【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第64話 お前の中に出してやる

「な・・・なんだありゃああああ!?」

 

学園の湖の湖畔に大勢の生徒や祭りの客たちが集まっていた。湖の中から現れたいくつものロボットたち。

数は100や200では済まないだろう。

サングラスをかけたロボット。戦車のようなロボット。

空中に浮遊する鋭角の物体。そして極めつけは超巨大な人型や鬼の形をしたロボットである。

 

「学園祭のイベントか?」

「こんなの何にも聞いてねえぞ!?」

「なんだ!? 今年は一体何がどうなってるんだ!?」

 

イベントなのだろうか? だが、徐々に集まった生徒たちの表情が引きつっている。

彼らもこの事態が飲み込めないようだが、妙な予感を感じてはいるようだ。

 

『全員・・・どいてろ・・・』

 

そのとき、人型巨大ロボットのうちの一体のスピーカーから人の声が聞こえてきた。

 

「おい、この声は!?」

「うん、あの人じゃない?」

 

皆がざわつき始めた。ロボットの中から聞こえたその声に、皆が聞き覚えあった。

この学園祭をきっかけに、一気に学園の有名人となった男の声。

 

『この学園の全てを破壊してやる!』

 

その声の主は、なんの抑揚もない声で言い放つ。

 

『壊してやる。壊してやるよ! もうこんな学園、ウンザリなんだよ!』

 

破滅を告げる男の宣告。ロボットの叫びで湖の水が激しく飛び散る。

それを合図として、他のロボットたちも起動したかのように、瞳がキラリと光った。

まずい!

誰もが直感的にそう感じた。これはイベントではない。彼らは侵略者だ。どういうわけかはわからないが、この学園を攻めに来たのだ。

兵器の臭いを醸し出したロボットたちが、それを証明していた。

 

「ぬおっ、もう攻めてきおったか!」

「学園長! 湖畔に生徒たちが多数! このままでは・・・」

「私たちが魔法を使って戦えば、これほどの目撃者を言いくるめるのは不可能です!」

「でもこのままでは・・・」

 

侵略などさせてはならない。それを食い止めるべく学園の者たちが続々と湖畔に現れる。

学園長を筆頭とした、麻帆良学園魔法先生に魔法生徒だ。

 

「おい、あれ高畑達じゃねえか?」

「葛葉先生も、学園長までいるぞ!?」

 

ロボットたちの集結に対して、屋根の上を飛んで移動する学園の教師たちの姿に生徒たちも気づいた。

その視線を感じながら学園長は少し唸るように考え、そして意を決したかのように魔法先生・生徒たちに言う。

 

「こうなれば・・・責任はワシが取る! 生徒たちの安全は、魔法の規則よりも重い! たとえ魔法の力が知られるようになろうとも、今は目の前の者たちを守るのじゃ!」

 

学園長の決意の叫びに、魔法先生たちは真剣な眼差しで頷く。

 

「ワシが先制する! みな後に続くのじゃ! 天神魔法・天照!!」

「学園長! うおおお、学園長の魔法初めて見た・・・すご・・・」

「さあ、ゆけい!」

 

そして彼らは杖を、刀を、魔力を次々と解放し、現れたロボット軍団に向けて先制攻撃を開始したのだった。

 

「う、うおおお!? なんだァ!?」

「ちょっ、高畑先生たちが強いの知ってたけど・・・ロボットたちが一瞬で大量にふっとんだァ!?」

 

学園側の先制攻撃で、大量のロボットたちが宙を舞う。

その人智を超えた力に生徒たちは空いた口が塞がらない。

これでもうバレたかもしれない。魔法という存在が明るみに出てしまったかもしれない。

しかし魔法先生たちは唇を噛み締めながらも前を見る。

今のこの現実を守るためにも、今は戦うことを決めた。

 

『ちくしょう・・・邪魔された。そうなんだよ・・・先生たちだって、巻き込まれている俺の話をいつも聞いてくれない・・・俺は何もしていないのに、ダイグレン学園の生徒ってだけで処罰を受ける・・・』

 

巨大ロボットのスピーカーから声が聞こえた。

その声を聞いて、タカミチが叫ぶ。

 

「シモン君! 堀田シモンくんだね! こんなことはやめるんだ!」

 

タカミチの言葉に、スピーカー越しの男・・・シモンが答える。

 

『ああ。あんたか・・・いつもいつも喧嘩は良くないなーとか言って、アニキに・・・いや、あいつに巻き込まれているだけの俺も一緒に怒る・・・高畑だな!』

 

スピーカーから聞こえた声に、タカミチは絶句した。 

これが本当にシモンなのか? たしかに声はシモンそのものだが、これがシモンなどと思うことができなかった。

タカミチもそれほど深く関わりがあるわけではない。ただ、学園の広域指導員として、学園で問題ばかり起こすダイグレン学園と関わることはある。

しかしこのシモンは、決してこんな全てに投げやりになったり不貞腐れたりするような男ではなかった。

 

「シモン君・・・君に・・・一体何があった!?」

『なんだよ~、今まで俺の話なんてあんたらは聞いてくれなかったじゃないか! もう遅いんだよ!』

「シモン君!?」

 

巨大ロボットが動き出した。

 

『見せてやるよォ! 俺はいつまでもアイツの後ろにいる男じゃない! 俺は力を手に入れたんだ! この・・・』

 

そう、巨大ロボット・・・

 

『このグレンラガンさえあれば俺はなんだって出来るんだよォ』

 

グレンラガンがドリル掲げて、タカミチに向かって襲いかかる。

タカミチは咄嗟にポケットに手を入れてカウンターの攻撃を放つ。

 

「仕方ない・・・豪殺拳!」

 

居合のような高速で放たれる巨大な拳。直撃したグレンラガンのバランスが揺らいだ。

 

『な・・・このやろう! やっぱ殴るんだな! どいつもこいつも!』

「やめろ、シモン君! それほど巨大な力で暴れるようでは、こちらも手加減ができない!」

『うるさい! そんなもん! そんなもん! そんなもん効かないぞ!』

 

まるで子供が駄々をこねているかのような動作で襲いかかるグレンラガン。動き自体は子供の喧嘩のようなもので、タカミチにとってはいかに巨大ロボでも負ける気はしなかった。

しかしやはりその巨体ゆえに手加減がしにくいこと、また長引かせれば生徒たちの危険が増すことへの懸念がタカミチを悩ませた。

 

 

「さすが高畑先生・・・って、それどころじゃない! 遠距離攻撃できる者たちは生徒の誘導をしながらの援護射撃を! 接近戦のみの方は、ロボが一体たりとも湖から出ないように当たってください!」

 

「しかし・・・これは・・・この数は・・・」

 

「泣き言を言う暇があるなら呪文を唱えろ」

 

「あーあ、これでオコジョになるのかな?」

 

 

風、炎、氷、雷、光。あらゆる属性の魔力が飛び交い、生徒たちは夢でも見ているかのような光景に唖然としていた。

突如湖から大量に現れた巨大ロボットに、それに生身で立ち向かう学園の教師と一部の生徒。

 

「ゆ・・・夢だよな・・・」

「ゆ、夢じゃないよ・・・まさか・・・本当に?」

「ね、ねえ美沙・・・これってどこまで本当かな?」

「さ、さ~、まあさすがにガチってことは無いと・・・思うけど・・・」

 

イベントや撮影やCGとも思えぬほどに真剣な眼差しで戦う教師たちの姿。

そう、これが現実で、彼らは大切なものを守るように必死で戦っているように見えた。

そして・・・

 

『どいつもこいつも・・・』

 

そんな必死さを一瞬で消し去ってしまうのもまた現実なのである。

 

『俺を俺を俺を俺を馬鹿にするなよォ!!』

 

高く突き上げたグレンラガンの拳がドリルへと変形する。激しい音を立てて回転するドリルをそのまま湖に深々と突き立てる。

水しぶきが巻き上がる。

いや、もはやそれは水しぶきなどという生易しいものではない。

湖の水全てに振動が伝わり、その振動がやがて巨大な波を作り出す。

 

「なっ・・・!?」

「ま、まずい!?」

「つ・・・つ・・・津波だァァァ!!」

 

まるで巨大な壁のように押し寄せる津波が、全てを飲み込む勢いで発生する。

 

「うっ・・・・・はああああああ、豪殺拳・乱打!!」

 

巨大な拳の柱が一部の感覚もあかずに高畑から繰り出される。

タカミチの実力と機転によって津波の水は弾き飛ばされ学園には被害がなかったが、もし一歩間違えればとんでもないことになっていたかもしれない。

 

「こ、・・・この子は・・・」

 

広場に緊張が走る。今のも僅かな間違いがあれば学園にとんでもない被害が及んでいたかもしれない。

 

「シモン君・・・なんてことを・・・言いたくはないが・・・退学どころでは済まないよ・・・」

 

高畑が火の消えたタバコを口から取りながら、震える唇でシモンに言う。

もう手遅れかもしれない。もう、この言葉はシモンには届かないかもしれない。

しかしタカミチは教師として最後の説得を試みた。

 

 

「もう一度言う・・・やめるんだ・・・良い思い出も悪い思い出もあったかもしれないが・・・この学園にいた君は・・・君たちは何よりも楽しそうだったではないか」

 

『高畑・・・』

 

「こんなこと教師として言ってはダメなのかもしれないけど・・・君たちは・・・カッコよかったよ・・・いつも・・・バカで・・・ワルで・・・いつだってぶっとんでいて・・・」

 

 

高畑の瞳には僅かな切なさを感じ取れた。広場にいる者たちもその言葉に戦いながら聞き入っていた。

 

「何も絶望をする必要がないぐらいに君もかっこよかった・・・誇らしそうだった・・・お願いだ。これ以上・・・かっこ悪い姿を見せないでくれ」

 

それは、教師としてではなく、ひとりの男としてのタカミチの本音だったのかもしれなかった。

しかし、今のシモンには響かない。

 

『うるさいなァ! 俺は強いんだ! 父さんからもらったこのグレンラガンがあれば、誰にも負けないんだァ!!』

 

タカミチに向かって暴走したシモンはグレンラガンの拳を振りかぶる。

ダメなのか? 教師として暴走した生徒一人も止められないのか? 己の無力さを痛感したタカミチの動きが一瞬止まった。

しかし・・・

 

「障壁突破『石の槍』(ト・テイコス・ディエルクサストー ドリュ・ペトラス)!!」

「雷の暴風!!」

 

グレンラガンの拳に、石の槍と雷が直撃した。

 

「こ、これは!?」

 

誰もが注目していただけに、誰もが現れたその人物に気づいた。

 

「まったく・・・シモン・・・こんなダダをこねて」

「シモンさん! これ以上の暴力はいけません! 僕だって怒りますよ! 本当に怒りますよ!」

 

フェイトとネギが、タカミチの目の前で並んでいたのだった。

 

「ネギ君! それに、フェイト・アーウェルンクス!?」

「おい、なぜフェイト・アーウェルンクスが!? 奴は堀田シモンの仲間ではないのか!?」

「超鈴音も・・・馬鹿な、ニアさんも居るぞ! 彼女こそシモンくんの味方ではないのか!?」

 

フェイトはシモン側の者ではなかったのか? 

そんな動揺が走る中、今度は地上の大量のロボットたちが激しく飛んだ。

 

「おりゃああああああ!」

「神鳴流――!」

「ふははははは、主に逆らう愚かなロボット兵器たちよ。おいたは許さないネ!」

「さあ、まずは邪魔な雑兵から片付けるでござる!」

「って、デケえー! なんだありゃあ!?」

「すす・・・すっごい・・・」

 

アスナを筆頭に、刹那や楓たち、さらには超までこの場に参戦していた。

 

「あの子達はネギ先生のクラスの!?」

「って、アスナたちじゃん!? みんなしてなにやってんの!?」

「超部長に古部長まで居るぞ!?」

 

急に緊迫した雰囲気から怒涛の嵐となって押し寄せるネギ・パーティーが参戦し、反撃の狼煙を上げる。

 

「ネギ君・・・それにフェイト・アーウェルンクス・・・なぜ君たちが!?」

「話はあとだ、高畑・T・タカミチ。今はシモンを止めることが先決だ。この場は昨日や過去の因縁を持ち出さず、目の前のことを集中しよう」

「な、馬鹿な・・・ふざけるな・・・君は・・・君はだって・・・」

 

タカミチはそこから先を言おうとしたが戸惑った。何を言う気か? かつて敵だったこと。ナギのこと。それともシモンのことか。

タカミチにはネギでも知らない、フェイトに対して一言では収まりつかないほどの複雑な思いがあった。だからこそ簡単に信じられるはずがなかった。

 

「タカミチ・・・今はフェイトの協力も必要なんだよ。シモンさんの洗脳を解くために」

「せ、洗脳!? それではシモン君は自分の意思ではなく?」

「うん。フェイトは確かに何を考えているかわからないし、女装も好きだけど、シモンさんを想う気持ちに嘘はない! だからそのシモンさんを助けるために、今はフェイトと協力して! タカミチ!」

「いや、待てネギ君! 僕は別に女装が好きなわけでは! それに今は違う! ちゃんと着替えてきた!」

 

シモンが洗脳をされている? なんだそれはと思う一方で、タカミチはある意味納得できた。

 

『お前らは・・・なんだよ・・・ネギ先生もフェイトも・・・あれだけ俺を持ち上げたりしたくせに・・・なんでみんな邪魔するんだよォ!!』

 

確かにそれぐらいのことをされなければ、あのシモンがこのような大胆な暴挙に出るはずがない。

 

「まったく仕方ない・・・しかし・・・アーウェルンクスに協力など・・・あれだが・・・」

 

心の迷いが晴れてどこかスッキリしたタカミチは、「やれやれ」と肩を竦める。

 

「ふん、我慢したまえ。まだまだ先は長いんだからね」

「先?」

「ああ。シモンの洗脳を解いても・・・まだあの女と・・・まあ、ザジがどうでるか分からないけど、アンスパも居るしね」

「アンスパ?」

 

フェイトがなぜタカミチやネギたちの力を必要としているのか。それはやはりアンスパの存在が大きかった。

セクストゥムはフェイトとほぼ同等。しかしアンスパは論外だった。過去の世界で嫌というほど味わっている。

自分の意地だけでシモンを助けられないなどということはあってはならない。だからこそフェイトは、複雑な気持ちではあるが宿敵と手を組むことも躊躇ったりはしなかった。

 

「さあ・・・まずはシモンさんの洗脳ネ!」

 

超が合図を出す。その時、湖上空で茶々丸が飛行していた。

 

「ニアさん・・・この辺で大丈夫ですか?」

「はい。あのロボットの頭部・・・シモンがいるところに下ろしてください」

 

飛行している茶々丸に抱えられているニア。誰もが地上の戦いやネギとフェイトに気を取られているすきにグレンラガンに近付く二人。

 

「シモン・・・今度は・・・囚われているあなたを私が助けます!」

 

ニアは力強い瞳で宣言する。

学園祭では父であるロージェムに束縛されていた自分をボロボロになってまで助けてくれたシモン。いや、その時だけじゃない。

出会ったときも、いつでも、時の超えた過去の世界でもシモンはいつだって命懸けで戦ってくれた。

だからこそ、今度は自分の番なのだ。

そんな思いを込めてニアがグレンラガンの頭部に近づいてシモンに叫ぶ。

だが・・・

 

「シモン! ニアです! 私です! シモン、私は――」

 

その時、ニアと茶々丸に魔力の篭った冷気が放たれた。

 

「マスターの勇姿の邪魔はさせません」

 

冷たい表情と冷たい言葉。

 

「あなたはっ、セクストゥムさん!?」

「ニアさん!?」

 

上空を飛ぶニアと茶々丸よりもさらに上空から二人に向かって魔法を放つセクストゥム。

完全にその存在に気づかなかった茶々丸とニアが宙で飛ばされた。

 

「ニア!?」

「茶々丸さん!?」

 

今度は誰だ?

あれが噂のフェイトの妹か?

マジで何かキミかわうィーね!

といった様々な反応が広がった。

 

「ニア、大丈夫か!」

「は、はい、でも・・・失敗してしまいました」

 

シモンの目を覚まさせるにはニアしかいないと思い、派手に自分たちが暴れて囮になる作戦だったが、セクストゥムの所為で阻まれた。

飛ばされたニアを受け止めて、フェイトは歯噛みしてセクストゥムを睨みつける。

 

「あの女・・・やはりシモンには悪いが機能停止させるべきだった」

「フェイト・・・あの人・・・どうにか勝てる?」

「・・・勝てはするとは思うけど・・・しかし、敵は彼女一人ではない・・・あまり力を使いたくない・・・」

 

正直この場にはいないがセクストゥムよりもはるかに厄介なアンスパもいる。

タカミチや学園長がこの場にいる以上、セクストゥムぐらいはどうにかなるだろうが、それでも戦えば多くの力と魔力を消費することになる。

フェイトはそれだけは避けたかった。

 

「フェイトさん・・・私・・・セクストゥムさんも説得してみます。セクストゥムさんもシモンが好きなら・・・本当のシモンがどう思うかと訴えれば・・・」

「いや、それは無駄だニア。セクストゥムは・・・洗脳されていようとも、シモンを絶対に裏切らない。そういう風に・・・造られているんだ」

「フェ、フェイト・・・作られてるって・・・、タカミチは何か知ってるの?」

「それは・・・」

 

とにかくロボット軍団に加えてセクストゥムがシモンまでの道を阻む。これは相当面倒な展開になったと言わざるを得ない。

そしてさらに事態は・・・

 

「兄様に・・・魔法使い多数・・・私の残存する魔力エネルギーを計算しても・・・私の敗北が濃厚でしょう・・・」

 

良いも悪いも別にして、さらに混沌と化すのであった。

 

「マスターに・・・エネルギーの補給を要請する必要があります」

 

何を思ったか、突然セクストゥムが反転してグレンラガンのコクピットへ向かい、頭部をノックする。

 

「マスター・・・マスター・・・その・・・私の願いを・・・聞いていただけないでしょうか?」

『なんだよ、願いって・・・』

 

ぶっきらぼうに答えるシモンだが、味方の言葉ゆえに頭部のコクピットを開いた。セクストゥムはその中に軽く会釈だけして入る。

セクストゥムがコクピットに入った瞬間、コクピットは再び閉じて、外からでは二人が中で何をやっているのかがまったく分からない状態になった。

 

「見て、超! あのロボットの中に、あの女の子が入っていったわ!」

「うむ・・・何を企んでいるネ?」

 

雑兵と戦いながらグレンラガンを見上げる一同。果たして何が起こるのか? そのことに皆が注目していた。

そして・・・ナニかが起こった。

 

『マスター、少々魔力が足りないようです。代価のエネルギーとして、マスターのエネルギーを注入していただけないでしょうか?』

『どうすればいいんだ?』

 

ネギが不安そうにグレンラガンを見上げて凝視する。フェイトやアスナたち、この場に集った全員がそうであった。

コクピットで何が起こっているか分からず、これから何かが起こるかもしれに嫌な予感を抱きながら、神経をすり減らしていた。

 

『私を起動させた時と同じように、私の核にマスターのドリルを突き刺し、エネルギーを入れていただければ結構です』

『ドリルを? いいのか?』

『はい。ブスリとお願い致します』

『分かった・・・俺の螺旋力をお前に分ける』

 

シモンはそう言って、ドリルを取り出し、先端に螺旋力を込めてセクストゥムの肉体の中心地に突き刺した。

その瞬間、溢れんばかりの赤い色の光がセクストゥムに注入され、その光がコクピットの外にまで漏れた。

 

「なんだ・・・一体何をしようとしているんでしょうか・・・」

 

スピーカーがオン状態だった。

まあ、シモンがスピーカー越しに愚痴を言っていたのだから、それもそうだろう。

これで中での動きは見えないが、何が起こっているかは声で判断できた。

そう、声だけで・・・・

中の様子は伺えないが、二人の声だけは聞こえてきた。

そう・・・声だけが・・

 

 

『あっ・・・・・ああああああ!』

 

 

妙に艶っぽいセクストゥムの声が、学園中の時を止めた。

 

 

『い、いきなり・・・お、奥まで・・・マスターの・・・も・・・の・・・が・・・突き刺さって・・・』

 

『セクストゥム・・・いいのか? 嫌なら抜くぞ? 少しほぐしてからのほうが良かったんじゃないか?』

 

 

『えっ!? だ、ダメです・・・マ、マスター、や、やめな・・・んっ・・・いで・・・ください! ぬかない・・・で・・・』

 

 

『だってお前、辛そうじゃないか。痛いんじゃないのか?』

 

 

『ま、まだ2回目ですから・・・ん、すぐに慣れます。ですからマスター、私のことなどお気になさらず・・・マスターの思うとおりに・・・お好きなように動いてください』

 

『じゃあ、もっといれるぞ』

 

『は・・・いっん!? ああ! 入ってきます・・・マスターのが・・・いっぱいに・・・いっぱいに・・・』

 

『この程度でそれで大丈夫なのか?』

 

『えっ、そんな!? マスターのが・・・まだ大きくなっ・・・っう、えっ、すごい、回転が!? おおき、マスターのが・・・あ、あああ!』

 

『おい、あんまり我慢するなよ。本当にダメそうなら俺は・・・』

 

『マスター・・・イジメないで・・・ください。今やめられたら・・・ワタシ・・・は・・ん、おかしくなってしまいます!』

 

『そうなのか? でもお前って・・・ずいぶんとわがままなんだな』

 

『ち、違いま・・・うっ、ん! は、激し・・・マスターのがこれほど・・・中で・・・どんどん大きっ・・・くう!』

 

『やっぱりもうダメだよ。これ以上はお前が本当に壊れる』

 

『だ、らいじょ・・大丈夫です。マスター・・・嫌・・・ぬかないで・・・全部・・・私の中に・・・だから、壊れてもいいですから・・・もっと・・・』

 

『ダメだよ! お前までダメになった・・・俺はどうすればいいんだよ!』

 

『マス・・・ター・・・』

 

『ニアもフェイトも・・・俺を間違ってるって責めるんだよ! お前まで居なくなっちゃったら俺・・・』

 

『マスター・・・私は・・・いついかなるときもおそばに・・・今も・・・これからも・・・繋がって・・・うっくうううう!』

 

『セクストゥム!』

 

『マスター、マスター、マスター・・・・・・マスタァァァァァ』

 

 

その時・・・まるでナニかの絶頂を迎えったかのような女の声が麻帆良に響いた。

 

 

『はあ、はあ、はあ、・・・なんか・・・いっぱいだしちゃったよ・・・』

 

『はい・・・あっ、中から溢れて・・・ダメ! 急いで栓をしないと溢れてしまいます!』

 

『そんなに慌てなくても』

 

『ダメです。せっかくマスターが私のために分け与えてくださったもの・・・絶対にこぼしたりなどしません』

 

『セクストゥム』

 

『はい。ああ・・・力が湧いてきます・・・今なら無限に戦うことができます。ありがとうございます。マイ・マスター』

 

 

・・・という音声だけがスピーカーから聞こえたのだった。

 

なぜか男子生徒たちは顔を真っ赤にしながら、急に前かがみになってその場で正座した。

 

女子たちは言うまでもなく顔を真っ赤にして・・・

 

そしてコクピットが開く。

 

 

「さあ、続きです」

 

「「「「「「「「「「ナカでナニがあったアアアアアアアアアアアア!!」」」」」」」」」」

 

 

中からはセクストゥムがこれ以上ないぐらいに肌をツヤツヤにして現れたのであった。

 


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