【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
あれからどれだけ経ったのか? 時間の感覚が分からなかった。
「みな・・・妾を心配しておるじゃろな・・・」
まだ幼いながら国を背負う皇女は、犯罪組織に拉致監禁され、牢獄に囚われていた。
鉄格子の窓一つついていない、完全に外界と遮断された牢獄の中。幾重にも封印魔法の結界が張り巡らされ、力ずくでの脱出は不可能に近かった。
「う~む、捕まった姫を助けに来る勇者・・・ベタベタじゃが、シチュエーションはバッチリじゃ。ならばあとは勇者殿の到着を待つだけじゃの」
朝か夜かもわからぬこの狭い檻に閉じ込められ、もう何度目かも分からぬため息をつきながら、テオドラはただ静かに何かを待っていた。
随分とお気楽なものだが、仕方なかった。
嫌なことを少しでも考えれば心が折れる。
常に毅然とした態度を保ちながら、テオドラは自分を救いに来てくれる誰かをずっと待っていた。
自分がこの組織に囚われ、どのような交渉道具に使われるかはまったく分からない。だが、どのような事になろうと、それは決してあってはならぬこと。
そして、囚われてからそれなりの時間は経っている。
ならばいつまでも時間はない。
自力で脱出できないのであれば、交渉の道具になる前に自害する。この天真爛漫な少女の内にはそれだけの覚悟があった。
そうなっては、後は開き直るだけ。
彼女は、時間のギリギリまで、来るはずもない勇者の存在を、待つことにしたのだった。
「しかし~、遅いぞよ! 牢獄もかび臭いのう! このまま時間がたつと、湯浴みもしておらんゆえに、せっかく勇者殿が来ても臭いと思われるかもしれぬ。う~む、それは屈辱じゃ。交渉云々の前に、体臭が耐え切れなくなったら自害するかの?」
ケラケラと笑いながら、切なそうに笑う姫。涙は決して流さず、そして心乱さず、彼女は自身を保っていた。
「自害・・・か・・・死ぬ覚悟は出来てるがの・・・」
すると、そんな姫の願いが届いたのか・・・
「ッ!?」
勇者の登場の合図、この建物を震わす衝撃音が響き渡ったのだった。
「なんじゃ? 一体、どうしたというのじゃ?」
勇者を待っているなどと言って、ふざけ半分ゆえに、いきなりの建物の揺れにテオドラはビクついた。すると、狭い牢獄で右往左往しているテオドラのすぐ隣の牢獄から、一人の男の声が聞こえてきた。
「誰かがこの組織に喧嘩を売ったのかもしれぬな。今のは攻撃音ではないか?」
話しかけられるまで、テオドラも隣の部屋に誰かが居たことに気づかなかった。
「ここにケンカを売るじゃと? ヌシ、なにか心当たりがあるのかえ? っと、ヌシは何者じゃ? ヌシも人攫いにあったのかえ?」
顔も見えぬ隣人。男のようだ。そして、口調はおっさん臭いが、声の質からそれなに若い印象も見受けられた。
すると、隣の男は自嘲気味に鼻で笑いながら、己のことを語りだした。
「ふっ、人攫いか。まあ、否定はせん。ワシは旧世界の冒険者。この新世界の謎や資源を求めて放浪していたところ、この組織の連中に捕まった」
「・・・そうか・・・旧世界の・・・それは災難じゃったな。ヌシ、名は?」
「ワシの名か? 聞いても知らんと思うが・・・覚えておいて損はない。いずれ、ワシは旧世界の頂点に君臨する男。ワシの名は・・・」
大陸の果てにそびえ立つ古城。
牢獄にすら届いた攻撃音は、当然同じ建物に居た組織の構成員たちにも聞こえている。
白昼堂々、この屈強な犯罪組織に攻撃を仕掛けるなど、どこのバカの仕業だと、組織内が慌ただしく動いていた。
「ウガアアアアアア! なんだ~~~、何の騒ぎだコラァァァァァァ!!」
建物全体の揺れに、魔人は吠えた。
「落ち着け、チコ☆タン」
「完全なる世界と中途半端にしか戦えなくて機嫌が悪いのは分かるが、建物の中で暴れるな!」
と言いつつ、同僚を窘めていながら彼らも気が気ではなかった。
自分たちが攻撃されることに、心当たりはありまくりだった。しかし、だからこそ警備にも力を入れている。
アジトの周りの警備も完ぺきだった。もし攻撃や敵が近づいていた場合、早急に感知されている。だが、何の前触れもなく攻撃を現に受けてしまっている。
「だ~~、一体誰だ!?」
「敵の目的は、テオドラ皇女の奪還か?」
「防御陣を! 各隊招集して、問題確認に当たらせろ!」
「しかし、帝国の連中が近づいたら分かるはず。たとえ少人数だとしても、帝国で隠密に長けた連中などたかが知れているはず・・・一体誰――」
その瞬間、また破裂音が聞こえた。
「攻撃すんならもっとコッソリやれっていうんだ。このバカを必ず捕まえろ!」
ここまで遠慮なくやられては、札付きの組織の沽券に係わる。
何としても犯人を見つけ出せと、組織内に同じ命令が飛び交っていた。
すると、一人の構成員が、建物内に設置してある監視システムから犯人を見つけ出した。
「居たぞ、こいつらだ! ・・・って、・・・こいつは・・・」
「どうしたァ!?」
モニターを監視していた者の様子がおかしい。犯人は、それほどの大物なのかと、組織内に緊張が走る。
だが・・・
「は、犯人は・・・四名・・・二組に分かれましたが・・・」
「四人? たった!?」
「ひ、一人は男・・・年齢は・・・恐らく20代前半・・・そして・・・残る三人は女・・・ですが・・」
「なんだァ!? 女がどうした!?」
監視員は何に反応したのか? 犯人がたった四名だったこと? 二十代前半らしき男は何者か?
いや・・・
ぶっちゃけそれはどうでも良かった。
「ぶっちゃけ、め・・・メチャクチャ美人であります、サー!」
一斉に画面に食い入るように覗き込む組織の隊長クラスの連中や、主力級の戦士たち。
「ぬおおお、この銀髪ふわふわ髪・・・しかもこのコスチュームは何だ!? 真っ黒い、プラグスーツのような・・・うおおお、体のラインが丸分かりではないかァ! む、胸も中々あるぞ! え、エロい!!」
「いや、この少し褐色肌で道化師のような恰好をしている女性もなかなかだ! 少々表情が無表情だが・・・むおおお、ちょっと今ニコッと笑ったぞ!」
「いや、この白髪猫耳のメイドの姉さんもワンダフルだ! 貧乳など気にならん!」
気になったのは、犯人がどうとかではなく、メチャクチャ美人と言われた女たちのことだった。
「ぬう、全員若いな・・・二十代にいくかいかないか・・・」
「このむさくるしい空間に居た我々には無縁の存在・・・ぬうう、結婚しているのだろうか!?」
「今すぐ彼女たちのためにお茶の用意を! 部屋の掃除も怠るな!!」
哀しいかな、現場の仕事ばかりで恋愛に時間を割く余裕のなかった組織の連中たちに、我慢しろというのが酷であった。
ましてや軍人でもない、根はチンピラの彼らはすぐにチーム力が瓦解し、侵入者たちの侵攻をアッサリと許してしまったのだった。
これは、侵入者の彼らにとってはうれしい誤算だった。
「もっとたくさん邪魔があると思ってたけど・・・」
「あまり真面目に仕事していないのかもしれませんね」
あまりにもゆる過ぎる警備を打ち破りながら、圧倒的な強さで進行するのは二人のおん・・・女の恰好をしている大人二人。
アダルト大人バージョンの綾波フェイに、二十歳ぐらいの姿に変装しているザジ・レイニーデイ。
「ここは有名な組織。下手に顔を撮られたりして未来に問題を残したくないからということで、年齢詐称薬に手を出しましたが・・・」
「意外とザルだったね・・・」
「ところで・・・何故フェイトさんが女装?」
「僕が大人バージョンになっても、変装したことにならない。それほど顔が売れているからね・・・だからまあ・・・気にしないでくれ」
「ちなみに・・・・・・性別を逆転させる、性別詐称薬もここにありますけど・・・どうせ女装するぐらいならいっそ・・・」
「絶対飲まないからね」
黒い猟犬のアジトに侵入したフェイトたち。彼らは外見年齢を調整できる魔法薬を使用し、このテオドラ皇女奪還作戦を行っていた。
「うおおおおお、この防御ラインは絶対に通すなー! って、畜生、可愛いじゃねえか!」
「先輩! あんな美人に攻撃できないであります!」
「バカ野郎! 奴らはかなりの手練れだぞ! そんなことを言っていると、こっちの方が・・・・・・く~、しかし、美人だァ!」
フェイトたちが薬を服用した理由は簡単。ザジの言うように、黒い猟犬は20年後の未来にも残っているほどの巨大組織。
そんなところを素顔のままで侵入し、もし自分たちが有名人にでもなってしまえば、また時の流れがおかしくなる可能性がある。
つまり、フェイト、ザジ、この二人だけではなく、シモンとニアも同じように外見年齢を操作して、このアジトに乗り込んでいるのだった。
「は~、頭の悪い連中だ。それにしても、テオドラ皇女はおそらく地下牢だろうけど、シモンたちは大丈夫かな?」
「心配でしたら、今以上に組織の者たちの注意をこちらに引き付けましょう。・・・ほら、また来ます」
彼らの目的は、組織の壊滅ではなくテオドラ皇女の奪還ただ一つ。
そのために、アジト侵入直後にチームを二つに分けた。
出来るだけ目立つようにフェイトとザジが組織内で暴れ、その隙に隠密に動いているシモンとニアがテオドラを奪取する作戦だった。
「デーモニッシュアシュラーク!!」
「障壁突破『石の槍』(ト・テイコス・ディエルクサストー・ドリュ・ペトラス)」
フェイトとザジは強かった。組織の下っ端たちではどれほど束になろうともまったく相手にならぬほどの力差があった。
そして、囮となっている彼らが強さを証明し、派手な技をすればするほど注意が彼らに向くため、テオドラ皇女の奪還とシモンたちの安全度が増すのである。
フェイトとザジは、思う存分力を振るう。ザジは剣のように鋭く伸びた、十の爪で敵を引き裂き、フェイトは格闘と強力な魔法で相手を返り討ちにする。
古城の壁が攻撃の余波で切り裂かれたり、建物の材質である石が粉々に砕けて流砂となって、チンピラたちを飲み込んでいく。
「ザジ、やはり君は人間ではなかったね・・・」
ようやくベールを脱ぎ始めたザジの力はフェイトも驚いた。そして彼女が普通の人間でないことも見抜いた。
しかし、フェイトの言葉にザジは「ん~」とうなった後、僅かにほほ笑んだ。
「人間ではありません。でも・・・私は自分をヒトだと思っています・・・フェイトさんと同じように」
その言葉にフェイトは「やれやれ」とため息をついた。
「・・・ふっ・・・そうだね・・・変なことを聞いた。忘れてくれ」
その返し方は卑怯だと、フェイトは思った。既に失われた主に、自分をヒトだと認められたフェイト。
それがどれほど自分の心を救ったことか。
そんな今の自分に、ザジの言い方は卑怯だと感じさせた。
何も追求できなくなるからだ。
少し意地悪をしたザジは、クスッと笑って、フェイトに背中を預けて敵を打ち倒す。
「ならば、忘れるぐらい騒ぎましょう」
フェイトとザジのコンビは異色だった。「たまに笑う笑顔が最高! 道化師と猫耳メイドの最強コンビ」。後の時代ではこの囮となって戦う二人は、こう言い伝えられるようになった。
そして彼らはその名に恥じぬ戦果を積み上げていく。
「くそーッ、ダメだァ! 震えて杖が持てません!」
「お、俺をあなたの下僕にしてください!」
「貴様らァ! 悪党の誇りぐらい保たんかァ!」
強さと容姿というダブルコンボは、別に意図があったわけではないのに、とんでもない効力を発揮した。
気づけば黒いコートを着た、強面のマフィア風の者たちが武器を捨てて戦意喪失どころか、フェイトたちに拝み倒している。
正直十分だった。
下手な小細工しないでも、二人だけで組織を壊滅させられるのではないかと思えるほどだった。
だが、それならフェイトもゴチャゴチャ考えたりはしなかった。フェイトがそれほどまでシモンとニアを気遣わねばならない理由は、この組織に所属する一部の者の存在に他ならなかった。
そしてそのうちの一人が・・・
「ウラアアアアアア! 人のアジトの中で青春してんじゃねえッ!!」
とうとう姿を現したのだった。
「ッ、来たね」
「フェイトさん」
完全に怒りモードのチコ☆タンだった。
「ウゴアァァァァァァァァ!! 何なんだよ・・・何なんだよテメエらはァァァァ! 俺をイラつかせてどうすんだよォ! 脳みそつまってのかァァァ!?」
RPGでいうなら、ダンジョンの入り口付近で最弱モンスターと戦っている最中に、最強のボスが現れたようなものだった。
「ザジ、こいつはレベルが――」
「テメエもよそ見してんじゃねええええ!!」
「フェ、フェイトさん!?」
その、一度見たら一生忘れない筋肉隆々で鋭い角を持った化け物は、フェイトの顔面を容赦なく殴り飛ばした。
「ぬおおおおおおお、僕らのフェイちゃんがァァァァ!?」
「新入り~~~、おまっ、なんつーことを!?」
「美人の女の顔面を殴り飛ばすなど、なんて容赦ねえ奴なんだ!?」
「チコ☆タン君! ひ、ひでえ! あんな美人の顔面をぶん殴るなんて・・・」
容赦が無さすぎる。常人なら首から上がふっ飛んでいただろう。
「ウガアアアア、女は心だァ! 俺は見てくれで女を判断するようなクズやろうじゃねえ!!」
「「「「でも、女を殴るクズ野郎だ!?」」」」
壁に、天井に、床に激しくバウンドして打ちつけられながら、フェイトは瓦礫の中に埋もれた。
見かけが女なのに、これほど手加減なしにできるものなのか? ザジがゾッとした瞬間、既にチコ☆タンはザジの懐に飛び込んでいた。
「ッ!?」
「オラァああ! テメエも何とか言ったらどうだ、コラァ!!」
「ッ・・・アンチレイヤード!!」
「ぬおっ!? なんだコリャァ!?」
殴ったら激しい爆音をも生み出すチコ☆タンの拳が不発だった。目に見えない力がザジの周りを包み、攻撃を完全に逸らした。
「魔法障壁でもねえ・・・って、どうでもいいんだよォ! つうか、さっさと死ねやコラァ!!」
「ッ・・・無駄・・・」
ザジから発する謎の力に、チコ☆タンは余計にイラつきながら、パンチだけでなくキックを連発させる。
だが、どれほど拳打の雨を降らせようと、ザジは多少表情を歪めるものの、何と一撃もくらわずノーダメージだった。
目に見えない壁が、チコ☆タンの攻撃を防いだ。
「無駄です・・・あなたの攻撃は、全て斥力の力によって逸らしています」
「あ゛~?」
「しかし、女性の顔を何の躊躇いもなく殴ろうとするとは・・・」
斥力の力。さらっとザジはとんでもないことを言ったが、チコ☆タンにその言葉の意味は分からないようだ。怖い顔して首を傾げるだけだった。
そんなチコ☆タンをザジは非難する。チコ☆タンの同僚も、少し小さい声でチコ☆タンにブーイングしている。
よっぽど綾波フェイを殴り飛ばしたのが許せなかったのだろう。
だが、魔人は「それがどうした」とばかりに開き直って吠えた。
「うるせえええ! 俺はロリコンだァ! 幼女以外のババアに興味はねええええええええ!!」
「「「「ええええええーーーッ!?」」」」
「大体、美人だ~? 可愛いだ~? そういうやつに限って、男に媚びうる阿婆擦れなんだよ! ウガアアアアア、ビッチは爆発しろォォォ!!」
マジで、「えええ!?」だった。ザジもツッコみどころが多すぎて、ツッコめなかった。
その隙がザジの能力に反映されたかどうかは分からないが、斥力を発生させているはずだが、チコ☆タンの剛腕を完全に逸らすことはできなかった。チコ☆タンの拳で生み出された空気圧で、ザジの肌が僅かに切れて血が滲みだした。
「ッ・・・」
「テメエも、どうせアレだろ? どっかのイケメンの女なんだろうが! そんで、あれか? もう契約とかしたのか? つうか、何が魔法使いの仮契約システムだァ! 契約結ぶなら一人にしろよ! 優柔不断なイケメンがチュッチュ、チュッチュしてやがるから、世の中の女は・・・クソがァァァァァァァ! 純真無垢な幼女以外は全員爆発しやがれェェェ!! 何でおれは魔法使いじゃねえんだよ! 何で俺はイケメンに生まれなかった! こんな世界なんか粉々になればいいんだォォォォォォ!!」
チコ☆タンの力は、魔力を膨張させ、攻撃と同時に起こす爆発。下手したら味方も巻き込みかねない爆発を、チコ☆タンは感情任せに使いまくった。
「くっ・・・言っていることは最低に情けないのに、なんという威力・・・」
理性というものなど何も知らずに、己の力を思いのまま使う。何のためらいも容赦もない攻撃を止めるのは骨が折れた。
だが、感情任せだからこそ隙も多い。
「なぜ、デュナミスといい、この世界の最強クラスは見っともない感情に囚われて暴走するんだろうね・・・」
メイド服が絶妙のバランスでボロボロなっているが、フェイトが現れ、巨大な石柱を叩き落とす。
「ッテ、テメエ!?」
「フェイトさん!?」
フェイトは無事な姿を見せた。かなり効いたが、あれで終わるフェイトではなかった。
「ァ゛? 感情任せで何が悪いんだァァァ!」
「悪くはない。だが、同じ感情任せでも・・・君とシモンたちは違う。彼らの感情は、いつだって熱く激しく、輝いている」
「ぬおおお、なんだこの砂ァ!?」
頭上の石柱に意識が向いている隙に、チコ☆タンの両足に大量の砂が絡み付いて、動きを封じ込めた。
「君の感情など、見るに堪えないね!」
「ッ!?」
身動きが取れない以上、回避は不可能。チコ☆タンは巨大な石柱をモロにくらった。
「ザジ、今の内だ!」
「・・・コクっ」
チコ☆タンが怯んだすきに、フェイトとザジはお返しとばかりに攻撃を叩き込む。
「冥府の石柱(ホ・モノリートス・キォーン・トゥ・ハイドゥ)!!」
「G・ショック!!」
巨大な石柱と、強力な重力圧がチコ☆タンに襲い掛かる。潰され、まるで強力な重力場が発生しているかのように床にめり込むチコ☆タン。
巨躯な肉体が、床を砕き、両足が膝の高さまで埋まっていく。
「ぐのおおお・・・こ、この・・・ババア共がァァァァァ!!」
しかし、この程度で勝敗が決するのであれば、フェイトも敬遠する必要はなかった。本当の勝負は・・・
「俺様を、誰だと思ってんだクラァァァァ! パワァァァァゲイザァァァァー!!」
両腕を交互に床にたたきつけ、強力な爆発を発生させる。
その爆発は、巨大な石柱や重力場も打ち砕くほどの規格外のもの。
後にこの戦いを見ていた黒い猟犬の下っ端たちは語る。彼らは全員「どっちが勝っても、このアジトは崩壊して、もう使えないだろう・・・」と感じたそうだ。