【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第53話 因縁上等!

「シモンは大丈夫です!」

 

祭りで賑わう学園広場。

過去から帰ったダイグレン学園は、世界樹広場を陣とっていた。

 

「ニア・・・そうね・・・あいつは大丈夫よね!」

 

 

過去から帰った一同。しかし、シモンの姿だけなかった。

事故か、機械の故障か? 理由は分からない。ただ、シモンの安否を気に掛ける仲間たちの中で、一番最初にそう叫んだのはニアだった。

その言葉に、皆が頷く。

そうだ、シモンなら大丈夫だ。

 

「私は、シモンが帰ってきて、お帰りなさいを言うために、ゴハンを作って待っています」

 

どこまでもシモンを信じるニア。そして仲間たち。

その想いはきっと、声の届かぬ時限の違う空の下に居るシモンにも、届くであろう。

 

 

 

 

 

「この私に、これまで戦いを挑んだものは数知れず。しかし、あれほどの力の差がありながら、再び挑んで来るものは初めてだ」

 

完全なる上から目線で見下す姿勢を崩さないデュナミス。

 

「偉そうに言うなよ。お前、俺に負けてるじゃないか」

「ふん。お前にではない。まあ、これ以上は言い訳に聞こえるかもしれんが・・・あんなものは不意打ちに過ぎない」

「なに?」

「私が取り乱して驚いている間にやられた。こうして冷静に正面から対峙していれば貴様なんぞ・・・」

「なめんじゃねえよ!」

 

シモンのドリルの突進。デュナミスは影からの触手を幾重にも伸ばして迎え撃つ。

本来ならこれで蜂の巣だろう。だが、シモンのドリルはいともたやすく触手の群れを削りながら進んでいく。

 

「むっ」

「くらえッ!!」

 

先ほど不覚に食らったドリルの一撃。その時のことがデュナミスの脳裏によみがえった。

まともに食らうのはまずいと本能的に感じ取った。

案の定、デュナミスが交わしたシモンのドリルは、轟音響かせて強固な宮殿の壁に大きな亀裂を入れた。

それだけで威力がすぐに分かる。

 

「こいつ・・・いつの間にこれほど腕を上げた・・・」

 

完全なる世界の幹部、デュナミスはシモンを図りそこなっていた。

殺す殺すと息巻いていたが、予想よりシモンが遥かに上を行く腕と動きを見せたことが、デュナミスに冷静さを与えていた。

 

「グレンブーメラン!」

 

距離の離れた相手に、ブースターを搭載したグレンウイングを投げつける。

ジェットエンジンで加速したグレンウイングは、デュナミスの影の触手を次々と切断していき、どこまでもデュナミスを追いかける。

 

「ちっ・・・・ふんぬァ!!」

 

魔力の塊を全身に纏って、デュナミスも早々と本領発揮の姿を見せる。

以前シモンたちの前で見せた、巨漢のパワー型のバトルモードだ。

力づくでグレンウイングのブーメランを弾き返した。

 

「なるほど。少々気を引きしめてやらんと、こちらが危なそうだな」

 

指の関節を鳴らしながら、戦場の殺意を放つデュナミス。

だがシモンも、以前のようにデュナミスのプレッシャーに震えていたころとはわけが違う。

 

「俺は最初っからマジメだぞ」

「ふん、教えてやろう。マジメと真剣の差をな・・・」

「なに!?」

「見せてやろう! 光あるところには影がある! これぞ私の本領発揮だ!!」

 

デュナミスの足元の影から這い出す影の化け物たち。

 

「ドッペルゲンガーたちよ!」

 

だが、今さらこの程度のコケおどしはシモンには通用しない。

 

「そんなもんは見飽きた!」

「ふん、それは勇ましいな」

 

シモンは次々と影の化け物たちをなぎ倒す。数はそれなりに多いが、一体一体はそれほど強くは無い。

今さらこんなもので何になるというのだ?

しかし、デュナミスは不敵に笑った。

 

「技を知っているのと、技の応用を見切るのは・・・意味が違うことだぞ!」

「なにっ!?」

 

デュナミスが指を鳴らす。その瞬間、影戦士たちが破裂して無数の蝙蝠となった。

 

「これはッ!?」

「影を自在に操れる! すなわち、形も自在に操れるということだ! 的の小さい蝙蝠を、そんなドリルで全ては落とせまい!!」

 

四方八方から無数の蝙蝠が襲い掛かる。

視界を完全に覆う数は、ドリル一本では退けられない。

だが・・・

 

「道はどこだろうと創って、掘り抜けるさ!」

 

シモンは床にドリルを刺して、地中へ回避した。地上がダメなら地中。シモンならではの発想だ。

しかし、デュナミスはそれを待っていたとばかりに飛んだ。

 

「バカめ。もはや貴様のやろうとすることなど、すべてお見通しだ!!」

 

デュナミスは右拳を高らかと掲げながら、フロアの中心に向かって狙いを定める。

 

「まずい! 床を崩落させてシモン君を生き埋めにする気か!? シモン君!」

「おそい!」

 

デュナミスの強靭な拳が振り下ろされ、彼らが戦っていたフロアの床が崩落する。

 

「虚空影爪・貫手!!」

 

その破壊力は、現時点のシモンのドリルよりもはるかに上。

床下へ逃げたはずのシモンを床ごと生き埋めにしようという大胆な技だった。

崩落で生き埋めの恐れが出てきたシモンに、アルの緊張が走る。

 

「シモン君!」

 

だが、下の階に落ちた瓦礫の中から、ボロボロになりながらも瓦礫をかき分け、ドリルを翳して現れたシモンに、今度は安堵の息を漏らした。

 

「くっそ~、あいつ・・・何てメチャクチャな事を・・・」

 

瓦礫が頭に当たったのか、少し体がふらつく。だが、シモンは意識をはっきりとさせて、辺りを見る。

すると・・・

 

「なっ!?」

 

シモンの足元に黒い影が絡み付いて、身動きが取れなくなった。

 

「瓦礫の中や地中は影の宝庫。これしきでお前がくたばるとは思ってはいない」

「体が!?」

「常に先手先手に手を打っておく! これがプロフェショナルの戦い方だ!!」

 

体の身動きが一切取れずに、回避不能。

 

「さあ、逃げ場はもうない! 死ぬがよい!」

 

デュナミスが両腕を同時に振り下ろす。まともに食らえば、シモンの原型は留めないであろう。

しかし、シモンは誓った。俺は逃げないのだと。

最初から逃げるつもりはないのだから、別に構うものかと開き直る。

 

「じゃあ、お前も覚えておけ!」

「ぬっ!?」

「とにかく立ちふさがる壁を片っ端からぶっ壊す! それがダイグレン学園のケンカの仕方だ!!」

 

シモンの掲げたドリルが、シモンの意思に呼応して巨大化した。

 

「なっ!?」

 

今なら何でもできる。まるで覚醒したかのようにシモンの内から、螺旋の力があふれ出した。

 

「ギガドリル・アッパーカウンター!!」

「ぐぼはあああああ!?」

 

デュナミスが胃液を大量に吐き出した。貫通するまでには至らなかったが、巨大なドリルをカウンター気味に腹部に叩き込まれたのだ。

考えただけでもゾッとする。

 

「ぐぬ・・・きさまァ」

 

デュナミスが怯んだことにより、シモンを封じていた影の戒めが解けた。自由になったシモンは、追撃にかかる。

 

「デュナミス、トドメだ!」

 

だが、デュナミスも一筋縄ではいかない。

 

「させぬ! 影玉!!」

 

影の球体が、まるで弾丸のようにまっすぐシモンに襲い掛かる。

そして、そのうちの一つがシモンの手首を打ち抜いて、シモンの手からドリルが弾け飛んだ。

 

「ちっ、ドリルが!?」

「ふっ、これで貴様はただの小僧だ!」

 

デュナミスも、シモンの力の源がドリルだと見抜いていた。だからこそ、ドリルを失ったシモンなど恐れるに足らずと不用意に飛び込んだ。

だが・・・

 

「その手はくわねええ!」

「しまっ!? ぐはっ・・・貴様にはそれがまだ・・・」

 

デュナミスの拳と交差して、デュナミスの顔面に深々と突き刺さるシモンの拳。

デュナミスも何度もくらっていたのに、すっかり忘れていたシモンのクロスカウンターだった。

 

(ま、まずい・・・奴の二撃に、アルビレオとの戦いの傷が・・・)

 

デュナミスは思わず一瞬膝をつきそうになった。実はシモンとの戦いの前に受けた、アルからの傷が彼を蝕んでいたのだ。

だが、言い訳はしない。一度受けた戦闘に、そのような言い訳を持ち込むのは情けないからだ。

しかし、それで負けるのはもっとみっともない。

そう思ったとき・・・

 

(負ける・・・この私が?)

 

デュナミスの中で、何かが吹っ切れた。

 

(こんな小僧が死すら恐れず私に刃向うというのに・・・世界の未来を背負う私が・・・・私が!)

 

その瞬間、デュナミスもまた己の限界を超えた。

 

「この私を誰だと思っている!!」

 

薙ぎ払うような一撃が、シモンを吹き飛ばした。

 

「ぐああああああああ、首が・・・へし折れそうだ!?」

「調子に乗るな小僧! 我こそは完全なる世界の大幹部、デュナミスだ!! 貴様のような地べたを這いずる小市民とはランクが違うのだ!」

 

それは、一瞬目の錯覚かとアルも勘違いした。手負いを負ったはずのデュナミスのボディが、先ほどまでより巨大化しているように感じた。

 

(バカな! あの男、もう限界だったはず。それにシモン君の力も不可解だ。一体・・・どういうことなのです!?)

 

二人の戦闘レベルは、紅き翼の英雄アルビレオ・イマからすれば、大げさなレベルではなかった。

だが、戦いの内容はわけが分からなかった。

 

「さあ、そんなに地中が好きなら星の核に届くほど奥深くに、貴様を叩き落としてやろうか!」

「それがどうした! 丸い星なら地中を掘り続けば、いつか必ず反対側の地上に飛び出す! 俺を閉じ込められる地中なんかあるもんか! 地中も空も天の向こうも、俺は必ず掘り抜ける! だからお前も必ず掘り抜ける!」

 

デュナミスの魔素を大量に注ぎ込んだ拳とシモンの螺旋力を大量に注ぎ込んだコークスクリューパンチ。

腕力ではデュナミスに分があっても、技の貫通力ではシモンが勝る。

五分の打ち合いは、互いを後方へ弾き飛ばし、弾き飛ばされた二人はすぐに立ち上がって目の前の敵に殴り掛かる。

 

(シモン君・・・君は・・・・・これが、君の力だというのですね・・・)

 

最初はシモンが気になってしかたなかったアルだが、気づけばゾクゾクとしていた。このような戦場で不謹慎かもしれないが、自分が男であることを思い出させてくれるような、手に汗握る攻防だった。

その現象の正体を、ミックアップと呼ぶことをアルが知るのは、もう少し先の未来の話だった。

 

「ぬおおおおお!」

「でりゃああああ!」

 

だが、戦闘技術と経験はデュナミスが圧倒的に上。

彼は拳のノーガードの打ち合いをシモンに匂わせておいて、急にフェイントを入れて身を思いっきりかがめて、シモンの拳を避けた。

 

「なっ!?」

「はっはっはっはっはっ!! 好機!! ほらほらほらほらほら!」

 

そしてデュナミスは陸上のクラウチングスタートのようなスタートダッシュと、ラグビーのような低空タックルでシモンの胴体に突き刺さり、壁に激突させ、そのまま壁もぶち破ってとなりの部屋までと、どこまでも突き進んだ。

シモンの腹部は内臓が破裂したと確信できるほどの痛み。

そして背中と後頭部は、何度も建物の壁にぶつかり続けて、感覚がマヒしていた。

頃合を見計らってデュナミスはシモンを頭上に思いっきり掲げ、そのまま力いっぱい下へ向けて投げつけた。

 

「さあ、死ぬがよい!!」

「うあああああああああああああああ!!??」

 

床を突き破って下へ下へと落とされるシモン。

やがて、とある下層に全身を強く打ちつけて、彼はのた打ち回った。

 

「あ・・・ァ゛・・・くそ・・・やっぱ・・・強いな・・・・」

 

どこをどう怪我したか分からない。右も左も頭も足も、前も後ろも全てが自分の物ではないような感覚だった。

デュナミスは性格的には好きになれない相手だが、紛れもなく最強クラスの力にシモンは溜息つく。

だが・・・

 

「でも・・・」

 

それでもおちおち寝てはいられない。

自分を支えるほどの力も感じられない体に鞭を打ち、シモンはあがきにあがいて立ち上がろうとする。

だがその時・・・

 

「・・・あれ?」

 

シモンが叩き落とされた部屋の光景に、シモンの思考は止まってしまった。

 

「なんだよ・・・この部屋・・・」

 

部屋全体を見渡すと、人一人が入るような棺のような箱がいくつか転がっていた。

まるで何かを封印しているかのように、棺の扉は固く締められていた。

だが、一つだけ棺の蓋が空いていた。

中身は空っぽだが、棺の蓋は英語のような何かが書かれていた。

 

「あれ・・・何て読むんだ?」

 

学力がそれほどでもないシモンに読める文字ではなかった。

すると、フロアにドシンと大きな音を立てて着地したデュナミスが、代わりに答えた。

 

「プリームム。意味はラテン語で、『一番目』と読む」

「ッ!?」

「貴様も見たことあるであろう? 我らが初めて戦ったときに現れた、白髪の者のことだ」

 

シモンは一瞬で意識が覚醒した。

 

(プリームム!? あの、フェイトに似ていた奴のことだ!)

 

思い出した。あのときは、自分も死にかけ、テオドラも攫われたことで忘れていたが、どうして忘れていたのかと思えるようなことを、シモンは今思い出した。

 

「な、なんなんだよ・・・なんであの人の名前が書かれた箱が、こんなところに?」

 

シモンは何が何だかわからなかった。ただ、嫌な予感がバクバクと押し寄せていた。

すると、恐る恐る尋ねるシモンの言葉に、デュナミスは笑った。

 

「くくく・・・あの・・・人・・・か。まあ、アレを人と勘違いするのも分からなくはないがな」

「・・・・・・えっ?」

 

人と勘違い? その意味がよく分からなかった。

 

「な、なんだよ・・・どっからどう見ても、人だったじゃないか。それとも本当は、魔物とか魔人とかいうのか?」

「・・・・ぷっ」

 

シモンの無知ぶりが面白かったのか、デュナミスは大笑いした。

 

「くくくくく、はははははははははは! あのアーウェルンクスシリーズを人というか。無知とは恐ろしいということだな」

「なっ、なにがおか・・・・・・・・・えっ?」

「ん? どうした? 何か気になるところでもあるのか?」

 

シモンはワナワナと震えた。もしやという疑念が、どんどん確信に近くなっていた。

 

「ア・・・アーウェ・・・ルンクスシリーズ・・・だって?」

 

アーウェルンクスという名を知らないなどと言うことはできない。何故ならその名こそ、シモンのかけがえのない親友と同じ名前だったからだ。

 

「ん? そうだ。アーウェルンクスシリーズ。この私とは違う作りだが・・・共に大義のために主に造られた・・・・」

「つ、・・・造られた・・・」

「人形なのだよ」

「ッ!?」

 

それはこれまでの疑問の全てを解消することができる、恐ろしい真実だった。

 

「人形・・・お前も・・・アーウェルンクスっていうのも・・・」

「そうだ。現在活動しているのはアーウェルンクスシリーズの初号機といったところ。名はプリームム。他のシリーズは、主の許可なく動くことは無い」

「ッ・・・に、人形・・・」

 

シモンは恐る恐る部屋の中を見渡す。プリームムの空の箱を除いて、この場にあるのは6つ。

 

「ッ・・・その・・・アーウェルンクスシリーズって・・・・」

「なんだ? やけに興味を持っているようだな」

「・・・顔とか・・・同じなのか?」

 

違ってくれ。お願いだから違ってくれ。そう願うシモンも心を、デュナミスはアッサリと裏切った。

 

「まあ、基本的には同じだ。違うとすれば扱う魔法の属性ぐらいか? 地の魔法に長けたり炎や風に長けるなど、それはシリーズによって違うが、外見上はほぼ同じと言ってもいい」

「ッ!?」

 

シモンは衝撃で思わず、よろめいてしまった。

 

(それじゃあフェイト・・・お前は・・・)

 

そして、ようやく分かった。

何故フェイトが自分たちに壁を作っていたのか。

初めて会った時の、氷のような眼。

自分たちとは違うと、頑なに言い続けた事。

シモンやカミナが、フェイトの事情などお構いなしに受け入れると言った時。自分たちは友だと言った時。

 

「フェイ・・・・ト・・・・お前は」

 

何故、フェイトがあれほど複雑で、悲しそうな顔をしたのかが、ようやくシモンには分かったのだった。

 


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