【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第63話 そんなに俺のこと好きなのか!

話しは少し遡る・・・

 

「では、ドリ研部緊急集会を開きたいと思うネ。司会進行は私、超鈴音」

「書記は僕がやる」

「欠席一人・・・シモンさん・・・」

「シモンは現在作戦のために英気を養っています。・・・セクストゥムさんが護衛している状況です・・・」

 

乗っ取られた超鈴音のアジト。そのアジトの円卓を囲んで座る、超、フェイト、ザジ、ニア。

 

「・・・ならば、これで全員だな」

 

そして・・・

 

「「「って、何でお前が(あなた)ここに居る!」」」

 

大元凶とも言うべきアンスパまでもがここに居た。

 

 

「むっ、随分な言い草だな。ドリ研部の特別顧問である私に向かい」

 

「「「いつからそうなった!?」」」

 

 

当たり前のようにアンスパがこのドリ研部の緊急会議に出席していた。

 

 

「・・・・・堀田所長・・・これは一体どういうことなのです?」

 

「そうネ! 大体あの堀田キシムが何故ここに居るネ! 私の作戦を邪魔するは、シモンさんを洗脳するは、ザジさんと知り合いだったり、もう何が何だかわからないネ!」

 

「僕が大人しくこの学園から立ち去ろうとしたのに・・・」

 

「一体、シモンに何をやらせようというのですか!?」

 

 

ザジ、超、フェイト、ニアからの追及。

だが、アンスパは何の悪びれも見せず、そして相変わらずその素顔を見せずに居座った。

 

「全ての質問に答える義務はない。ただ私は確認しておきたいだけだ」

 

しれっとしたアンスパの態度に、フェイトたちはイラッとした。

 

「確認? 実の息子を力で洗脳してまで、何を確認しようというんだ!」

「お前たちの可能性とやらをだよ」

「ぬ・・・相変わらずわけの分からないことを・・・」

 

思わせぶりな事を言いながら、アンスパは決して問題の本質は語らなかった。

こういう所は彼らには相変わらずだった。

 

「アンスパさん。イジワルは良くないと思います」

「所長・・・お戯れは・・・」

「って、その前に私のメカを返して欲しいネ」

「諦めろ、超。相手が悪すぎる」

 

だが、力づくで吐かせようにも、アンスパの力を存分に思い知っているフェイトたちにどうすることも出来ないのであった。

 

「ところでニア・テッペリンよ」

「な、なんです?」

「ずっと・・・気になっていたんだが・・・」

 

何やら空気が変わった。ニアたちに緊張が走るが・・・

 

 

 

 

 

「私のことは、アンスパさんではなく、義父さまではないのか?」

 

 

 

 

 

「「「ちょッ!?」」」

 

 

 

 

 

 

ニア以外の全員が机に額を叩きつけた。

しかしニアだけは目から鱗のように、瞼を開いて震えていた。

 

「私としたことが・・・これでは妻失格です! どのような人でも、私のお父様同様にアンスパさんは私の義父さまです・・・・お、義父さま!」

「うむ、若干引っかかるがそれで良かろう」

 

ニアはアッサリとアンスパのペースに嵌った。

 

「ニア!?」

「ニアさん、裏切ったネ!!」

「ニアさん・・・現金・・・」

 

冷めた眼差しを向ける仲間の視線に、慌ててハッとなるニア。

 

「はっ!? いけません、私は・・・そうではないのです! あんなやさぐれた性格のシモンなど、私の大好きなシモンではありません! 道に迷った夫を正すのも妻の務め! ならばアンスパさんも私の敵です!」

 

キラキラと純粋なオーラを醸し出すニア。しかし、アンスパは少し勿体ぶったように溜息つきながら・・・

 

「分かった・・・将来の私の娘となり、シモンの嫁となるのはセクストゥ―――「私はどんなシモンでも愛して見せます! お義父さま!」」

 

一瞬でニアの人格から黒ニアに変わり、アッサリと黒ニアは陥落したのだった。

 

「黒ニア・・・きみは・・・。大体、堀田博士よ! シモンを人質に取るなど卑怯極まりないね。下衆な行いは、見るに堪えない」

「ほう・・・フェイト・アーウェルンクス・・・いや、今は綾波フェイと言うべきか?」

「はっ!? しまった! あまりにも慣れ過ぎたため、自分でもこの格好に気付かなかった!!」

 

フェイトは昨夜の騒動から、まだ綾波フェイの恰好をしたままだった。

ニアもザジも、そして超ですら、もはやそれが自然のように感じてツッコみを入れることも忘れていた。

急に恥ずかしくなったフェイトは先ほどの発言から一転して身を縮こまらせて俯いた。

 

「ふっ、よいではないか。草葉の陰で造物主も大爆笑していることだろう。丁度この学園の世界樹の下に封印されていることだしな」

「い、いや、それは重大なネタバレになるからこのメンツ以外の場所では不用意な発言は控えてくれたまえ」

「気にするな。私はむしろうれしいぞ? あのようにやさぐれたシモンを心配し、さっさと魔法世界に帰ればいいものを、そのような恰好をしてまでここに留まるお前の心意気がな」

「何を言っているんだ!? 何もかもあなたの所為ではないか! 何勝手にこんな事態にしたくせに勝手に感動している!!」

「そうか、文句があるのならば早々に魔法世界に帰るがよい。代わりのアーウェルンクスはシモンの傍に居るからな」

「なっ、か、代わりだと!」

 

代わりのアーウェルンクスと言われて流石にフェイトもカチンときた。

 

「ふざけるな。目覚めたばかりの彼女にシモンの隣など・・・」

 

しかしその時、狙いすましたかのようなタイミングでセクストゥムが報告のためにこの会議の場に現れた。

 

「アンスパ様。マスターがグレンラガンのエネルギーがチャージされたので、今すぐにでも出陣したいと」

 

その言葉を聞いて、アンスパは「うんうん」と頷く。

 

「うむ。セクストゥムは従順だな。これからもシモンの傍に居てやってくれ」

「当然です。私は生涯マスターのお傍にお仕え致します」

 

それを傍目で見せられているフェイトの気持ちはいか程か?

ましてや既に精神状態やら頭の中身がダイグレン学園の影響で可愛そうな人になっているフェイトは、暴走してしまった。

 

「ふ、ふざけるな!」

 

息を荒くするフェイトはビシッとセクストゥムに指をさす。

 

「シモンの傍に居るアーウェルンクスは僕一人で十分だ! 君の入る隙などない!」

 

フェイトが壊れた瞬間を超たちは存分に感じ取ったのだった。

 

「だ・・・もう・・・ダメネェェェェ!! 唯一の常識人だと思っていたフェイトさんが完全にバカになっているヨ! ツッコみがボケになるとは、私では処理できないネ!!」

 

もう嫌だ。頭を抱えてワーワー騒ぐ超鈴音に学園最高の頭脳を所持する悪の黒幕などという役割など到底似合わない。

黒ニアもフェイトもおかしくなり、超も大混乱してしまう中、ザジだけは冷静にお茶を飲んで落ち着いているのだった。

ザジはもう、分かっているのだった。

 

 

「さて、時は満ちた! 行くがよい、シモン! お前のうっ憤を、私が十年近くの歳月を込めて作ったメカ! グレンラガンで存分にはらすがよい!!!」

 

 

もうここまでくれば自分にできることは何もない。後は流れに身を委ねるしかないのだと。

なぜこうなった? このメンツの中で、特に学園祭に準備と作戦を積み重ねてきた超鈴音は思わずにいられない。

己の大義を懸け、過去の改編という禁忌を起こそうとし、またその覚悟も秘め、友を裏切り罵倒されることも想定し、並々ならぬ想いを秘めてここまで来た。

これが自分の全てだ。

今日という日を迎えるために自分はこの時代で生きてきた。そう思っていたはずが・・・

 

 

「父さん・・・もう、俺は行くよ。こんな学園ぶっ壊してやる」

 

 

真っ黒いやさぐれたオーラを滲ませてこの会議室にようやく顔を出した、どんよりとした瞳のシモン。

それにサムズアップで答える変人親父。

さらに・・・

 

「シモン、私は・・・私は・・・どのようなあなたをも愛してみせます」

「シモン! 目を覚ますんだ! あんな生まれたての頭の悪いアーウェルンクスなんかいなくても、僕が居る! ・・・ん? 僕は一体何を?」

「マスター・・・マスター・・・ご命令を・・・あの・・・ご命令をお願いいたします」

 

こんなやさぐれたシモンにも変わらぬ想いを貫く者たち・

超は唸って、会議の円卓を卓袱台のごとくひっくり返す。

 

「ああああああ、ここには変態しかいないカ!? 私の覚悟や想いはどうなっているネ!?」

 

正に卓袱台返しをくらった超鈴音はただそう叫ぶしかなかったのだった。

 

「おい、超・・・お前もこの学園が嫌いなのか?」

「はっ?」

 

そんな超の落ち込んだ肩に、やさぐれシモンが手を置く。

 

「なあ、そんなに嫌なら俺と一緒に壊そうよ」

「はっ・・・はあ?」

「俺と一緒にここをただの瓦礫の山に変えるんだよ」

 

ダメだこいつ。早く何とかしなければと、超は開いた口が塞がらなかった。

まさかあれほど精神力の強かったシモンが、ただの洗脳だけでここまでやられるとは。

 

「って、いけないヨ! それじゃあ私はただの阿呆ネ! 目を覚ますネ、シモンさん! 私は確かにいろいろと問題起こそうとしたが、それはまた別のやり方ネ! っていうかあなたには似合わないヨ!!」

 

咄嗟にシモンの胸ぐら掴んで慌てて説得に乗り出す超。

超自身は今回の学園祭ではネギたちに止められる役だと思っていたのに、まさか自分が人を止める役になるとは思っていなかった。

しかし流石にこれはまずいと判断したために、彼女ももはや半泣きになりながら止めようとする。

だが、シモンはその手を振り払った。

 

「なんだよ・・・やっぱりそうなんだ・・・超も・・・結局心の中では俺のことはどうでもいいって思ってるんだよ」

 

そしてシモンは拗ねた。

 

「・・・はっ?」

 

どうしてそういう発想になると言いたげに、超は呆けた。

 

「シ、シモン、ダメですよ。超さんはシモンのためを思っているのです。私もそうです。シモン。こんなのシモンではありませんよ?」

「そ、その通りだよ。僕も色々と取り乱したけど、こんなの君らしくないと思う。目を覚ますんだ。僕たちはみんな君の味方だから」

 

色々と取り乱したニアもフェイトも説得に回る。だが、やさぐれシモンのやさぐれ度はネガティブの方向へどこまでも突き進む。

 

 

「なんだよ・・・なんだよ・・・ニアもフェイトもそうやって・・・いつもいつも俺は二人のために命がけで戦ってきたっていうのに・・・何度も大怪我して死にかけたのに・・・それなのにどうして俺がやりたいと思うことには反対するんだよ」

 

「違います。私もフェイトさんもシモンのことが大好きです。大好きだからこそシモンを止めるのです」

 

「その通りだ。僕も君のことを大切な友だと思っているし、尊敬もしている。だからこそ、僕たちも真剣にこうして止めているんだよ」

 

「ウソだ。俺のことを本当に思ってくれているんなら、俺がどんなことをしても信じてついてきてくれるはずだ」

 

「違います!」

 

「そうだ、そんなの違うよ、シモン」

 

 

何とか説得をしたいが一筋縄ではいかない。ニアとフェイトの説得は続くが・・・

 

「マスター。私はいかなる時もマスターを信じ、いかなる命令にも従います」

 

空気の読めない子が、ちゃっかりとポイントを稼いだのだった。

 

「ああ。セクストゥムだけだよ。そうやって俺についてきてくれるのは・・・」

 

シモンは病んだ瞳でセクストゥムにほほ笑む。

 

「セクストゥムさん!?」

「セクストゥム、貴様!! そういう所でポイントを稼ぐな!」

 

シモンは病人患者のようにフラフラとよろめきながら、セクストゥムの頭を撫でる。

セクストゥムは少し俯いてしどろもどろになりながら、何かを決意したような表情でシモンに言う。

 

「マスター。マスターが命ずるのであれば、私がニアさんの代わりに色々と致します!」

「ちょっ!? 何を言っているんです、私の代わりとはどういうことなのです!?」

「兄様の代わりに、私が猫耳とメイド服を着用してマスターのお傍に居ます!」

「ま、待ちたまえ! なんかそれでは僕の存在価値が女装をするだけの役割ではないか!?」

 

ヤバイのはシモンだけではない。このセクストゥムの存在も、ニアとフェイトの存在意義を打ち砕くかのようにヤバい存在に二人は感じた。

 

「ああ・・・セクストゥム・・・俺・・・お前だけだよ」

「はい・・・マイ・マスター」

 

そして、セクストゥムの存在に脅威を感じた二人は、変貌する。

 

「セ、セクストゥム・・・さん・・・・・・(極・黒ニア化)」

「き、君は・・・・(フェイト逆鱗モード)」

 

変な方向に突き進み始めたセクストゥムだが、今のやさぐれシモンにとっては唯一の光なのかもしれず、セクストゥムの従順な姿にシモンはすがり始めた。

セクストゥムは計算なのか天然なのか分からないが、「マスター・・・マスター・・・」と呟きながら、幸せそうにシモンに頭を撫でられているのであった。

 

「黒ニア・・・・・・彼女の動きを止める・・・その間に、体の中心部にある核を壊すんだ・・・セクストゥムの機能を停止させる」

「壊すだけで良いのですか? いっそのこと、絶対的絶望を与えたのちに細胞ひとつ残らず完全消滅させることをした方が・・・」

 

二人は極めて本気の目でオーラを放っていた。

 

「もう嫌ネ・・・どうして私こんな部活作ったカ? これならクラスメート巻き込んだ方が何倍も楽だたヨ・・・」

 

超は部屋の隅で体育座りしてイジけていたのだった。

 

「では、これでメンバーは決まったな」

 

この状況の最中、どこか達観したかのように呟いたアンスパ。そして彼がいきなり指をパチッと鳴らした瞬間――

 

「えっ?」

「なッ!?」

「どういうことネ!?」

 

流石は悪の組織のアジト。

こんな仕掛けをどうやって作ったのかは分からないが、ニア、フェイト、超の三人が居た場所だけ床に穴が開き、三人はその穴から落ちた。

 

「こ、これは何ですか!?」

「アンスパ貴様ァ!?」

「っていうかいつの間にこんなものを作ったネ!?」

 

そして三人が落ちた穴を見下ろしながら、セクストゥムは誰に命令をされたわけでもなく水を流す。

 

「兄様・・・ニアさん・・・超鈴音・・・マスターの邪魔をするあなた方は不要・・・私一人で十分なのです」

 

穴の向こうから「セクストゥム貴様ああ!」という声が聞こえてくるが、その声は聞こえなくなり、穴はそのすぐ後に何事も無かったかのように閉じた。

 

「ほう、誰にも命令されたわけでもなく・・・というかエゲツないな。彼らは下水まで流されたぞ?」

「あの・・・アンスパ様・・・」

「ん? 私のことはお父様でも構わないぞ? これからも息子を頼む」

「・・・はい」

 

残されたシモン、セクストゥム、ザジ、アンスパの四人だけとなり、アンスパは言う。

 

「さて、このメンバーがこの戦いに挑むチームだ。さあ、派手に行こうではないか」

 

感情を露わにして止めようとしてきたニアたちを退場させ、従順なメンバーだけを先発したアンスパ。

この中で唯一まともなのはザジなのだが、彼女もまた何を考えているか分からぬ表情で溜息つき、何も言わずに頷いたのだった。

 

(結局、所長一人の力でドリ研部も手のひらということですか・・・シモンさんがこれでは・・・)

 

このままアンスパの成されるがままになるのか?

いや、そんな展開だけはアンスパ自身も望んでいないだろう。

例えシモンがこのような状況になったとしても、抗う者が他にも居るからこそ、アンスパはこれほど手の込んだことをしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけだ!」

 

「あれから下水を流された私たちはようやく地上に這い出て・・・そして味方を集めて彼らを打倒するために、まずここに来たネ!」

 

「全てはシモンをあの少女から取り戻すために!」

 

 

セクストゥムにやられた水と下水・・・だからずぶ濡れなのか・・・細い目でネギたちはフェイトたちを見つめた。

そして再びフェイトたちは倒すべき敵を「セクストゥムだ!」「だから堀田博士ネ!」「いえ、セクストゥムです」と口論を始めた。

結局蓋を開ければ事の真相は詳しくは分からないままとなったが、ネギたちはもうそれ以上知る気も失せた。

なにやら過去やら未来やら魔法やら世界やらと壮大な何かが動いていると思っていたのに、結局フェイトたちはシモンを盗られたことに腹を立てているようだ。

 

「「「「「「「「「「く・・・・・・くだらなさすぎる・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

肩透かしをくらったネギたち。彼らはフェイトたちの口論を眺めながら、ガックリと項垂れて同じ言葉を口にしたのだった。

 

「なんだそのくだらない理由は! 要するにアレか? 変人親父に洗脳された息子と、お前の妹に対する嫉妬と、学園生活に対する鬱憤・・・全部、ダイグレン学園の問題じゃねえか! 魔法をバラすとか歴史の改ざんとか壮大なSFファンタジーはどうなった!?」

 

千雨が耐え切れずに声を荒げる。

 

「ぼ、僕たちだってくだらないとは思っているが、シモンをあのままにしておくわけにもいかないだろう!」

「アホか! ならお前らだけでやればいいだろうが! あのダイグレン学園の番長とかスケ番とか、手を貸してくれそうなのがいっぱい居るだろうが!」

「できればそうしているさ! しかし昨晩の宴会でベロンベロンになるまで騒いでいた彼らは爆睡中なんだ!」

「ま、待ってよフェイト! 皆高校生なのに、ベロンベロンになるって何を飲んだの!?」

「そこをツッコむなネギ君! 魔法をクラスの七割近くにバラしている君に比べれば高校生の飲酒ぐらいなんともないではないか!」

「ちょちょっと! そりゃあネギも悪いかもだけど、あんたこそそんなに強いのにこんな事態になるまで何やってんのよ! そんな女装をして!」

「今は細かいことを気にするな、神楽坂アスナ!」

「は、はあ? っていうかあんたちょっと見ない間におかしくなってない? シモンさんに向ける態度が、ちょっと普通じゃないんじゃない?」

「べ・・・べつに・・・普通だ・・・ですよ?」

「何でドモッて間が空いて疑問形なのよ!?」

 

学園は今危機に瀕している・・・はずなのだが、この光景だけを見れば平和そのものであった。

 

「大変でござったな・・・超・・・」

「その・・・元気を出すんだ・・・」

「うむ・・・そう言ってくれるのは楓さんと刹那さんだけネ」

「まあまあ、私は超と戦うことにならなくてうれしいアルよ」

 

つい数分前の切羽詰った空気が嘘のようであった。

 

 

「あの・・・あの、黒ニアさん、初めまして私は宮崎のどかと言います。黒ニアさんは・・・その・・・シモンさんと・・・好きな人と一緒に居て、一番近くに居るために、どのような努力をしましたか?」

 

「私の名前は綾瀬夕映というです。その・・・後学のために私も・・・」

 

「えっ? シモンと居るための努力ですか? 邪魔なお父様を排斥したり、シモンの部屋にあるイヤラシイ物の処分や、・・・・・・身近なライバルに常に警戒心を張ることなどは基本です」

 

「おんや~ん。おんや~ん? これはフェイちゃんにラブ臭が?」

 

「ラ、ラブ臭? 僕にそんなものが? って、フェイちゃんはよしたまえ」

 

「え~、ぶっちゃけて聞くけどフェイちゃんはシモンさんのこと~・・・うぷぷぷぷ?」

 

「な、なにを!? 大体僕はニアとシモンの在り方には尊敬をしているんだ! そんな邪な思いはない!」

 

「ん~、でもほなら何でフェイトはんはその妹はんにヤキモチやいとるん?」

 

「い、いや、別にヤキモチなど。大体僕はシモンとニアが幸せになってほしいと思っているだけだ。ただまあ・・・・・・・なんだかセクストゥムがシモンにまとわりついているのが・・・少し見ていてムカついて・・・うざったいというか・・・寂しいというか・・・胸がざわつくというか・・・」

 

「うおおおお! 何か来たァ! 創作意欲が湧いちゃうよォォ! これは今の時代に需要がありそうだァ!」

 

 

って、それどころではない。

 

「って、いい加減にしたまえ! 一刻を争う! 早くしなければシモンが取り返しのつかないことをしてしまう!」

 

ダンっと音を立てて床を強く踏み付けるフェイト。一瞬少女たちはビクッとなった。

 

 

「と、とにかくだ。本当に・・・本当に不本意ではあるが、僕たちの力だけでは彼らには勝てない。くやしいが・・・それを過去の世界で存分に思い知った」

 

「フェイト・・・」

 

「何度も言うが・・・僕はこんな形で守るべき日常を壊されるのだけはゴメンだ。君たちもだろ? だから利害も一致するし手を貸してやろうと・・・いや・・・その・・・あれだ・・・あ~~、もう」

 

「ちょっ、あんた!?」

 

「フェイト・アーウェルンクス!?」

 

 

アスナたちはギョッとした。あのフェイトが、頭を下げたのだ。不本意そうに拳を握りながら、ネギたちに頭を下げた。

だが、確かに下げた。

あのフェイトが・・・

 

「頼む・・・僕たちに力を貸してくれ」

 

フェイト・・・女装でなければ・・・どれだけ感動的だったか・・・

 

(((((((フェイト・・・そんなにシモンさんが大好きなんだね)))))))

 

暖かな眼差しで微笑むネギたちであった。

 

「いや・・・なんか微妙に勘違いされているような気がするのは気のせいかい?」

 

乙女たちは首を縦に振り、歯を出してニッと笑いながら親指を突き立てたり、フェイトの肩を叩きながら微笑んだのだった。

そして、フェイトとネギたちが手を組んだそのとき、同時に外の世界では巨大ロボットに乗り込んだシモンが、全てを破壊すべく動き出したのであった。

 


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