【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第62話 真の敵は誰だって?

突如学園に現れた巨大立体映像のシモン。

そして何よりも、人が変わってしまったかのようなその表情や口調。

彼に一体何があったのか?

 

「大したものだ、超鈴音という生徒は。技術力・作戦共にすばらしいな。だが、相手が悪いというものだな」

 

ここは麻帆良学園のどの場所に位置するのかは分からない。ただ、そこは巨大モニターにいくつもの画面で区切られた映像が部屋中にセットされていた。

 

「世界樹発光の魔力・・・セキュリティーシステム、このロボット兵器のシステムも乗っ取っておくか」

 

まるで悪の指令室のような場所だ。

もっとも、これほど広大な学園都市なのだから、こんな秘密基地のようなものがあっても不思議ではなかった。

モニター前の椅子に座ってニヤリと笑みを浮かべている人物の傍らで、縄でぐるぐる巻きに縛られているニアが叫ぶ。

 

「一体、これはどういうことなのです!?」

 

そこには捕らわれたニアが居た。身動きとれずただ動く口だけを動かして、その者に向かって叫んだ。

 

「あなたは・・・この間・・・いえ、20年前の魔法世界で心を開いたのではなかったのですか? アンスパさん!!」

 

モニターに向かっていた人物は椅子をくるりと回転して、口元に笑みを浮かべる。

 

「ふふふふふ、ロージェノムの娘よ。それはあまりにも都合の良すぎる解釈という物だよ」

 

笑う人物。その姿は誰も見間違うことのできないコスチュームに身を包んだ、あのアンスパだった。

 

「私はただ、待っていただけだ」

 

カミナたちからこの学園祭にアンスパが出現していることは聞いていた。

しかし、目の前のアンスパは本当に20年も経っているのかと疑いたくなるほど、昔と変わらぬ姿でニアたちの前に現れた。

 

「所詮あの時代でどれだけお前たちが騒ごうと、時代の違う未来から来た来訪者の言葉だ。同じ時代に立っていない。同じ時代に生きていないお前たちの言葉と奇跡だけではまだ足りなかった。だからこそ私は待った。お前たちが、私の知るお前たちになるまでな」

 

長かった・・・言葉の端々には、アンスパが今日を迎えるまでの日々を感じさせるような響きがあった。

 

「私がカミナ君やザジたちに武器とタイムマシーンを与えたので最後だ。もう、手は貸さん。ここから先の未来は私も知らん」

 

ニアたちにとって、アンスパを魔法世界で見てからまだ少ししか経っていないが、今の目の前に居るアンスパにとって、かつて自分の前に立ちはだかった強さと心と記憶を持っているニアたちと出会うのは20年ぶりなのだ。

待ちに待った20年。

彼は再び表舞台に立つ。

最終決戦の朝日が昇るのを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、見たかよ夜中のアレ」

「ああ、あのダイグレン学園の奴のだろ~」

 

 

学園祭最終日の朝。

準備期間から数えれば、皆も相当疲れがたまっているはずなのだろうが、そんな様子を生徒たちは微塵も見せずに昨晩の出来事の話でいっぱいだった。

 

「あれってさ~、武道大会ですごかった奴だよねー」

「ほんとになんだったんだろうね、あの映像」

「彼さ~、あんなやさぐれた子だったっけ?」

「ワカンネー。結局あれから何も言ってこないしな」

 

昨晩麻帆良全土に知れ渡った巨大シモン映像。

アンスパに洗脳され、堕ちたシモンの言葉。そしてその言葉の示す意味が分からず、生徒たちは皆首を傾げていた。

だが、その言葉の意味もすぐに分かる。

シモンの意思とは別に、真の黒幕が虎視眈々と全ての準備を推し進めているのだった。

 

「じ、事態はどうなっておるのじゃ! 一体、何がどうなっておるのじゃ!?」

 

学園長室では学園長が長い頭を抱えて唸っていた。

 

 

「堀田シモン、ニア・テッペリン、フェイト・アーウェルンクス、超鈴音、ザジ・レイニーデイ、さらには新手のアーウェルンクス・・・もし彼らに堀田博士まで絡んでいたら・・・」

「高畑先生・・・今、連絡が入ったのですが、やはりその六人はどこにも見当たらないようです」

「困りましたね・・・まだ何も起こってはいませんが、彼らのことだ。世界樹の魔力が最も満ちる時間帯までには、きっと何か行動を起こしてくる」

「それまでに我々も戦力を整えて生徒を安全誘導しなくては・・・」

 

頭を抱えているのは学園長だけではない。タカミチを始め多くの魔法先生に魔法生徒が一堂集結し、この緊迫した事態に唇を噛みしめていた。

 

「くそ、だからフェイト・アーウェルンクスを編入させたのは失敗だったんだ」

「いや、それを言うなら超鈴音をネギ先生一人に任せたことが・・・」

「ロージェノム氏の娘ということで、ニアさんを警戒していなかったのも迂闊だった」

「それを言うなら、ザジ・レイニーデイなんてあんな謎すぎる少女を放置していたのも・・・」

「そんな彼らの中心にいるシモン君を、こんなギリギリまで堀田キシムの息子だと気づかなかった我々も・・・」

 

あーでもない、こーでもないのネガティブ意見が飛び交っている。

魔法生徒たちも大人たちの不安が波及して、オロオロしている。

これはまずい。

そう感じた学園長が、珍しく声を荒げて威厳を示そうとする。

 

 

「落ち着かぬか!! 情けない! ヌシらは自分を誰だと思っておる!!!!」

 

「「「「「ッ!?」」」」」」

 

「こういう想定外の事態に対しても当たり前のように任務を遂行して、世のため人のために戦うのがワシら魔法使いの責務であろう! それが何たるザマじゃ!!」

 

 

学園長の激に、シンとなる学園長室。

意外と効果があったのかもしれないと、学園長は更に続ける。

 

「よいか! ワシらは負けはせんぞ! 今日という日を毎年恒例の楽しい学園祭を生徒たちが送れるように戦うのじゃ! ワシらがやらねば誰がやる!!」

 

その言葉に、誰もが顔を上げた。

 

「学園長・・・」

 

自分で言ってて、学園長も「やべ、ワシって恰好よくね?」と少し気持ちが高ぶった。

 

「いよいよとなれば・・・このワシが動こう!」

 

だから、この戦いは絶対に勝つぞと皆を決起させようとした学園長だった。

しかし・・・

 

「「「「「えっ? 学園長、今まで役に立ったことある?」」」」」

 

皆が向けたのは冷たい目だった。

 

「ひ、ひどッ!? ワ、ワシも結構やるときやるぞい!」

 

そもそもこれだけの問題児を特に対策練らずに入学させて放置した学園長。

今までが今までだっただけに、皆が「し~ん」と冷めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園の生徒たちは、いくつかのグループに分かれた。

ただ、首を傾げるもの・・・

何かイベントなのかと楽しみにしている者・・・

そして・・・

 

「うっひゃっほ~~~い! 火星人に未来人に悪の組織の大幹部に不良少年!! いやーーー、キャラが溢れすぎでしょ!! しかも学園を感動の渦に巻き込んだ愛の聖戦士が、実は全ての黒幕! その名もシモン! あ~、なんという悲劇! もう倒しちゃえ!!」

 

便乗して盛り上がる者や・・・

 

「ハルナ、アンタはもう黙ってなさい!! そんで、ネギ! これは一体どういうことなのか説明しなさい!! 昨日の晩に何があったの!?」

 

この事態に抗う者。そのような立ち位置で生徒たちは分かれていた。

曲がって歪んでねじれまくった展開。どんな力の持ち主も、どんな頭の持ち主も、もはやこの事態の収拾をするのは困難となっていたのだった。

 

「シモンさん、そして昨日逃げられたフェイトの妹・・・昨晩からザジさんも見当たらない・・・」

 

たかが少数。しかしその少数が、事情を知る魔法という業界では名の知れた者たちをかつてないほど混乱させているのであった。

 

「っていうかよ~、高畑先生とか何て言ってるんだよ?」

「タカミチは、僕たちが何とかすると言っていましたけど・・・」

「って、できんのかよ!? できねーから、こんな訳のわからねえことになったんだろ!?」

「ちょっと、千雨ちゃん!」

「だって、そうだろうがよ!」

 

ネギと事情を知るネギの生徒たちの間で行われている会議。

彼らはこんな事態でなければ壮観なメンバーともいうべきメンツの揃ったネギパーティー。

しかし、この事態ではどうもその存在感が弱くなっていた。

千雨は立ち上がってイラついたように頭を掻きむしりながら言う。

 

「なんなんだよ! 学園破壊を企むドリル男を筆頭に、悪の組織だか何だか知らねえけど、もうやられそうなんだろうがよ!」

「ま、まだやられたと決まったわけでは・・・」

「じゃあ、勝てんのかよ、このメンツ!」

 

その瞬間、ネギを始めとして武闘派の刹那や楓も「し~ん」となった。

フェイトの妹らしきセクストゥムに手も足も出なかったのに、それぐらい厄介そうで実力未知数な敵がまだ居るのだ。

 

「え、え~と、桜咲さん。彼らの戦力はどれほどですか? そんなにやばいですか?」

「綾瀬さん・・・私も信じがたいのですが・・・正直・・・ヤバいです。特にフェイトの妹らしき人物は論外です」

「だろ!? おまけに、超のトンデモ発明品にロボット軍団が地下に眠っているらしいし、打つ手ねーだろうが!」

 

学園が悲鳴に包まれていた。

事情を知る者、魔法を知る者、常人を遥かに上回る力を持つ者たち。

この学園にはそんな者たちが山ほどいる。

しかしだからこそ、彼らはこの事態の深刻さを理解するのだが・・・

 

「しかも・・・一番わけわかんねーのは・・・」

 

ギギギギとロボットのようにぎこちなく首を回す千雨。

彼女の言葉にうなずきながら他の者たちもその方向へと目を向ける。

そこに居るのは、顔を俯かせている三人の学園の生徒たち。

 

「何で張本人のこいつらがここに居るんだよォ!?」

 

そう、一番よく分からないのは、シモンの仲間と思われた三人までこのネギパーティーの会議に出席していたことだった。

 

「むっ、そんな目で見ないでくれ。僕だって不本意だが、手を貸してやろうというのに」

「あれだけのことをしておいて何だが・・・ちょっと私達三人だけでは処理できなくなたネ」

「みなさん。我々も加勢いたします。シモンのために」

 

フェイト、超鈴音、黒ニア。

 

「って、だからそんなこと言われたって簡単に信用できるわけないでしょうが!」

「アスナさんの言う通りだ。昨晩我々と敵対したフェイト・・・なぜお前を信用できる」

「っというより、フェイトと超は喧嘩していたのではござらんか?」

 

正に今学園の問題の元凶となっているドリ研部の三名が何故かこの場に居るのだった。

 

「まあ、そう言うだろうとは思ったけどね・・・ちょっと僕たちでも手におえない事態になってしまってね・・・」

「あんたたちが手におえないって・・・っていうか、何でフェイトが女装してんのよ! しかも可愛いし!」

「それにはツッコみを入れないでくれたまえ! これに関してはノーコメントだ!」

「えー? かわええのに・・・でも、ほなら何でずぶ濡れなん?」

「うっ・・・それは・・・思い出しただけでも屈辱のことが・・・」

 

しかも何故かずぶ濡れの姿だった・・・

 

「フェイト・・・話してくれるよね・・・一体何があったの? 超さんと君がケンカしたと思ったら、今度はシモンさんがああなって、そして君たち三人がここに来て・・・」

「わけわからないのは僕も同じ。本当に困ったものだよ、ネギ君」

「わけわかんない? フェイト、超さん、あなた方は結局何をしようとしていたのですか?」

「そう焦らないで欲しいネ、刹那さん。まずは順に説明していこうではないカ」

「あの晩の後・・・私たちに何があったのかを・・・」

 

フェイト、超、黒ニア。この三人は、エヴァの別荘で会議をしていたネギパーティーたちの前にいきなり現れた。

当然ネギたちは混乱した。昨晩一戦交え、巨大シモン映像が出現した後に姿を消したと思ったら、彼らの方からやってきた。

そして開口一番に「力になろう」と言ってきたのだ。

超とフェイト。この二人の言葉にネギたちは正直戸惑った。学園で何かを企み、そして問題を起こした張本人が今度は力になると言ってきたのだ。

そして本来はシモンの傍にずっといるはずのニアが、シモンと敵対してまでネギたちの前に現れたのだ。

罠なのか? それとも事態は想像以上に混沌としているのか? とりあえずネギも生徒たちも、彼らの言葉を待った。

 

「まず前提からは話そう。過去を水に流せとは言わないが・・・」

「ウム、私たちは色々あったがとにかく事態は相当悪い方向に向かっている。この際は私の計画のことも一旦忘れておいてほしいネ」

「私たちの本当の敵・・・それを倒さぬ限りこの学園の未来はないのですから」

 

彼らの言葉に千雨が手を挙げた。

 

「まっ、待てよ・・・本当の敵って・・・その様子じゃあ、あんたらでもシモンって人でもないんだな?」

 

ネギたちは黒幕がシモンなのかと疑っていたが、フェイトたちの話しぶりではシモンではなさそうだ。

では誰だ?

フェイトと超という怪物生徒まで手におえないなどという存在など、考えただけでもゾッとする。

 

「僕たちが力を結集して倒さねばならない敵・・・その名は・・・」

 

すると彼らの口から出てきたのは・・・

 

「堀田博士という人物ネ!」

「セクストゥムという愚かな人形だ」

「セクストゥムという愚かな女です」

 

倒すべき人物が二つに分かれていた。

その瞬間、言った本人たちも首を傾げて互いを見合っていた。

 

「何を言ってるんだ、超。堀田博士もそうだが、最終的に倒すべきはセクストゥムだ」

「そうですよ、超。あの腹黒い計算女です」

「あなたたちこそ何を言ってるネ! セクストゥムはあなたたちの私怨! 本当に倒さなければならないのは堀田博士ではないカ!」

 

言い合いになる三人。

この光景を見ていたネギたちはポカンとした。

 

「結局・・・僕たちは誰と戦えばいいの?」

 


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