【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第56話 持って帰ってきてしまった

「マスター、お下がりください」

「ほう、製作者の私を差し置いてその小僧を優先するか。螺旋のエネルギーとは凄まじいものだな。だが、やめておけ。戦いに来たわけではないのだからな」

 

シモンを守るために警戒態勢を整えるセクストゥム。そんな彼女の挙動に造物主は皮肉を込めて笑う。

 

「あの一撃で生き残ったお前を今さらどうこうする気はない。今日はただ、語らいに来ただけだ」

 

そしてシモンは、初めて見る造物主という者の存在を図れずにいた。

 

(こいつが造物主とかいう・・・・・・)

 

確かに威圧感を感じる。だが、それだけの者なら腐るほど会ってきた。

怖いのは、存在感でも威圧感でもない。

 

(こいつ・・・よく分からない・・・)

 

アンスパには、諦観や信念など、己の感情がこもっていた。

だからこそシモンもそれに負けられないと、熱くなれた。

相手の強さではなく、想いが熱いかどうかがシモンにとっては戦いの中で重要なファクターとなる。

だが、造物主に関してはよく分からない。

 

「セクストゥムに非は無い。アーウェルンクスにお前の常識を当てはめても仕方ない。そもそも、それこそがテルティウムと同じ、お前が友達になれると言ったアーウェルンクスシリーズだ」

「・・・ッ」

「言っておくが、セクストゥムはこれでまだマシな方だ。中には平気で弱者をいたぶる者も居る」

 

何も感じずにデュナミスを殺傷しようとしたセクストゥムはマシな方。まるでシモンを試すかのように造物主はシモンに聞く。

 

「お前は、それでもアーウェルンクスシリーズと友になるか? テルティウム・・・いや、お前にはフェイト・アーウェルンクスと言った方が良いか?」

 

最初からシモンたちを否定し、その存在を消そうとしたアンスパと違い、造物主はシモンをまるで観察しているかのように見える。

 

「テルティウム・・・フェイトのことか・・・」

「そうだ。そして私は言ってみれば、貴様の友の生みの親ということになるな」

 

造物主は一体シモンに何を言わせたいのか? 

 

「デュナミスは気にするな。意識を失い損傷も激しいが、完全に壊れているわけではない。この程度ならすぐに修復可能だ。頭の中身は分からんがな。それにしても・・・・ふふ」

「な、なんだよ」

「いや、テルティウム、堀田、そしてデュナミスといい、どうもお前と絡んだ者たちは人外問わずに人間臭くなるなと思っただけだ。まさかデュナミスまでもがここまで俗物的で欲望丸出しの存在になるとは思わなんだ」

「別に・・・俺一人でそんなにみんなが変わるわけじゃない。アニキたちが居ての話だ」

「ほう・・・それは興味深い話だな。まあ、今は良い。今日は少し、お前に聞きたいことがあったのでワザワザ姿を現したのだ」

「俺に、聞きたいこと?」

 

男? 女? それすらも分からぬ全てが謎に包まれたこの者は、何を聞きたいのか?

それは・・・

 

「お前から見たテルティウム・・・いや、フェイトとはどういう者であり、どういう存在だ?」

「えっ?」

 

造物主が聞きたいのは、シモンのことではない。

 

「私が知りたいのは、テルティウムの口からではなく、フェイト・アーウェルンクスと共に過ごしたお前たちの口から聞いてみたい」

「フェイトの・・・こと?」

 

造物主が知りたいのはフェイトのことであった。

 

「自分が造りだしたものから学ぶこともある。あの堀田博士が、己の息子が現れただけで数か月前この世界から手を引いた」

「父さん・・・・」

「あの堀田博士の心を変えたお前。そのお前と共に居たフェイトがどういう者であったのかを、お前の口から私に教えろ」

 

造物主のあくまで命令口調の物言い。

だが、それでもシモンは言うとおりに考えてしまう。自分とってフェイトがどういう存在であったのかを。

 

(フェイトは・・・・)

 

最初に出会った時のフェイトは、とても冷たい奴ではあった。だが・・・

 

「簡単には説明できないよ・・・・・・・でも・・・あいつは、この子とは違う。命令とかそういうのじゃなく、あいつは自分の意思で動いている」

「ほう」

「それに・・・・」

 

今は・・・

 

「あいつが居なくなると・・・俺たちは嫌だ」

 

単純明快な回答だった。だが、変な理屈をこねられるよりも、よっぽど分かりやすかっただろう。

 

「くっ・・・ぷっ・・・くく・・・・」

 

顔の見えないフードの下で、造物主は必死に笑いを堪えているように見えた。

 

「そうか・・・ふっ、居なくなると嫌か。どうやらお前もその周りも、奴を本当に友だと思っているのだな」

「なんだよ・・・バカにしているのか?」

「いや、お前たちが本当に奴を友だと思っているからこそ・・・奴もまた辛いのであろうと、思っただけだ」

「?」

「あの時に会ったテルティウムの決意は・・・儚く・・・重く・・・心が満ちていたからな」

 

この瞬間だけ違った。この瞬間だけ、謎に包まれた造物主の言葉の端々に、どこか親愛を感じさせた。

 

「私も・・・友と呼べるかは知らんが、堀田キシムとはそれなりに交友があり、本音を正面からぶつけ合った」

「お、お前が父さんと!?」

「結局私たちの意思が交わることは無かったが、堀田はお前に賭けた。それが正しかったのか正しくなかったのか、お前はそれを証明しなくてはならぬ。それを肝に銘じて生きていくがよい」

 

造物主は背を向けた。デュナミスの首根っこを掴んで引きずりながらこの場から離れていく。

 

「ちょっ、どこ行くんだよ!?」

 

造物主の後ろ姿は、どこか未来へ向けて希望を持ち、自分たちの前から姿を消したアンスパとダブって見えた。

 

「堀田が面白い物を見つけたように、私も私で見つけた。今日ここに来た、赤毛の魔法使いこそが正にそれだ」

「赤毛・・・・・・ナギたちか!」

「お前たちの話を統合する限り、この時代で世界は終幕を迎えなかったのであろう。だが、結果が分かったとしても過程は知っておく必要がある。だから、私はもう行こう。負けると分かっていてもな。そしてお前は今度こそ、自分の時代に帰るがよい」

 

決して振り返らず、造物主は片手を上げる。

その瞬間、シモンの胸元が輝きだした。

 

「あ、ちゃ、超のタイムマシーンが」

 

超の懐中時計が輝きだした。どんどんどんどん見えない力が注がれていくのが、魔法使いでないシモンにもハッキリと分かった。

 

 

「最後に小僧。私はお前に世界も未来も託せぬが・・・アーウェルンクスはお前に託そう。赤毛の魔法使いが世界と未来を救うかもしれぬ者なら、お前は何かを変えるかもしれぬ者。いずれ会う日を楽しみにしている」

 

「何を勝手に!?」

 

「そしてアーウェルンクスの親としてのアドバイスだ。奴は必ずお前たちの前から消えようとする。しっかりと捕まえておくのだな」

 

「ま、待て!?」

 

「我が子を任せた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ついでに、もう私の言うことを聞くことは無いのでこいつも持って行け」

 

 

空間が歪み始めた。あたりの景色がぐにゃぐにゃと揺れ、グルグルと回っていく。

 

「我不滅なり。いずれお前の時代で会う日が来るであろう。その時、お前の隣にアーウェルンクスが居なければ、堀田の賭けは負けたのだと笑ってやろう」

 

そして、次の瞬間、シモンの姿はこの時代のこの世界から、完全に消失したのだった。

 

 

「あと、今回お前にくれてやったその人形を・・・ちゃんと育てておけ。それも楽しみにしておく」

 

 

この後、意識を取り戻したアルは仲間と共に合流し、紅き翼はナギ・スプリングフィールドを筆頭に完全なる世界を壊滅させた。

多くの民たちに称賛され、王家から国民の前で彼らは英雄としての栄誉を与えられた。

しかし、その場にアルは行かなかった。

自分を救ってくれたドリルを持った英雄を差し置いて、自分が英雄と称えられるなど耐えられないと、彼は仲間にだけ語っていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時代が流れ、ようやく20年後の今に繋がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・あっ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「あっ!?」」」」」」」」」」

 

 

 

 

シモンが次に見た光景は、いつもと変わらぬ仲間たちの姿。

そしてその後ろにそびえ立つのは、懐かしき麻帆良の世界樹だった。

 

「み、みんなァ!!」

 

シモンは、一瞬で嬉しそうに満面の笑顔を見せる。皆はシモンと逸れた時と同じ格好をしている。つまり、シモンと逸れてから彼らはずっとこの場所で自分を待っていてくれたのだろう。

どれだけ待っていたかの時間は気にしない。重要なのは、こうして彼ら全員を一番初めに見れ、彼らもまた嬉しそうな顔で「よう! 遅かったな!」とシモンが必ず帰ると信じていたことを証明するような笑顔で迎えてくれた。

ようやく帰って来た。

ここが自分の居場所。

そして自分の時代だ。

 

 

「遅くなってゴメン!」

 

仲間に。そして、ようやく帰って来たこの時代に、シモンは「ただいま」を心の底から言った。

 

「「「「「「シモーーーン!」」」」」

 

 

全員が一斉に飛びついた。

シモンは絶対に帰ってくると信じていたとはいえ、それでもうれしいことには代わりない。

一番最初に飛びついたのは、やはりニア。

 

「シモン」

「ニア・・・遅くなってゴメン」

「ううん。おかえりなさい、シモン」

 

ニアはまるでそこが自分の定位置かのように、自然にシモンの胸にすっぽりと収まった。

 

「ニア!」

「シモン!」

 

この時を超えた旅路でスッカリと逞しくなったシモンの腕の中で、ニアはシモンの存在を確かめるかのように、頬を何度もこすり付けた。

 

「ったく、相変わらずボロボロじゃねえか!」

「ただの迷子にしてはトラぶったようね。でも、ちゃんと帰って来たし、ニアに免じて許してあげるわ!」

 

二人をそのままにしてあげても良いが、やはりいつまでも静かにはできない。

カミナとヨーコがシモンの頭を笑いながらひっぱたき、そこからは雪崩の如くダイグレン学園が帰って来たシモンを揉みくちゃにした。

 

(はは、やっぱこれだ、これ。学園で・・・こうやってみんなと一緒に居る・・・)

 

ようやく自分が帰って来たことを、シモンは仲間たちの輪の中で再確認したのだった。

 

 

「そう、長い旅路だったようですね」

 

「「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」」

 

「あなたの帰還を、私にも喜ばせてください」

 

「あっ・・・あーーーーーッ!!」

 

 

そして何よりも・・・

 

「シモン君、おかえりなさい」

 

その男は、真っ白いローブを羽織っていた。学園祭というお祭りの中ではそれほど珍しくはないが、それでも彼の異質さは明らかだった。

麻帆良武道大会ではやけに馴れ馴れしく、どこか怪しさも感じられる男だった。

だが、今は違う。

 

「アル!!」

 

アルビレオ・イマ。20年前と変わらぬ姿で、20年後の今、シモンの前にようやくその素顔を完全にさらした。

 

「アルさん!」

 

ニアもうれしそうにアルの名を呼ぶ。

だが、カミナたちは知らないために首を傾げている。

 

「ん? こいつって、クウネルなんとかって奴だろ?」

「そうそう、クウネル・サンダース。あんたら、知り合いなの?」

 

知っているどころではない。20年前の過去ではシモンとニアはアルと出会っていた。

だからこそ、その彼が今目の前に居ることがうれしかった。

それはアルも同じだった。彼は、笑みを浮かべながら頷いた。

 

「ようやく・・・・・・クウネルでもなく・・・・その名で・・・・アルと・・・私を呼んでくれましたね、シモン君、ニアさん」

 

そしてそれはただシモンとニアが過去から帰って来たからうれしいとか、久しぶりの再会だからうれしいとか、そういうレベルではない。

アルにとってはもっと深い事。

だからこそ、アルは急に真面目になった。

 

「この20年。色々ありました。かつての仲間は散り散りになり、時代は流れ、世界も変わりつつあります。そんな中、ようやく見つけたあなたたち。不思議なことに20年以上前と変わらぬ姿、いえ・・・少し情けなくて弱い姿のあなたたちを見つけました」

「アル?」

「覚えていますか、シモン君? 麻帆良武道大会で最初に私が声をかけた時、あなたは何と言いました?」

 

武道大会の時、ロージェノムと戦う直前に現れたアル。

 

 

――こうして目の前で見ていても信じられません・・・ですが・・・ようやく出会うことが出来ましたね、シモン君

 

――な、・・・なんなんだよいきなり・・・・お前は一体誰なんだ? 何で俺のことを知ってるんだ!

 

―― 一体誰・・・ですか・・・ふむ、私を知っている者たちが時代を経て居なくなっているとはいえ、面と向かって言われるとショックですね・・・・

 

あの時の意味を、シモンはようやく理解できた。

 

 

「君に私の気持ちがわかりますか? 二十年前に私の命まで救ってくれ、何も言わずに姿を消した友が・・・20年の時を経てようやく再会できたと思った第一声が、お前は一体誰なんだ? ・・・ですよ?」

 

「アル、それは・・・」

 

「クウネルという名にも、まったく反応を示さなかった君に、どれほど私が悲しんだか。どれほど胸が痛かったか。どれほど・・・寂しかったか」

 

「アル! 俺は・・・その!」

 

アルはシモンの口元に人差し指を当ててウインクする。

 

「でも、もういいのです」

 

「アル・・・」

 

「あの時に言えなかった言葉を・・・今こそ言いましょう」

 

 

そして、いつも謎めいていたアルが、初めて心からの笑みを見せた。

 

 

「あの時、助けてくれてありがとうございました、シモン君」

 

「アル!!」

 

 

それは時を超えた感謝の言葉。

20年もかかってしまったが、アルはようやくその言葉を言え、とても満足そうに笑った。

 

「良かった! 心配だったんだ! ちゃんとお前たちは、勝ったんだな!」

「ええ、当然ですよ。私たちを・・・誰だと思っているんですか?」

「アル!」

 

シモンも気づけばアルに飛びついていた。

ようやく全てが繋がった。

20年という気の遠くなりそうな年月を経て、新たな友情が世界樹の下で咲いたのだった。

 

「まあ、よくわかんねーが、新たなダチか? まっ、事情は知らねーが、仲良くしようぜ!」

「とにかく、これで全員集合! 後は祭りを楽しもうぜ!」

「ししし、とにかく食うぞ! あとはとにかくパーッと騒げ!」

 

まあ、よく分かんないけど、とにかくバカ騒ぎをしようぜと、ダイグレン学園の仲間たちがダイブしてきた。

 

「ちょっ、みんな~」

「ほれほれ、さっさと行くぞ!」

「シモ~ン、デートです♪ いっぱい遊びましょう?」

「ははは、20年経っても仲がよろしいようで」

「ったく、まあいいさ。アルも一緒に行こうぜ!」

 

これで全てがめでたしめでたしのハッピーエンド・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ・・・・」

 

 

 

 

というわけにはいかないのであった。

 

「どうしたんだよ、フェイト?」

 

今までずっと無言だったフェイトが、怖い顔して口を挟んだ。

その時、皆との再会ではしゃいでいたが、シモンもようやく思い出した。

フェイトの真実。そして完全なる世界のことを。

だが、シモンは既に決意している。

フェイトの過去を全て受け入れて、いつまでも友であり続けることを。

そのことを、フェイトにちゃんと伝えたかった。

そう・・・伝えようとしたのだが・・・・

 

 

「シモン・・・・・・・これは一体・・・・・どういうことだい?」

 

「「「「「「「「「「ん?」」」」」」」」」」

 

 

フェイトが指差した先にはセクストゥムが状況を飲み込めない様子で、首を傾げていた。

 

 

「ああ、そいつはセクストゥムって言う名前らしくて、何でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

セクストゥムが首を傾げていた。

 

 

 

「そいつは・・・セクストゥムって・・・言っ・・・て・・・・」

 

 

 

重要な事なので、シモンは二度見した。

するとセクストゥムが、普通にそこに居た。

 

「だから・・・そいつは・・・その・・・セクストゥム・・・・・って・・・・言って・・・・・」

 

セクストゥムは当たり前のようにいた。

 

 

 

 

「ついてきちゃったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!???」

 

 

 

 

セクストゥムがついてきてしまったのだった。

 

「うおおおお、何だこの子は!?」

「けっこ~、可愛いじゃん!?」

「つうか、フェイトに似てるな! どうしたんだよ、シモン、この子は!」

「まさかフェイトの親戚か? それともまさか妹か!」

 

フェイトと同じ顔で容姿の良いセクストゥムに興味津々で群がるダイグレン学園。

 

「シィ~~~モォ~~~ン~~~」

 

シモンは初めて見た。あのフェイトが、まるで般若を思わせるかのような形相を浮かべてシモンの胸ぐらを掴んだ。

 

「君は何さり気なくとんでもないものを連れてきているんだい!? っていうか、僕たちと逸れたこのちょっとの間に君は一体何をした!? これはちょっと洒落にならないよ!?」

「ごごごごご、ゴメン!? 俺も全然その気は無かったんだけど! この子が急に・・・」

「なんてことをしてしまったんだ君はァァァァァ!! っていうか、6番の消失の原因はこれだったのかァ!?」

 

マジ切れしてシモンの胸ぐら掴んでぶんぶん揺らすフェイト。すると・・・

 

「マスターに危害を加えるものは許さない」

「ッ・・・・君は!?」

「私のマスターには、指一本触れさせない」

 

今まで状況把握で思考を使い、無言だった彼女が初めて動いた。

それはシモンを守るため。

だが、この時に彼女が発した「マスター」という言葉は、シモンを守るどころか死刑宣告に等しいことだというのは知らなかったらしい。

 

 

「「「「「「「「「「マスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!??」」」」」」」」」」

 

「あっ・・・・・・・終わった・・・・・・・」

 

 

終わり共に、怒号が響く。

 

「シ、シモン!? 君は一体僕の居ないところで何をした!?」

「おらああああ、男じゃねえか、シモン!」

「見損なったわ、この浮気男ッ!」

「てめえ、ニアちゃんが居ながらなんつーことを!?」

「歯をくいしばんなさあああああああい!!」

「コラァ、テメエ、分かってんだろうなァ!!」

「ちゃんと説明しろやコラァ!」

 

デュナミス、アンスパ、そして造物主。あらゆる存在と対峙したシモンだが、今こそもっとも死を実感した瞬間だった。

 

 

「いや~、良かった。テルティウム・・・フェイト君がいるのに、セクストゥムさんが今までいなかったのが、とても心配だったんですから。後は綾波フェイさんだけですけど・・・まあ、それに関してはまた後で・・・今度詠春を呼び出すので、じっくりと」

 

「ア・・・アル・・・・」

 

「こういう歴史の流れだったのですね。ようやく合点がいきました。シモン君にはニアさんが居ますけど、彼女が隣に居ないのであればそれはそれで不憫」

 

 

嫌な予感がした。

シモンの直観がそう教えてた。

アルがニヤニヤと、まるでこの瞬間を待っていたとばかりにニコ~ッと笑っているのが、いかにも怪しかった。

 

「なぜならシモン君はあの時、意識のない彼女に対して、猛った逞しく太いドリルを彼女にブスッと挿入しまして、ドリルの先からとてもとても濃いエネルギーを大量にドバドバと彼女の中に出しまして、そこでようやく目を覚ました彼女は、も~シモン君にメロメロで、シモン君に身も心もすべて捧げて忠誠を誓ったのですから」

 

終わりが更にやばいことになった。

 

 

「アル―――、その言い回しはあんまりじゃないか!? っていうか、やっぱり俺がお前を知らなかったことを怒ってるんだな!?」

 

「おやおや、だって事実でしょう? 私はちゃ~んと見て覚えてますよ? 敵の幹部が涙を流しながら、シモン君への恨みを叫んでいたことも」

 

「なんかちが~~~~~~う!!」

 

「「「「「「「「「「ぬああんんだそりゃあああああああああああああああああああああ!!??」」」」」」」」」」

 

 

それが真実であっても真実でなくても、「じゃあこの女は何なんだよ?」その質問にシモンもうまく答えられるはずもない。

 

 

「まあまあみなさん。落ち着いてください」

 

「「「「「「「「「「ぬおっ!?」」」」」」」」」」

 

 

とっても可憐な笑顔を浮かべたニアが、冷静に皆を宥めた。

 

「ニア!」

「シモンはそんなにひどいことをする人ではありません」

「ニア・・・・」

「私はちゃ~んと知っているんですから」

 

何と、もっとも騒ぎそうなニアが皆を宥めた。

 

「そうですよね? シモン」

 

とても優しく笑いながら。

なのに・・・

 

「ニア・・・・」

「・・・ちゃん・・・・」

「目が・・・・」

「・・・・・・・・・・ちっとも笑ってねえ・・・・・」

「逆に怖いわ・・・・」

 

笑顔なのに、怒鳴るダイグレン学園よりも遥かに怖かった。

 

「いいえ、ニアの言うとおり、私も信じています」

「黒ニア!?」

「でも、アルの言っていることの真偽を確かめるため、一応確認を・・・・」

 

ニアから黒ニアにチェンジし、黒というか闇を纏った黒ニアが、不気味にほほ笑む。

 

「く、黒ニア!? ドリルなんて取り出してどうしたの!?」

「シモンが中に出したとおっしゃられたので・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・で・・・で?」

「それが本当かどうか・・・・・中に誰も居ないか確認を・・・」

「それ、洒落にならないからァァ!?」

 

黒ニアが闇ニア通り越して、病みニアになった。

ああ、自分はここで死ぬかもしれない。シモンは本気で覚悟した。

 

「マスター・・・お下がりください」

「だから・・・なんでだよ~」

 

ダメ押しに、シモンに誰も手を出させないとばかりに、セクストゥムは黒ニアの前に立ち、両手を広げて通せんぼした。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・なんのつもりですか?・・・・・・・」

「私のマスターには指一本触れさせません」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「マスターから離れてもらいます」

 

学園祭はとても楽しそうで賑やかだ。

みんなハシャイで、本来なら自分たちもそこで、学園生活一生の思い出でも作ってたんだろうなと、感慨深くなるシモンであった。

 

「離れる必要はない。消えるのは君だ、セクストゥム」

 

フェイトまで争いに加わりだした。もう、勝手にやれとシモンも体育座りで項垂れた。

 

「あなたがマスターの元から消えなさい、テルティウム」

「いいや、シモンの傍から消えるのは君だ」

「私はマスターにお仕えする身。離れることなどありません」

「僕はシモンの友で部活仲間でクラスメート。ランクでいえば僕の方が上だ。だから君の方が先に消えたまえ」

「消えません」

「消えるんだ」

 

ニア、セクストゥム、フェイト。

まあ、こうなることは普通に考えればわかったはず。仲間は仲間で大激怒。

アルとカミナだけは爆笑していた。

 

(父さん・・・造物主・・・・・・・・約束果たすのは・・・結構難しいよ・・・・)

 

約束を果たすことの難しさを実感したシモンだった。

 

「テオドラ・・・綾波フェイ・・・今回の旅路でシモンとの絆が深まりましたが、どうやら余計な場所へ穴を掘り当てたようで・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「テオドラはもう会うことは無いですし、綾波フェイも誰かが望まぬ限り現れないでしょう・・・ですから、フェイトさえ警戒していればと思ったのですが・・・」

 

しかし、黒ニアの予想は意外と外れ、テオドラとも意外と数か月後ぐらいに再会することになる。

よって、シモンとニアは完全両思いでありながら、なかなか障害多い道を進むことになるのだった。

 

「私が粛清しましょう。妻は私です」

「私はマスターの人形です」

 

こうして過去の旅路から帰って来たシモン。旅と同時に、学園祭二日目が幕を閉じた。

 

 

 

「「「「「「「「「「とにかく一度裁判だ!!!!」」」」」」」」」」

 

 

 

ついでにシモンも終わった。

そして、学園最終日。ついにのけ者になっていたドリ研部のあの女が動き出す。

 

 


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