【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
小・中・高・大・全ての学生たちが使用するこの駅では、毎朝多くの生徒たちが遅刻と戦い駆け抜ける。
バイクが、自転車が、スケート靴や路面電車に至るまで広々とした学園までの通路には、毎朝数え切れないほどの人数の生徒たちで溢れている。
だが、今この場に登校している生徒はいない。だって、普通は今授業中だからだ。
しかし、登校している生徒はいないが喧嘩をしている生徒たちが居る。
異なる制服の男たちが、麻帆良学園中央駅前で大乱闘を繰り広げているのだった。
「おらァ! ダイグレン学園を舐めんじゃねえ!」
大乱闘の中央では髪の逆立った男が、群がる敵を殴り倒して吠えていた。
「チミルフさん。キタンの奴がヤベえです!」
「おのれキタン・・・流石はカミナに次いでダイグレン学園NO2といったところか・・・」
殴られた頬を押さえながら、雑兵不良の一人が、巨漢な男に嘆いている。
巨漢の男の名はチミルフ。ダイグレン学園と喧嘩中のテッペリン学院の番長四天王と呼ばれる者の一人だ。
「ふっ、帰って理事長に伝えるんだな」
「ニアちゃんは自分の意思で俺たちと一緒に居るってよ」
キタンに続いて、ダイグレン学園の生徒たちが次々と敵を蹴散らしていく。
「ぬう、アイラック・・・キッド・・・つむじ風ブラザーズか」
髪をかき上げてキメるアイラック、そして倒した敵の上に座り込んで睨むキッド。
さらに・・・
「おう、そうだそうだ!」
「渡さん! 渡さん! 渡さん!」
別の場所では地団駄をしながら相手に脅しかける双子が居る。
「ぬう、ジョーガン・・・バリンボーか・・・」
「チミルフさーーん・・・ゴふっ!?」
「どうしたァ!?」
今度は別の場所から助けを求める声がして、振り返るとそこにはテッペリン学院の不良たちの屍の山の上でタバコを吸う男がニヤリと笑っていた。
「へっ、じゃねえとどこまでもやるぞ?」
引き連れてきた舎弟は30人ほど。しかしその全てが僅か6人の不良に全滅した。
「ぬう・・・ゾーシイ・・・流石はカミナがおらんとはいえ、ダイグレン学園の猛者たちではないか」
だが、舎弟たちがやられたことに臆するどころか、チミルフは学ランを脱いで、指の関節を鳴らしながらニヤリと笑う。
「この怒涛のチミルフ様が直々に・・・・」
筋肉隆々のとんでもないガタイだ。見るからにパワーが圧倒的だと分かる。
30人の不良を蹴散らしたものの、相手の格は桁違いだとキタンたちも頬に汗をかく。
だが、ビビッて逃げ出すことは不良の世界においてはタブー。
6人のダイグレン学園の不良たちはおもしれえじゃねえか、ようやくウォーミングアップが終わったとやる気十分だった。
しかし・・・
「俺を誰だと思ってやがるんだキーーーック!!」
「ぶほっ!?」
やる気満々の両者の横から颯爽と現われた男の飛び蹴りを喰らって、チミルフはぶっとばされた。
「「「「「「カミナ!?」」」」」」
「おう! 麻帆良ダイグレン学園の鬼番長、カミナ様だ!!」
指を天に向かって指し示し、名乗りを上げるカミナ。
「おのれカミナ~・・・ついに来おったか!」
カミナに蹴り飛ばされて、打ちつけた腰と蹴られた場所を押さえながら、チミルフは立ち上がってカミナを睨む。
「へっ、テメエらこそノコノコとこんな所まで来やがって! 10倍返しにしてやらァ!」
颯爽と登場し、威風堂々とするカミナ。
「よう、カミナ。遅えじゃねえか」
「おう、ヨーコたちがうるさくてな」
カミナの登場にキタンたちは笑った。さあ、かかってきやがれとカミナたちが構える。
しかし今度は・・・
「卑怯な真似はさせんぞ、ハダカザルどもが!」
現われたカミナを後ろから一人の男が襲い掛かった。
「ッ、テメエは!?」
「オオ、ヴィラルではないか!!」
「遅くなりました、チミルフ番長!」
今度は敵の援軍だ。
すばやい動きでカミナを襲ったのはヴィラルという名の男。
そしてそのヴィラルの後ろからゾロゾロと強そうな奴らが現れた。
「ふん、ヴィラルだけではない。チミルフよ、てこずっているようだな」
「情けないね~、こんなバカ共に」
「グワハハハハ、さっさとケリをつけようではないか」
鳥の翼をモチーフにしたド派手な服を着た男、眼帯のロングスカートのスケ番、煙管を吹かした小柄な男。
「おお、シトマンドラ! アディーネ! グアーム! なんじゃ、全員来たのか!」
「おうおう、ぞろぞろと来やがって!」
「ヤベえぞカミナ。番長四天王にヴィラルまで来やがった!」
「けっ、上等だ! 俺を誰だと思ってやがる!」
この場に両の足で立っているのは、互いに学校を代表する喧嘩の腕前を持つ不良。
正にこれは学校の看板をも背負った喧嘩へと発展しようとしていた。
「ふん、面白いではないか。麻帆良のハダカザルごときが我らに敵う道理など無い。我らの恐ろしさ、毛穴の奥まで思い知るがいい!!」
総力戦だ。
不良たちは上等だとぶつかり合おうとした。
しかしその時・・・
「どいてくださーーーーい」
「ん? べふうっ!?」
走ってきた男女にヴィラル轢かれてしまった。
「ヴィ、ヴィラルーーッ!? ・・・って、きさ・・・あなた様は!?」
「へっ、ようやくお出ましかい!」
「おう、ようやく来たかお前ら!」
「ニアちゃん、待ってたぜ!」
全速力で駆け抜けてヴィラルをはね飛ばしたのはニアと、ニアに手を引かれてゼェゼェと肩で息をするシモンだった。
「くっ・・・ニア様! お迎えに上がりました。さあ、我らと帰りましょう。理事長がお待ちですぞ」
ニアが現われた瞬間、番長四天王の四人は肩膝をついて頭を下げる。
しかしニアは、胸を張って四人に向かって指を指した。
「いいえ、私は帰りません! 私は妻として、シモンとずっと一緒に居るのです! そしてダイグレン学園の皆さんと一緒に卒業するのです!」
「「「「「「よっしゃあああああああ!!」」」」」」
どーんと大きな効果音がした気がした。
堂々と四天王に告げるニアに、ダイグレン学園の不良たちは雄叫びを上げて同調した。
「「「「な、なにいいい!? やはり、その小僧の所為かァ!!」」」」
「はあ、はあ、はあ・・・・・・えっ?」
番長四天王の矛先はシモンに向いた。
全速力で走って疲れたシモンは、何も聞いていなかったが、とにかく敵がこっちを見て睨んでいるのは分かった。
「このクソガキがァ! ニア様を誑かせてるんじゃないよォ!」
「へ? えっ? って、きたあああああああ、なんでえええ!?」
番長四天王の一人、アディーネが鞭を出してシモンに襲い掛かってきた。
(何でいつもこうなるんだよ!? やっぱり俺は不幸だ~~!? は、早く逃げなきゃ・・・でも・・・ニアが)
敵が襲い掛かってきているというのに、ニアは反応が遅く首をかしげた状態で止まっている。
慌ててニアの手を引っ張りながら逃げようとするシモンだが、ニアを抱えて逃げる力はシモンに無い。
そこでシモンはニアを庇うように立つ。
「くっ、ニア、に・・・にに・・・逃げて!」
シモンは足腰を恐怖でプルプルと震わせながら、アディーネの前に立つ。
「シモン!」
「「「「「「シモンッ!?」」」」」」
ニアは驚いたようにシモンの名を叫び、不良たちは慌ててシモンを助けようとするが、アディーネのほうが早い。
「シモン、危ないです!」
「ニ、ニアは早く逃げて!」
「シモン!?」
「ニニ、ニアは・・・お、俺が守る!!」
だが、シモンは逃げない、引かない、見捨てない。
体を張ってニアを守る。
「ウゼーんだよ! ボッコボコにしてやんよ、小僧!!」
アディーネの鞭がシモンを打ちつけようとした。
しかしその時、アディーネの鞭が突如割って入った薙刀に巻きついた。
「ッ!? テメエは・・・」
「良くやったわ、シモン! アンタ男じゃない!」
「ヨヨ・・・ヨーコ!」
「シモンとニアを傷つける奴は、この私が許さないわ!!」
シモンのピンチにヨーコが助けに入った。
「兄ちゃーーん、助けに来たぜ!」
「面白そうだから見に来たよ!」
「何で私まで~~」
「おう、愛する妹たちじゃねえか!」
おまけにキヤルにキヨウにキノンまで現われた。
敵は手強いが、数の上では圧倒的に有利になった。
「ふわあ~~、助かった~~」
助かったことに安堵し、シモンそのままヘナヘナと地面に腰を抜かしてしまった。
「シモン・・・私を庇って・・・」
「は、はは・・・ニア・・・怪我無い?」
「シモーーーン!」
「うわァ、ニア!? み、皆見てるから抱きつかないでくれよ!」
「シモンは・・・シモンはやはり私の運命の人です!」
腰を抜かしたシモンだが、ヨーコはそんなシモンに対してウインクをして親指を突きたてた。
「後は任せて存分にイチャついてなさい! あの時代遅れのヤンキー女は、私が相手をするわ!」
「なっ、誰が時代遅れだ、この脳みそ筋肉が!!」
ヨーコに怒りを燃やしたアディーネは標的をヨーコに変えて武器である鞭を容赦なく振る。
一方でヨーコは自身の武器である薙刀で応戦していく。
「アディーネ!? バカめ・・・我々の目的はニア様の奪還だというのに・・・」
「おっと、シモンとニアの邪魔はさせねえぜ?」
「こっから先は、俺らをぶっ倒してから行くんだな。俺たちダイグレン学園をな!」
「へっ、シモンがあれだけやったんだ。俺たちが引き下がるわけにはいかねえんだよ」
「ぬう、・・・邪魔をしおって・・・ワシら番長四天王を怒らせるか!?」
友の下へはたどり着かせない。
立ちはだかるダイグレン学園に番長四天王たちは舌打ちする。
だが、番長四天王とて喧嘩上等の看板を常に背負って戦っている。
面白いじゃないか。
やってやろうじゃねえか。
両校が意地と意地をぶつけあって殴りかかろうとした。
だが、その時。
「喧嘩はやめてくださーーーーーーい!!」
「「「「「「ッ!?」」」」」」
一人の少年の制止する声が響いた。
ピタリと喧嘩が止み、声のした方向へ向くと、一人の少年が涙目になりながら叫んでいた。