長どうした!?」

「とうとう狂ったか!?」

 

大量の涙を流しながら、雪広あやかはへなへなと床に両手と両膝をついた。

 

「私・・・わた・・し・・・今の今までダイグレン学園というものを聞いただけで嫌悪していましたわ・・・ネギ先生が研修に行かねばならなくなったとき・・・あの学園を落ちこぼれの掃き溜めなどと・・・知りもしないで・・・」

 

涙で目を輝かせながら、愛を語るシモンに感動が止まらぬ委員長。

 

「これほどの・・・これほどの命懸けの愛を貫こうとする方がいるなどと知りもせず・・・この雪広あやか、一生の不覚ですわァ!!」

 

すると彼女の意見に同調し、そしてシモンの命がけの愛を見せつけられた3-Aの生徒たちも少し涙を浮かべて頷いた。

 

「ん・・・うん・・・、たしかに委員長の言うとおりだよね・・・」

「てっきりシモンさんって、ニアさんに振り回されている草食系の男子かと思ってたけどね~」

「この間の部活探しの時には、こんな一面があるなんて知らなかったよ」

 

まき絵、裕奈、アキラなど、シモンの部活探しに協力した彼女たちも、そしてシモンのことを今日初めて知った他の生徒たちも「ウンウン」と頷いている。

そう、熱かったのは喧嘩だけではない。

その身に宿す愛もとてつもなく熱すぎた。

他の人なら照れたり、うまく口では伝えられないことを、この極限の状態でシモンは叫んだ。

それだけ堂々とされて笑うものが居るはずがない。

呆れるものが居るはずがない。

ただ、シモンが眩しく見えた。

 

 

「ふん・・・ドサクサに告白しておって・・・この・・・小僧がァ! だが・・・その想いは・・・世界よりも広いワシの娘への愛より強いのか?」

 

口上と共に愛を叫んだシモンに、ロージェノムは何故か笑った。

何故なのかは分からない。

しかしほほ笑むロージェノムの表情は、まるで悪友とバカやっているような表情に見えた。

 

「無限に広がる宇宙よりもデカイ!!」

「大口を・・・」

「大口じゃない。俺を誰だと思っている!」

 

バカ一直線に掘りぬけた。そんなシモンに対してロージェノムは最早笑うしかなかった。

 

(ワシだけでなく、心のドリルで自分も掘りぬけたとでも言うのか?)

 

ロージェノムはそう思え、だからこそ自然と笑いが浮かんだ。

 

「だがしかーーーーし、それとこれとは話が別だァァァ!! 薄暗い道を歩む不良なんぞにワシのかわいいニアは断じてやらん!」

「何を言っている! 道に明るいも暗いも無い! 人は自分で輝くんだよォ!! 内に秘めた魂の輝きでな!」

 

どちらが先に手を出したかは分からない。気づけば再び両者は渾身の殴り合いをしていた。

 

殴られれば殴り返し、ダメージを受けても反撃し、作戦も駆け引きも何も存在しない。

 

『あ、あれええッ!? なんかいい雰囲気なのにぶち壊しです! 頑固親父の頑固も極まっています!』

 

収まるかと思った殴り合いが再び始まり、思わず叫ぶ朝倉だったが、これで良い。二人にはこれで良かった。

自分の全身全霊を賭けて愛する娘を手放そうとしない父親に、諦めない男。

何故そこまでするのかと問われれば簡単だ、それだけ二人ともニアを愛しているのだ。

だから・・・

 

(これでよい!)

(これでいい!)

 

これで良かったのだ。

情に流された展開なんかで自分たちのケリはつかない。

 

(ワシが娘を渡す男と向き合うのは・・・その男が正面からワシを乗り越えたときだ!)

(俺がニアへの想いを証明できるのは、お前を乗り越えたときだ!)

 

拳を通じて二人の男は語り合う。

 

(そうだろ、ロージェノム!)

 

シモンの拳がロージェノムの肋骨に突き刺さる。

 

(その通りだ、シモン!)

 

答えるロージェノムの拳がシモンの腹部を打ち抜いたのだった。

 

「畜生、この頑固おやじが! 負けるな、シモン!! 所詮はハゲ髭胸毛親父の悪あがきだァ!」

「お前の愛を見せてやれ!」

「がんばって! 私たちも応援するから!」

「私たちもですわ! 同じ麻帆良学園の生徒として、彼を全力で応援ですわ!」

「いっけーーー、シモンさーーん!!」

 

再び地鳴りが鳴り響いた。

動くのがおかしいぐらいの怪我をしているのに決して止まることをせず、腫らし目蓋の所為で目がうまく開かないが、その奥の瞳は光を失っていない。

もうシモンの右の拳は粉砕している。握り締めることは出来ないかもしれない。

 

 

「「一歩も引いてたまるかァ!!」」

 

 

だが、折れる骨の破片と引き換えに、ロージェノムから僅かにでも痛みを刻みこむ。

ドリルの刃先を一ミリでも食い込ませるように。

 

(くっ・・・息がうまく出来ん・・・何度もボディを打たれて動きが鈍くって来ておる・・・だが何故だ? 滾った血が収まらんわ!!)

 

体が重く、自分の意思とは関係なく肉体の構造上、これ以上動く事が出来なくなっている。

だが、それはお互いさまだ。

ロージェノムは自身のダメージとシモンの状態を照らし合わせる。

 

(・・・殴り続けて、もうやつの右腕は確実に死んでおる・・・あれならばクロスカウンターも放てまい。だが・・・この男なら死の底からも這い上がる。そうだ・・・こやつなら打つ! 死んだ拳でも打つ! ならば・・・)

 

それはある意味信頼にも似ていた。

こんな状態でもシモンならやると、ロージェノムは心の中で決めた。

 

「逃げるわけにもゆかん。正面から貴様のカウンターも潰してくれよう!!」

 

空気で伝わる。

これが恐らく最後の一撃だ。

シモンは口もうまく聞けない状態だが、ロージェノムの言葉を受け取り、体を前に乗り出して身構える。

カウンターで最後の一撃の力を溜めこんでいる。

どっちが得て、どっちが失うのか、その答えが出る。

 

『ロージェノム選手、踏み込んで左ストレートだァ!』

 

シモンも前へ出る。

その瞬間、会場の誰もがシモンのカウンターを期待した。

だが、ロージェノムは心の中でほくそ笑む。

 

(勝った!)

 

宙で交差するロージェノムの左ストレートとシモンの右のクロス。

リングに描かれる拳の十字架。

しかしその十字架が形を変える。

 

『こ、これは!?』

 

ロージェノムが瞬間的にひじを曲げて、シモンの右手を弾き飛ばす。

 

「まずいッ!?」

「シモンさんッ!?」

「ロージェノムに技を使わせたか・・・しかしッ!?」

 

腕を弾かれたシモンの体が無防備になる。

 

『あれは、ダブルクロス!?』

 

カウンターに対するカウンターという超高等技術。

 

「終わりだああァァァ!!」

 

ロージェノムは無防備になったシモンの顔面目掛けて右ストレートを放つ。

 

「ッ!? な、なにいいい!?」

 

だが、体勢を崩されながらもシモンは更に一歩踏み出して、今度は左の拳を繰り出した。

 

「あ・・・あああーーーッ!?」

「あれはッ!?」

「これだけ追い込まれてもあの男は!?」

 

何かに恐れて臆することも無く、必要とあれば体だけでなく命すら前へと押し出す。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

「態勢が崩れようとも、ま、まだ前にッ!?」

 

しかもそれだけではない。

 

(しかし、腕のリーチはワシの方が上! ワシの拳が先に・・・ッ!?)

 

それは刹那の出来事。

その一瞬に気づけたのは会場に居るほんの数名。

だが、確かに彼らは見た。

 

 

(シモン!? 拳の先に捻りを・・・まるでドリルのように回転力をつけて加速し・・・・!!?)

 

――ぐしゃっ

 

 

潰れた音はシモンの拳かロージェノムの顔面なのか?

いや、ただどちらにしろ、シモンの左拳が先にロージェノムの顔面にめり込んだ。

何度も何度も殴り続けたロージェノムの顎の骨を粉々に砕いた。

 

「シ、シモンさん!?」

「シモン!? お父様!?」

「理事長!?」

「ぐっ・・・ぐしゃって・・・」

 

拳を交差させた状態で微動だにしない二人。

 

『こ、・・・これは!?』

『ダブルクロスのカウンター・・・・しかも拳を捻って・・・これは正に・・・、コークスクリュー・トリプルクロス・カウンターじゃないかァ!!?』

 

そして、微動だにしなかった二人のうちの一人、ロージェノムがズルっと完全に膝を地面に付けた。

 

『ああ~~っと! ロー、ロージェノム氏が!? 難攻不落の帝国の王座に君臨する絶対的覇王が!?』

 

対してシモンはパンチを前に突き出したまま、何の反応も無い。

両膝を地面に着いたロージェノムは少し顔を上げてシモンを見る。

 

「そうか・・・ワシより、お前の愛が勝っていたということか・・・」

 

途切れ途切れのその言葉だが、その言葉ははっきりと聞こえた。

 

「ワシは・・・20年前・・・ある男と女に出会った・・・男は心が強く・・・熱く・・・どんな絶望も諦めず・・・・女はそんな男を何が何でも信じ抜いていた・・・ワシは当時まだ子は居なかったが・・・息子を授かったら、あの男のような強き男に・・・娘を授かったら、あの女のように惚れた男を信じ抜き・・・・・・幸せになって欲しいと・・・・あの二人のようにと・・・思っていたのだがな・・・」

 

ロージェノムは四方を見渡した。

 

「顎まで・・・いや、砕けたのはそれだけではないようだな・・・・・」

 

最初はつまらなそうに期待もしていなかったであろう観客たちに、あれだけの地鳴りを鳴り響かせ、心を熱くさせた。

もう、心は満ちた。

 

「子が親を完全に乗り越える・・・父として・・・これに勝る喜びはなし・・・」

 

そしてロージェノムは笑った。

 

「望みどおりワシを超えてゆけ。お前たちの明日を作って来い!」

 

その言葉を最後に、ロージェノムは完全に力が抜けてリングの上に倒れた。

 

「お父様!?」

 

ロージェノムが倒れ、残っているのはシモンだけ。

 

「ありがとう・・・・・・・ロージェノム・・・」

 

だというのに観客たちは静まり返っていた。

 

「お・・・・・」

「おお・・・・・・」

「た、・・・倒した・・・」

 

誰もが今すぐにでも叫びたい衝動に駆られている。

だが、まだ終わっていない。

まだ、一番大事なことが残っている。

 

「・・・・ニアッ!」

 

シモンがようやく突き出した拳を納め、観客席に居るニアを見上げる。

 

「シモン・・・」

 

シモンに名を呼ばれ、ビクッと体をニアは震えさせた。

そして心臓が高鳴った。

これだけ会場が静まり返っていると、自分の心臓の音が聞こえてしまうのではと思うほど、ニアの心臓の音は激しく波打っていた。

 

「ニア・・・俺はずっと恥ずかしくて言えなかった! お前はいつも言ってくれたけど、俺は恥ずかしくって言えなかったんだ!」

 

二人の間に、もう壁は無い。

あるのは物理的な距離だけ。

 

「恥ずかしかったし、それに言葉にしなくても俺たちは何も変わらないだなんて思ってた! でも、お前が居なくなって気づいたんだ! 言いたいことを言っておかなかったことをどれだけ後悔したか! 恥ずかしいなんて思っていた自分が恥ずかしかったんだ! だから言うよ! 何度だって!」

 

一度深呼吸して息を吸い込んだシモンは、吸い込んだ分だけため込んだ愛を吐き出した。

 

「ニア、俺はニアのことが好きだ! いつまでも傍に居てほしい! 俺の今も明日もこれからも、俺の世界は全部お前にやる! だから・・・これからもずっと一緒に居てくれ!」

 

不細工に腫れあがった顔で愛の告白。

だが、かっこ悪いだなんて誰も思わない。

ましてやニアにとって、今のシモンはこの宇宙で誰よりも輝き、かっこよく見えた。

 

「シ・・・シモン・・・!」

 

また再びため込んでいた涙がニアの目から溢れだす。

そしてシモンはニアに向かって手を伸ばし、グッと拳を握りしめる。

 

「お前の明日は俺が作るよ!!」

 

余談だがこの時、見かけ草食系男子のシモンの男らしい愛の告白に顔を真っ赤にさせて憧れた女子が何人か居たそうだが、二人の間にはどうでもいいことだ。

ニアはもう迷わない。

自分が絶望して諦めかけた難攻不落な壁をシモンが殴って壊して道を作ってくれた。

ならば、その道を自分は行く。

 

「シモーーーーーーン!」

 

ニアは飛んだ。

 

「ニ、ニア様ァァァ!?」

「ちょっ、危なーーーーい!!」

 

観客席の上段からリングに向かって飛び下りるニア。もはや、数秒でも惜しい。

たとえ危険でもシモンが受け止めてくれる。

ニアは飛び下り、シモンの胸に飛び込んだ。

シモンは勢いに押されてそのままリングに背中から倒れてしまった。

しかしそれでもその両手はしっかりとニアの背中に回し、抱きしめていた。

再び戻ったぬくもり、彼女の香り、そして彼女の吐息。

そしてニアは息がかかるぐらいシモンに顔を寄せ、シモンにとって宇宙で一番素敵な笑顔でほほ笑んでくれた。

 

「シモン、あなたが私の世界。でもね、それだけではダメ」

「ニア?」

「私たちの明日は、私たちの手で作るのよ!」

 

少しポカンとしたシモンだが、直ぐに笑みを浮かべて頷いた。

 

「ああ!」

 

シモンは強くニアを抱きしめた。

ニアも強く抱きしめた。

二人の間に壁は無い。

二人の間にもう距離は無い。

二人は再び一つになった。

 

 

『うおっしゃあああああああああああああああああああああ、これでもはや完・全・勝・利! これが二人の愛と愛の最終形態! 合体だァァ!!』

 

「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」」」」」

 

 

そして会場全体が一つになった。

 

「テメエの男、見せてもらったぜ、シモン!」

「もう二度と手放すんじゃないわよ!」

「畜生、かっこいいじゃねえかよ!」

「二人で幸せになァ!!」

「お二人の愛に感動しましたわ!」

「すげえぞ、ダイグレン学園のシモン! そんなかわいい子を絶対に泣かすなよな!」

「シモンさん、かっこええ!」

「もう、なによ~、お世辞抜きですっごい素敵よ!」

「祝福します!」

「見事な男気を見せてもらったでござる!」

「うう~、俺も早く戦いたいで~!」

「ウズウズしてきたアル!」

 

不良も教職員も普通の生徒ももはや関係ない。

誰もがシモンの男ぶりに称賛し、二人の新たな門出を祝福した。

 

 

「ウム・・・合格点をあげざるをえないネ・・・」

「君の心は・・・見せてもらったよ、シモン」

「とても素晴らしい愛を見せてもらいました」

 

謎に包まれたドリ研部部員たちも、何の裏もなく、素直にシモンに拍手を送る。

 

「非常に懐かしい力を見せてもらいましたよ、シモン君」

 

クウネルもまた、拍手でシモンを称えたのだった。

 

「う・・・うわあ・・・ど、どうしよう」

 

これだけの大歓声を人生で一度も受けたことのないシモンは、ただどうすればいいのかと照れて右往左往していた。

 

「すごい・・・みんなシモンのことを知ってくれたのです・・・・・・いいえ、知ってくれたのよ」

「ニア?」

 

シモンはその時に気づいた。

ニアが敬語ではなくなっていた。

一気に心の距離も縮まったように感じた。

そして彼女はアザだらけで紫色に腫れあがったシモンの両頬にそっと両手を添えて自分に向ける。

 

「シモン・・・私も・・・・愛しているわ」

「ッ・・・ニア・・・」

「不思議。今まで何度も言ったはずなのに、私、今一番ドキドキしているわ」

 

そして彼女はそのまま自分の唇をシモンの唇に重ね合わせた。

 

「「「「「「「「「「んなあああああああああああああッ!?」」」」」」」」」」

 

公衆の面前で何の恥じらいもなく、むしろそれが自然な行為だと言わんばかりにニアはシモンにキスした。

 

「んな・・・なななななな、ニニニニ・・・ニアッ!?」

 

もはや完全なる不意打ちでシモンは大慌てするが、ニアはシモンの頬に添えた両手を離さない。

 

「不思議・・・今までで一番うれしい!」

「ニア!? み、みんなが見て・・・んぐ・・・」

「ん~~~、シモ~~ン!」

 

間隔の短いキス。

頬に、首筋に、また唇にとニアはシモンに対してキスの雨を止めない。

 

『うお・・・うおおおお、こ、こいつは校則違反になるんでしょうか!? い、や・・・私たち麻帆良学園は空気が読める! 二人の愛を校則なんぞで縛るのはヤボってものだ! わ、私、朝倉和美は司会者としてではなく、一人の女として、そして同じ麻帆良学園の生徒として皆さまにお願いします! どうかしばらくはこの勇者に対する姫からの祝福のキスを邪魔しないで上げてください!』

 

しばし呆然としてしまった朝倉だが、急いでマイクを構えて会場に向けてアナウンスをする。

すると、空気の読める観客たちは「きゃーきゃー」「ぎゃーぎゃー」騒ぐでもなく、全員親指突き上げて「オウ!」と笑った。

 

「ひゃ、ひゃ~~ニアさんて大胆やな~」

「ふふ、でも好きな人にああやって堂々とキス出来るなんて・・・何だかうらやましいな~」

「ええ!? のどか!?」

「おんや~、何かラブ臭が・・・」

 

中学生の少女たちには少し刺激が強いのか、顔を赤くして少しリングから視線をそらそうとしているが、バッチリとシモンとニアの行為は見ているのだった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・おい・・・・・・」

 

しかしその時異変に気付いた。

エヴァがプルプルとリングに指をさす。

 

 

「どうしたのですか、エヴァンジェリンさん?」

「い、いや・・・刹那よ・・・あの二人・・・長くないか?」

「?」

「いや・・・更に濃厚になっているような・・・・」

 

 

エヴァの言葉にタカミチですら慌ててリングの二人を見る。

すると・・・

 

 

「ん、ちゅっ、・・・はむっ、・・・シモンっ、んんっ、ちゅぅ、ぴちゃ、じゅっ・・・」

 

 

何か聞こえて来た。

 


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