【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第82話 俺この冒険が終わったら結婚するんだー

園長室から少し離れた場所にある食堂。まだ夕食まで時間があるため、今の時間は施設の子供たちの溜まり場になったりしている。

幼い子達が所構わず走り回っている中、久々再会したギミーとダリーとゆっくり話していたカミナは卒倒しそうになった。

 

「はあああああああああ? 高校進学を悩んでるだ~?」

「しー! 園長先生が聞いたら心配しちゃうじゃないですか!」

「バカやろう! 心配するなって方が無理だろうが! そのこと言ったのかよ!?」

「い、いえ、まだです。これ以上心配をかけさせたくないですし・・・」

 

カミナは口をあんぐりとさせて、俯く双子と向き合っていた。

思わず、飲んでいたコーヒーを少し吹き出してしまった。一体どういうことだと。

だが、双子の表情は至って真面目。決して冗談などではなかった。

 

「園長先生の体調が最近ずっと悪くて・・・」

 

そう切り出したギミーの言葉で、カミナは先ほど見た老い衰えたマギンを思い出す。

元気が無いというわけではないが、良くもないといった様子だった。

 

「麻帆良の高校は全寮制だから、俺とダリーが高校進学すると、この学園で先生やチビ達の面倒を見る人が居なくなるし」

「はい、今は寮に入らなくていい学校で大丈夫ですけど、高校になると流石に・・・・・・ロシウのようにこの学園から出ていかなくちゃいけないですから・・・」

 

双子のギミーとダリーは、カミナにとっては驚くべき事で悩んでいた。それは、高校に進学するかどうかという話である。

確かに、話だけを聞けば二人がそういう考えを持ってもおかしくないように思える。

だが、カミナからすればそれはありえないことだった。

 

 

「いーじゃねえかよ、卒業ってことでよ! 俺もシモンもデコ助と同じで高校入学と同時に施設を卒業したぞ? 大体、あのジジイがんなことされて喜ぶタマかよ。別に寮に入ったってデコ助もバイトの連中もよく顔を出してんだろうが! 別にかまわねーだろ!」

 

「そ、そりゃあ・・・ロシウもよく来ますし、バイトの那波って子も毎日のように来てくれるっすけど・・・」

 

 

高校生活に毎日命を懸けているカミナからすれば信じられないような話だった。

 

 

「でも、俺も子供達も、園長先生が親だから・・・もし園長先生に何かあったら・・・だったら、卒業しないでこのままって・・・」

 

「ギミーの言うとおりです。それに、私たちはロシウのように頭も良くないし、高いお金を払ってもらってまで高校にいかなくても。それに私たち自身、この学園から出て生活するのも不安ですし・・・想像できないというか・・・」

 

 

ギミーとダリーの口から語られる理由も切実なものであった。気持ちは分からなくもない。

だが、カミナは納得できなかった。それは、切実な理由の裏で二人の本心を見抜いていたからだ。

 

 

「だあああああ、頭がいいとか悪いとか関係あるかよ。行きたいか行きたくないかで考えろよな! 大体、卒業しねえって、んなのあるわけねーだろ! テメエらはただ単にここを卒業して自分たちだけでやっていくのが恐いだけだろ!」

 

「そ、それは・・・」

 

「テメエら、コエーんだろ? 園長もいねーで、寮に入って生活してくのがよ。いや、・・・・・・施設を卒業して独り立ちするのがよ。マギンのジジイを言い訳に使ってんじゃねえよ!」

 

 

高校を進学しない理由に、マギン園長を言い訳にしている。その言葉で、ギミーとダリーは顔を上げた。二人は一瞬、違うと否定しようとしていたが、言葉につまっている。

実際、カミナの言葉は二人の図星をついていた。

ギミーとダリーは互いに顔を見合って、観念したかのように口を開く。

 

 

「あの・・・最近、ここに『ナキム』って子が入ったんです。両親を亡くして・・・それで、学校の子に親が居ないことや施設に入ってることでイジメを受けていて・・・」

 

「はあ?」

 

「そんなにそれは大事になりませんでした。でも、そういう経験はここに居る子達は何度か経験しています。俺たちも人ごとじゃないんです。俺もダリーも似たようなことがありましたから」

 

「ああ・・・・・・まあ、俺んとこもあったかもしれねーな。俺はねーけど」

 

「はい。でも、それでもこの家に帰ってくれば同じ傷を負った家族が居ますから何とかやってこれたんです。・・・でも、ここを卒業したら・・・」

 

 

同じ境遇でありながら、カミナとギミーたちの違い。それは、コンプレックスと不安だった。

普通の人たちとは違う人生。そのことに後ろめたさを感じ、自分自身にどこか自信がなかった。

それでもこの家の中にいれば、みんなと同じでいられた。しかし、外の世界に出て、そこで自分一人で生活していくとなると、不安で仕方がなかったのだ。

だから、彼らは無理して高校に行ってまでここを離れたくはなかった。それが本音だった。

 

「別に、ここ以外で友達とかそんな欲しいわけじゃないですし、勉強だって今じゃ通信とかでできますから」

「はい。みんな、カミナさんたちみたいに強い人じゃないんです。お祭りとかそういうことをしてもらったらうれしいですけど・・・」

 

しかし、カミナにはそれがたまらなかった。

 

「やりたくなけりゃやらなきゃいい! 俺もそう思う! でもな、それでもやらなきゃならねえ時ってのはあるんだよ!」

 

最初は、ただ自分が楽しみたいだけだった。それは今でも変わらない。

 

「おめーらよ、何でジジイがお前らの面倒見てんのか知ってっか? 別にお前らの家族になってやるためでも、年寄りの自分の面倒を見させるためにお前ら引き取ったわけじゃねーんだぞ!」

 

だが、今度の祭りはそれではダメなんだとカミナは知った。

教えてやらなければならないと思った。施設で育った本当の意味を。

 

「俺や、シモンやロシウが、狭い施設を飛び出して手に入れたもんを、今度の祭りで見せてやるよ。何のために、マギン園長がお前らの面倒見てんのか・・・テメエラに教えてやっから覚悟しときやがれ!」

 

カミナやシモンやロシウが手にしたもの? それをギミーやダリーに分かるはずがない。

だが、ギミーやダリーがまだ持っていない「何か」をカミナたちは持っていた。

それは、シモンも同じである。

そして、彼はまた新たな「何か」を手に入れるべく、奮闘していた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

「・・・っというわけなんだ。みんな、協力してくれないかな?」

 

シモンは、プロポーズについてどうすべきか考えつかず、仕方なくシャークティ同様に他の者たちからアドバイスを貰うことにした。

頭が痛くなったと言って退席したシャークティに代わり、シモンは頼もしき者たちを教会に集結させていた。

 

「シモン、あなたに協力するぞ! 絶対にプロポーズを成功させるのだ!」

 

シモンの話を聞き、瞳を輝かせながらシモンの両手を掴んで協力を申し出る。彼女は、焔。シモンのクラスメートだった。

 

「いきなり相談というから来てみれば・・・まあ、ダンスの練習も何だかグダグダになってきてたので構いませんが」

「ニア羨ましいな~」

「男らしいです」

「でも・・・だからって、何で私たちに相談? たしかに、テオドラ皇女やセクストゥムに話したら暴走するのは目に見えますが」

 

また、焔と同じようにシモンに協力を頼まれた、調、暦、環、栞。シモンのクラスメートにて、フェイトガールズのメンバーだ。

 

「ごめんよ。本当はアニキやフェイトたちに相談したかったんだけど、何か連絡しても繋がらないし、取り込んでるみたいでさ」

「っていうか、シモン。あなた、さっき広場に現れてフェイト様を連れて消えませんでした?」

「何の話ししてんの?」

「えー? あれ、シモンじゃないの? ヨーコや超とソックリな大人を連れてたんだけど」

「いや・・・だって、俺はずっとここに居て劇の練習してたし・・・」

「なーんだ、あれはシモンたちではなかったのですか。世の中には似ている人が居るもんですね~。超とかヨーコが大騒ぎして私たちもダンスの練習どころではなくなったんですよ」

「もー、何なんだよ! さっきから言ってることが意味不明だぞ? とにかく、俺はニアにプロポーズしたくて、そこで女の子の意見が聞きたいんだってば」

 

実は彼女たちだけとシモンは話をしたことがあまりない。大抵はいつも周りに他の仲間やフェイトが居たからだ。

しかし、皆も色々と祭りの準備で忙しいのか、相談したかったカミナたちとは連絡が取れず、やむを得ず同じクラスの彼女たちに話を持ちかけたのだった。

すると、その話は同じく祭りの助っ人の彼女たちの耳にも入ったらしく、フェイトガールズ5人の他に、3人の少女たちもシモンの応援に来た。

 

「そうよ、コヨミンたちもちゃんとシモンさんのことを真剣に考えてあげて!」

「せやなー、シモンさんもようやっと男前になったんやから」

「はい。私ではあまり力にはなれないですが、サポート致します」

 

明日菜、木乃香、刹那。最近だらしないシモンにハッパをかけ、そのシモンがついに答えを出したことが非常に嬉しかったのか、彼女たちもやる気満々であった。

そして、中でも一番やる気があるのは焔だった。

 

「ところで、焔。何でそんなにハリキッってるの?」

 

別に焔とシモンはそれほど仲が良いわけではないのにどうして? 友情? 違う。その答えは非常に不純なものだった。

焔は暦たちに小声で耳打ちする。

 

「考えてもみろ! シモンが結婚さえすれば、我々のライバルが減るではないか!!」

 

ライバル・・・そう言われて少女たちは気づいた。

脳裏に浮かぶのは、ラブラブ(?)なシモンとフェイトのイチャついている姿。

それに気づいた彼女たちはハッとなり、シャキッと戦隊ヒーローのようにキメポーズを決めた。

 

「「「「協力します!!」」」」」

 

そう、どうもフェイトとシモンは仲が良すぎる。嫉妬深い彼女たちにはそれが面白くなかった。

また、人間界でキノンと交流していくうちにBLというものの存在を知ってから、万が一という懸念があり、シモンを非常に警戒していた。

フェイトガールズたちのほのかな想い。だからこそ、フェイト争奪戦の最有力候補者がここで居なくなるのは、彼女たちにとっては大きな意味を持つ。

ゆえに、彼女たちは今すぐにでもシモンにニア一人に絞ってもらい、結婚してもらいたかったのだった。

 

「うんうん、なんかシモンさんらしい! う~! そうよ、それよそれ!」

「なー、あの学園祭のシモンさんや!」

「ふふふ、おかしな話しですね。シモンさんは私たちより年上なのに、何だか今のシモンさんを見ていると、弟が成長したかのような心境でうれしいです」

 

アスナ、木乃香、刹那も強い決意を秘めたシモンがうれしい様子。親指を突き立てて、「勿論協力する」という様子だった。

 

「ありがとう・・・俺、がんばるよ!」

 

こうして、シモンのプロポーズ作戦に8人の少女たちが集結したのだった。

 

頼もしき少女達の援護を受け、シモンは絶対に成すべき事を成し遂げてみせると誓ったのだった。

 

「さて、プロポーズのシチュエーションなど考えるべきことは山ずみですが、まずこの中でプロポーズをしたり、受けたことがある人はいますか?」

 

まずは作戦を考えよう。そのために参考意見を集めるのがいい。

ホワイトボードに作戦を書いていく焔が皆に尋ねる。しかし・・・

 

 

「「「「「し~~~~~~~~~~~~~~ん」」」」」」

 

 

当然の結果だった。

 

 

「も~、焔ちゃん、ウチらまだ15や。普通、プロポーズしたりされたりはせえへんよ?」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

「ど、どうしたん? アスナ?」

 

「あっ、うん、何か、木乃香だったら意外と好きな人が出来たら、自分からプロポーズしたりとかするんじゃないかな~って。お見合いとかしてるし」

 

「えー、そんなん絶対あらへんて。うち、まだ恋人いたこともないんやから。それに、ウチは自分からするより、男の人からそういうんは言ってほしいなーって思っとるんよ」

 

「は、はは、そうですね、お嬢様。私もどうして変に思ったのでしょう。とりあえず、話を元に戻しましょう」

 

 

少し話が脇道に逸れたが修正する。

実際、この場に居る少女達はプロポーズはおろか、告白されたことも、誰かと交際をするなどの恋愛経験は皆無なのであった。

勿論、少女として憧れているシチュエーションなどはあるが、どれもがリアリティの無い幻想的なものであった。

 

 

「・・・・・・・・よし、シチュエーションを考えるのは後にしよう」

 

「「「「「異議なし」」」」」

 

 

そう、重要なのはシチュエーションだけではない。この際、全ての問題を起こそうと、焔が次の質問をする。

 

「指輪か。確か人間界の情報では、男性の給料三ヶ月分だそうだが、ちなみにシモンの予算は?」

「うっ・・・実は結構やばいんだ・・・」

 

金の話をされて、自信満々の表情から一気に気まずそうな顔をするシモン。

それは、切実な問題であった。

 

「しかし、近日中にプロポーズとなると、指輪もすぐに購入する必要があります」

「でも、お金がないんだったら・・・私たちもカンパするほどお小遣いないし・・・」

「携帯代でヒーヒーです」

「う~ん、いっそのこと掘ったら? シモンさんならそのへんに穴掘ったらダイヤとか出てくるんじゃない?」

「あ、明日菜さん、それはいくらなんでも・・・・・・・・・・ないと言い切れないのが怖いですね」

 

確かに・・・と、何だかシモンがテキトーに穴掘れば何かしら出てくるのではと皆が納得し、焔もホワイトボードの指輪項目に『自力で掘り当てる』と記載した。

また、シモンの経済面から考えればそれが非現実でありながら一番現実的だった。他は『大切なのは気持ち。ニアなら縁日の指輪でも喜ぶ』『硝子細工で十分』などの意見だった。

確かにニアなら高価なモノよりも、シモンが指輪を送るということの方を喜びそうだ。だが、シモンも男としてある程度価値のあるものを送りたいというプライドもあった。

すると、フェイトガールズの一人である、環が難しい顔をしながら手を挙げた。

 

「自力で指輪を入手する件について・・・・・・自力で宝石を手に入れるというなら、一つアテがあるです」

「えっ!?」

 

フェイトガールズの中でもボケーッとしていることの多い、環からの意外な提案に皆の視線が集まった。

 

「魔法世界に伝わる伝説・・・『エメラルドドラゴン』の鱗を入手することです」

 

聞いていたアスナたちは、アホヅラで固まった。

 

「あの・・・タマちゃん? ドラゴンの鱗って・・・ここは日本よ?」

「はは、エメラルドドラゴンやて。なんか綺麗そうやなー」

「いえ・・・こんな時にそんな空想の話をされても・・・」

 

当然、そういう反応になるだろう。しかし、真面目な焔たちも同じかと思えば、アスナたちとは違った反応を見せた。

 

「そ、そうか、エメラルドドラゴン・・・竜族である環らしい発想だ!」

「私、ちっちゃいときに、お伽噺で聞いたことある。確か、エメラルドドラゴンに跨った伝説の勇者がエメラルドの指輪でお姫様に求婚して結ばれたって話し」

「ロマンチックですねー」

「まあ、魔法世界で女の子なら一度は聞いたことがある伝説ですよねー。そのドラゴンを見たことはありませんけど」

 

彼女たちは魔法世界という120%ファンタジーの世界の住人である。

木乃香たちは知らないが、その世界はドラゴンどころか獣人や亜人や空想上の生命体が生息して世界に溶け込んでいるのである。

だからこそ、環の言葉をマジメに捉えたのだった。

 

「へー、あの世界にそんなドラゴンが居たのか」

 

一応、シモンも20年前の時代とはいえ魔法世界に行った経験がある。だから、あの世界ならそんなドラゴンが居てもおかしくないと思った。

 

「ちょっ、ホムラちゃんやシモンさんも何で信じてんの!?」

「いや、しかし金のないシモンが高価な宝石を短時間で入手するにはそれが一番」

「えっ、そのドラゴンほんとにおるん!? もしそうなんやとしたらロマンチックや~」

「環、あなたも竜族。でしたら何か情報が?」

「コク・・・・」

「えっ・・・・ガチなんですか?」

「ちょっと、本当なの!? エメラルドドラゴンなんて、どこに居るか分からないという点では、古龍龍樹を捕まえるより難しいわよ?」

「何で今まで教えてくれなかったのー!?」

「乱獲防ぐため・・・」

 

リアリティのない話しが何だか着々と進行しそうな勢いである。さすがのアスナたちもオロオロしているが、環は構わず情報を伝えていく。

 

 

「竜族として情報はあるです。エメラルドドラゴンは非常にデリケートで人前に姿は現さないですが、習性があり、一年間を魔法世界、魔界、地球、月と転々と住処を変えて、各世界のマナを蓄えているそうです」

 

「なにい!? というと、エメラルドドラゴンは造物主に造られた存在ではなく、実在する生命体ということか。それならば、問題無さそうだな」

 

「ねえねえ、それじゃあ今そのドラゴンはどこに居るの?」

 

「ってか、焔ちゃん造物主って何よ?」

 

 

環は指を空に目がけて指刺した。

 

 

 

「月」

 

 

 

アスナたちは、月にはウサギが住んでいるという昔話を子供の頃に聞いたことがあった。

まさかドラゴンが住んでいたとは・・・

 

 

「ってなるかァこんちくしょおおおおおお!? ちょっと待ちなさいよおおおお!?」

 

「「「「「よーしっ、月に行くぞ!!!!」」」」」

 

「行けるかああああああああ!! で、シモンさんも焔ちゃんたちも、どうしてそんなやる気満々なのよ! んなとこに、どうやって行くのよ!!?? 大体、何で月なんかに居んのよ! 根拠がないでしょ!? この科学が進歩しまくった世界にドラゴンなんて何考えてんのよ!?」

 

 

アスナはクラスではバカレンジャーレッドと呼ばれるほど頭が悪い。つまりバカだ。しかし、今日のアスナは違う。初めて自分よりバカな連中を見たとばかりに、声を荒げる。

実際、木乃香や刹那も苦笑いしながらも、ほとんどアスナと同じ意見だった。

しかし、環は表情変えずに言う。

 

 

「根拠はあります。今の時期、月の地中深くに生息している『ブタモグラ』が繁殖期です。エメラルドドラゴンはブタモグラが大好物のため、この時期は月に居るという伝承が竜族の中で・・・」

 

「ここにきてブタモグラとか、んなブタだかモグラだか分かんない生物まで持ち出して何言ってんのよ! 月に動物が居るなんて聞いたこともないわよ! んなもんが居たら、とっくにNA○Aとかが大騒ぎしてるに決まってんでしょ!?」

 

「いえ・・・ブタモグラの存在は世間に公表されていないだけで既に色々と調査はされているはずです。エリア51とかで。エメラルドドラゴンは見つかっていないみたいですけど・・・」

 

「だーかーら、ファンタジーかSFかどっちかにしろってのよおおおおおおおおおお!!!!」

 

「仕方ないです。エメラルドドラゴンの捕獲レベルは・・・」

 

「だから、トリコでもないんだってば!!」

 

 

宇宙に出て月まで行って伝説のドラゴンを探して鱗を入手する。

言葉にすれば、目が点になるようなミッションである。

鱗を入手するというゴールまでの道のりで何が困難か? 全部である、何よりスタートからそもそも問題である。

 

「というより・・・そもそもどうやって宇宙まで行く気ですか?」

 

アスナを落ち着かせながら半笑いの刹那。夢想を語る残念な子たちを哀れんだ表情である。

だが、アスナたちは知らなかった。

ここに、シモンが居ることが、とても大きな意味を持っているということを。

 

 

「そういえば・・・俺が学園祭で洗脳されていた時、父さん・・・いや、アンスパの隠れアジトに・・・」

 

 

 

 

 

その日、教会に一通の置き手紙だけが残されてシモンと少女たちは姿を消した。

 

 

【デュナミスとシスター・シャークティへ。ちょっと月に行って来ます。祭りまでには帰ります。台本はちゃんと覚えます。シモンより】

 

・・・という内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日、アンスパは絶叫した。

そこは、麻帆良学園より少し離れた大森林の地下深く。

地上からの入口は隠し扉で、偶然では決して見つけられないような場所にあった。

中に入れば、「あんかけ焼きそば風ジュース」「カップあんかけ焼きそば」「冷凍あんかけ焼きそば・試作品」を初め、いくつもの分厚い本や書類が散乱して足の踏み場もないような研究施設。

アンスパはワナワナと震えながら、自身の隠れ研究所の異変に大慌てだった。

 

 

「どういうことだ!? 私の開発した小型宇宙船・プチアークグレンがなくなっている!? 誰が盗んだ! まさか、学園祭の仕返しで超鈴音ではないだろうな? だが、残念ながら超鈴音、貴様にはプチアークグレンは動かせない。何故なら、あれは螺旋の力に反応して動くように出来ているからな」 

 

 

ちなみに、アンスパの宇宙船を盗んだ真犯人が、盗んだ際にこう呟いていたことをアンスパは知らない。

 

 

―――なんか操縦桿握ったら使い方が全部頭に入ってきた・・・気合いかな?

 

 

・・・と。

 


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