【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第59話 にゃにをやっているにゃ、フェイト

フェイトと超の攻防。

実力的に言えば二人の力差は明らか。まともに戦えばフェイトの方が上だろう。

だが、現在優勢なのは超。

フェイトは超に備わった特殊な力に、手を焼いていた。

 

「時の操作・・・随分と反則な技を持っているね」

 

服に着いた埃を払いながらフェイトが言う。

 

「ふふふ、何十年分の時間跳躍を可能にするのがシモンさんの持っているカシオペア。しかし今私が持っているのは、短時間の時間跳躍を可能にする別号機。戦闘に応用すれば、スタープラチナもキングクリムゾン真っ青ネ」

 

超の特殊スーツの背中の窪みに填められている懐中時計。世界樹の光にリンクして、超に圧倒的な能力を与えていた。

 

「ふん、確かに能力差はあるようだね。でも、所詮は火力が弱すぎる」

「おっ!?」

 

フェイトが手刀を一閃させる。まるで巨大な鎌鼬が通過したかのように大地に亀裂が走る。

 

(うわお、流石はフェイトさん。一瞬の遅れが命取りネ)

 

時の操作で逃れた超だが、その頬にはうっすらと血が滲んでいた。

 

「攻撃をくらう瞬間に別次元に飛ぶことによる絶対回避と、連続時間跳躍による疑似時間停止・・・確かに面白い能力だが・・・!」

 

時空間能力により、フェイトの背後に回り込んだ超の拳がフェイトの頬に迫る。

だが、超の拳はフェイトに届くことなく、いつの間にか舞い上がった高密度の砂の壁が阻んだ。

 

「ッ・・・これはッ!?」

「君が絶対回避なら、僕は絶対防御。君が時を味方につけるなら、僕は星の大地全てを味方につける」

 

そしてその流砂が勢いを増し、半径10メートルの砂の殻を造り、その殻の中にフェイトと超を閉じ込めようとする。

だが、その瞬間再び超のカシオペアが光り、超はこの密閉空間から姿を消した。

 

「はっはっはっは、確かに私の攻撃力ではフェイトさんにはダメージは与えられないネ。しかし、この学園祭期間中ならば、フェイトさんも私には勝てないネ!」

 

閉じこめられた瞬間、時空間に逃げ込んだ超は、アッサリと捕縛から逃れる。

 

(私は常にフェイトさんの姿を確認できるが、時空間移動している私をフェイトさんは見れないネ。ならば、必ず隙ができる)

(確かにあれを捕らえるのは僕でも難しいね。おまけに魔力を世界樹から受け取っているのか、魔力切れは無さそうだ・・・なら・・・)

 

確かにこれは終わりのない戦いだ。超の攻撃力ではフェイトの大地の壁は壊せず、時空間の能力を使う超を捕まえることはできない。

決着つかない戦いにも能力ゆえに、まだ余裕のある超。

しかし、その足りない能力差をフェイトは経験で上回った。

 

「超・・・自惚れた君に教えてやろう」

「ふふふ、その手には乗らないヨ。大方私を挑発させて、動きを乱したり、時間跳躍を乱したりする作戦ネ!」

「いいや、そんなんじゃない」

 

フェイトは動きを止めた。そしてポケットに手を入れて、ゴソゴソと漁りだす。

 

 

「君はその能力に大そう自信を持っているようだが・・・僕もやろうと思えば時間ぐらい操れる」

 

「ふっ、何を出す気ネ! とっておきのマジックアイテムカ? だが、私には通用しないネ!」

 

「見せてやる。今から君の時間を止めてやろう」

 

「ハッタリを! できるならやってみるネ!」

 

 

時が加速する。超自身も加速する。その動きはどれほどの実力者であろうと、物理的に追うことは不可能。

つまり、今の超は完全なる無敵。

 

(捉えた!)

 

超は空間から飛び出して、再びフェイトに迫る。

 

「私は決して揺るがない! 例え相手が世界最強クラスの戦士でも、この期間中の私に勝つことは不可能ネ!」

 

だが、次の瞬間に超の目に飛び込んできたのは・・・

 

「えっ・・・・・・?」

 

いや、目に入った光景は・・・

 

「フェイトさんが・・・・・・」

 

これまでのフェイトを見ていたのなら、決して信じられない・・・

 

「・・・猫・・・耳?」

 

猫耳付けたフェイトだった。

 

 

 

「にゃん」

 

 

 

「ほごっ!?」

 

 

 

完全棒読みのフェイトの猫パンチ。

手首のスナップを聞かせて顎を打ち抜く、ミッキーロー○も真っ青なパンチ。

 

「あが・・・ぐが・・・あが・・・」

 

超の顎を打ち抜き、見事に脳まで揺らした。

 

「予想もしない出来事を目の当たりすれば、さすがに驚いて動きが止まるだろう? 一瞬一瞬気を抜かなければ問題なかっただろうが、能力が仇になったね」

 

いつの間に身に着けたのか、綾波フェイの頃に所持していた猫耳をフェイトは装着していた。

そして顎を打ち抜かれた超は、まるで糸の切れた人形のようにふらふらし、目の焦点が定まっていない。

 

「さすがに受けたダメージまではどうにもできないだろう? ましてや、脳を揺さぶって集中力も切れた君に、時間を操ることもできない」

「なっ・・・おお・・・フェ、フェイトさ・・・ん」

「今という時間に目を背けた・・・君の負けだ」

 

猫耳姿で決着の言葉を告げるフェイト。

そして千鳥足の超はフラフラと膝を突き、そのまま前に倒れこむ。

 

(あっ・・・たおれ・・・しまた・・・時間跳躍で逃げ・・・体が動か・・・あっ、フェイトさん猫耳かわい・・)

 

倒れこむときの超は、まるで走馬灯のように色々なことを頭に巡らせる。

 

(やば・・・計画・・・このまま倒れたら・・・今日のアレが・・・あっ、そういえばネギ坊主との話し合い・・・あっ、まだ色々と・・・ハカセとの打ち合わせ・・・龍宮さんとの・・・でも、そんなことより、フェイトさん可愛いにゃん・・・ネ)

 

脳がグルングルンと頭の中で揺れ、目を瞑る直前最後の超の言葉は・・・

 

「フェイトさん・・・卑怯にゃ~」

 

その言葉で二人の対決の幕は閉じたのだった。

 

「聖人君子でも相手にしているつもりだったのかい? 僕は君でいう悪名高きテロリストだよ」

 

前のめりに倒れる超を受け止めるフェイト。超はぐったりと気を失って、フェイトの腕の中で眠りについた。

 

「さて・・・何だかんだで倒してしまったけど、彼女はどうしたらいいかな?」

 

勢いとテンションと場の流れで、超を倒してしまったフェイト。

彼女はこの学園祭期間中に色々とやるつもりだったのだろうが、計画前にこうして倒してしまった。

まあ、フェイト自身も当初の通り、超が今さら何をしようが興味もない。決着はついたことだし、このまま置いて行こうかと思ったその時だった。

 

 

「超さーーーーーーーん!!」

 

「ん?」

 

 

超高速で駆け抜ける突風。

いや、それは駆け抜ける少年だった。

フェイトはすかさず回避して、物陰に隠れる。

超を抱えたままだったために乱暴な避け方は出来なかったが、間一髪で激突を避けられた。

一方で自分に突撃してきた相手は、止まれず勢い余って壁に激突する。舞い上がる粉じんと瓦礫が、威力を示す。

 

「超さんがいきなり退学届を出して・・・理由を聞こうと待ち合わせていたら、いつもでも待ち合わせに来ないからどうしたのかと思えば・・・・・・・・」

 

しかし少年はすぐに立ち上がり、随分と怖い目をしてフェイトに叫ぶ。

 

「そこのあなた! 僕の生徒に何をしているんですか! 今すぐ超さんを解放してください!」

 

どこまでも真っすぐで純粋な瞳で怒る少年。

 

「ネギ君・・・」

 

随分とこれまた久しぶりに見た、ネギだった。

まあ、世界樹が発光しているとはいえ、夜で薄暗かったから、超が誰にやられているのかまでは分からなかったのだろう。

物陰に隠れたフェイトは、外の様子を伺いながら、ネギがフェイトに気付いていないのだと分かった。

さらに・・・

 

「そこの物陰に隠れている者、出て来い!」

「我らのクラスメートを、離してもらうでござる」

 

ネギの後を追いかけてきたのか、こちらも随分と鋭い瞳で睨む二人の少女。

 

「桜咲刹那・・・さらに、ネギ君の生徒の忍・・・」

 

桜咲刹那と長瀬楓。三人ともフェイトにははるかに及ばないものの、そこそこの手練れ。

どうやら三人は、超と待ち合わせをしていたのだろうが、いつまでも超が現れず、その時に戦闘の音がした。

しかも来てみれば超が誰かにやられているので、慌ててきたのだろう。

その超を倒した相手がフェイトとは知らず・・・

 

(それにしても、一体何を勘違い・・・でもないか。実際、超を倒したのは僕だし・・・)

 

ネギたちが何かを勘違いしているようだが、あながち勘違いではない。

 

「さあ、観念して出てきてください!」

 

さて困った。ネギはかなり怒っているみたいだ。

別にここで出て行ってもいいが、非難されるのはムカついた。

超が悪巧みしていることをバラしてもいいが、紳士のネギが女を殴った自分にくどくど言うのも目に見える。

 

(うわ・・・面倒くさいな)

 

フェイトは考える。

 

(仕方ない・・・ここはアレをやるしかないか・・・同じ手段を二度も使うのは嫌だが、ここで僕が逃げて学園を包囲されるのは面倒だ)

 

自分の状況・・・

 

(学園長と高畑・・・さらに学園祭期間中はエヴァンジェリンも魔法を使えるから、逃げるのは僕でも容易ではない。さらに・・・)

 

逃走が困難であることと、そして何よりも仲間のこと。

 

(ここで僕が問題を起こして、ダイグレン学園に矛先が向くのも避けないとね・・・一応まだ僕は生徒だし・・・・・・ならばやはり・・・)

 

そして最悪の状況を回避するために、フェイトは封印したアレを随分早くに解禁する。

 

「すまない・・・今出ていく・・・」

 

物陰に超を連れて隠れた人物は、観念して出ていく。

だが、完全降伏したはずのその人物に、三人は目を奪われた。

 

 

「「「なっ!?」」」

 

 

フェイト? 違う。そこに居るのはまったく別の人物だった。

 

「あ、あなたは・・・一体・・・どうして超さんを・・・。いえ、その前に・・・あなたは・・・」

 

ネギが、そして刹那も楓も呆然と、正直その人物に見惚れていた。

猫耳プラス尻尾のメイド姿の女性。

 

「魔法の国からやって来た・・・・・・綾波フェイ・・・です」

 

フェイトは魔法世界の激戦で、早着替えとどこでもメイド服を出せる能力を身に着けたのだった。

 

「・・・・・・すごい可愛い・・・」

「なんと・・・うつくし・・・・」

「むう・・・なんともまあ・・・」

 

そして三人は素直に感嘆の言葉を口にする。

 

(やってしまった・・・だが、とりあえずこのまま超の話もテキトーにごまかして・・・)

 

黙って消えるつもりだったフェイトは、何故か色々な邪魔があって、未だに麻帆良に釘づけだった。

次から次へと来る予想外の連続に、フェイトは今日も頭を悩ませるのだった。

だが・・・

 

 

「「「でも・・・・・・どうしてそんな恰好を・・・フェイト」」」

 

「えっ、バレた!?」

 

 

悩みは深まるばかりだった。

そしてさらに・・・

 

「むっ、何か・・・」

「ネギ坊主、誰か来るでござる!」

 

場が混乱する。

 

「見つけました。マスターのご命令により、あなたを探しに来ました」

「ッ、バカ・・・セクストゥム・・・よりにもよってこんな時に・・・」

 

こんなタイミングで、ある意味一番来てほしくない人物が現れた。

 

「えっ!?」

「なっ、なななななッ!?」

「どういうことでござる!?」

 

フェイトと同じ顔をした女がもう一人。

 

「「「なんか増えてるっ!?」」」

 

こんなのネギたちに驚くなと言うほうが無理であった。

 

 

「・・・? あの三人は敵ですか? それと、・・・・・テルティウム・・・フェイト・・・綾波フェイ・・・あなたをどの名でお呼びすれば?」

 

「・・・・・もうダメだこれは・・・早く何とかしないと・・・・」

 

 

もう駄目だこりゃ。

 

「ちなみに、マスターの提案では、私の編入手続きの際はあなたの妹という扱いにしてはということで、兄様と呼んでみてはという意見もありました」

 

項垂れたフェイトがようやく口にできた言葉がそれだった。

 

「とりあえず・・・テルティウム以外ならどれでもいいよ・・・・・・・って、本気で入学する気か・・・・・・」

「分かりました。そして加勢します」

「・・・って、ちょっと待ちたまえ!? 流石に君が戦ったらまずい!? 手加減しないだろ、君!?」

「ヨーコが言いました。一対一の戦いは邪魔してはならないが、敵が複数いるときは加勢しても良いと」

「必要ない! 必要ないから魔力を抑えたまえ! 魔法先生たちが駆けつけてきてしまう!」

「私はマスターの命令以外は聞きません。そして、マスターに喜んでいただきます」

 

増えたアーウェルンクス。

何故か女装のフェイト。

何か知らんが揉めている。

だが、とりあえず今ネギたちが思ったことは、フェイトクラスの実力者が二人。

 

 

(((無理・・・・・・・ぜ、絶対・・・か、勝てる気がしない・・・・・・)))

 

 

素の戦力差に打ちひしがれるばかりだった。

 


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