【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第37話 未来は明るいのか?

「バカな・・・そんなことがあるはずねえ・・・デタラメ言ってんじゃねえよ!」

「デ、デタラメなんかじゃないよ・・・」

「嘘だ! んなこと信じられるかよ!」

 

先ほどまでは轟音、爆音、雷音が響き渡った戦場も今では静まり返っている。

辺りには巨人や鯨の飛行船の残骸が死屍累々と積み重なっている。

ナギを先頭とする紅き翼(アラルブラ)と呼ばれた男たちの戦果は、敵の脅威にさらされた小国を見事に救いだし、周りでは年老いたじいさんたちが浮かれていた。

だが、そんな中でナギはシモンの胸倉を掴んで詰め寄っていた。

その後ろでは真剣な表情で黙りこんでいるアルに詠春。

そして鎖から解放されて自由になったアスナ姫と手をつないで、こちらも無言のままのニアが二人のやり取りに口を挟めないでいた。

 

「嘘だ・・・なあ、嘘だって言えよ・・・・・」

 

ナギは瞳に涙を浮かべていた。

 

「本当・・・だよ・・・もう、随分前の話だよ・・・」

 

ナギに胸倉つかまれながら告げるシモンの言葉に、ナギは絶望の表情を浮かべて、自分の体重を支えられないぐらいよろめいた。

 

「なんてこった・・・・・そんなことが・・・」

 

ナギが知った衝撃の事実。それは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アラレちゃんが終わっていたなんて・・・・・・・」

 

 

 

大好きな漫画が終わっていたことだった。

 

「うん・・・でも、終わったのは本当に20年以上も前の話だよ? 本当に知らなかったの?」

「ああ・・・日本に行くたびに毎回楽しみに読んでいたのに・・・アニメも楽しみだったのに・・・そんな・・・畜生、Dr.スランプを終わらせるなんてなってねえぜ! 日本ではドガベンまで終わったみたいだし・・・日本を代表する漫画が終わった・・・日本の文化も、もう終わりだぜ」

 

ナギはこの世の全てが終わったかのような表情を浮かべてそのまま地べたに腰を下ろした。

あれほどの圧倒的な力で巨人たちを倒した男が、とても情けない顔をしていた。

 

「え・・・ええ? 今の漫画の代表作はワンピースにナルトにブリーチだよ? それにしてもドラゴンボールじゃなくてアラレちゃんだなんて・・・それにドガベンは今でもやってるよ? プロ野球で」

「な、なにい!? まさか、山田や岩鬼がプロ野球を舞台に暴れているのか!? く~~、見て~~!」

 

最初は落ち込んだものの、シモンの言葉ですぐに目を輝かせるナギ。

 

「しっかし、ワンピース? ナルト? ブリーチ? ドラゴンボール? 全然知らねえけど、それは面白いのか? 俺が知ってるのは、うる星やつらとか、キャプテン翼とかなんだが・・・」

「キャプテン翼は今でもやってるよ! 翼も日向も若林も海外のプロチームでプレーしてる」

「なんだと!? へへへ、あの三人なら日本のサッカーを変えると思ってたぜ! 俺、日本人じゃねーけどな」

 

相当な日本通なのか、シモンも漫画やアニメの情報に通じているためにナギとの会話は何故か盛り上がった。

 

「しかし君たちが旧世界の麻帆良学園の生徒で、事故に巻き込まれて気づいたらこの世界に居た・・・そこまではとりあえず信じるけど、まさか・・・未来から来たなどと言うとは・・・しかも2003年の人間とは・・・」

 

漫画談義でシモンと盛り上がるナギの横から詠春が首をかしげながらシモンに訪ねる。

 

「うん、俺もおかしいとは思うけど、詠春さんやナギ達が、今の地球の西暦を1982年って言うんだったら、そうとしか考えられないよ」

「う~む・・・しかしそれを証明出来るのが漫画だけというのも・・・」

 

シモンとニアは自分たちの身に起こったこれまでの経緯をナギ達に詳細に話した。

詠春が日本人であることが幸いし、思いのほか会話が簡単に成立し、自分たちが今いる場所はファンタージーの極みとも言うべき異世界だということまですんなりと納得することが出来た。

しかしその際、シモンとニアが知っている日本や流行などの話に食い違いが生じ、試しに今の地球の西暦を聞いてみると、自分たちの居た時代から20年以上も前の時代ということが判明した。

 

「しかしシモン君もニアさんも・・・やけに簡単に現実を受け入れましたね。普通はあなたたちのように魔法の知らない一般人は、夢だとか幻だとか言って受け入れようとしないのですが・・・」

「クウネルさん・・・あっ、いや、アルだった・・・・まあ、俺もそう簡単には信じられないし、冷静に考えれば異世界とかタイムスリップとかとんでもないこと言ってると思うけど、あんな空飛ぶクジラとか巨人とか、それを生身で倒しちゃう人たちを目の前で見ると、何だか何でもアリのような気がして・・・」

 

ある意味、中途半端な魔法の知識がない分、魔法というものが存在し、巨人が存在し、人間が生身で倒せ、異世界まであるのだからタイムスリップぐらいあるだろうというのがシモンとニアの見解だった。

対して詠春やアル達は魔法の世界と深くかかわっているために異世界への漂流者というものを信じても、時間跳躍というものだけは簡単に信じられなかった。

それを信じてもらうための未来の知識として漫画の話になったのだが、ナギはその話を聞いた瞬間にショックで落ち込んでしまった。

 

「う~ん・・・私は漫画には詳しくないから何とも・・・そうだ、ならばあれはどうなった! ノストラダムスの大予言は!?」

 

他に何か未来を証明できるものは無いかと思った詠春はパッと思いついたことを訪ねてみる。

 

「う、うん・・・恐怖の大王は出てこなかったよ」

「何、本当か!? そうか、それは良かった。いつの日か恐怖の大王と戦う日が来るのかと不安だったからな! なるほど・・・うん、他には! 他には何か未来の情報はないかい?」

「えっと・・・詠春さんたちの年代からだと・・・そうだ、サッカーのワールドカップに日本は出場してるよ? 海外の有名なプロチームでプレーしている日本人はたくさん居るし・・・」

「な、なにィ!? サッカー後進国とまで言われた我らが日本が!? 何と・・・そうか、それが先ほどのキャプテン翼の影響か?」

「うん、日本のサッカー競技人口が野球に負けないくらいに増えて、今では日本にプロサッカーチームがいっぱいあるよ」

 

するとシモンの答えに興奮したのか、クールな剣士かと思いきや、身を乗り出して目をキラキラ輝かせてシモンに詰め寄った。

 

「・・・・・・・・・どうやら本当みたいですね」

「あなたは信じるのですか、アルビレオ・イマ」

 

未来について語り合うシモンたちの横で、一歩引いた場所から苦笑しながらアルは黒ニアに話しかける。

 

「まあ、ありえないことがあるのも、また現実。因みに、私のことはアルで良いですよ。アスナ姫もよろしく」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷいっ」

「おやおや、嫌われているのですかね?」

 

黒ニアの背中に隠れてアルから顔を逸らすアスナ姫。

 

「他に未来を証明するような物は無いのかい?」

「う~んと、それなら携帯電話とか・・・」

「なにっ、携帯電話? あの、電話線が無くても使えるトランシーバーか?」

「うん、俺の居た時代では子供でも一台持つのは当たり前の時代だから・・・ほらこれだよ」

 

ポケットから携帯電話を取り出して詠春に見せるが、詠春も自分の知識とはまったく形状の違う携帯電話というものにうろたえた。

ナギも興味を持ったのか、詠春の肩越しからシモンの携帯電話のディスプレイを覗き込んだ。

 

「スゲーじゃねーかよこれ。こんなに小さいのか? 確か俺の知ってるものはもっとでかかったが、未来ではこんな風になってるのかよ。俺らは念話が出来るから必要ねーけど・・・」

「しかし画面が綺麗だ・・・ん? シモン君、このデーターフォルダというものは?」

「ああ、それは音楽とか写真とか動画とか入れる場所だよ。例えばこの携帯電話についているカメラで撮ったものがこの中に保存されるんだ」

「写真に音楽まで? す、凄い機能だな・・・未来ではカメラもラジカセも必要ないのか・・・じゃあこの中に松田聖○の音楽とかも入れられるのか・・・写真もすごい綺麗だし・・・」

「はは、そのお陰で未来では一日中携帯ばっか弄ってる人たちや、携帯が無いと生きていけないという人たちも居るよ」

「は~ん、そらまた・・・便利になってるようで変な風にもなってるんだな~」

 

シモンに渡された携帯電話を弄くりながら、遠い未来のことを頭の中で想像していくナギと詠春。

 

「ん・・・・」

 

だがその時、携帯を弄くっていた詠春の手が止まり・・・

 

「おっ!」

「ぶふうううう!?」

 

ナギが目を輝かせ、詠春は顔を真っ赤にして噴出した。

 

「えっ・・・二人とも・・・どうしたの?」

 

自分の携帯電話を見て、妙な反応を見せる二人。シモンも少し嫌な予感がした。

 

「シモ~ン・・・この携帯電話ってのは本当にスゲーな!」

「えっ?」

「これなら親に隠れてコソコソ家のビデオデッキ使ったり、夜中こっそり起きて寝静まった両親との攻防戦とかね~んだろ?」

 

ナギは何だか携帯のディスプレイを見ながらニヤニヤしている。

 

「ななな、何と破廉恥な・・・シモン君・・・君はまだ学生だろ! これはどういうことだ!」

 

その時シモンは思った。「ああ、やばい」そう思った。

詠春とナギが答えを見せる前に、二人が何故このような反応を見せたのかが直ぐに理解できた。

多分アレだ。シモンの携帯電話のデーターフォルダの中に入ってるアレを見てしまったのだろう。

シモンもやはり学生だ。

そういうことにも興味あるし、カミナとかキタンとかとつるんでいれば、そういう話で盛り上がったりするのも思春期の少年ならではだ。

それはニアという死ぬほど可愛い彼女がいても、ソレはソレ、コレはコレなのである。

自宅にあるソレ系の本やDVDはどれだけ隠してもニアというより、黒ニアに見つけられて処分されるため、シモンの残る手段はパソコンと携帯電話しかない。

自宅のパソコンのハードディスクの中にあるソレ系のものは、カモフラージュのフォルダに入れて誤魔化したり、何重ものファイアーウォールで守護している。

しかし携帯電話だけはそうもいかない。

シモンの失敗は、未来の知識や技術を見せることばかりを考えて、黒ニアの前でそれを無造作に見せてしまったことだった。

 

「ほう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

冷え切った少女の声が、場に響いた。

その瞬間シモンも、そして一騎当千の強さを見せたナギや詠春も思わず寒気がして、ガタガタ震えながら後ろを振り向くと、黒ニアが無表情のまま、まるで汚物を見るかのような目でシモンの携帯電話に流れている画像を見ていた。

 

「おやおやこれは中々の鮮明な画像で・・・」

「・・・・・・・・・・・・変態・・・」

「はうあ!?」

 

いつの間にか一緒に携帯の画面を覗き込むアルにアスナ姫。とくにアスナ姫の言葉はグサリとシモンの胸に突き刺さった。

だが、落ち込んでいる暇などない。

背後に猛吹雪と黒い影を身にまとったニアがシモンに近づき・・・

 

「・・・・・・シモン・・・・・」

「ち、違うんだよ、ニア! こ、これは迷惑メールで一緒にくっ付いてきたのが自動的に!?」

「ふふ・・・ふふふふふふふふ」

「ア・・・あう・・・あ・・・あ・・・・・・・」

 

黒ニアさんのOSHIOKIDABE~のため、少し話が中断されました。

 

「こえ~な・・・シモンの嫁さん。俺はゼッテー結婚するなら女王様タイプはダメだな・・・」

「おやおや、未来はどうなるのか分かりませんよ、ナギ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで? オメーらは結局これからどうするんだ?」

 

 

シモンへのお仕置きが一通り終わったのを見計らって、少し顔を引きつらせながらナギが聞いてきた。

 

「どうとは?」

「だって旧世界に帰すことは何とかしてやれるが、流石に21世紀まで帰すことは俺らにも出来ねーからよ。俺らはドラえもんじゃねえからよ」

「・・・そうですね・・・」

 

ナギに問われてようやく本題に入る。

ナギたちもどうやらシモンたちが未来からの漂流者ということは信じてくれたようだが、次の問題はどうやって帰るかだ。

 

「・・・実は・・・私たちのほかにもう一人仲間がいるのです・・・転移をする際にはぐれてしまったのですが・・・」

 

黒ニアはあごに手をやりながら呟いた。

そう、忘れてはいけない。

この世界に来たのはシモンとニア、そしてフェイトである。

 

「おや、お仲間がもう一人?」

「むう、それは危険だ・・・その人が君たちと同じ旧世界からの一般人なのだとしたら、今のこの世界は危険すぎる。早急に探す必要がある」

 

まだ遭難者がいることを聴いた瞬間、アルも詠春も表情を変えた。

そう、もしこの世界のように巨人やら化け物やらが居る世界に無力な人間が放り込まれたら一たまりもない。

 

「しょうがねえ。俺らも協力してそいつを見つけてやるよ」

「ナギ! いいの?」

「あたりめえだ、シモン。俺たちはもうとっくにダチだろうが? ダチのダチなら見捨てるわけにはいかねえよ!」

 

ニッと笑うナギからは同じぐらいの年齢とは思えぬほどの頼もしさを感じ、シモンもうれしくなる。

 

「よっし、ちなみにそいつの名前は何て言うんだ? どんなやつなんだ?」

「うん、そいつの名は・・・・」

 

ナギたちという心強い仲間を得て、さっそく離れ離れになった友を探そうとシモンも意気込み、フェイトのことをナギたちに教えようとする。

だが・・・

 

 

「そこまでだ・・・・・・・・・」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

 

巨大な石柱が紅き翼(アラルブラ)たちの前に降り注ぐ。

 

「なっ!?」

「敵ですか?」

「ちっ、誰だ!! シモン、ニア、無事か!」

 

素早い反応で襲い掛かってきた石柱から避けるナギ、詠春、アル。さらにナギはアスナ姫まで抱えてその場から飛びのいた。

 

「うん、無事だよ!」

「問題ありません」

 

石柱は明らかにシモンやニアではなくナギたちだけに降り注いだ。ゆえに、二人が巻き添えを食らうことはなかった。

とっさのことでアスナ姫は守れたが二人を助けられなかったと思ったナギは、シモンとニアの声を聞いてホッとし、すぐに目つきを変える。

 

「けっ、どこのどいつか知らねえが。随分と乱暴な挨拶じゃねえか。しかも並みの使い手じゃねえ。・・・いいぜ、上等だよ。どっからでもかかってきやがれ!」

 

強力な新手が襲ってきたのだと思ったナギはすぐに杖を持って身構える。

だが、石柱が降り注いだことによって巻き起こる砂塵が、やがて更なる大きさになり、自分たちに襲い掛かってきた。

 

「ん、なんだこりゃ?」

「これは・・・砂?」

「気をつけるのです、ナギ、詠春! 相当のやり手だと思います!」

 

砂塵が視界を阻む。これを見るだけでナギたちには敵が相当な実力だと理解し、警戒心を高める。

だが、この術者の狙いはナギたちではない。

 

「さあ、今のうちに行くよ」

 

その者は砂塵にナギたちが気をとられている隙に・・・

 

「えっ・・・?」

「あなたは・・・」

 

シモンとニアの二人を掴み、素早く転移魔法でその場から姿を消す。

 

「なっ・・・なにッ!?」

「これは・・・」

「シモン君・・・ニアさん・・・・」

 

その間わずか数秒。

追跡のための痕跡も残さずに、砂塵が晴れたナギたちの前にはシモンとニアの姿が消えうせていたのだった。

 


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