【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
第57話 仲間が増えりゃとにかくめでたい
その夜、麻帆良の世界樹が大発光した。
噂によれば22年に一度という周期で世界樹は大発光を迎えるらしい。
その原因は未だに表だって解明されてはいないが、人々にとっては何故大発光するかよりも、何て美しいのだろうという感情の方が勝っていた。
見る人たちの心に残る、一生に一度とも言える幻想的な雰囲気に見入っている生徒や祭りの参加者たちは数知れず。
だが、そんな幻想的なイベントには似つかわしくないほど、花より団子とばかりに食っては飲んで、そして騒ぐことを繰り返しする輩たちがいた。
それが・・・
「水のアーウェルンクス、セクストゥムです。以後お見知りおきを」
「「「「かっ・・・・かわいッッッッ!?」」」」
いつもなら「いえーい」と大歓声を上げて盛り上がるダイグレン学園の男たちが、驚愕の表情で固まった。
「?」
何か自分のあいさつに不備があったのかと、不思議そうに首を傾げるセクストゥム。彼女にアホ面で固まる男たちの気持ちを理解できるはずがない。
(か、かわいい・・・)
(やべえ・・・何だこの気持ちは・・・)
(美人や可愛い子たちは今まで何人も見てきたが・・・すげえ・・・)
麻帆良学園都市歴代最悪の学級と言われているこのダイグレン学園は、麻帆良の世界樹中央広場を陣とって、宴会をしていた。
「か~、いいね~、セーちゃんは!」
「こういう女を俺たちは待っていた!」
「ちょ~っと黒ニアに似てるとこもあるが、黒ニアは打算的な腹黒さがあるからな~!」
「まっ・・・シモンにしかキョーミねーって所は同じなんだがよ~」
シモンが何やかんやで過去から連れてきてしまった、『完全なる世界』のアーウェルンクスシリーズのセクストゥム。
「ああ・・・シモンにしか・・・なッ!」
「「「「「ギロッ!!」」」」」
「うっ・・・」
フェイトと同じ存在である彼女。始まりの魔法使いに造られ、世界崩壊へ導く駒として暗躍するはずだった彼女は、気づいた時にはダイグレン学園の荒くれ者たちに囲まれ、歓迎されていた。
その傍らで正座させられているシモン。
皆が一斉にシモンをギロリと睨む。
「さ~って、シモン。オメーは何やかんやでドリルをぶっこんで色々出して、セーちゃんをヤッたらしいな~?」
「ち、違うって!?」
「バーロ! ちゃんと証人が居たじゃねえか!」
「アルはワザと言ってるだけなんだってば!」
セクストゥムは男たちに両手を上げて大歓迎されている一方、シモンへの追及は夜通し行われていた。
「穴を掘るかしか能のないシモンが、そんな最低な事をしたなんてね」
「おまけにニアもいんのによ~」
「許せません」
「今回ばかりはさすがの私でも擁護できないわ」
特にニアと仲の良い黒の三姉妹とヨーコの睨みはキツイ。ジト目でシモンを軽蔑した目をしている。
「だから~~~~! セクストゥムも本当のことをちゃんと言ってくれよォ!」
そして、正座するシモンの隣で相手を射殺すかのような瞳で睨んでいるのが黒ニア。
視線に耐えきれずにセクストゥムに救いを求めるシモンだが、それは火に油。
「ほんとうの・・・? あのような経験は私も初めてでしたので、コメントのしようもありません」
「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」
「ただあの瞬間は、マスターの温かさが私の中に満たされたと思います」
「「「「「「「「「「み、満たされた!? ナカにッ!?」」」」」」」」」」
確かに正解だが正確ではない。
「セ、クストゥム! それは言い方がむぐっ「シモンは黙ってろ!」 って、俺のことなのにー!」
シモンが慌てて訂正しようとするが、うるさいと判断されてキタンたちに口を無理やり押えられる。
「畜生がァ!? やぶったのか!? 突き破ったのか!? 初めてだったのか!? 初めてだったセクちゃんの薄い壁を突き破ったのか!?」
「しかもナカだと!? 出しただと!? 何をだ!? だが、聞きたくねえ!?」
「くそが・・・シモンの野郎・・・だが・・・だが・・・」
「シモン最低・・・でも、でも・・・これだけは・・・」
「ああ・・・これだけは私たちも聞きてえ・・・」
「やけにモテるシモンだけど・・・実際のところ・・・」
もごもご言うシモンを黙らせながら、ダイグレン学園は身を乗り出して、ゴクリと息を飲み込んでセクストゥムに問う。
「「「「「「「「実際のところ・・・・・初めてがシモンでどうだった?」」」」」」」」
「みみみみみみみみみ、みんなァ!? な、なにをモゴモゴ~~!?」
ヨーコまでもが顔を赤らめながら耳を大きくしてセクストゥムの言葉を待つ。
セクストゥムは困ったように辺りをキョロキョロ見渡しながら、最終的には口を押えられているシモンを見る。
すると、シモンは目で合図する。
(お願いだから、余計なことは言わないで!)
(マスター・・・)
日は浅くとも、シモンの訴えを読み取ったセクストゥムは、ある意味優秀であった。
しかし、正しい言葉でセクストゥムが答えられるかは、別の問題である。
(マスターは・・・余計なことは言うなと。それはつまり、回答を簡潔に、そして分かりやすく・・・)
セクストゥムは一瞬で過去を回想し、目を覚ました瞬間を思い出す。自分のボディに注ぎ込まれたエネルギーと、シモンのドリル。
(あの時、マスターがどうであったか・・・この方たちの問いに対して、正しく簡潔にわかりやすい回答は・・・)
セクストゥムは目をカッと見開く。と言っても、元々無表情であまり何も変わっていないのだが、この一瞬で彼女が思いついた回答は・・・
「マスターのドリルは・・・とても大きかったです」
「「「「「「「「お、大きッッッ!!??」」」」」」」」
男たちは絶望した。
「「「「「やっぱドリルの大きさかァ!?」」」」」
女たちは、顔を赤らめながらシモンの股間をチラチラ見る。
「「「「やっぱり・・・大きいんだ・・・」」」」
デュナミスのように嫉妬に狂った男たちが、「シモンぶっ殺す!」と発言し、女たちが「シモン最低」と非難する。
だが、その罵倒の嵐をものともせずにセクストゥムは両手を広げてシモンを守る。そのセクストゥムの従順すぎる行為に、仲間たちの怒りは更に募るのであった。
「シモーーーン、テメエコラァ! 俺たちをナメやがってェ!」
「そんなんじゃないんだってばァ!」
「はい。マスターは舐めていません。私がマスターの全身を舐めました」
「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」
――ブチッ
「な、舐めッ!? まさかテメエ、高級車を!? スーパーカーのことかっ!?」
「は、跳ね馬を・・・おまっ・・・それは流石に」
正直、この場はカオスと言っても差し支えないだろう。一応そんな彼らをまとめる役も居るのだが、あまりこの状況では役に立たない。
「はいはい、エロスな話はそれまでにしてください!」
「ロシウゥゥゥゥゥ!? テメエは悔しくねえのかよォ!」
「バカなことは言わないでください。まったくあなたたちは・・・それよりどうするのです? タイムパラドックスとか色々考えていたのに、過去の時代の者を未来に連れてくるなんてアリなんですか?」
騒がしい一同の中、唯一のインテリ組でもあるロシウが冷静にセクストゥムについて尋ねる。
皆もよく分かってはいないようだが、事態が少し特殊であることは理解している。
だが、理解はしていても、それほど気にはしていなかった。
「あ~ん? 今はそんなことどーでもいいだろうがよ! 大体ロシウ、オメーはこいつをどうしろって言うんだ?」
「そーだそーだ! セクストゥムちゃんは帰る気ねーんだし、いいじゃねえかよ! 今はシモンの問題が先決だ!」
聞く耳持たない皆に、ロシウはいつものように頭を抱えた。
「まったく、無責任な・・・どうするも何も・・・過去に戻って置いてくるしか・・・」
冷静に考えればそうだろう。
ロシウのその意見にフェイトは大きくうなずいて賛同しようとする。
だが・・・
「ロシウ! よくぞ言ったね。君の言う通「「「「「「「ふざけんなあああああああああああああ」」」」」」」・・・・」
フェイトの言葉は男たちにかき消された。
「ロシウ! テメエは・・・仲間を何だと思ってやがる!」
「それは・・・」
「セーちゃんを一人になんかさせねえ! 俺たちがついてる! この場所に居たいって言う仲間を、テメエは追い出す気か!」
ちゃぶ台をひっくり返すかのようにガタンと立ち上がって、キタンたちが叫ぶ。
「いや、キタンもロシウも冷静に考えたまえ。いつからセクストゥムが君たちの仲間になった?」
「ま、まあ・・・キタンさんたちの言う通りですけど・・・そうですね・・・う~ん、僕に判断は難しいですけど・・・そこまで言うのなら・・・」
「何故折れる! ロシウ! 気をしっかり保ちたまえ。君が反対しなければ、とんでもないことになる!」
フェイトは必死にロシウの味方に回ろうとするが、なんだかんだでロシウも「仕方ないですね」と9割あきらめ気味。
「オラァ、セクストゥムちゃんを帰すのに反対な奴は手を上げろ!!」
「「「「「「反対反対はんたーーーーい!!」」」」」」
「セクストゥムちゃんはどうよ!? 元居た場所に帰りてえのか!? それともここに居てえか!?」
「・・・? 私はマスターのお傍にいます」
「畜生! シモンムカつく! だがこの子は可愛い! 許す! これで決定だァ!」
「「「「「賛成だァ!!」」」」」
フェイトの言葉は簡単にかき消され、そしてついにはこの男がまとめる。
「だーはっはっはっはっは、ま~いいじゃねえかよ、フェイ公。オメーの妹なんだろ? そんな邪険にしなくたって、いいじゃねーかよ」
「カミナ、いーじゃねえかよではない! 大体、何を勝手に妹などと!」
「まっ、結局はダチが一人増えたってことだ! まあ、よくわかんねーけどこいつがここから離れねえって言うんだったら、俺らは構わねえぜ!」
カミナが手のひらを拳で叩いて決定する。
「「「「「「おう、それでいーじゃねーか!!」」」」」」
「あっ・・・はい、不束者ですがよろしくお願いいたします」
そして、決定事項にセクストゥムはアッサリ了承。
「なぜそうなるんだァァァ!?」
フェイトの意見など通らず、それでいーじゃねーかということで、セクストゥムの残留はアッサリ決まってしまったのだった。
フェイトは愕然として両膝をついて頭を垂れた。
(な、なぜだ・・・何故この流れに僕はいつも逆らえない・・・どう考えてもおかしすぎる・・・)
何故意見が通らない? フェイトは頭が痛くなった。
そして問題がここで増えた。
(僕は・・・今回の旅が終われば・・・・皆の前からそのまま消えるつもりだった・・・)
そう、フェイトは魔法世界に居た時から、この場から立ち去ることを心の中で決めていた。
それは、世界を、そして友を守るためだ。その信念を通すために麻帆良から立ち去ることを決めていた。
(しかし、どうなる? いくらなんでもセクストゥムを置いていくわけには・・・僕だけが消えてセクストゥムを置いて今後不都合があった場合・・・セクストゥムが何か問題になった場合どのように対処すれば・・・)
セクストゥムの存在が足かせとなり、フェイトは踏ん切りがつかないでいた。
(もしセクストゥムの設定が本気でシモンをマスターと認めてしまったのなら、彼女は動かない・・・この場から力づくに連れて帰るという方法は・・・しかし・・・)
その戸惑いが、ただセクストゥムの存在が気がかりなだけなのか、はたまた未練があるからなのかは定かではないが、決心したはずのことでフェイトは戸惑い始めた。
どうすればいいのか? だが、結局答えは出ない。
最後の最後までこの学園は自分を悩ませてくれると、フェイトは呆れたように苦笑して溜息ついた。
「やれやれ、分かっているのかな? あのセクストゥムという存在がどんなものなのかを。・・・・いや、でも分かっていようと、彼らは変わらないか」
彼ららしい。結局それにつく。
(それにしても、結局・・・どんな戦いや世界を回っても、彼らは彼らのままだった・・・)
たとえ、完全なる世界という組織の者でも簡単に受け入れてしまう。それが彼らの危うさでもあり、そんなダイグレン学園にフェイトも心を許した・
(・・・セクストゥムか・・・、最初はどうなることかと思ったが・・・シモンもカミナたちも、僕の時と同じように彼女を受け入れた)
セクストゥムを見る。シモンに詰め寄る嫉妬と軽蔑の混じった視線から庇うように立っている。
(ふん、マスターに忠誠を誓う健気な人形か・・・・・・シモンもしばらくは手を焼くだろう・・・でも、この場所なら・・・彼らならきっと・・・いや、絶対に・・・セクストゥムすら変えてしまうのだろうね・・・)
セクストゥムはフェイトの目から見ても、今は何も知らずにただシモンという主の傍から離れぬ人形に過ぎない。
(カミナ・・・僕は自分のことを人形だと決めつけていた・・・だから僕たちは相容れないと断言した・・・)
だが、彼女もこの環境に居ればすぐに変わるのではないだろうか。自分がかつてそうだったようにと、フェイトは心の中で思う。
(どうやら僕の負けだったようだ・・・カミナ・・・)
そして、それが僅かに羨ましいと思ってしまった。
(彼女はこのまま何も知らず、『完全なる世界』のことも意識をしないまま、ずっとシモンたちとここに居る・・・例え僕の決着が済んでも・・・いつもの日常に彼女は居る・・・)
そこでフェイトは頭を振って苦笑した。
(やめよう。こんなことを考えるのは。ただの日常に生きるアーウェルンクスの行く末を見て見たい気もしたが、僕は僕だ。為すべきことを・・・するんだ・・・)
宴会の盛り上がりが高ぶる中、誰にも気づかれないように、誰にも見られないように、フェイトはそっとその場から離れる。
「カミナ・・・シモン・・・ニア・・・・・・みんな・・・」
フェイトが消えたのはほんの一瞬。
その一瞬だけで彼は何百メートルも離れた建物の屋上でダイグレン学園の宴会を遠目に見ながらほほ笑んだ。
「さて、行ってくるか」
宴会とセクストゥムという存在に気を取られていた彼らを誰も責めることはできない。
誰にも気づかれることなく、フェイトはその輪の中から消えた。
何も言わず、何の前触れもなく、彼は姿を消したのだった。
「さて、彼女たちも待っているだろう。そろそろ僕も自分の居場所に帰ろう・・・」
ここから立ち去ろう。そう決めたフェイトが背を見せた瞬間、その足を止めるものが現れた。
「おやおや、こんな所でコソコソと何をやってるネ?」
「・・・・・・・・君は・・・」
闇夜でありながら、世界樹の発光の光を背後に立つ彼女の姿は一瞬で見分けることができた。
久しぶり・・・そういう気持ちになったが、この時代の時間では僅か数時間しか経っていないだけに、その表現は正しくないのだが・・・
「と言っても、私もコソコソとやっている身だから人のこと言えないけどネ」
同じ部活に所属する仲間の存在をすっかり忘れていた。
「こんばんわ、フェイトさん。随分探したヨ?」
ドリ研部創設者の超鈴音がこの場に現れたのだった。