【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第49話 俺たちがドリ研部? 少し違うぜ!

「螺旋の進化の果ては、限りないぞ?」

 

 

相対するシモンを始めとする、6人の戦士たち。

彼らを相手するアンスパは、余裕の言葉を放つ。

 

「教えてやろう。螺旋の極みをな」

 

漆黒の炎が渦巻いて、アンスパを包み込む。

炎の中から生まれたものは、既に人ではなかった。背中から触手のように長い漆黒の二本の腕。

二本の鋭い角を額から生やした、悪魔の形相。

アンスパは変身した。チコ☆タンを遥かに凌駕する存在感。そして巨大さ。

思わず見上げてしまうその大きさは、数メートルに達するだろう。

 

「これが、私のバトルモード。その名も・・・グランゼボーマモードだ」

 

チコ☆タンを魔人ととらえるのなら、今のアンスパは、まさに魔神だった。

もはや人の痕跡を一切残さぬ、父の変身した姿に、シモンは困惑していた。

 

「こんなことも・・・できたのか・・・」

「臆するな。奴が強者であることだけを、感じればよい」

 

背中に汗をかいているのは、シモンだけではない。みな同じだ。

だが、そんな彼らの心を新たに引き締めさせたのは、20年前のロージェノムだった。

 

「そうです。お父様の言うとおりですね」

「むっ・・・声は聞き取れんが、とりあえず大丈夫そうだな」

 

ロージェノムが耳を怪我しているのを言いことに、ニアは普通にロージェノムを父と呼ぶ。

 

「どういうことじゃ? フェイ、そしてザジじゃったか? あの男とニアは、親子にしては、年齢が・・・」

「細かいことは気にするな、テオドラ皇女」

「フェイトさんの言うとおり。今は細かいことは置いて、大きなことを気にする時」

 

ロージェノムの一言のおかげで、どうやら全員そこまで臆している様子ではなさそうだ。

そして、少し気持ちを落ち着かせるととても心が軽くなった。

魔法世界の未来とか真実とか、心がどうとか、小難しい話をゴチャゴチャされるより、目の前の化け物だけを倒せばいい。

シンプルだが、それぐらいが彼らにはちょうど良かった。

 

「さあ、見せてみろ。ドリ研部とやらたちよ」

 

再びアンスパの威圧感が上がる。本当に底知れない存在なのだと思わずにはいられない。

だが、怯みはしない。シモンたちが四散して前へ出る。

シモンたちの接近を、アンスパは正面から身構えた。

 

「シモンインパクト!!」

「ニア流~、錐揉みキック!」

「G・ショック!」

「冥府の石柱(ホ・モノリートス・キォーン・トゥ・ハイドゥ)!!」

「帝国流魔拳法じゃ!」

「カテドラルナックル!」

 

それぞれが繰り出す技を、アンスパは何もしないで突っ立ったままだった。

6人の同時攻撃をくらえば、かなりのダメージを与えられるかもしれない。

しかし、異常事態が起こった。

 

 

「反力場」

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

 

たった一言アンスパが呟いただけで、6人の攻撃は全てアンスパに直撃するどころか、目に見えない壁に弾き返された。

 

「これは・・・どういうことなのです?」

「気をつけろ! 奴は、この世の確率や物理法則を捻じ曲げる! そして、己の想像したものを全て実体化する!」

「なんじゃとォ!? なんじゃ、そのメチャクチャな能力は!?」

「ロージェノム、堀田博士の能力を知っているなら、弱点は?」

「耳が聞こえんから何を言っているかは分からんぞ!?」

「私が代わりに答える・・・所長・・・アンスパの弱点はある」

「ザジ!? なんでザジが知ってるんだよ!」

 

一同に動揺が走る中、ザジが言う。

 

「アンスパは自分の想像を力にする。なら、想像できなくすればいい」

「つまり?」

「私たちがアンスパの想像を遥かに超えるか、何も想像できなくなるぐらい、精神に揺さぶりをかけること」

 

やけに簡単に言うザジだが、一同はうなった。

 

「くっ・・・あの堀田博士を精神的に揺さぶり・・・無理だね」

 

断固たる決意を持つアンスパに揺さぶりなどできるはずがない。

 

「想像を超える・・・じゃと? 妾らだけで?」

 

この、メンツでどうやって?

結局打開案は出てこないままだった。

 

「さあ、次はこちらから行くぞ」

 

攻撃の無力化に戸惑うシモンたちに、アンスパは両掌に渦上のホイールのようなものを発生させて投げつける。

超高速回転で圧力を圧縮し、切れ味も鋭い円状の刃。

 

「超銀河手裏剣!!」

「みんな、僕の後ろに下がるんだ!」

 

フェイトは砂の壁を何重にも集め、密度と強度を上げた防御壁でアンスパの手裏剣攻撃を防ぐ。

 

「やるな。だが・・・これならどうだ!!」

 

アンスパは超銀河手裏剣を乱れ打ちしてきた。いかに魔力で練り上げた砂の壁を引こうと、耐え切れなくなった防御壁は四散し、手裏剣がフェイトたちに襲い掛かる。

 

「私が防ぐ。ヘビー・G!」

 

飛んできた手裏剣を、ザジが重力場を発生させて叩き落とした。

 

「ほう。それは・・・貴様の魔力でも能力でもない。道具の力だな。私が研究中であった、コアドリルを使った力か?」

「ッ」

「物理法則の捻じ曲げ。コアドリルを内蔵させた武器なり武具で、実現化させる」

 

アンスパはザジの力を前に言う。シモンたちは、てっきりザジは魔法や能力で戦っているとばかり思っていたために、ザジの技がアンスパと関係していることには驚いた。

相変わらず謎の多いザジ。ザジは胸元からペンダントを取り出した。

 

「『天も次元も超えて会えちゃうマシーン』の応用。時間軸を捻じ曲げるこの装置は、重力場も変化させる。その重力部分を私は操作している」

「ふん、器用だな。本来螺旋族でもない貴様だが、コアドリルと魔力の応用で使いこなすか」

「未来で・・・教えてもらいました」

 

アンスパとザジの会話はよく分からなかった。

 

「ザジー、もっと分かる言葉で教えてくれよ!」

「要するに、気合」

「それなら、文句なしだ!」

 

細かいことはいい。シモンはザジの単純な答えで納得した。

事実、気にしている余裕はない。

 

「一時の気合程度で、私の信念を揺るがせものか!」

 

重力場をお構いなしに飛び込んで、ザジに拳を叩き込むアンスパ。ザジが苦悶の表情を浮かべる。

 

「おのれ、堀田ァァァ!!」

「きさまも、這いつくばれェ!」

 

殴り掛かるロージェノムの顔面を片手で掴み、アンスパはロージェノムを後頭部から床に叩きつける。

 

 

「我が血族は選ばれた存在! 魔道の力がこの世の真理と自惚れ、愚かな魔法使いどもの生み出した過ちを断ち切る存在として、我が種族はこの世に存在するのだ!」

 

「は、速い!?」

 

「幾多の苦悩苦痛を乗り越え、今の私の思いがある。ヒトとしての生き方を捨て、どれだけヒトから蔑まれようとも、この世界を守る私の執念に何故貴様らなんぞが勝てるというのだ!」

 

「ザジ!? ロージェノム!? フェ、フェイト!?」

 

「何故勝てる? 何故戦う? 何故否定できる! 何故私の前に立ちはだかる道理がある! 何故? 何故! 答えは否! 否否否否否否否否否否ァァァァァ!!」

 

 

フェイトやザジですら、アンスパのスピードについていけていない。幾重の魔法障壁を軽々と突き破られ、6人の戦士たちは殴られ蹴り上げられ、ふっ飛ばされる。

アジト全体を揺らすアンスパの猛攻が、シモンたちに何もさせずに打ちのめしていく。

 

「俺たちは――」

「答えを聞くまでもなく、否ァァァァァ!!」

 

圧倒的な力差だった。

まるで怪獣映画のように、何もできずに踏みつぶされていくような感覚だった。

 

「つ、強すぎる・・・やはり、生命としての格が違う・・・こんな若造どもでは、どうにもならん」

 

ダメージで体をよろめかせながら、ロージェノムは狼狽えていた。レベルそのものが違っていたのだ。

だが、それでもシモンたちは動く。

一度止まれば、もうそれまでだからだ。

 

「気張れ、ロージェノム! 下を向いたら、それまでだぞ!!」

 

シモンはロージェノムだけでなく、自分に向けても言っていた。

答えもないままかつての父と戦う、シモン。その父に、自分の知っている頃の面影などまるでなく、息子である自分を全否定して、化け物の姿に身を変えてしまった。

何故父がここまで強いのか? 何故父はここまで心が追い詰められているのか?

何故、たった一人で父は苦悩しているのか?

ここで止まったら、一生父親の答えに届かない。

シモンはドリル片手に父に向かう。

だが・・・

 

「無駄だァ! 超渦巻銀河!!」

 

ドリルの回転どころではない。

まるで銀河そのものが渦を巻いているかのような力が、シモンの心身を容赦なくズタズタにしていく。

 

「ぬおおお、よくもシモンをォォォ!!」

「シモンのお父様とはいえ・・・あなたを・・・・・・・・・私は貴様を殲滅します!」

 

テオドラと、黒ニアへと変貌したニア。

か弱い少女の身なれど、果敢に攻め込む。

だが、敵は果てしなく巨大。

 

「ふっ、笑止千万!!」

 

渦巻くが風が吹き荒れて、風に飛ばされたニアとテオドラは壁に強打させられる。

 

「バカな・・・なんだ・・・この圧倒的な力差は・・・僕たちが、まったく相手にならないなんて」

「これが、堀田所長の力・・・私も初めて見る・・・」

 

フェイトとザジも流石に堪えていた。

自分では、無敵とまではいかなくとも、自分の力は魔法や裏の世界では最強クラスの力と心の中では思っていた。

だが、目の前のアンスパは何かが違う。

力が強いとか、精神がどうのとか、そういう問題でもない。

武道家や魔法使いとも違う。

ドラゴンなどのモンスターや、チコ☆タンのような魔人とも違う。

 

「まるで・・・この世に存在しない力を相手にしているようだ・・・正に・・・神の領域」

 

曖昧な言い方だが、今のアンスパをフェイトたちはそう捉えていた。

 

「ふっ・・・どうした? その程度か、貴様らの想いは」

 

死屍累々と横たわる戦士たちの中、アンスパはシモンを片手で掴みあげて、言葉をぶつける。

 

「ま、まずい・・・やはり・・・」

「シモン・・・くっ、私が今・・・」

「おい、娘よ・・・・・・あの小僧を救出して、すぐに離脱するのだ」

「お父様?」

「格が違いすぎる」

 

冷静な戦士としての判断だった。相手にならずに全滅しましたなど、戦場では最悪の結末だ。

勝てないなら生き残る。そのためだったら逃げるのも当然だ。

ロージェノムは逃げる算段を黒ニアに持ちかける。

だが、声が聞こえぬロージェノムに、ニアは言葉の代わりに、首を横に振って答えた。

逃げない。

それが、ニアの答えだった。

 

「バカな・・・何故!」

 

ニアは、驚くロージェノムの目の前でシモンを指差した。

それの意味は、こう取れる。

シモンは逃げない。だから、自分も逃げないのだと。

 

「無理だ・・・勝てるはずがない」

 

それでもニアは首を横に振る。

 

「そうかもしれません。でも私たち・・・そんな状況に慣れています」

 

ニアは全身の力を振り絞りながら、シモンの元へと駆けつけようと、痛みに耐えながら立ち上った。

だが、ニアの想いとは裏腹に、答えの出ないまま戦いに身を投じてしまったシモンの心は、次第に弱まってきている。

 

「分かるか? 多少の反撃をしようとも、貴様らは無謀! 無知! そして何よりも無力だ!」

「とう・・・さ・・・」

「私のヒトとしての生き方を捨てる程度で、地球を救えるのであれば本望だ! だからこそ、貴様が我が血縁であるのなら、むしろ好都合! それを今この場で切り捨てて、我がヒトとしての道の退路を完全に断ち、絶対不変未来永劫の後戻りできぬ覚悟としようではないか!」

 

アンスパはシモンを投げつける。

投げつけたシモンに追撃し、一瞬のスピードで追いつていて、ボディに拳をめり込ませた。

 

「がはッッ!?」

「未来から現れし我が血縁よ! 我の永久覚悟の糧となるがよい!!」

 

父の愛の鞭ではない。まるで、全てを断ち切るための攻撃。

 

(本当に・・・殺すんだ・・・父さんは・・・俺を・・・)

 

シモンの心は暗い影で覆われた。

 

(ひょっとして俺が生まれてきたのは・・・未来の父さんが・・・過去の父さんの覚悟を決めさせるため)

 

ひょっとしたらシモンの父も、かつて未来から来たシモンと戦い、命を奪ったのかもしれない。

父はその歴史を繰り返させるために、自分を生んだのかもしれない。

どの次元に存在しようとも、アンスパが絶対不変の覚悟を手に入れるための道具として。

 

(俺は父さんに・・・愛されてなんかいなかったのか?)

 

その瞬間、シモンは頭を勢いよく振って走り出した。

 

「うおおおおおおお、父さーーーーーん!!」

「否! 貴様は、我が糧だ!!」

 

シモンはアンスパに掴みかかる。

 

「俺は・・・ネギ先生と同じ気持ちだったんだ!!」

「ん?」

 

シモンは涙を流しながら、叫ぶ。

 

「ネギ先生は、ニアを連れ去ったロージェノムに言った!」

 

それは学園祭直前に、ニアを連れ去り、退学させようとしたロージェノムに向かい、ネギが涙を流しながら頭を下げた時のこと。

ネギは言った。

 

 

――あなたはニアさんのお父さんなんですよね!? だったら一度で良いです! 一度でも良いですから、せめてシモンさんとだけでも向き合ってください!・・・お父さんなら・・・お父さんなら! 自分の子供が好きになった人のことぐらい見てあげてください!!

 

 

それは、父親と暮らしたことのない、ネギの心。

その気持ちを、シモンはよく理解できた。

 

 

――僕は・・・もし・・・お父さんに会うことが出来たら知って欲しいです! 好きな人が出来たら、大切な仲間たちが出来たら、お父さんに知って欲しいです! これが今の僕の居場所なんですって・・・これが今の僕なんだって、お父さんに知って欲しいです!!

 

 

今こそ、自分もネギのように叫びたかった。

 

「これが今の俺なんだ! みんなが俺の居場所なんだ! みんなが俺をシモンとして見てくれるんだ! 俺は・・・俺は! 俺はシモンだ! 決して、糧なんかじゃない! 父さんの息子の、穴掘りシモンなんだ!!」

 

届いてほしかった。そして見てほしかった。

シモンの道や答えを否定されたって構わない。

ただ自分を・・・

 

「だから、俺を見てくれ、父さん!!」

 

ただ自分を、糧としてではなく、息子であると見て欲しかった。

それが、シモンの想いだった。

 

「否ァァァァァァ!!」

 

その想いは、アンスパの拳に阻まれ、微塵も届くことは無かった。

無情な力が、シモンの願いを完全に阻んだのだった。

 

「とう・・・さ・・・」

 

激しく打ちつけられたシモンの心身から、力が抜けていく。

想いも、存在も、全てを実の父に否定された。

シモンの心に、ぽっかりと穴が空いてしまったようだった。

 

「いかん!?」

「まずい、シモン! く・・・体が・・・」

「誰でもいい・・・早くシモンを!!」

 

アンスパは本気だった。本気でシモンを殺そうとしている。

シモンにもそれが伝わってきた。だからこそ余計に、心が打ちのめされた。

 

「我が心の中で生き続けよ、小僧」

「と・・・・・・う・・・・さん」

「私は決して迷いはせん。この道を進む。お前は我が覚悟の証として、永劫に我が心に生き続けよ」

 

アンスパは超銀河手裏剣を、動かぬシモンに向ける。

シモンは避ける力もない。

必死に叫ぶニアたちの声も届いていないのかもしれない。

何という、幕切れ。

ダイグレン学園として、世の中に、社会に、校則に、カミナたちと反発してきた人生がここで終わる。

シモンは全身の力が抜け、観念したのか・・・

とうとう、下を向いてしまった。

 

 

「さらばだ、我がヒトの道よ!」

 

 

銀河手裏剣が飛び、シモンを両断しようとした。

 

 

 

だが・・・

 

 

 

その時だった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漢の魂・炸裂斬りィーーーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如現れたその男・・・いや、その漢は、シモンの前に立ち、銀河手裏剣を力づくで両断した。

 

「「「「「「「ッ!?」」」」」」」

 

驚いたのは、アンスパだけではない。

この場にいた全ての者たちだ。

青い頭の漢。

一瞬、幻かと疑ったほどだ。

だが、幻ではなく現実だ。

その漢は急に振り返り、シモンに向かって駆け出した。

 

「顔を上げろォ、シモーーーン!!」

「ア・・・アニ・・・」

「歯ァくいしばれえええええええええ!!」

 

この痛みは、紛れもなく現実だった。

痛く、重く、そして何とも熱い拳だった。

 

「う・・・そ・・・・だろ・・・」

「何故・・・」

「誰じゃ?」

「何者だ?」

 

フェイトやニアは信じられないと目を見開き、テオドラ、ロージェノム、そしてアンスパも首を傾げていた。

ただ一人、ザジだけはホッとしたように呟いた。

 

「ようやく・・・時間が重なりました」

 

その者の出現に、誰もが一歩も動けないでいた。

 

「情けねえツラしやがって。少しは目ェ覚めたか?」

 

突如現れた、V字サングラスをかけた、長ランの男。

数か月前までは、毎日毎日見飽きるほど見ていたあの男が、目の前に居た。

 

「アニ・・・キ・・・?」

 

カミナだった。

あのカミナが目の前に居た。

年齢詐称薬で姿かたちが変わっているシモンを一目で見分け、当たり前のようにシモンにいつもの力強い笑みを見せる。

 

「おうよ! お前の永遠の兄貴分! カミナ様だ!!」

 

カミナが現れた。

日本刀のような刀を引っさげ、刀を天井に向かって突き出しながら、豪快に笑った。

 

「ア・・・アニキ・・・本物のアニキなのか!? なんで!?」

「バカ野郎! 何寝ぼけたこと言ってやがる!」

 

混乱が収まらないシモンに、ヤレヤレとため息をつきながら、カミナは叫ぶ。

 

 

「麻帆良じゃ悪名だらけの無法者!! それでも胸張り進む漢道! 貫き通すが、俺様だァ!! この俺がァ、カミナじゃねえってんなら、誰だって言うんだよ!!」

 

「アニキ・・・!? でも!?」

 

「俺だけじゃねえ。こいつらもな!」

 

 

今気づいた。

 

「えっ!?」

「みみみみみみ、みなさん!?」

 

カミナの背後には、皆が立っていた。

 

 

「あら、ニア、シモン、ザジ、随分と大きくなってるじゃない」

 

「いや、待て! フェイト、お前はなんつー恰好をしてやがるんだ!」

 

「うおおお、可愛いぞ!」

 

「可愛いぞ、可愛いぞ、可愛いぞ!」

 

 

いつもよく見た、しかしどこか懐かしい、ダイグレン学園のクラスメートたちが立っていた。

 

「何者だ・・・こやつら・・・」

 

彼らは笑っている。そして、驚くシモンたちを見て、一体何を驚いている? そんな顔で、笑いながらシモンたちを見ていた。

 

「カ、カミナ・・・君たち・・・どうやって・・・」

「間に合いましたか・・・」

「ザジ!?」

「フェイトさん。『天も次元も超えて会えちゃうマシーン』で・・・過去に来たのは私だけでは無かったのです」

「ッ!?」

「使い慣れないものでしたので、時間の差はでましたが・・・ようやく全員の時間が重なりました」

 

今さらとんでもない事実を伝えるザジ。

フェイトたちは言葉を失ってしまった。

 

「アニキたち・・・どうして・・・」

「どうしてだァ? つまんねーこと聞いてんじゃねえ! お前はもし俺がピンチで助けに来るとき、イチイチ理由があんのかよ?」

「それは・・・」

「俺はお前に助けてもらうとき、絶対に理由は聞かねえ! 好きなだけ助けてもらう! 当たり前のように助けてもらう! だから俺も、お前がピンチになったときは、全力で助けに来てやる! そこが例え、宇宙の果てだろうとなァ!!」

 

ああ、カミナだ。

 

「そして、お前が弱気になりそうになったら、いつだって気合を注入してやる! だから安心しろ。お前は俺を、そしてお前は自分を、一体誰だと思ってやがる!」

 

間違いなくカミナだ。シモンの暗くなった心が、一瞬で晴れていく。

 

 

「いいか、シモン! 相手が誰で、何と言われようと、一度拳でケンカを始めたんなら下を向くんじゃねえ! ケンカに必要なのは、相手が誰で、どっちが正しいとかの理屈じゃねえ! ぶっとばすか、ぶっとばされるかのどっちかだ!」

 

「理屈は要らない・・・」

 

「たとえ相手に理屈があっても、テメエの心だけは譲れねェ。俺たちは、いつもそうやってツッパッて来たんじゃねえのかよ?」

 

 

どうしてだろう。

何故、この男はこれだけで人を立ち上がらせてくれるのだろう。

どんな傷でも、どんな絶望でも、お構いなしに人を立ち上がらせてくれる。

無茶苦茶なのに。言ってることは自分勝手なのに。カミナが言うと、自分の決断に誇ることができる。

 

「うん・・・・・うん!」

 

シモンは涙を流しながら笑った。

 

「へっ、背・・・なんかデカくなったじゃねえかよ。お前を見上げる時が来るとはな」

「それでも、俺にはアニキの方が大きく見えるよ。何もかもね」

 

立ち上がれば、今のシモンの方がカミナより身長は高い。

だが、この漢の大きさは、身長が伸びたぐらいで推し量れるものではないなと、シモンはうれしくて笑った。

 

「きさまら・・・一体何者だ?」

 

黙ったままだったアンスパが、カミナたちに尋ねる。

 

「何言ってやがる、アンスパ野郎。テメエが俺たちに、仲間を助けて行けって言ったんじゃねえか」

 

カミナはニッと笑って、アンスパに答える。

 

「なに? ・・・いや、それだけではない!?」

 

何のことを言っているのか理解できなかった。

そして、アンスパの疑問は更に深まる。

カミナたちが持っている、刀を始めとする武器だった。

その武器には、綺麗な光が発光していた。まるで、オーラのように、カミナたちの武器と全身を包んでいた。

 

 

「その剣から発生している光は、紛れもなく螺旋力! その剣、コアドリルを内蔵し、螺旋力を発動させて武器を強化している! 他のものたちの持っている武器もそうだ! 何故だ! 何故貴様らまでもが、そんな武器を持っている!」

 

「あんたが渡してくれたのよ」

 

 

今度はヨーコが答えた。

 

「私が・・・だと? また訳の分からぬことを・・・それに、いくら螺旋力を発動させようと、貴様らはそちらの魔族の娘のように、魔力も感じぬ。魔法使いでもない、一般人だ! なのに何故、貴様らにコントロールできる!?」

 

初めて見せた、アンスパの動揺。どうやら、よっぽど信じられなかったのだろう。

すると、一番冷静なロシウが代わりに答えた。

 

 

「僕たちもよく分かりませんが、あなたが教えてくれたのです。僕たちが貰ったこの武器には、超高性能AIが搭載され、僕たちの生理反応に対応する『通称・持てば何とかなるシステム』が備わっていると」

 

「な・・・なんだと・・・」

 

 

ゾロゾロと現れた仲間たち。カミナだけでなく、その一人一人の表情を見るだけで力がわく。

 

「どうよ、シモン。ちったァ、目ェ覚めたか?」

「アニキ・・・」

 

目が覚めるどころではない。力まで目覚めていくような感覚だった。

 

「貴様ら・・・未来の研究所の関係者か? それとも、その者たちと同じ、ドリ研部とやらなのか!?」

 

ドリ研部?

そう尋ねられて、カミナたちは鼻で笑った。

 

「ドリ研部じゃねえ! 俺たちは、麻帆良ダイグレン学園だ!!」

 

今こそ、始まる。

 

「おうよ! 麻帆良ダイグレン学園、先端帝王のキタン!」

 

叫んだカミナに続いて、キタンが叫ぶ。

それに続いて、駆けつけてくれた仲間たちが、次々と名乗りを上げていく。

自分たちが、誰なのかを!

 

 

「同じく、一撃必中のヨーコ!」

 

「同じく、疾風一閃のキッド!」 

 

「同じ、俊足旋風のアイラック!」 

 

「同じく、大胆不敵のゾーシイ!」 

 

「「同じく、暴走兄弟! ジョーガン・バリンボー!!」」

 

「「「同じく、キヨウ! キヤル! キノン! 純情激烈・鉄(くろがね)の三姉妹!!」」」

 

「お、同じく、・・・た、太陽光線のロシウ!」

 

 

頼もしき仲間たち。最後を締めるのは、当然この漢だ。

 

「そしてェ! 麻帆良ダイグレン学園・鬼番長! カミナ様だァ!!」

 

そして、彼らは叫ぶ。

 

あの言葉を。

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「俺たちをォ誰だと思ってやがるッ!!」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

それが、シモンの感じた今日一番の迫力だった。

チコ☆タンも、グラゼンボーマも霞んでしまうほどの圧倒的な存在感だった。

 

 

「では・・・同じく、ニア・テッペリンです!」

 

「麻帆良女子中のザジ」

 

「ダイグレン学園のフェイトだ!」

 

 

笑いが止まらぬニアたちも、痛みを忘れて立ち上がった。

 

 

 

「いくぞ、兄弟! いくらなんでも、負ける気しねーだろ?」

 

 

 

カミナに肩を叩かれ、改めて周りを見る。

そうだ。

負ける気はしない。

 

 

 

「あ・・・ああ! 行こう、アニキ! みんな!」

 

 

 

今こそ、10倍返しの時間が始まった。

 


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