【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第68話 デュナミスが心を知った日

「ば、ばかな・・・、俺を応援してくれている・・・旧世界の人間が・・・」

 

さすがに今まで気にしていなかったデュナミスも気づいた。

どうしてこんなことになっている?

いつの間にか自分の半分も生きていない者たちが、目を輝かせ、時には涙を流し、自分を応援してくれている。

 

「な、なんだ、くだらん! キサマら人間たちの応援などもらってもうれしくは・・・うれしくは・・・」

 

うれしくはない・・・だが、何だ? 

悪くは・・・・・・ない。

 

「これは一体なんだ・・・これは何なんだ!!」

 

デュナミスはこんな感情は知らなかった。

うれしくはないが、心がポカポカする感じだ。

初めて綾波フェイと出会ったときと似ているが、明らかに違うこの心を包み込むような感覚は。

・・・そうか・・・

 

「そうか・・・これが・・・人間・・・これが心か!!」

 

自分は人形。一生知らなくて良い物だと思っていた。

そんなものはくだらないとすら思っていたかもしれない。

だがこうして、触れてみればなんとも・・・

 

「これが人間・・・なんという温かいものなのだ・・・」

 

デュナミスは仮面の下で、生まれて初めて嫉妬以外の涙を流したのだった。

 

「いいな・・・いいものだな・・・人間とはいいものだ・・・」

 

生まれて初めてデュナミスが心を知った。そして知ったからこそわき上がる。

わき上がるのは心の炎。

負けてはいけないという強い思い。

 

「私はお前たち人間とは違う。だが、分かる。だからこそ私は一層この戦いは負けられん!」

 

心を貰った。なら、

 

「心を貰ったからには、私は応えねばならぬ!」

 

そう、応えるのだ。

誰のために?

自分のため。そして自分に心をくれた人たちのためだ!

だから負けられない。

 

 

「うおおおおおおおおお、私は負けられなぬ! シモンというこの世の不平等をうち消すまで!! 貴様の所為で泣く男がいる! 泣く女がいる! その痛みを知れ!」

 

 

生涯で最大の魔力を全身に漲らせるデュナミス。

 

 

「貴様を倒し、あらゆる理不尽やアンフェアな不幸の無い永遠の園を造る! それが私の目指す『完全なる世界』だ!!!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおお、デュナさーーーーーーん!!!!」」」」」」」」」」

 

「なぜだ!? さ、さりげなく僕たち完全なる世界のテーマにちゃんと沿っているだけにタチが悪いぞ!?」

 

 

デュナミスが今、自分の限界を超え・・・

 

「お前が死ねよおおおおおおおおお!!!!」

「なにっ!?」

 

そのときまた、責められるだけ責められまくり、理不尽な怒りに余計にやさぐれたシモンも限界を超える。

 

「ど、どういうこと!? シモンさんの乗っている巨大メカが!?」

「紅い渦巻く光を纏っている!?」

「シモン!?」

 

ネギたちは知らない。しかしこれはかつてとは逆のパターンだ。

それは20年前の魔法世界での戦い。負の感情で戦っていたデュナミスと、正の感情で戦っていたシモン。

しかし20年後の今、正と負の感情が入れ替わった。

 

「見せてやる! 強制合体だ!!」

 

シモンの叫びと同時にグレンラガンの機体から無数のドリルが伸び出した。フルドリライズ形態だ。

そしてその幾多に伸びたドリルは湖にいるロボット兵士たちに突き刺さる。

何をする気だ!?

答えは一つ。千を遙かに超えるロボット兵士たちにドリルを突き刺したグレンラガンは、ロボット兵士たちをそのまま引き寄せて取り込む。

 

「バカな!?」

「ちょちょちょちょちょーーッ!!??」

「なななななな、んなのありか!?」

 

大量のロボット兵士たちの機体を取り込んでみるみる巨大化し、機体も変形させていくグレンラガン。

その大きさはデュナミスの召喚魔を遙かに超えて、学園全土を見下ろすほどの巨大で強大な姿を見せる。

 

「見たか! これが俺の、全機合体・ダイグレンオーだ!!!!」

 

この学園の終末を告げる最大最強の魔人の光臨だった。

誰もが見上げて腰を抜かすほどの圧倒的な存在感。

見上げてネギやフェイトたちも言葉を失ったぐらいだ。

だが・・・

 

「上等だ、シモンよ!! 言ったはず、私は決して引き下がりはせん!!」

 

腰を抜かすでもない。言葉を失うのでもない。

立ち上がるでもなく、叫ぶでもなく、勇猛に立ち向かった。

 

「デュナミス~!!」

「貴様が限界を超える? 想定内だそんなもの! 私は貴様のその限界をも超えていく!!」

 

なんと、デュナミスの巨大召喚魔が跳んだ。拳を握りしめ、デュナミスと共に天へ向かう。

 

バカな・・・

無謀だ・・・

何を考えている!

いや、考えなどはない。デュナミスにあるのは想い!

 

 

「ギガドリルブレイク・ダイグレンオースペシャルだ!!」

 

「虚空影爪 貫手八殺!!」

 

 

これがシモンとデュナミス・・・

ひょんなことからいがみ合った二人の最後の衝突。

 

 

「お前なんか目じゃねーんだよ! 消し飛べ!」

 

「ふっ、お前は20年前の方が手強かった! この私の心を砕くほどにな!」

 

「黙れ!!」

 

「今こそ決着をつけてやるぞ!!」

 

 

デュナミスは見抜いていたわけではない。

だが、シモンの強制合体は完全ではない。

心と心のぶつかり合いの合体。どこまでも諦めない心にドリルが応えてシモンの合体は成り立っていた。

強制や支配で起こる合体なんか、ただのツギハギだらけで中身の伴っていないスカスカの存在。

 

「影使いデュナミス、今こそ日の光のもとへ行こうではないか!!」

 

そんなものに、命すら懸けて戦おうとするデュナミスに及ぶはずはない。

 

「そんな!? なんで!?」

「私の勝ちだ、シモン!!」

 

巨大召喚魔の猛々しい腕から繰り出される高速の拳は、ダイグレンオーのドリルを粉々に砕き、そしてついにはダイグレンオーの腕、胴体、そして、ダイグレンオーという存在そのものを粉々に砕いたのだった。

 

「デュ、デュナミスさんが勝った!?」

「いえ、シモンは!?」

「ちょっ、これは二人ともまずいネ!」

「シモンさん、デュナミスさん!」

「マスター!?」

 

ダイグレンオーの残骸が雨のように湖に落下していく。

デュナミスもまた全ての力を出し切ったために、巨大召喚魔を維持できぬほど消耗した。

巨大召喚魔は消え、デュナミスは受け身も取れぬ状態で麻帆良の大地に叩きつけられた。

彼の姿に涙を流しながら慌てて駆け寄る麻帆良の生徒たち。そこには、仮面が砕けたデュナミスの素顔があった。

仲間のフェイトガールズたちですら初めて見たデュナミスの素顔。意外に端整で力強い顔つきに、学園の女たちは思わず顔を赤らめた。

これが、自分たちの学園を守ってくれた男・デュナミス。

 

 

「デュナミスさん、しっかりしてー! 誰か、保健室の先生を!」

 

「医者が先だ! きゅうきゅうしゃー! 頼む、おれたちの英雄を救ってくれよーーー」

 

「このかさん!」

 

「お嬢様、今なら学園中のイベントということで魔法も誤魔化せるはずです! 急いでデュナミス氏を!!」

 

「は、はいな!!」

 

 

デュナミスの素性? んなもん知るか! 

無防備にデュナミスに駆け寄ろうとする生徒たちをタカミチたちが止めようとしたが、そんなもん知らないとばかりに皆がデュナミスに駆け寄った。

誰もが傷つき倒れるデュナミスに涙を流しながらその容態を伺っている。

 

 

「う・・・ぬう・・・」

 

「「「「「デュナミスさん!?」」」」」

 

 

その時、ようやくボロボロのデュナミスが声を出した。しかしそれは今にも消え失せそうに弱々しい声だ。

その痛々しい姿に誰もが涙が止まらなかった。

 

 

「あんた、しっかりしてよ! ちゃんと元気になって私たちに『ありがとう』って言わせてよ!」

 

「ぬ、ぬう? ふっ、もはや力を出し尽くして目も霞む・・・幻も見える・・・黄昏の姫御子が私に涙を流すなど・・・ありえぬのだから・・・」

 

「なによ! なにわけのわかんないこと言ってんのよ!」

 

「明日菜くん・・・その男はかつて君を・・・」

 

「タカミチは黙ってて!」

 

「うん・・・・・・ごめんネギ君黙ってる・・・」

 

 

タカミチも別の意味で涙を流しそうだった。

 

(な、なんだこれは!? 僕たちはかつてこの男と・・・なんだ・・・師匠・・・ナギ・・・)

 

もはや英雄と同等の扱いを受けているデュナミスに、なぜかタカミチはえらく落ち込んだのだった。

 

「よい、人間よ。私はもう十分だ・・・最後に・・・これだけの者たちに心をもらったのだから・・・」

「あかん。しっかりしい。今、治したるから!」

「よいのだ。私に心残りは・・・」

 

全てを出し切り、今にも消えてしまいそうなデュナミス。このかが懸命な治療を続けているが、すでにデュナミスは何かがふっきれたような表情をしていた。

 

「いや・・・心残りは一つだけ・・・彼女だ・・・綾波フェイ・・・彼女は今・・・どうしているだろうか・・・」

 

綾波フェイ・・・ある意味ではシモンと同じくデュナミスの人生を変えてしまった者。

 

(あ・・・まずい・・・)

 

その瞬間、ビクンとフェイトの肩が跳ね上がる。

フェイトはコソコソとその場から逃げ出した。

しかしまわりこまれた。

 

 

(フェイト!)

 

(フェイト・アーウェルンクス!)

 

(フェイト殿!)

 

 

回り込んだのはネギ、刹那、楓の三人。

 

 

(まて、何で僕を見る!)

 

(デュナミスさんの願いを叶えてあげて!)

 

(いやいや、そんな涙目で僕を見るな! 僕は今からシモンを探しに行かなくては!)

 

(フェイトよ、綾波フェイとデュナミスさんの間に何があったかは知らない。しかし、このままではあまりにもデュナミスさんが不憫!)

 

(待て、僕の女装にはツッコミなしかい!?)

 

(思いを受け入れよとは言わぬ、しかしこれぐらいの望みぐらいは・・・)

 

 

待て、なんでこうなった?

今のネギたちはフェイトですら逃げられぬほどの高速でフェイトを追いつめ・・・

そして・・・

 

 

「デュ、デュナミス・・・」

 

「ぬおおおおおおおおおお、あ、あ、綾波!? バカな、私は幻でも見ているのか!?」

 

「うん、幻だ・・・お願いだからそのまま死んでく・・・いや、なんでもないからネギ君たちも睨まないでくれ」

 

 

二度とやらない。二度とやらない。でも結局やってしまう綾波フェイのご光臨だった。

 

 

「「「「「「「ぬあああああああああああああああああああああああ!!?? か、可愛いい!? なんだ、この子は!?」」」」」」」

 

 

そしてそのカリスマ性は、20年たったこの時代でも十分すぎるほど通用したのであった。

 

 

「「「フェフェフェフェフェ、フェイト様ッ!!??」」」

 

絶対にありえぬ光景を目にしてしまった彼女たち。二秒で綾波フェイの正体に気づいた。

尊敬し、生涯を賭して使えるべき主と仰いだ者のこんな姿は彼女たちには・・・

 

 

 

栞(えっ、なんでフェイト様・・・あっ、でもすごく可愛いかも・・・)

 

 

焔(フェ、フェイト様がお戯れを!? ん、待てよ? いくら私が恐れ多くても、フェイト様の恋人にはなれない・・・しかしこれならお友達には・・・おや? 一緒におやつ・・・パジャマパーティー・・・お、おふ、お風呂・・・おや?)

 

 

暦(フェイト様!? 超かわいい! でも・・・スカートの下は何をはいてるのかな~・・・そうだ、今度一緒にランジェリーショップに!!)

 

 

調(心の目でフェイト様を感じることが出来ます・・・百合でもばっちこい・・・)

 

 

環(お、お姉ちゃんと呼びたいです・・・)

 

 

彼女たちには、意外と好評だった。

 

「ぬうおおお、綾波・・・綾波・・・本当に貴様なのか・・・?」

「うん・・・」

「ほ、本当か!?」

 

これだけだった。これだけで全て・・・

 

「お、おおお・・・私は・・・私はお前に伝えるべきことが・・・」

 

体を起こして何かを言おうとするデュナミス。しかし何も言えない。

 

(どれだけそなたは傷ついた・・・最愛のシモンに捨てられこの二十年・・・いや、多くは聞くまい。こうして無事であるのなら・・・)

 

無事でいてくれた。それだけでデュナミスは十分だった。

そして何よりも・・・

 

「そうか・・・綾波フェイよ・・・そなたは私の名を覚えていてくれたのだな」

「うん・・・(知ってるに決まってるじゃないか・・・やはりこの男はダメだ・・・)」

 

綾波フェイは自分を覚えていないだろう。そう思っていたが、彼女は自分の名前を知っていた。

これ以上、何を望む。自分は救われた。たったこれだけで報われた。

 

「なあ、・・・綾波フェイよ・・・」

「なんだい、デュナミス・・・(頼むから早く気を失ってくれ)」

「この世には・・・シモン以外にも多くの男がこの世にいる・・・」

「そーだね」(棒読み)

「私には無理だろう・・・しかしいつか必ずお前を幸せにするものが・・・あら・・・われる」

「そーだね」(棒読み)

「だから・・・必ず・・・しあ・・・わせに・・・」

 

 

―――幸せになれよ・・・

 

 

 

そのとき、デュナミスは微笑みながら目を瞑った。

傷つき倒れた彼は、多くの若き少年少女たちに囲まれて眠りについた。

彼らは言う。

ありがとう?

さようなら?

違う。

今一度、英雄の名を涙と共に叫ぶのだった。

 

 

「「「「「「「「「「デュナミスさーーーーーーーーーーん!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 

ありがとうデュナミスさん・・・

 

さよならデュナミスさん・・・

 

また会う日まで・・・

 

 

 

「とてもどーでもいいけど、今まで知り合いには僕の変装はすぐにバレたのに、なぜデュナミスは気づかなかったんだ?」

 

 

 

倒れたデュナミスを見下ろしながらボソリと呟くフェイト。いや、綾波フェイ。

確かにそうだ。シモン、ニア、ダイグレン学園、ネギ、刹那、楓、超、ザジ、フェイトガールズ。全員女装したフェイトを一瞬で見抜いた。

なのになぜ完全なる世界でそれなりの付き合いがあったデュナミスは気づかなかったのか?

その問いに、ネギは涙を拭きながら答えた。

 

「ひっぐ・・・フェイト・・・ぐすっ・・・世の中の真理を見抜く君の冷静な瞳も・・・心までは見抜けなかったようだね・・・」

「む・・・君は分かったというのかい?」

「当たり前じゃないか・・・シモンさんとニアさんを見ていれば分かるよ。人は・・・誰かに本気で夢中になると・・・逆に何も分からなくなるんだ・・・」

「・・・・どういうことだい?」

「ほら、よく言うでしょ? 恋は盲目って!!」

 

ちなみにデュナミスは30分ぐらい寝たら元気になったのだった。

 

 

 

 

この一部始終を高みの見物していたアンスパは、あんかけスパゲティをザジと並んで食べながら、フォークを持つ手が固まったまま呆けていた。

 

「なんだ・・・この茶番は・・・・・・・・・誰得だ?」

「感動・・・」

「ザジよ、お前まで何故泣く。いや・・・おかしい・・・どうしてこうなった? というより、シモンはどうなった?」

「ニアさんとセクストゥムさんが瓦礫の中を捜索中・・・あっ、見つかったようです」

「うむ、まあ当然だろう・・・しかし、洗脳はまだ解けていなさそうだな」

 

当初、アンスパが思い描いていた予定から超大幅にずれてしまった。

本当は、シモンにはカミナをぶつけるつもりだったのに、まさかデュナミスが登場してここまで変な展開になるなどアンスパも予想外だった。

 

「しかしまあ、イレギュラーはよくあること。超イレギュラーではあるが・・・しかし・・・これでまた話は軌道修正する」

「えっ・・・まだ続ける気ですか?」

「ああ、グレンラガンが大破してしまったが・・・・ふふふ、肝心のシモンはまだまだやる気のようだからな」

 


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