【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第33話 どこまでも

「へっ、祭囃子が騒がしくなってたぜ! おもしれえ!」

 

リング内で盛り上がるこの光景にカミナが笑うと、その前にロージェノムが現れた。

 

「ぬう~~、やはり立ちはだかるか、カミナめ~~!」

 

傷だらけのロージェノムを前に、カミナは笑った。

 

「はんっ、ハゲ髭胸毛親父が! テメエはもうシモンに負けてんだ! 往生際が悪いんじゃねえか?」

「負けてはいない! 負けず嫌いで往生際の悪さも男の強さの一つ!」

「何言ってやがる! テメエのは負けず嫌いなんかじゃねえ! 現実逃避して現実から目を逸らした臆病者よォ!」

 

リング中央にて、シモンに対する援軍に舌打ちするロージェノムの前でカミナは叫ぶ。

 

「行け、シモン! ここは俺らに任せろ! テメエの作った道を二人で進んでいけ!」

「アニキッ!?」

「カミナ」

「シモン! ニアと黒ニア、全部まとめてテメエが責任もって連れて行け!」

 

カミナは道を示す。

シモンが切り開いた道。

 

「そうだ、行ってこーーい!」

「お二人の愛の邪魔はさせませんわ!」

 

気づいたら様々な生徒たちが一直線上に並んで、武道会のリングから外へ通じる道へ向けて人間アーチを作っていた。

邪魔しようとする黒服たちを押しのけて作った道は、まるで二人の愛を祝福するかのように拍手喝采で築いていた。

 

「ちょちょちょ、何これ!?」

「皆さん・・・ありがとうございます・・・・私・・・・幸せになります!」

「えええええーーッ!?」

 

シモンそっちのけで盛り上がり、熱くなり、そして感動するニア。もう、シモンもどうにでもなれと思った。

 

「させんぞおおおおおおお!」

 

だが、そんな二人の旅立ちを邪魔せんと駄々ジェノムが拳を振り上げて向かってくる。

まだまだ元気なようだ。

だが・・・

 

「はあッ!!」

「ぬっ、き、キサマは!?」

 

一人の少年が、その重たい拳を正面から受け止めた。

 

「せ、先生!?」

「先公ッ!?」

「ネ、ネギ先生!?」

「な、あのバカいつの間に!?」

 

ネギが、ロージェノムの拳を受け止めた。

 

「なんのつもりだァァァァ! ワシの娘が不良に攫われようとしているのだぞ!? 教員の分際で家庭の事情に口を挟むなァァァァ!!」

「それでも・・・」

「何?」

「それでも僕は口を挟みます」

「こんのガキがアアアアアアアアア!!」

「人にどれだけ言われても怯まず二人は道を選んだんです! そんな生徒が進もうとする道を、僕は全力で応援します!」

 

ロージェノムに対して、ネギは一歩も引かない。

だが、そんなネギや抵抗するカミナたちに、駄々ジェノムは最後の手を使う。

 

 

「ふん・・・くだらぬことを~~、ワシが本気を出せばダイグレン学園そのものを廃校に出来るというのに!!」

 

「・・・・・えっ!?」

 

「・・・んだと?」

 

 

その時ロージェノムは不敵に笑い、ネギとカミナの表情が変わった。

そしてロージェノムはこの大乱戦の中でも会場中に聞こえるほどの声で叫んだ。

 

 

「そうじゃ、ワシが本気を出せばダイグレン学園そのものを廃校にすることが出来る! これはもはや委員会でも、学園長の近衛近右衛門も了承済みじゃ!」

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

「「「「「「「「「「な、・・・・・なんだとッ!?」」」」」」」」」」

 

 

その時、ダイグレン学園も他の生徒も関係なく、リング状に居たすべての者の動きが止まった。

勿論、この光景をパソコンから学園長室で眺めている学園長も、ビクッとなった。

そして僅かの静寂が徐々に・・・・

 

 

「ど・・・」

 

「どう・・・・・!」

 

「「「「「「「「「「どうなってんだコラァァァァァァ!!!!」」」」」」」」」」

 

 

爆発的な怒号となって返ってきた。

 

「ダイグレン学園が廃校になるだァ! テメエに何の権限があってんなことするんだよッ!?」

「テメエ、いい加減にしろよ!」

「いかにテッぺリン財団総帥といえど、私、雪広あやかを始めとする雪広グループが黙ってませんわ!」

 

ロージェノムの言葉に怒ったのはカミナ達だけではない。これまでダイグレン学園を白い目で見て来た本校の生徒たちも一斉になってロージェノムの言葉に噛みついた。

 

「ど、どういうことなのよ、ネギ!?」

「ぼ、僕もそんなこと何も・・・タカミチ!?」

「・・・確かにそういう話は・・・しかし学園長も既に了承済みだとは・・・」

 

難しい顔で唸るタカミチの表情が、ロージェノムの言葉が嘘ではないということを感じ取り、ネギたちも取り乱した。

しかし混乱と怒号が飛び交うリングの上でロージェノムは堂々と叫ぶ。

 

 

「黙らんかァァァァ! いくら言ってももう遅いわァ! 嫌ならニアを返すのだ! 大人しく返すのだ! そうすれば廃校は学園長にはワシから直接言って取り下げても良い!」

 

「「「「「「「「「「んだそりゃああああああああ!?」」」」」」」」」」

 

『うわっ、ちょっ、最悪だァああああああ!! ここに来てこの親父は大人の権力を取り出したァァ! しかも開き直ってます! もう、誇りも微塵も無い最低だァァァァ!』

 

「最低で構わんわァァァ! ニアの居ない日々に比べたら何て事無いわァァ!! それにこれはもうワシや学園長を始め、教育員会でも大きく取り上げた問題だから、どうしようもないんもんねええええええええ!!」

 

『うわああああ、もう、ダメです! こいつはダメです! 誰かァァァ! この駄々ジェノムを誰かぶっとばしてくださああああああい!!』

 

 

開き直った駄々っ子ほど手に負えないものは無い。

あの拳の語り合いは何だったのだと言いたくなるほどの権力乱用に麻帆良生の怒りが燃え上がる。

ニアを返せば、元通り。

ニアを返さなければ、ダイグレン学園は廃校。

それこそがニアが父親に大人しく従った理由だった。

黒ニアは拳を握って悔しそうな表情を浮かべ、無言のまま抱きついたシモンから離れようとした。

だが・・・

 

「どこ行くんだよ・・・妹分・・・」

「・・・カミナ・・・」

 

離れようとした黒ニアの前にカミナの背中が立ちはだかった。

 

「カミナァァァァァ!! キサマを退学にするぐらい~」

「ふざけんな。ダチを見捨ててまで残った学校で、俺たちは何を学べばいいってんだよォ!」

 

それがどうしたとばかりにカミナは叫んだ。

一瞬呆然としてしまったネギだが、カミナの言葉に頷いて、一緒に前へ出る。

 

「その通りです! 生徒一人と引き換えに存続するような学校で、僕は誇りを持って仕事をすることは出来ません!!」

「俺たちダイグレン学園に教室も黒板も校舎も必要ねえ! 教師と俺たち生徒が居りゃあ、そこが俺たちの学校だ!」

「一度クラスを受け持った以上、教師は一人たりとも生徒を見捨てたらダメなんです! だから、あなたの言葉には従えません! 脅しに屈するような教えは、ダイグレン学園ではしないことになっているんです!」

 

ネギとカミナ、二人が先頭となってニアが一度は諦めたロージェノムの脅しに正面から歯向かった。

 

「「それが、教育ってものだろうが(でしょう)!!」」

 

ロージェノムの超絶パワーを正面から受け止めるネギの力とカミナの叫びに全員驚くどころかむしろテンションが上がった。

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」」

 

そうだ、二人を守れと皆が叫んだ。

そしてその時だった。

 

「お、おい・・・アレを見ろ!」

「巨大映像だ!」

 

唐突に空に巨大な人の顔が映し出された。

 

 

「おじいちゃんやッ!?」

 

「「「「「「「「「「学園長!?」」」」」」」」」」

 

 

正に絶妙なタイミングで、・・・というか、学園長は一部始終この大会を見ていたため、相当空気が悪いと判断して、自らが映像を通して顔を出した。

そして学園長は少し俯きながら・・・

 

 

『ダ・・・ダイグレン学園は・・・永久に不滅じゃ! 絶対に潰させはせん! カミナ君、ネギ君、グッジョブじゃ!』

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」」

 

 

親指を突き立てて学園長は断言したのだった。

勿論これに我慢ならないのはロージェノム。

 

「き、汚いぞ、近右衛門!? 手のひらを返すとは!? 貴様もダイグレン学園を潰すことには賛成だったではないかァ!!」

『そんなことは知らん! 問題児を追い出してどうなるのじゃ? 問題児を導いてこそ真の教育じゃ! (こ~でも言わんと、ワシが危ないじゃん?)』

「せ、せこいぞ貴様ァ!?」

 

何か知らんが、どうやら心配は無いようだ。

泣きたくなるぐらいうれしくなったニアは、シモンに振り向く。

 

「さあ、シモン。行きましょう!」

「い、行くって言われても~・・・俺、もう体が・・・」

 

黒ニアはシモンに手差し出す。しかしシモンは全身がボロボロで、根性論ではなく既に肉体は動けなくなっていた・・・

 

「大丈夫です」

 

のだが・・・

 

「クウネル・サンダース!?」

「シモンさんの怪我はもう治しましたから♪」

 

いつの間にか背後に居たクウネル・サンダースがシモンに触れ、気づいたらシモンの怪我が治っていた。

 

「え・・・えええーーッ!? なんでッ!?」

「ふふ、気合です♪」

 

クウネルはニッコリとほほ笑んだ。

 

「あなた・・・何故シモンの怪我を・・・何者です?」

「おやおや、睨まないでください、黒ニアさん。私は涙が出るほどうれしのです。20年も待った甲斐があったと感動しているのです。だから、これは私の好意として素直に受け取ってください♪」

 

うさんくささMAXだが、シモンの怪我を治したのは事実。黒ニアも大して追求せずに、完治したシモンの手を引っ張って起した。

そして黒ニアは周りを見渡しながら、シモンの手をぎゅっと握る。

 

「シモン・・・とにかく行きましょう。皆さんもそれを望んでいます」

「・・・ああ・・・もう、それしかないな」

「はい。しかし気を付ける必要があります。お父様のことです。恐らくここから逃げても、学園内の至る所に部下を配置している可能性もありますから」

「それでも行くしかない。そうだろ?」

「ええ」

 

ここから出ても無事な保証はない。

しかしそれでも行くしかない。

それが二人の道なのだから。

 

「ヤレヤレ・・・こうなったらとことん行ってもらうしか無いネ」

「超ッ!?」

「部活の仲間として、そして面白いものを見せてもらったお礼に、二人には好きにしてもらおう」

 

走り出そうとするシモンの背後に、大荷物を抱えた超がどこか諦めたかのような表情で立っていた。

そして手に持っている大荷物を全てシモンに差し出した。

 

「超・・・これは?」

「走って逃げるのも限界があるヨ。これは、空を自由自在に飛行できる私が直々に開発したブースター。その名も・・・グレンウイング! それと、ハンドドリルもついでに渡しておくヨ。何とかこの二つで逃げ切るネ」

「超・・・」

「は~~、二人にはもうまいったヨ。それにこんな風に大会をメチャクチャにしてくれた・・・こうなったら意地でも幸せになってもらうヨ」

 

そして超は苦笑しながら指をさす。生徒たちで作り上げた人間アーチだ。

 

「さあ、二人とも。行ってくるネ!」

「・・・・・・ああ!!」

 

シモンはグレンウイングを背中に装着し、ニアをお姫様だっこで抱えて、低空飛行で人間アーチの真ん中を通って行く。

 

「ニア嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!?」

 

飛び立つ二人に向かって泣き叫ぶロージェノム。するとシモンに抱きかかえられながら、黒ニアではなくニアがシモンの肩越しから叫んだ。

 

「お父様! 私は、シモンと一緒に明日へ向かいます! しかし、それでも私がお父様の娘ということに変わりはありません!」

「ニアーー! パパを置いていかないでくれええええ!!」

「お父様! 今度お会いする時は・・・その時は・・・・一緒にプリクラを撮りましょう!!」

「ッ!?」

 

シモンとニアは人間アーチを通り、そして天高らかに空へと飛んだ。

 

もう誰の手も届かない。

二人はロージェノムの檻から飛び出し、完全なる自由を手に入れた。

 

「「「「「「「「「「うおっしゃああああああああああああああああああああ!!!!」」」」」」」」」」

 

旅立つ二人に大歓声で送りだす生徒たち。

拍手やハイタッチ、知らない生徒同士で笑いながら肩を組んだりと、会場は一つになっていた。

 

「う・・・・ううう・・・・ううう」

 

そんな中、リングの中央で空へと消えた娘を見上げながら、ロージェノムは震えながら涙を流していた。

 

「ハゲ髭胸毛親父・・・」

「ロージェノムさん」

 

その背中には、娘を嫁にやった父親のような寂しさが漂っていた。

 

「ワシの娘が・・・ワシの娘が居なくなってしまった・・・・」

 

みっともなく鼻水まで流して涙を浮かべるロージェノム。

だが、そんなロージェノムの背中をポンと軽くたたき、ネギは笑った。

 

「何を言っているんですか、ロージェノムさん」

「うう・・・子供教師・・・」

「あなたは、娘さんが居なくなるどころか、とっても素敵な息子さんまで手に入れたじゃないですか」

「・・・うううう・・・・うおおおおおおおおおおん」

 

ポンポンと優しく背中を叩くネギ、そして無言でロージェノムの肩に手を回して一緒に空を見上げるカミナ。

 

『会場中の皆様、本当にお疲れ様です! 魂のぶつかり合いから何故か観客を巻き込む大乱闘にまで発展し、私も途中かなり取り乱しましたが、私の心はとても満たされております! それは皆さんも同じことでしょう!』 

 

澄み渡った蒼空の下、朝倉のコメントを聞きながら皆が頷き、そして次々と歩き出した。

 

「お疲れだったね、ザジ」

「フェイトさん・・・あなたもです」

「は~~、私も疲れたネ」

 

戦いは終わった。

 

「私たちもがんばりましたわ!」

「まさか委員長たちまで出てくるとわね~」

「軍事研の方々もやるじゃない」

「へっ、ドッジ部も中々だったぜ!」

 

お疲れさまと健闘をたたえ合うダイグレン学園や本校の生徒たち。

 

「あ~、疲れた。もう、これっきりにしたいわね~」

「何言ってんだよ、ヨーコ。俺はいつでも大歓迎さ」

「だが、今日は流石に疲れました。そろそろ帰りましょうか?」

「そうだな、思う存分暴れまくった」

 

とことんまで燃え上がった戦いは、会場中全てを巻き込み、そして今終わったのだった。

 

「おい、ハゲ髭胸毛親父、さっさと来いよ。一杯奢ってやる」

「うう~~、カミナ~~」

 

泣き止まないロージェノムの肩を抱きながら、カミナは苦笑しながら手を叩く。

 

「おっしゃあ、テメエらケガ人は保健室に運んで、元気なヤツはついて来い! 弟分と妹分に手を貸してくれた礼だ! 番長喫茶出血大サービスでおごってやる!」

「そこの黒服たちも来なさいよ。喧嘩が終われば皆仲間よ!」

「「「「「「「「「「おおおおおおーーーーー!!」」」」」」」」」」

「どうする、ネギ?」

「勿論行きますよ! アスナさんや刹那さんたちも行くでしょ?」

「ふふ、ではカミナさんたちに奢ってもらいましょうか?」

「ネギ先生! 私たちも行きますわ!!」

「うわー、ダイグレン学園の奢りだって!」

「私たちも行くーー!」

 

祭りはまだ終わっていないのに、まるで一つの祭りが終わったかのように皆が笑顔だった。

 

『命懸けの愛! これに勝るものはなし! シモン選手、ロージェノム選手、ニアさん、そして偉大なバカやろうたち! この大会が成功したのは皆様のお陰です! ありがとうございました! では、またの機会にお会いしましょう! それでは皆さん、ごきげんよう!』

 

未だに熱気と興奮が冷め止まぬ中、まほら武道大会は幕を閉じるのであっ・・・・・・た?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待つネエエエエエエエエエエエエエエエエエ!! まだ本戦一試合も終わってないヨォォォォ!!?」

 

 

 

 

 

クラスメートも初めて見るほど、大慌てした超鈴音の声が響き渡った。

 

 

 

『あっ・・・すんませええええん、まほら武道大会本戦を忘れてましたァァァ!!? 皆さん、急いで会場に戻ってくださーーーい! つうか、参加選手も帰らないでくださーーーい』

 

 

 

とにもかくにも、予定より大幅に遅れたが、何とか大会は再開できたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう~~、すごいことになっちゃったな」

 

 

ニアを抱きかかえながら、学園の空を飛ぶシモン。

 

 

「ええ、凄いわ! 私たち、空を飛んでいるもの!」

「い、いや・・・そっちじゃなくて・・・・・まっ、いいか」

 

これからどうすればいいのだろう。しかし、二人に不安は何も無い。

 

「どこまで行こう・・・」

「ふふ、決まってるわ。シモン、私たち二人なら・・・」

「・・・・うん・・・」

 

この二人なら、もう大丈夫だ。

 

 

 

 

「「どこまでも!!」」

 

 

 

 

手にした明日への道を、シモンとニアは二人で進むのだった。

 




第一部「完」

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