【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第5話 あっちこっちそっちどっち?

 

「今は授業中なはずですよ! そ、そこの他校のあなたたちもこんなことをしてはいけません! ぼ、僕怒りますよ! ほ、本当に怒りますよーー!」

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

 

ネギの涙の叫び。

生徒のために涙を流してでも叱るネギ。

不良たちは喧嘩の手をピタリと止めた。

しかし数秒後・・・

 

 

「「「「「「「「「「知ったことかアアアアア!!」」」」」」」」」」

 

「ええっ!? しかも両校全員揃ってですかァ!?」

 

 

ただ、子供が叫んでいたということで数秒気を取られただけで、不良たちは敵も味方も同じ言葉を同じ瞬間に叫んで再び殴り合い、ネギを無視した。

そもそもネギが教師だなどと、数人しか知らなかった。

 

 

「みなさん、本当に喧嘩はやめてください! 喧嘩はいけません! 学校側からペナルティを受けますよ!」

 

「「「「「「「「「「処分が怖くて不良が出来るかァ!!」」」」」」」」」」

 

「何で全員息がピッタリなんですか!? あなたたち本当は仲が良いんじゃないですか!?」

 

 

人に言われたことが出来ない。

 

「アディーネ・・・シモンを傷つけようとしました・・・許せません・・・私が・・・滅ぼします」

「って、ニアさんまで!? 黒ニアさんのほうですね!? お願いですから待ってください!」

「さあ、シモン。合体です」

「えええーーッ!? 俺も戦うのーーッ!? 無理だよーーーッ!」

「だから喧嘩はやめてくださいってばァ!!」

 

当たり前のことが出来ない。

言われたら余計に抗いたくなる、それが不良。

 

「うう~・・・誰も言うこと聞いてくれないよ~。不良って怖いよ~・・・3-Aの人たちは本当にいい子ばかりだったんだな~」

 

ネギは再び自信を喪失して打ちひしがれてしまった。

そんなネギの肩をポンポンと叩き、親指突き上げてニヤッと笑う男が居た。

 

「ボウズ。上を向け!」

「ウウ~~、カミナさん・・・」

「テメエが誰かは知らねえが、さっきから何を言ってやがる。こいつは喧嘩じゃねえ!」

「・・・・・・・・・えっ?」

 

・・・・・・・?

 

カミナの言葉に一瞬目が点になったが、直ぐにハッとなった。

 

「どう見ても喧嘩じゃないですか!?」

「喧嘩じゃねえって言ってんだろ! こいつは男と女がテメエの愛を貫くための信念の戦い! そして俺たちは、ダチを・・・仲間を守るために戦ってる! 言ってみりゃあ、大喧嘩よ!」

「大喧嘩!? ・・・・・・? ・・・って、やっぱり喧嘩じゃないですかーーーッ!?」

 

ネギはうぬぼれでは無いが自分の知能レベルはそれなりには高いと思っていた。

魔法学校でも首席で卒業し、大学卒業レベルの学力もある。

周りからは少し恥ずかしいが天才少年などと呼ばれていた。

だが、そんな自分だが分からない。

 

「ダメだーー、言ってる意味がさっぱり分からないよーーーッ!?」

「頭で分かろうとするんじゃねえ! 感じるんだよ!」

「余計分かりませんよーーーッ!?」

 

不良がどうとか、問題児がどうとか以前に、会話がまったく成立しない。

自分の短い人生ながらも濃密に過ごしてきたこれまでの経験が何一つ活かされない。

そうなっては、ただの10歳児のネギにはどうすることもできず、頭を抱えてただ叫んでいた。

 

「ったく~、ボウズ、お前はまだ男ってもんを分かってねえな」

「ウウ~~、分かりませんよ~。僕は今まで女子校で働いていましたから~~~」

 

落ち込むネギをカミナは仕方が無いという表情で頭をポリポリかく。

 

「仕方ね~な、俺がお前に男の浪漫ってものを教えてやる。例えばだ・・・アレを見ろ!」

 

そうしてカミナが指差した先には、ヨーコとアディーネが派手な動きを見せながら激しい喧嘩をしていた。

 

「・・・あれが・・・どうしたんですか?」

「まあ、見てろ! おっ、もう直ぐだ・・・もう少し・・・」

 

カミナはネギの身長に合わせて中腰になりながら、サングラスの奥の瞳を細めて、ヨーコとアディーネの戦いの、主に両者の下半身に意識を集中させる。

そして目が見開いた。

 

「ここだ!」

「・・・えっ?」

「カミナーーー! 何を余所見しておる! 覚悟ーーッ!」

「馬鹿やろうチミルフ! テメエもアレを見ろ!」

「むっ・・・・オオオオオオ!?」

 

その瞬間、争っていた男たちの手は止まり、全員がヨーコの下半身に目を光らせる。

激しい戦闘とアクションにより、風でめくれるヨーコのスカート。

 

 

「「「「「「「「「オオオオオオオオッ!?」」」」」」」」」」

 

 

この瞬間、喧嘩していた男たちは心を一つにして、確かにその目で見た!

 

「そう、これぞ男の浪漫! あ、男の浪漫! その名も・・・」

 

ヨーコがスカートの下にはいている・・・

 

 

スパッツを・・・

 

 

「「「「「「「「「「歯ァ食いしばれええええええ!!」」」」」」」」」」

 

 

男たちは涙を流しながら激昂した。

 

「なな・・・何よ・・・」

 

ヨーコも驚いて振り返ってきた。

 

「やいヨーコ! テメエには失望した! スカートの下にスパッツとは、テメエは何も分かっちゃいねえ!」

「所詮はダイグレン学園か・・・がっかりじゃよ、ヨーコよ!」

「浪漫を知らねえ!」

「女の戦いのパンチラはお約束だろうがァ!」

 

そこに敵も味方も無かった。あるのは男という悲しい種族。

 

「うっさいわよバカども! 何で私があんたたちにパンツ見せなきゃいけないのよ!!」

「うっせえ! パンツじゃねえ、へそも見せねえ、露出がねえ、ねえねえづくしのテメエにはがっかりだぜ!」

 

激しいブーイングにヨーコもブチ切れ男たちに襲いかかろうとする。

 

「あの~・・・それで・・・結局男というのはなんなんですか?」

 

再び忘れられたネギだった。

 

 

「取り込み中申し訳ありません。ヨーコが戦わないのでしたら、アディーネは私とシモンが戦います」

 

「「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」」

 

 

ギャーギャー味方同士で揉めているヨーコ達に溜息をつきながら、黒ニアモードのニアが、逃げようとするシモンを無理やり引きずりながら呟いた。

 

「ちょっ、黒ニア!?」

「彼女はシモンを傷つけようとしました。ですから私がここで終わらせます」

「俺は無理だよォォ!?」

 

黒ニアはシモンの懇願を無視して冷たい瞳で相手を射抜く。

その殺気にアディーネも少々顔が引きつった。

 

「箱入りお嬢様が言ってくれるじゃねえか! だが、私を倒そうなんて自惚れもいいところなんだよ!」

「ま、待つのじゃアディーネ!」

「理事長には連れて帰って来いって言われただけで、無傷でとは言われてない。だったら多少手荒なまねをさせてもらうよ!」

 

アディーネは黒ニアの態度にイライラし、我慢できずに武器を手に取り襲いかかってくる。

対して黒ニアは冷静にシモンの手を握り、シモンを起こす。

 

「さあ、シモン、合体です」

「うわあああ、何でいつもこうなんだよー!?」

 

シモンの手を握り、そしてシモンの手を引いて走り出した黒ニア。

そのスピードは意外とあった。

 

「は、速い!?」

「おう、あれがシモンの力よ。シモンは誰かと触れ合っている間だけ、二人とも力が増すんだ」

「ええ、手をつなぐだけで!?」

「俺たちはあれを、『合体』と呼んでいる」

 

一瞬喧嘩を忘れてネギも素直に驚いた。

手をつないで走る二人のスピード、不良に負けぬパワー。

 

「ちっ、チョコマカと・・・」

「シモン、頭を下げて」

「ひ、ひい!?」

 

シモンを殴ろうと拳を振り抜いたが、シモンが頭を下げ、その後ろからニアがハイキックを叩きこむ。

たった一撃でアディーネの体が揺らいだ。

 

「すごい。コンビネーションも、それに黒ニアさんの運動神経もすごい! まるでアスナさんみたいだ!」

「まあね。あの子は幼いころから色々な武道やスポーツの英才教育を受けてたし、そう簡単には負けないわよ」

 

魔法や気を使っているわけでもなく、素の力だけでも相当のものだった。

おまけにシモンと手をつないでいることがまったく枷になっておらず、シモンに指示を出して、時には守りながら黒ニアはアディーネを圧倒する。

 

「・・・どういうことだ・・・」

 

そのときカミナが呟いた。

 

「ああ・・・凄すぎるぜ」

「信じられん」

「一体どうやればあんなことが出来るんだ?」

 

カミナに続いてキタンやチミルフ達も驚いている。

いくら友人とはいえ、すごいことはすごいのだろう。ネギも素直に同意した。

そうだ、ニアの細腕や小さな体から繰り出す力は、目を見張るものがある。

この学園には、まだまだ強い人がたくさん居るのだなとネギが少し関心していると・・・

 

 

「「「「「「なんで・・・なんであんなに飛び跳ねてるのに、黒ニアちゃんのパンツが見えないんだ?」」」」」」

 

「すごいって、そっちですか!?」

「何故じゃ・・・ニア様の下穿きが見えん」

「おなたもですかッ!?」

 

 

台無しだった。

男たちはひらひらとしている、少々短い黒ニアの制服のスカートに目を充血させて集中していたのだった。

 

「っていうか皆さんさっきからそれに集中してたんですか? 少しそこから離れましょう! 大体女性に対して失礼ですよ!」

「うるせえ! 男の浪漫が分からねえガキは黙ってろ!」

 

ネギは普段麻帆良女子中にて、パンチラは日常茶飯事。

お風呂に一緒に入ったり一緒に寝たり、日々女性に囲まれてモミクチャにされている。

それがネギにとっては日常と化し、カミナ達の浪漫が少しわからなかった。

 

「あっ、でもシモンは顔真っ赤にして目を逸らしてるわよ?」

「なにッ!? じゃあ、シモンにだけは黒ニアちゃんのパンツが見えてるのか!?」

「ばかな・・・どうしてだ?」

「いえ、皆さん。そんなことを真剣になられても・・・」

 

すると、男たちの心を揺さぶる世紀の大疑問に対し、黒ニアは静かに答えた。

 

「ならば教えましょう。これが私の必殺技・・・・・・確率変動パンチラです」

「「「「「「か、確率変動パンチラ!?」」」」」」

 

銀河にビッグバンが起こったような衝撃が男たちに駆け巡った。

 

 

「本来はものすごく見えてしまう状況だったとしても、下着が見える確率を無効化します。ただし・・・シモンだけは特別です。これによりシモン以外に私の下着は見えません」

 

「「「「「「「な、なんだってええええええええ!?」」」」」」」

 

何だかよくわからんが凄い能力らしい。

 

「じゃあ、俺たちは何があっても見れないのか!?」

「その通りです。あなた方が私の下着を見る可能性は・・・ほぼゼロに近い」

 

不良たちはショックでうな垂れ、ネギも真剣な顔でぶつぶつ言っている。

 

「凄い。確率なんてもはや神の領域。それを操るっていうんですか? 魔法でもないのにこの力は一体・・・」

 

一見アホみたいな能力のようで、どうやらネギは奇跡の能力を目の当たりにしたようだ。

人知を超えた力を可能にする魔法を上回るかも知れぬ能力に、気を取られてしまった。

 

「って、そうじゃない! 喧嘩を止めなきゃダメなんだ!?」

 

何だか話を常にそらされてばかりだ。正直何度も心が折れそうになる。

だがそれでもネギは一度へこたれても直ぐに立ち上がる。

 

「諦めちゃダメだ! だって僕は・・・先生なんだから!!」

 

ネギは走り出した。

 

「ん? ちょっ、坊や!?」

「バ、バカ野郎! 危ねえぞ!」

 

交錯しようとする黒ニアの右ハイキックとアディーネの拳。

二人は相手に夢中になっているためにネギに気づいていない。

ゆえにヨーコ達が叫ぶが、二人の蹴りと拳は止まらず、ネギはその間に割って入った。

 

「ちょちょちょ、黒ニアーーーーッ!?」

「ッ!?」

 

シモンがネギに気づき、黒ニアとアディーネもこの時ようやくネギに気づいたが、既にスピードに乗せている自身の攻撃は止まらない。

このままでは二人の強力な攻撃により、幼い子供が大怪我を負ってしまう。

黒ニアとアディーネもこの時ばかりは焦り、シモンやヨーコ達が思わず目を瞑ってそらしてしまった。

しかし・・・・

 

「喧嘩はダメって言ってるでしょーーー!!」

 

何とネギは無事だった。

 

「なっ!?」

「えっ!?」

「なんだとッ!?」

「ウソッ!?」

 

それどころか二人の蹴りと拳の間に体を滑り込ませ、黒ニアのキックを繰り出した足首を右手で、アディーネの渾身の右ストレートを左手で。つまり二人の攻撃を片手ずつで掴み取ってしまったのだ。

 

「あのガキ・・・」

「スゴイわ・・・どうやって?」

 

この瞬間、これまで眼中に無かった小うるさい子供を、ダイグレン学園とテッペリン学院の不良たちは初めて関心を向けた。

 

(速い・・・しかも私の蹴りの軌道を完璧に見切った)

(お、おまけに掴まれている腕がビクともしないじゃないか・・・このガキ・・・)

 

黒ニアとアディーネの表情も変わった。

 

「授業中に・・・しかも駅前でこのような乱闘騒ぎは見過ごせません。ですが、皆さんにも引くに引けない何かがあることは僕も分かりました」

 

子供の細腕でありながら、押しても引いてもビクともしない腕力に冷や汗をかく。

 

「そこでどうでしょう、皆さん。僕に提案があります」

「・・・・提案?」

 

この時、不良たちの中で少年が大きく見えた。

その甘く幼い表情の下に、どこか底の知れない何かを垣間見た気がした。

 

「おもしれえじゃねえかよ。提案ってのは何だよ、ボウズ」

「喧嘩は絶対にダメです。ただしどうしても決着をつけたいというのであれば・・・」

「あれば?」

 

ゴゴゴゴゴと、妙な威圧感を感じた。カミナたちも自分の手に汗をかいていることに気づいた。

このガキは只者じゃないと、誰もが認識した瞬間・・・

 

 

「学生らしくスポーツで勝負しましょう!」

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

 

やっぱりただの子供なのかもしれないと、考えを改めそうになった。

 

「スポーツだと~?」

「けっ、くだらねえ」

「小学校の体育以来やったことねえぞ?」

「いいじゃない、平和的で。私はその子に賛成よ」

「しっかし、スポーツね~」

 

あまり気が乗らないどころか、先ほどまでの喧嘩で剥き出しになっていた闘争心が少し萎えた。

全員どうしようか互いの顔を見合って、何とも面倒くさそうに頭をかいていた。

 

「大体スポーツって何の競技だ? ルールは? 総合か? 立ち技か?」

 

どうやら不良たちは双方とも、スポーツといっても格闘技だと思っているようだ。

だが、ネギは考える。

スポーツで決着をつけるといったら、何が正しいのか。

正直自分はあまりスポーツに詳しくない。

 

(格闘技はダメだ。もっとチームワークを育み、さわやかな汗を流す競技・・・争いやいがみ合いも無くなる・・・そんな競技といえば・・・)

 

そしてネギは顔を上げる。

 

(アレしかない!)

 

考えが決まった。メガネの奥の瞳がキラリと光った。

一体何を言うつもりだ?

不良たちが少し緊張しながら、ネギの言葉を待つ。

そしてネギが決めたそのスポーツとは・・・・

 

 

「ドッジボールです!!!!」

 

 

こうして麻帆良学園中央駅前で、炎の闘球勝負が始まるのだった。

 

 

「「「「「「「「「「ド・・・・・・・・・ドッジボールだとおお!?」」」」」」」」」」

 


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