【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「シモン・・・あの巨人ですが・・・」
「大丈夫! ただのデカブツだ! あんなにデカクても・・・いや、デカイからこそ掘るべきポイントが分かりやすい!」
武道大会で穴掘りシモンとして覚醒した今のシモンは、この見知らぬ世界に戸惑っていたものの、ドリルを構えた瞬間に自信に満ちた表情になった。
そして、不安に感じないのはそれだけではない。
「それに、今の俺には超のドリル・・・そして、お前が居る!」
今は自分の傍にニアが居る。何も不安に感じることなど無い。
「ええ! 私たち二人なら、宇宙が敵でも最強です!」
黒ニアも真剣な眼差しで頷いた。
「何がなんだか分からぬ壁も!」
「二人の愛なら、壊せぬ壁などあるものか!」
ドリルを回転させ、シモンと黒ニアは雄叫びを上げながら巨人に突進する。
「「俺(私)たちを誰だと思ってやがる!!」」
突進する二人の体を緑色の光が包み込む。
まるでロージェノムと戦ったときと同じように、いや、今はその時以上の力強さを感じ、溢れ出している。
それはニアが居るからなのか、ドリルがあるからなのかは分からぬが、二人の愛の叫びの特攻は、二人の何十倍もの質量のある巨人の腕を跳ね飛ばした。
「よっし!」
「流石ね・・・・いえ、まだね・・・」
巨人の腕を弾き飛ばした二人だが、巨人はバランスを崩されただけで、直ぐに態勢を立て直した。
「くそ・・・やっぱりでかすぎる・・・」
「大丈夫。私たちの愛のほうが大きいわ」
「はは・・・そうだな・・・・」
残念ながら巨人を倒すどころか、目に見えるダメージも無い。当然といえば当然かもしれないが、それでもシモンとニアの目には不安は無い。
ここがどこだか相手が何なのかはまったく分からなくとも、自分たちを誰だと思ってやがると巨人に、空飛ぶ鯨に、そしてこのわけの分からぬ世界に飛ばされて自分たちの心に襲い掛かった不安に向かって二人は叫んだのだった。
すると・・・
「何者だ、お前たちは!?」
シモンたちの背後に聳え立つ塔の頂上から人の声が聞こえた。
「良かった・・・やっぱり人がいた・・・・」
シモンと黒ニアが振り返ると、塔から数名のローブを羽織った者たちが姿を現して叫んだ。
声からして少し年配の男といったところだろう。
そして男たちもまた動揺しているのか、口調が荒かった
「な・・・いや・・・それよりもそなたたちはどこの国の者だ!? どこの組織の者だ!?」
「えっ・・・国? 組織?」
「寝ぼけるな! 何ゆえ我々を助けた! 言え、何が目的だ!?」
せっかく助けたというのに随分と酷い言われようだった。
だが、何で助けたかなど言われても困る。
「だって・・・危なかったじゃないか・・・」
シモンも少し困ったような表情になりながら、黒ニアを抱えながらゆっくりと塔の頂上に着地しようとする。
だが、その瞬間ローブの男たちは掴みかかってきた。
「な、き・・・貴様ら、神聖なるこの場所に足を踏み入れるな!」
「ええ、一体何なんだよーーー!?」
「あなたたち・・・ここがどこなのか、あなたたちが誰なのかは知りませんが、シモンに僅かでも危害を加えるようであれば・・・・・・・・えっ!?」
シモンに掴みかかった男に黒ニアは殺気を滲み出した冷たい瞳で睨もうとしたが、次の瞬間黒ニアは表情を変えた。
「・・・・・あ・・・・・・えっ?」
「く、黒ニア?」
「・・・・・・・・・・・・・」
黒ニアは体を震わせながら、歩き始めた。
「き、貴様、何を・・・「邪魔です」・・・なっ!?」
勝手に歩き出した黒ニアの前に他のローブの男たちが立ちはだかろうとするが、黒ニアは強引に彼らを掻き分けて、この空間の中心の前で足を止めた。
「あっ・・・・あなたは・・・・」
黒ニアが足を止めたそこには、一人の少女が手足を鎖に繋がれて座っていた。
「どうしたんだよ、黒ニア?」
明らかに様子がおかしい黒ニアにシモンも駆け寄った。そして少女が目に入った瞬間、シモンも固まった。
「アッ・・・・あれ・・・君は・・・・」
「シモン・・・これを・・・どう判断しますか?」
シモンと黒ニアの目の前には一人の少女が鎖で繋がれていた。
「え・・・・ええええッ!?」
エキゾチックな民族衣装に身を包んでいるし、自分たちの知っている少女とは年齢が違う。
自分たちの知っている少女はもっと大きい。
しかし目の前に居る鎖で繋がれている少女は、二人の知る人物と顔が酷似していた。
「君・・・名前は?」
恐る恐る尋ねるシモン。
すると少女は無機的な表情、無機的な声でその問いに答えた。
「アスナ・・・」
「・・・えっ?」
「アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア・・・」
少女の言葉に、シモンと黒ニアは口をパクパクさせて互いを見合う。
「・・・シモン?」
「いや・・・いや・・・た、確かに顔は似てるけど、全然雰囲気も背丈もあの子とは違うじゃないか!?」
「そ、・・・そうね・・・・ただの偶然・・・・」
黒ニアですら口元が震えている。シモンが動揺しないはずがない。
「こら、貴様ら! 黄昏の姫巫女に近づくな!」
「えっ・・・黄昏の姫巫女?」
ローブの男たちが焦った声でシモンとニアをアスナという少女から引き離そうとする。
「そうだ、貴様らまさか黄昏の姫巫女を攫いに来たのでは・・・」
「な、何だと!? まさか完全なる世界(コズモエンテレケイア)の手先か? それともメガロメセンブリアの間者か!?」
「お、おい、何をやっている、外を見ろ! 敵がまだまだ来るぞ! 防御結界を早く!」
「おのれ~~」
もう何がなんだか分からない。
アスナという少女から自分たちを引き離そうとする者たちも、攻めてくる巨人や大軍に焦っているものたちも、そして最早シモンと黒ニアも含めて全員テンパってた。
「ああああ~~~~もう、一体何がどうなってるんだよオオオオオオ!!??」
頭を掻き毟りながらわけが分からずに叫ぶシモン。
だが、そんなシモンたちの前に、更なるわけが分からぬ事態が襲い掛かった。
「オラアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「「「「「ッ!?」」」」」
それは正に衝撃的だった。
「おいテメエ。さっきの特攻は中々だったぜ。後は俺たちに任せな!」
雷のような轟音を響かせて、巨人が両断された。
シモンのドリルでもバランスを崩すだけで精一杯の巨人を、その男はまるでテーブルの上の料理をなぎ払うかのように容易く巨人を蹴散らした。
その男はシモンのようなグレンウイングもないのに空に浮き、杖のようなものを持っている。
白いマントを靡かせて、塔にいる自分たちを守るかのように襲い掛かる大軍の前に立ちはだかるその男は、アスナという少女同様に自分たちの良く知る少年と同じ髪の色をしていた。
「お、お前は一体・・・・」
「ん? 俺様を知らねえのか? ちった~有名人になってるかと思ったのによ」
自分たちに振り返るその男はまだ若い。まだ、少年のような幼さを持ち、シモンと近い年齢に見えた。
そしてこれまた自分たちが良く知る10歳の少年の顔と似た顔立ちをしていた。
「な・・・・!」
「どういう・・・こと・・・」
その男の顔立ちを見た瞬間、シモンとニアは衝撃を受けてしまった。
「お、おおお!」
「お前はまさか、紅き翼(アラルブラ)・・・千の呪文の!?」
口を開けたまま固まってしまったシモンと黒ニアの傍らで、ローブを羽織った老人たちが現れた男を見た瞬間声を上げる。
「何だ・・・やっぱ有名じゃねえか」
男は老人たちの言葉にニッと口元に笑みを浮かべて、自信満々な少年のような笑みを浮かべて叫んだ。
「そう! ナギ・スプリングフィールド! またの名をサウザンドマスター!!!!」
そう、これが全ての始まりだった。
「えええええええええええ!? ス、スプリングフィールド!? でもナギって・・・ネギじゃなくて!? えっ・・・でもまさか・・・あの人、先生の・・・」
「・・・ええ、あの顔つき・・・まさかネギ・スプリングフィールドの兄弟? いえ・・・それとも親戚か何かでは・・・」
シモンとニアのテンパリ具合は半端ではない。
しかしそんな二人を置いてきぼりに現われたナギという男、そしてそのナギという男に続いて現われた二人の男。
一人はローブを羽織、一人はメガネをかけた剣士まで現われ、三人で次々と怪物たちを蹴散らしていく。
「安心しな、俺たちが全部終わらせてやる」
正に圧巻だった。
自分たちと同じ人間とは思えぬほどの圧倒的な力で三人は次々と敵を蹴散らしていく。
まるで映画を見ているような光景だった。
しかしシモンは少し震えながら黒ニアの手を握ると、動揺しながらも黒ニアもしっかりと手を握り返してきた。
そう、この温もり・・・やはり夢でも幻でもない。
目の前で繰り広げられている光景は、紛れもなく現実だった。
「おう、どうしたんだよお前ら。安心して気が抜けたか?」
「えっ?」
敵の手が一段楽したのか、ナギと二人の男が塔の中まで入ってきた。
「それにしても・・・お前らスゲーな。ドリルで鬼神兵に突っ込む奴なんざ初めて見たぜ。・・・名前は?」
「えっ・・・名前? 俺は・・・シモン。この子はニアだ」
「へえ、シモンとニアか。しかしその格好を見る限りオスティアの人間でも無さそうだな・・・お前ら一体誰なんだ? それにさっきのドリルは魔法じゃ無さそうだが何だったんだ? それに何でこいつらを守ったんだ? 死ぬかもしれなかっただろ?」
「え・・・え~~っと」
ナギは次々と質問してくるが、既に混乱気味のシモンにも黒ニアにも答えられるはずもなく、既にオロオロしていた。
「こらナギ、威嚇するな」
「ああ~? 何だよ、詠春! 威嚇なんかしてね~よ、ただちょっとこいつらが気になっただけだ」
質問攻めしてくるナギの頭を掴んで落ち着かせるのは、メガネを掛けた剣士。こちらの人は見たことない人だった。
「えっとシモン君にニア君だな? こいつが失礼をした。私の名は近衛詠春だ。それでこっちはナギ」
「えっ・・・は、はあ・・・・ン? 近衛ってまたどっかで聞いた事があるような・・・・」
ナギとは違い随分と落ち着いた大人の物腰の男は詠瞬と名乗り、雰囲気からして話が通じそうな気がした。
「おやおや、二人とも、どうやら敵の手はまだ終わっていないようですよ?」
そしてナギと詠春に続き、ローブのフードを被っている男が外を見ながら呟いた。
「ん? ちっ、ゾロゾロと来やがって。だが、上等だ。全部まとめて蹴散らしてやらァ!」
外には先ほどナギたちが相当の数の化け物たちを倒したというのに、未だに敵がゾロゾロ集まりだした。
それを見てナギは一度舌打ちをするが、これだけの大軍を前にして臆するどころか自信満々に叫んだ。
そしてナギは振り返り、鎖で繋がれているアスナの傍へ行き、腰を下ろして微笑んだ。
「よう、嬢ちゃん。名前は?」
「・・・また?」
「はあ? また?」
「・・・・・・・・・・・・・アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア・・・」
「おお、長げえな・・・だが、いい名だな、アスナ」
そう笑ってナギは立ち上がる。
「おう、シモン、ニア! 俺らはちょっくらあの雑魚共蹴散らしてくる。それまではこのアスナを頼む。テメエらのほうがこのジジイ共より信用できそうだ」
「え、えええ!?」
「じゃあ、頼んだぜ! そんじゃあ、行くぞ! 詠春! アル!」
勝手にシモンたちにアスナを任せて、返答を聞かぬままナギは二人の仲間を引き連れて歩き出した。
「やれやれ」
詠春は少しため息をつきながら刀を抜き、
「はいはい」
もう一人の、アルと呼ばれた男はローブのフードを取り、ナギに続いて進みだした。
だが・・・
「え・・・・・・・・・」
アルと呼ばれた男がフードを外した瞬間、その男の顔を見てシモンは目を疑った。
ナギやアスナ姫とやらと違い、他人の空にとかいうレベルではない。
今日出会ったばかりだが、そこに居た人物は、紛れもなく自分が武道大会で会った人物そのものだったからだ。
「ク・・・ク・・・・ク・・・」
「ん? どうしたました? シモン君でしたね? 私の顔に何かついてますか?」
微笑むその男は、最早間違いない。
「クウネル・サンダース!? な、何でお前がここに!?」
そう、そこに居たのは間違いなくクウネル・サンダースだった。
だが、その男はシモンに言われた瞬間、首を傾げた。
「クウネル? 何ですかその名前は・・・私の名は、アルビレオ・イマですよ?」
「な、何言ってんだよ、どっからどう見てもクウネルじゃ・・・・」
「ふむ・・・しかし、クウネル・サンダースですか・・・・ふむ、詠春が以前言っていたフライドチキンの人の名前に似ていて、尚且つ・・・食う寝る・・・ふふふ、実に素敵な名前ですね、気に入りました♪」
「いや、そうじゃなくてお前は!?」
クウネルはまるで自分を初めて見た人物の様に接してくる。
いや、様にではない。本当にクウネルは自分の事を知らないのだ。
それどころか、武道大会ではあれほど誇らしげに名乗っていたクウネルという名ではなく、アルビレオ・イマと名乗っている。
「おい、アル! さっさと行くぜ!」
「あっ、はいはい。それでは私にはやることがあるので、話はまた後でゆっくりと」
「ちょっ、待って!?」
「では♪」
ナギ、詠春、クウネル・・・いや、アルの三人は大軍へ向かって飛び出した。
そして再び先ほどと同じような圧倒的な力で戦場を駆け抜けていく。
だが、今のシモンたちには最早それに驚くことすら疲れてしまった。
「もう・・・・・・何が何だか分からない・・・・」
ようやく搾り出せたのはそれだけだった。
「バカな・・・・・どうなっている・・・・どうして・・・」
そんなシモンたちと少し離れた場所で、フェイトは目の前に広がる光景に唖然としていた。
本当は、フェイトはシモンとニアの存在に直ぐに気づいた。
少し離れた場所に飛んでしまったが、意外と近くにフェイトも居たため、急いで合流しようとした。
だが、目の前に広がる光景に衝撃を受け、フェイトはその場から一歩も動けずに居た。
「封印されていたゲートが起動してしまった・・・しかしそれは世界樹の大発光の影響による誤作動だと考えればいい・・・だからここが魔法世界(ムンドゥス・マギクス)なのは構わない・・・しかし・・・どういうことだ・・・?」
フェイトはワナワナと震えていた。
「図書館島のゲートはオスティアに繋がっていた・・・だからここが・・・オスティアの遺跡であるのならば僕も納得する・・・なのに・・・何故こんなところに僕が居る! 何故・・・何故彼らがここに居る! 紅き翼(アラルブラ)が・・・何故この時代に!?」
フェイトもまた混乱していた。
だが、何もかもが分からぬシモンとニアと違い、フェイトの頭には一つの仮説が浮かんでいた。
「まさか・・・まさか・・・・」
それは信じられないこと。
しかしそうでもないと納得できないこと。
「僕たちは・・・20年以上前の魔法世界(ムンドゥス・マギクス)に・・・タイムスリップしてしまったのでは・・・・」
そんな時間跳躍などというものを、フェイトも直ぐには信じることが出来ず、未だにシモンとニアに合流できずに呆然としていたのだった。
そんな彼らの状況をまったく知らずに、武道大会の大会主催者席で、超は一人あることに絶叫していた。
「ああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!! ・・・シモンさんにグレンウイング渡したとき・・・間違えてカシオペア付けてた私のをあげちゃたヨ・・・あ、アレが無いと私は未来に帰れな・・・いや、後ですぐ返してもらえれば・・・しかしもしシモンさんが作動させてしまったら・・・・いや、シモンさんは魔法使いじゃないから大丈夫だと・・・・」
とにかく言えることは、大丈ばなかったということだった。
そう、間もなく始まる。
歴史に語られることのなかった伝説の話を。
異界の過去へと飛ばされてしまった、シモン、ニア、そしてフェイト。
愛と友情の逃避行の果てにたどり着いてしまった世界の時代から、三人は果たして戻って来れるのか?
だが、どうなるかは分からないがとにかく言えること・・・
それは・・・
この三人は何かをするということだった!