【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「ふう・・・危ないところだったね・・・・」
転移魔法でシモンとニアを連れてきたその男はホッとため息をついた。
「あれはお前がやったのか? フェイト・・・」
「うん。君が僕の名前を彼らに教えようとしていたからね」
二人を連れてきたのは逸れていたフェイト。
「何であんなことしたんだよ? ナギたちはみんな良い奴で、俺たちのことも助けてくれたんだぞ? それなのにあれはないじゃないか!」
「うん・・・まあ、そうなんだけどね・・・」
「それにフェイト。さっきのアレ、やっぱり魔法っていうやつなのか? お前の正体はナギたちと同じ魔法使いなのか?」
シモンは少し怒り気味である。黒ニアも無言のままそれを止めない。
いきなりナギたちを攻撃して強引に自分たちを連れてきたフェイト。そしてその正体。シモンは少し口調を荒くしながらフェイトに問い詰める。
「シモン・・・・」
対してフェイトは無表情だが、少し答えにくそうにしている。
(いくらフェイトという名前を出しても、アーウェルンクスの名を出すわけにはいかない・・・それに近衛詠春とはいずれ京都で会うことになる・・・妙なことで歴史を狂わせるわけにもいかないしね・・・・)
フェイトが考えているのは、どこまでを答えることが出来るのかだった。
(しかしアスナ姫やサウザンドマスターとシモンが会ったのは予想外だが、よくよく考えればアルビレオ・イマは学園祭で会ったとき、僕やシモンのことを知っているようだった・・・ならば、僕たちはこの世界で面識が・・・? ・・・ということは、現在麻帆良学園の武道大会に居るアルビレオ・イマは過去にタイムスリップしていた僕たちと会ったことが? ならば、僕たちがタイムスリップしてしまったことは、時の流れを捻じ曲げる行為ではなく、正しい時の流れとして起こっていることなのか・・・・)
だが、考えれば考えるほど深みにはまっていく。
正直フェイト自身もタイムトラベルなどというものを経験したことはない。
だからこそ、どこまでがタブーで、どこまでを口にして良いのかの線引きがいくら考えても出来なくなっていく。
「おい!」
「うわっ!? シ・・・シモン・・・」
だが、そんな頭から湯気が出るくらい考えていたフェイトの目の前には、いつの間にかドアップでシモンが覗き込んでいた。
「うわっ、じゃないよ。そんなに考え込んで・・・俺、そんな難しい質問をしたか?」
「い、・・・いや・・・」
「・・・ひょっとしてフェイトはナギや詠春さんのことを知ってるのか? 武道会ではアルのことも知っているようだったし・・・」
「・・・・・・」
「フェイト!」
フェイトは再び黙り込んでしまった。
そう、何より悩むのはそこだ。フェイトは自分と紅き翼(アラルブラ)の関係を言うことが出来なかった。
(・・・僕は彼らと何十年にも渡る因縁を持った完全なる世界(コズモエンテレケイア)の人形・・・彼らの敵・・・世界を破滅に導く悪人・・・・・・・どこまで言えばシモンたちは納得してくれるか・・・いや、納得はしないだろうな・・・・)
感情も心もないはずのフェイトの心を、見えない何かが締め付ける。
(シモンたちだけは巻き込みたくなかった・・・魔法の世界を知らずに時を過ごして欲しかった・・・しかし知ってしまった以上教えるべきなのか・・・いや、危険すぎる・・・だがこれから未来へ帰るに向けて、この世界では極力余計なことをしないためにもある程度のことは教えた方がいいだろう。・・・だが、そうなると歴史の流れを知っている僕・・・そしてサウザンドマスターたちに協力してもらうわけにはいかない事情も語らなければ・・・)
一人ならば考えることはなかっただろう。
昔ならこれほど悩むことはなかっただろう。
いっそのこと全てをぶちまけてしまえば楽だった。だが、今の自分には出来ない。
思ったことを口に出来ない歯痒さでフェイトは思わず唇をかみ締める。
すると・・・
「・・・フェイト・・・・」
「えっ?」
フェイトの両肩をしっかりとシモンが掴んで正面から見つめてくる。
「・・・シモン?」
シモンの目は真剣で、フェイトの瞳をしっかりと見据えていた。
「フェイト・・・じゃあ・・・今はこれだけ答えてくれればいい」
「えっ?」
「フェイトは、魔法使いなんだな?」
真剣な眼差しで見てくるシモンの瞳は、濁りも無く真っ直ぐだ。
フェイトは思わず視線を逸らしたくなる。
だが、シモンの真剣さに押されて、とうとう首を縦に振ってしまった。
「・・・そうだ・・・僕は魔法使いだ」
フェイトは答えた。
「そして僕は先ほどの紅き翼(アラルブラ)と何十年にも渡って対立する組織の幹部だ。さっきの攻撃は、僕の情報を知られたくないから・・・ただ、それだけだよ」
「フェイト・・・」
「どうだい、驚いたかい? しかも僕はただの魔法使いじゃない。その気になれば僕は先ほどの彼らと同等に戦える力を持ち、君たちの首を一瞬で跳ね飛ばすことも・・・世界を滅ぼすことも可能だ・・・」
口をポカンと開けるシモンとニア。
そんな二人の予想通りの反応に、少し胸がズキンしながらも、フェイトは無理やり自嘲気味に笑った。
(これで終わりだな・・・早いところ未来へ帰る手段だけ考えて・・・未来へ帰ったら早急に彼らの前から・・・・)
フェイトはもう諦めた。
嘘や誤魔化しがシモンの前で出来なくなったために、真実を語った。
もう自分はシモンたちと一緒に居ることは出来ないだろう、そう悟ったからこその自嘲だった。
「そっか・・・」
「・・・えっ?」
だがシモンは・・・
「うん、本当のことを教えてくれてありがとな!」
どこかスッキリとした顔でシモンは笑った。
「シモン・・・・何で・・・」
「えっ?」
「僕が怖くないのかい? まさかたったこれだけの付き合いで僕が良い人だとでも思っているのかい?」
「えっ・・・何で?」
「いや、何でって・・・」
シモンの予想外の反応に、フェイトも少し震えた。だが、少し「ん~」と悩んだ末に、シモンはまた笑った。
「ん~、確かにもっと前だったり、フェイトとの付き合いがもっと浅かったら怖かったかもしれないけど、もうフェイトとは友達になっちゃったから今更怖がるとか憎むとかそんなこと全然思いつかないし、・・・それに今も言ってくれてたじゃないか」
「言ってくれた? 僕が・・・何を・・・」
「本当のことをだよ」
「ッ!?」
「それこそ嘘で誤魔化せば良いのに、フェイトはちゃんと答えてくれたじゃないか。ずっと隠してたことを・・・隠していたかった事を教えてくれたんだ。だったらそれでいいよ」
嘘をつかなかった。隠し事をしなかった。
「それがどうした。たったそれだけで僕のことを信じるというのかい!」
たったそれだけで笑うシモンに、フェイトは納得できずに詰め寄る。
「そういう問題じゃないさ」
「・・・なに?」
「もっと単純なことだよ。ナギたちにとってフェイトが敵でも・・・俺たちにとっては、フェイトは敵なんかじゃないってことだよ」
シモンがフェイトに手を伸ばした。
「例え隠し事があったとしても、俺たちと僅かな期間でも一緒にバカやって過ごしていたフェイトは嘘じゃないよ。多分アニキたちもそう言うはずだ。ゴチャゴチャ言ってんじゃねえってね。だから俺も言うよ」
「・・・・・・」
「フェイト、まずは一緒に帰ろう。ゴチャゴチャ考えるのはそれからにしようよ。フェイトはとっくに俺たちの部活でもクラスでも頭数に入ってるんだからな!」
目の前の小さな男が差し出す手は、握ってみればとても大きく分厚かった。
「バカだよ・・・君は・・・たったそれだけで・・・自分がどれほどの凶悪犯罪者を受け入れようとしているのか分かっているのかい?」
「そんなこと言われても分からないよ。だってそれは魔法の世界での話しなんだろ? でも、魔法使いでも何でもない俺が怖くないって言ってるんだから、それでいいじゃないか。それに俺たちがバカなんて、今更言われたって困るよ」
「・・・・・・・・シ・・・モン・・・」
「俺もさ・・・アニキたちと同じで、世界がどうとかそういう頭使うことは分からないんだ。だからさ、思ったとおりに俺らしく生きる。そう教えてくれたのがアニキで・・・ネギ先生で・・・それを忘れてた俺に、そう言って思い出させてくれたのはお前じゃないか」
「・・・僕が?」
「うん。武道大会でお前がそう言ってくれたから、俺は戦えたんだ」
一般的な高校生からすればシモンはとても小柄な体格なのに、その手がとても大きく逞しく、そして温かかった。
フェイトは自問した。
自分たちのように世界を舞台に動く魔法使いたちからすれば取るに足らない日常を送っているシモン。
しかしそれでもシモンはその日常を強く生き、自分の前に立ちふさがる困難から逃げずに立ち向かった。
それがロージェノムとの戦いだ。
その困難は自分やネギやナギたちのようなレベルからすれば大したことがないのかもしれない。
しかしそれでもシモンはシモンなりに懸命に戦った。アレだけボロボロになりながら、血まみれになりながら自分の心に正直に戦った。
そのことがシモンの手の平から改めて分かった。
そう、シモンも己の心に正直に命懸けで戦った男だからこそ、嘘をつかない。
だから、シモンが今口にしている言葉は本心なのだ。
「そうです!」
「・・・ニア・・・」
「私も、フェイトさんのお友達です!」
シモンとフェイトの握った手の上に、ニアもそっと手を添えて微笑んだ。
「三人で、私たちの帰る場所へ帰りましょう! 皆私たちのことを待っています!」
黒ニアではなく、表のニア。彼女もまた決して嘘をつかずに本音しか喋らない。
(あ・・・)
だからこそシモンと同様、ニアも決してフェイトを恐れたり距離を置こうという意思などまるで感じさせなかった。
(ああ・・・そうか・・・どうして今までシモンたちに戸惑っていたのか・・・)
その時フェイトは、これまで心の中で複雑に絡まっていた何かをようやく紐解くことが出来た。
(ようやく分かった・・・これがそういうことなんだ・・・・・そうか・・・・・)
シモンやカミナたちに流され、無視すれば良いのに関わって、無茶するとほっておけなくて、さっさと消えれば良いのに消えずに学園に留まり続けていた理由。
(僕は・・・・シモンたちのことが好きなんだ・・・・)
心がないと思っていたときには理解できなかった感情。
自分の事を理解できるはずがないとカミナに断言してからそれほど日は経っていないというのに、いつの間にか自分は皆を認めていた。
(バカ正直で・・・無知なのにいつも一生懸命で・・・熱くて・・・温かくて・・・心がある。そんなシモンやニアやカミナたちと一緒に居ることが・・・・・でも、計画を実行する時が来れば別れなければいけなくなるから・・・その気持ちに気づかないように、知らないようにしていたんだ・・・・)
自分が今まで知らなかった思い。
それを初めて抱いたからこそ自分は戸惑っていたのだと、フェイトはようやく理解した。
「そうだね・・・帰ろう・・・」
少し顔を俯かせて、フェイトはそう頷いた。
(すまない・・・シモン・・・ニア・・・みんな・・・・未来に帰ったらやはり僕は君たちの前から消える。その想いが余計に強くなった・・・)
そしてたどり着いたのは悲しい決意。
(この世界はやはり滅ぼさなければならない・・・そうしなければ・・・この世界の民との生存を賭けた戦いに地球が巻き込まれてしまう・・・そうなれば君たちに危害が及ぶ・・・当たり前の日々を当たり前のように過ごして、バカばっかやる君たちの毎日が無くなる・・・・そんなことは絶対にさせない・・・・)
それが生まれて初めて抱いた人形の意思。
(主の夢想を叶えるためではない・・・僕は君たちの明日を守るために悪になる・・・それが自分で決めた、僕の意思だ)
フェイトは切ないまでの想いを内に秘めたまま、シモンとニアと共に未来へ帰るための話を始めた。
「まず前提から話し合おう」
「前提から?」
「そう、僕たちがただの異世界への渡航だけでなく、タイムスリップした原因はやはり超の発明品というこの時計にある」
フェイトはシモンのグレンウイングから取り外した懐中時計を弄くりながら断言した。
「フェイトさん、それも魔法なのでしょうか?」
「いや、魔法だけでそんなことは出来ない。恐らく科学の力も混ざっているんだろうけど、こんなものを個人で開発できるとは・・・どうやら超もただの天才というだけじゃなさそうだね」
「そうか・・・でも、何で超のヤツは俺にこれを渡したんだろう・・・」
それはどれだけ深く考えても分かるはずは無い。
何故なら超は間違えてシモンに渡してしまったのだから。
「とにかくどうやらこの懐中時計型のタイムマシンは、使用者の魔力を動力に動くと見て間違い無さそうだ」
「だったら魔法使いのフェイトがそれを使えば直ぐに帰れるんじゃないか?」
「・・・まあ、とりあえず使ってみよう」
物は試しだと思い、フェイトは懐中時計を握り締めて魔力を込める。
だが、ウンともスンとも言わなかった。
「ダメだな・・・何も反応しない」
「えっ!? 何で?」
「・・・多分・・・これが使用できたのは学園祭期間中だったからかもしれない・・・」
「フェイトさん、どういうことですか?」
フェイトも少し考えながらこれまでの情報を整理していく。
「まずは君たちにも理解して欲しいのは、魔法は万能じゃない。火や水を出したり空を飛んだりすることは出来ても、出来ないことは出来ない。死者を蘇らせたり、ましてや時間跳躍などは現在の魔法では不可能だ」
「う、うん・・・」
「しかし超のこの懐中時計はそれを可能にした。だが、出来ないことをやる以上、何らかの条件は必要だ・・・その条件とは恐らくだけど世界樹の魔力が満ちている時・・・世界樹の魔力と使用者の魔力が動力・・・」
「あの~、先ほどから気になってたんですが、麻帆良学園の世界樹って魔法の木なんですか?」
「まあね、神木・蟠桃といって、膨大な魔力を内に秘めている。そしてその魔力は22年を周期に大発光という形で最高潮に達する」
「ええ!? じゃあ、22年に一度の大発光って魔法が原因だったんだ! って・・・それじゃあそう考えると世界樹がないこの世界じゃ未来に帰れないんじゃないか!!」
その通り。
フェイトの仮説を信じるのなら、ゲートの転送と同時にタイムマシンを発動してしまったためにシモンたちは過去の魔法世界に来れたが、世界樹が無いこの世界ではタイムマシンを発動できないということになる。
しかしフェイトは冷静にシモンたちを落ち着かせる。
「大丈夫。ちゃんと手は考えてある」
「えっ?」
「要するに、世界樹の大発光にも匹敵する魔力が満ちる瞬間ならタイムマシンを発動させることが出来るはずだ。その時にゲートを同時に発動させれば僕たちは未来に帰れるはずだ」
フェイトはその頭脳で、既に大まかな計画が頭の中で立てられていた。
「世界樹の大発光の魔力で20年分の時間跳躍を可能にした。それに匹敵する魔力が満ちる瞬間が、この時代にある」
「それって・・・いつなんだ・・・」
「確か僕の知る歴史では、紅き翼がアスナ姫と出会ったのは、西暦に直すと1982~1983年頃・・・だから今から半年~一年以内・・・世界最古の王都、オスティアの墓守人の宮殿という場所で超膨大な魔力が集中する。その瞬間に賭けよう」
フェイトは少し目を細めて遠い空を見つめながら、自分が知る世界の歴史を語る。
(そう、紅き翼と完全なる世界の最終決戦・・・黄昏の姫巫女の力を使い、世界を無にする魔法が発動する・・・その時、オスティアのゲートとタイムマシンを同時に使い、で2003年の6月21日・・・つまり学園祭の武道大会開催日に跳べば・・・)
フェイトはあくまで冷静に計画の内容を話したが、ある一点だけがシモンたちには重大な問題だった。
「は・・・半・・・半年ーーーッ!? そんなのいくらなんでも長すぎないか!? 半年も居なくなったらアニキ達が心配するんじゃ・・・」
そう、半年から一年など長すぎる。
その間ずっとこの世界で過ごすことになると、自分たちは麻帆良学園では行方不明扱いになっているのではないかと、慌てずには居られなかった。
だが、それすらも心配ないとフェイトはシモンとニアを宥める。
「大丈夫だ。例え半年過ごしたとしても、タイムマシンで僕たちがいなくなった直後の未来へ跳べば問題は無くなる・・・まあ、確かに半年は長いから色々と手はこれから考えるし・・・」
その時フェイトは微かに、ほんの微かにだが微笑んでいた。
「二人に何があってもこの世界では僕が守る。安心してくれ」
しかしその微笑みは、どこか悲しげで優しい、初めて見たフェイトの表情だった。
「フェイトさん・・・」
「フェイト・・・お前・・・」
一体どうしたのだと、直ぐに問い詰めることがシモンにもニアにも出来なかった。
「とりあえず今日はもう遅い。近くの町に行って宿を取ろう。今は戦時中だから、あまり外をうろつくわけにもいかない」
その微笑を見るだけで、何故か切ない気持ちになり、まるでフェイトがこれ以上聞かないでくれと懇願しているようにも見えた。
「う、うん。だけど、お金なんて無いよ?」
「大丈夫。急だったからあまり大した物は持っていないけど、いくつか換金できそうなマジックアイテムを持っている。だけどそれほど長い期間を過ごせる分は無いから、何かお金を手に入れる方法も考えないとね・・・」
「えっ・・・ということは、アルバイトですか! それは楽しみです! 私、以前からアルバイトというものをしてみたかったのです! それにお父様に一人前とは自分でお金を稼ぐことが出来てからと言われていますので、どんと来いです!」
「俺は工事現場で少し・・・そう言えば一生働かないかって、親方に褒められたことがあったな~」
「ふっ、それは心強いじゃないか」
これからシモンとニアは、世界の表舞台には決して出ることの無い世界の裏側を見て、そしてたくさんの人々と出会い、絆を育み、そして成長していく。
「なあ、フェイト。明日からさっそくアルバイト探しか?」
「そうだな・・・まずは当面の必要なものを買い揃えたりしたいね・・・」
「お買い物ですか? 魔法の国にはどのようなものがあるのでしょう」
一方フェイトは、己に記録されている歴史には記されていない歴史の裏側を知ることになる。
「でも忘れないでくれたまえ。この世界は過去の時代。僕も大まかな歴史の流れは教えるけど、あまり余計な・・・いや、やめておこう。余計なことをしないでくれと言ってしまえば逆に、君たちは余計なことをしそうだ」
「な、なんだよそれ~。俺たち信用無いぞ!」
「もう、フェイトさん酷いです!」
「ふふ、僕もこの短い期間でそれなりに君たちのことが分かってきたからね」
今はまだ前を向き、上を向き、そして笑顔で過去の異世界を歩く3人。
しかし今回のこの事故が彼らの運命の分岐点となるのは、既に明らかなことなのである。
(・・・シモン・・・ニア・・・君たちは僕が守る・・・この先何があろうとも・・・・だから・・・それが終わったら・・・・・・・さよならだ・・・)
少年は内に秘めた想いを隠したまま、三人の愛と友情の逃避行の初日が終わるのだった。