【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第66話 テメエの執念感じたぜ

どちらが正義で悪なのか、んなもん事情の知らぬ者たちには分からない。

ただ分かっているのは、洗脳された少年は全てを破壊するために。現れた仮面の男は憎き男に恨みをぶつけるため。

かくして両者の拳が時を超えて再びぶつかり合うのであった。

 

「スカルブレイク!!」

「うおおおお、死ねえええええええ!!」

 

虚ろな瞳で全てを破壊する力をふるう少年に対して、憎しみとドス黒い感情を渦巻いたパンチを放つ男。

シモンとデュナミス。

この戦いは誰にも予想できなかった。

だが、勝負はそれほど長引くものではない。

グレンラガンとデュナミスの召喚魔。

同じ超重量級同士のぶつかり合いならば、勝敗を決するのは・・・

 

「なっ!?」

「笑止! その程度の魂で我を突き破れると思ったか!」

 

勝敗を決するのは、どちらがこの勝負により懸けているかだ。

そしてその一撃の撃ち合いを制したのは、なんとデュナミス。

グレンラガンのドリルを装着した拳はデュナミスの巨大召喚魔の拳によって弾かれた。

 

「そら、真剣勝負の最中だ! 何をボケッとしているのだ! 私は一切の手加減もせんぞ!!」

 

僅かに出来たシモンの動揺。しかしデュナミスは容赦なくその隙に攻撃を叩き込む。

 

「虚空影爪・貫手!!」

 

帯状の黒き影を巨大召喚魔の腕に展開させ、繰り出す必殺技。

その破壊力、速度、どれをとってもシモンに反応することも出来ず、無防備のグレンラガンの胴体を軽々と貫いた。

 

「シ、シモンッ!?」

「デュ、デュナミス!? なんてことを!?」

 

胴体を貫かれたグレンラガンの姿にニアたちが悲鳴を上げる。当然だ。いくらグレンラガンがロボットとはいえ、中にはパイロットであるシモンが乗っている。

勿論、シモンが乗っているのは頭部の部分のために今の攻撃でシモンが傷つくことはないのだが、まったく影響がないとは言えない。

今のシモンを止めるには生半可な力では止まらぬとはいえ、デュナミスの容赦のかけらもない攻撃にニアたちは居てもたってもいられなかった。

 

「黒ニア!」

「はい、彼を止めなくては!!」

 

慌てて飛び出そうとするフェイトと黒ニア。

 

 

「させんッッッ!!!!」

 

「「―――ッ!?」」

 

だが、シモンを助けようと動いた彼らに気づいたデュナミスが、湖に衝撃波を放って行く手を塞ぐ。

 

「フェイト様!?」

「お下がり下さい、フェイト様! 今のデュナミス様の力に巻き込まれたらいかにフェイト様とて無事ではすみません」

「わわ、私たちがお守りします! フェイト様、私たちの後に!」

「絶対死守です」

 

吹き飛ばされたフェイトを守るように、魔力の防壁を展開させて守るフェイトガールズ。

そういう健気な姿はデュナミスには殺意の対象であるのだが、今のデュナミスはそれすら目に入らぬほど目の前にいる男しか見ていなかった。

 

「邪魔をするな。テルティウムよ!! これは我とシモンにのみ与えられた舞台! 一切の手出しは無用! 我らどちらかの命つきるまで、神にも悪魔にも、ましてや造物主(マスター)にすらこの戦いを邪魔させん!」

 

ここは決して踏み込んではならぬ領域である。今のデュナミスはそれを踏み込む者は誰であろうと許さない。

その痛いほど伝わってくる憎悪に当てられながら、それでもフェイトは友を守るためにデュナミスに叫ぶ。

 

「デュナミス、なんてことを・・・君は自分のやろうとしていることが分かっているのか! シモンはただの人間だ!」 

「・・・だからどうした?」

「人間を殺害するということがどれほどの・・・大体、僕たちには人間殺害不可という制約が刻まれている。もしそれを無理矢理にでも破ろうものなら、君自身の存在すらただではすまないように僕たちは造られていることを忘れたのかい!」

 

造られた存在である自分たちが、もし造物主の制約を無理矢理破った場合どうなるのか?

実のところ、どうなるのかは彼らも知らない。なぜならその制約を破ったことがないからだ。

実際もし人間を殺そうとすれば、直前になんらかのリミッターが働き、力を行使できないようになっている。

だが、それでも無理矢理殺そうとしたらどうなるか? そこまで彼らは試したことはないが、何らかのリスクや強制的な力が働くことは確かだろう。

最悪の場合・・・

 

「どうなるかだと? ふっ、私の肉体は制約違反によって破損・・・最悪の場合は消滅して跡形も残らなくなる・・・その可能性もなきにしもあらずだろう」

 

しかしデュナミスは・・・

 

 

「しかし、それでも構わん!!」

 

「「「「「「「「「「ッ!!??」」」」」」」」」」

 

 

その男の覚悟に、学園が揺れた。

死んでも構わない・・・それはただの勢いでも、ましてや格好付けの言葉ではない。

デュナミスの言葉からは確固たる意思と熱が宿っていたことを、誰もが感じ取れた。

 

「この20年片時もこの男を憎まぬ時は無かった・・・その憎しみを晴らすことができるのならば命を懸ける価値はある! たとえ肉体と魂が滅ぼうとも・・・私の心に一切の悔いはない! 本望だ!」

 

死して本望。

戦争も知らぬ、戦いも知らぬ、そんなものが大多数を占めるこの学園において、その台詞とその覚悟をどれだけのものが理解できるのか。

 

「この男を野放しにしておいては、私だけではない・・・この世の不平等に苦しむ者たちにも面目が立たない!!」

 

だが、デュナミスはそれで構わない。たとえ誰に理解されなくとも、誰に止められようとも、彼は彼自身の進む道を決して止めることはない。

 

「あの男・・・なんという執念じゃ・・・」

「これほどの憎悪・・・しかしそれを貫き通すこの信念は一体・・・」

 

もはやこの戦いの場からいつの間にか傍観者としてこの戦いを見ているだけしか出来なくなった学園長もタカミチも、そして他の魔法先生や魔法生徒たちもデュナミスのその執念を感じ取った。

 

「なんなのよ・・・刹那さん・・・あいつのことを知ってる?」

「いいえ・・・知りません・・・ただ、高畑先生やフェイト・アーウェルンクスたちの様子から、かつてネギ先生のお父上たちと戦った者としか・・・」

「お父さんの敵・・・でも、だったら何でシモンさんを・・・そしてどうしてあそこまでシモンさんを憎むというのですか・・・」

「分からぬ。しかしあの御人・・・フェイト殿の仲間であるが・・・決して揺るがぬ執念のもとに戦っている・・・そう印象を受けるでござる・・・」

 

アスナ、ネギ、タカミチたちが呟く疑問には、この場にいるフェイト以外の全ての者たちが頷いた。

一体二人にはどんな因縁が? 学園を破壊しようとする不良少年と、かつて世界を征服しようとした『完全なる世界』の幹部にはどれほど壮大な因縁があるのか。

それは誰にも分からない。

誰にも理解できない。

しかしこれだけは分かる・・・

 

「僕にお二人の因縁は分かりません・・・でも、これだけは分かります。あの人は・・・デュナミス・・・さんは・・・引くに引けない・・・もう、信念なんです」

 

デュナミスを知らない。戦争も知らない。因縁も知らない。そんなデュナミスの想いをどうやって知る?

しかしネギたちには分かる。

 

「もう、理由とか・・・そういうんじゃないんだと思います。20年も人を恨む理由とか、戦う理由はそんなんじゃないんです」

 

いや、ネギだけではない。

 

「せや、きっと恨みやない。信念なんや」

 

小太郎も感じ取る。そして彼らだけではない。

タカミチや学園長。いや、もはや学園の男子生徒たちも感じ取る。

 

「わかんねーよ・・・わかんねーけど・・・どうしてだよ・・・くそ・・・」

「ああ、あの仮面の兄さん・・・きっと本気で・・・ちくしょう・・・なんか・・・なんかしらねーけど・・・」

「涙が・・・」

 

命を懸ける。それは容易く口にして良い物ではない。

命を粗末にするな。命をなんだと思っている。軽々しく口にするな。

たいていの者はそう思うだろう。

命を粗末にする選択肢は愚かだ。しかし、男はそれでもなお・・・

 

「くそ・・・どけよ・・・なんで邪魔するんだよッ!?」

「いくらでも立ちふさがるさ、シモンよ! ドリルで貫けるならば貫いてみよ! 突き立てられるものならば突き立ててみよ! 私は決して貴様からは引き下がらん!」

 

それでも男は、時には命すら惜しまずに自分の信念を貫き通す者の姿に憧れを抱く。

 

「そして何よりも・・・・」

「ッ!?」

「あの少女のために! もう私は彼女に二度と会えぬであろう! 彼女は私のことを覚えてもいないであろう! だが・・・それでも私は・・・・」

「くそッ! クソっ! なんだってんだよ!?」

「女一人を幸せに出来ぬ貴様など、私の全身全霊を懸けて否定してくれるわ!!」

 

美しいとすら思う。

そして・・・

 

「女・・・女のために!? どういうこと!?」

「まさかあの兄さん・・・自分のことを覚えていないかもしれない女のために・・・」

「ば、ばかじゃねーのか・・・そんなことのために死んでも構わねえなんて・・・」

「やべえよ・・・余計に涙が・・・ちくしょう・・・なんてイカした兄さんなんだよ!」

 

その女が誰なのかは誰にもわからない。だが、デュナミスが何を想ってこの場にいるのかだけは皆が知ることができた。

 

「何・・・ボーっとしとんのや・・・ネギ・・・」

「小太郎君・・・」

「あの仮面の兄ちゃんが敵か味方かなんて分からん・・・それにシモンちゅう兄ちゃんを殺すっちゅうのも見過ごせるもんやない・・・せやけど、忘れたらあかんのは俺らも戦ってるっちゅうことや」

 

そして・・・心を動かされる。

 

「見てみい、ネギ! この学園の湖を! まだまだロボット兵士たちがぎょうさんおるんや! こいつらもこのまま野放しにしてええはずがない!」

 

そうだ、デュナミスやシモンにばかり気を取られていてはダメだ。自分たちは戦っているのだ。

この学園を破壊しようとするシモンに従うロボット兵士たちが居る。

 

「そうだよ・・・」

 

ネギは拳と唇を噛みしめる。

 

「僕たちだって・・・戦っているんだ!」

 

例え二人の戦いに手出しは出来ずとも、ここは戦場。そしてここには守るべき者たちがいる。ならばいつまでも目を輝かせている場合ではない。

 

「皆さん、態勢を立て直します! まだ戦う力、体力、そして意思のある人たちは僕と共に行きましょう!」

 

理由なんて問わない。

 

 

「たとえか過去がなんであれ、デュナミスという人はこの学園を破壊しようとするシモンさんと戦っているんです! 僕たちが・・・僕たちが黙って見ているだけでいいはずはありません!」

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

 

そうだ、みんな肝心なことを忘れていた。

ネギの言葉で誰もが気づいた。

 

「いや・・・だからシモンは洗脳されているんだって・・・」

 

フェイトのツッコミなんて誰も聞いていない。

 

「そうよ・・・なにボーっとしてんのよ、私たち!」

「かつて世界を征服しようとした者がこの学園を守っている・・・そうです・・・私たちがボーっとしている場合ではありません」

「負けたらあかん・・・ここはウチらの学校や」

「そうでござる・・・拙者らにも意思はある」

 

理由なんてなんでもいい。今は戦おう・・・今はそれだけでいい。

 

「お、俺も行く・・・」

「俺も・・・」

「私たちだって!!」

 

戦う。その意思を持ったのは何も魔法使い側の者たちだけではない。

 

「名前も知らない仮面の兄さんが戦ってるんだ! 俺たちだけ逃げちゃいられねえ!」

「そうよ、ここは私たちの学校だもん!」

「中等部の女子や子供先生・・・教員の連中にばっかまかせてられるか!!」

「力になれなくても、私も逃げない! 声が枯れるまで応援するんだから!!」

 

戦おう。あの、仮面の男だけに戦わせるな。

 

 

「「「「「「「「「「いくぞォォォォォォォ!!!! 仮面の兄さんに続けエエエエエエエ!!!!!」」」」」」」」」」

 

 

それは、麻帆良学園が一つになった瞬間でもあったかもしれない。

この状況は、今現在戦っているデュナミスの耳には届いていない。むしろ、急にワラワラと現れ出した人間を邪魔だとすら思ったはずだ。

 

「邪魔だ人間共!! 私が用のあるのは、シモンだけだ!! 邪魔するものは消すぞ!!」

 

湖の湖畔にいる生徒たちに叫ぶデュナミス。しかし皆はどこか温かいものを見るような眼差しでデュナミスを見る。

 

「へへ、素直じゃねエ兄さんだ」

「うん、そう言って私たちのために戦ってくれてるんだよね!」

「俺たちも負けてられねエ!!」

「仮面のお兄さん・・・がんばって!! 私たちはあなたを信じてる!!」

「やったろうやないか!」

 

拍手や指笛、歓声が巻き起こる。

誰もがデュナミスの脅しに逃げたり怯えるどころか、むしろ「あんたの気持ちは分かってるぜ!」的なウインクしたり、親指を突き立てたりしている。

 


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