【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン) 作:アニッキーブラッザー
「ちょっ、アスナさん!?」
「アスナ、どうしたん!? ひょっとして、この文字読めるん!?」
「神楽坂アスナ!?」
だが、アスナ自身もよく分かっていなかったようだ。
急にハッとした。
「あ、あれ? 何で・・・え・・・あれ?」
「アスナさん。今、このノートの字を読みましたよね?」
「えっ、う、うん・・・どうしてだろ。何だか自然に読めちゃって・・・あれ?」
アスナは首をかしげてノートの文字と睨めっこをする。そして不思議そうにしていた。
一方で、焔たちは何かに気づいた。
(そうか・・・確かに、この人なら読めても不思議ではない・・・)
(そうですわ)
(あっ・・・そっか・・・)
(何故なら彼女は・・・)
(不思議ではないです)
焔たちの知っている、アスナの秘密。だが、それを彼女たちは口にしなかった。
「まあ、いいだろう。細かいことは気にするな」
それだけは、自分たちが勝手に語るわけにはいかない。まるで、そんな様子でアスナの肩に手を置いた。
「いや、細かくないって、焔ちゃん。私もどういうわけか・・・うそ・・・えっ・・・なんで私、読めるの?」
だが、アスナも自分で自分が分からず、少し混乱したような表情を見せる。
その正体を焔たちは知っている。だが、今はその時ではないかもしれない。
そう思った焔たちは、不安を感じさせないように優しく微笑んだ。
「いいではないか。それより、何と書いてあるのだ? 今は、そっちの中身が読めるのなら、そっちを優先したらどうだ? お前は、ネギ・スプリングフィールドのパートナーだろ?」
「えっと・・・う~ん・・・」
「ひょっとしたら、求めていた答えに繋がるものがのっているかもしれないぞ?」
「そ、そうかなー? まあ、それじゃあ・・・」
アスナも言われて渋々ノートに視線を戻し、ページを一番最初に戻す。
そして、自分が解読した文章をそのまま読み上げた。
「えっと・・・日記・・・張?・・・」
「「「「「日記帳!?」」」」」
そう、これは本ではなく、日記帳だった。
「日記帳・・・それは、つまり・・・」
「ッ・・・中は何と書いてあるんですか!? 教えてください、アスナ姫!」
だが、それはそれで、全てを知ることができる。
なぜなら、日記帳ということは、ここで何があったのか、ここで過ごしていたナギたちのことを知ることができるからだ。
アスナはみなに視線を送って、皆が頷く。
彼女は、覚悟を決めて日記帳の中身を読み上げていった。
「いくよ。『とうとう月にたどり着いてしまった。魔法世界。地球。ナギと共に渡り歩いたが、やはり私たちに安息の地は無かった。じゃが、ここならば『完全なる世界』や『メガロメセンブリア』の追っ手もなくてすむ。しばらくはナギとこの地から世界の様子を見続けることになるじゃろう。最初はナギがこれぞ新婚生活のハネムーンとかマイホームーンなどと下らぬシャレを口にしたときは本気で殴り飛ばしたが、これはこれでよいかもしれぬ』・・・新婚生活!?」
一階のあの雰囲気からして、ただの隠れ家ではないとは思っていたが、これは予想通りだった。
「し、新婚生活・・・やっぱり・・・」
「って、ちょっと待ってや! ほなら、ここはネギ君のお父さんとお母さんが新婚生活で過ごすために作ったマイホームなん!?」
「ちょっ、月にマイホーム・・・頭が痛くなってきました・・・グレン学園の方々で慣れたと思っていたのに・・・マイホームーン・・・恐ろしいですね」
まさか、月に自宅を作るとは、グレン団を超える滅茶苦茶ぶりかもしれない。
ネギの父親は噂以上の規格外な男だと苦笑した。
「でも、ネギのお母さんって真面目ね。なんか、堅苦しいことしか書いてないわよ? え~っと、『緑を植林してみたが、やはりうまく根付かなかった。大気の循環がないため、すぐに枯れる。堀田博士の『太陽ラジコン』も、更に改良してもらう必要がある。何故なら、この実験が成功すれば、魔法世界最悪の未来の回避に繋がるからじゃ。しかし、正直私はあの男を好かん。様々な並行世界で得た知識をしたり顔で告げる』・・・って、シモンさんのお父さんが登場してんだけど!?」
「と、父さん・・・ここに来たことが・・・っていうか、ナギと知り合いだったんだ・・・でも、何で?」
「は~・・・ネギ君のお母さんって、月に植林しようとしてたんや・・・自然が好きなんかな~?」
「ですね。ということは、外のヤシの木とかは、その成果でしょうか? しかし、魔法世界の最悪の未来の回避? どういうことでしょうか・・・」
書いてある内容は、実に謎だらけだった。
どういうわけか、登場しているシモンの父親。
――今日は新事実が発覚した。地下に生息するブタモグラは、何千年も昔に造物主が魔法ではなくテクノロジーで生み出した生物。地球以外の地でも生息することが可能な生物を生み出そうと試みたが、成功したのはブタモグラのみ。研究は断念されて、月にはブタモグラだけが放置されたのだと分かった。どうやら、造物主はかつてこの地を実験施設として使用していたようだ。探索すれば、また何かが出るかもしれぬ。
――ブタモグラを調査して分かった。ブタモグラの肉は非常に栄養が高い。さらに、その毛皮は衣服に、骨や筋などは加工して道具を生み出すことも出来ると思われる。恐らく排泄物は燃料として利用し、その熱で発電をし、電気を作ることも可能じゃろう。さらに、ブタモグラは主食を土としているため、土地開拓するだけで、ブタモグラを維持するための餌を得られ、その他に必要なものが手に入る。よく出来ているシステムじゃ。魔力の枯渇という課題の中で、人が生きていく環境ための生命線を確保していると言ってもよい。しかし、それならば造物主は何故、魔法世界を月ではなく火星に構築したのであろうか? さらに、ブタモグラを魔法世界に作らなかった理由は?
新婚のアリカの行い。これは一体何を示しているのだろうか?
その答えもまた、焔たちは気づいていた。
(そうか、魔法世界は魔力の枯渇で滅びへと向かう。それは寄り代たる火星が植物や自然などがないため、魔力が生まれぬ不毛な大地だから・・・)
(ですが、その不毛な大地を緑あふれる星にすることができれば・・・)
(ま・・・まだ仮説の領域を出ませんが・・・しかし・・・これは・・・)
(サウザンドマスターとアリカ姫は過去の組織の追っ手から逃れながら、月を実験台にして魔法世界の存続のための手を考えていた!?)
(そして、我々のマスターもまた遥か昔・・・ブタモグラを使って、月に人類の新たなる居住地の構築を計画していたことがあるということでしょうか?)
まるで、稲妻が落ちたかのような驚きぶり。
カタカタと焔たちの体は震えていた。
それが、アスナたちには何を意味しているのかは分からない。
だが、焔たちが何も語らない以上、アスナはこのまま日記の続きを読み上げることにした。
「今日は、月の地中に掘っ建て小屋のような家を建てた。この世界では地球から持ってきた木材も稀少のため、大きい物は作れなかったが、私は一目で気に入った。ナギのセンスもなかなかやると思ったが、どうやら日本という国のマンガに出てきた家をモデルにしたようじゃ。ナギ曰く、昔未来からやってきた友達が教えてくれたとか、『アラレちゃん』というマンガの作者が書いたもので、すっかり気に入ってしまっただの、わけのわからんことを言っておるが、楽しそうじゃ。私も読んでみようと思う」
そこから、日記の内容は徐々に変化していった。
「ようやく、植林がうまくいき、魔力を観測することができた。さっそく、狭い範囲ではあるが魔力を使った仮想空間を作ってみようと思う。青空と海が良い。ナギも賛成してくれた。うまくいってほしいものじゃ。荷物に詰め込んでおった水着が無駄にならんからな」
相変わらずわけのわからない実験の報告のようなものもあれば、取るに足らぬ日常のやり取りなども記載されるようになってきた。
――今日は本当に不愉快な気分じゃった。私が生まれて初めて刺繍をし、何度か指に針が刺さって痛い思いをしたが、何とかティッシュボックスを完成させ、海で泳いで遊んでおるナギを驚かせようとしたが、部屋に可愛いものばかり置くなと怒られた。しばらくは、デザート抜きじゃ!
――今日は、カレーライスなるものをナギに作ってもらった。最初は何ともおぞましいものと思ったが、実に美味であった。ブタモグラの肉とルーが混ざり合い、極上の味わいを生み出しておった。戦いが終われば、二人で魔法使いを引退してカレー屋でもやらないかとも冗談で言われたが、私はうれしいと思った。国も滅びた今、全ての敵を倒し、因縁も因果断ち切り、世界を救った後の世界では、私の使命は終わり、ただの女となるからじゃ。ナギには笑われるから言えんが。
――今日は、堀田博士が新商品の開発と言ってワザワザ訪問してきた。インスタントあんかけスパゲティとのことだが、私もナギも頼んでいたドラゴンボールのセルとの戦いの方が気になる。本当は、人間を吸収するセルが怖くて見たくはない。最近は夜に厠へ行くのも勇気がいる。ドアを開けてセルが居ないだろうかとな。しかし、続きが気になるので見てしまう。何とも罪作りな物語であろうか。
というか、何だか日記の最初の方から後になるにつれて、アリカの書いている内容がかなり変わってきていた。
だが、そうやって気を抜いていると、いきなり衝撃的なことが書かれていたりするから困ったものだ。
「今日は堀田博士が幼い息子の写真を持ってきて自慢しにきた。最初は鬱陶しいと思ったが、子の名を『シモン』と聞いて、私もナギも同時に『良い名前だ』と口を揃えた。どうやら、ナギも魔法世界で『あの』シモンと会ったことがあるらしい・・・・・あれ?」
なんか、いきなりシモンが出てきた。皆がブリキのように首をシモンへ向け、シモンは恥ずかしそうに頭を掻いていた。
「えっ・・・あ・・・え~っと? あれ?」
何でシモンの名前が出てくるんだよ。アスナは汗をダラダラと流しながら続きを読む。
「な・・・懐かしい。大戦では見なかったが、あやつも今頃どうしているであろうか? 少し頼りなさそうに見えたが、実は強く勇敢でドリルを武器にあのデュナミスと戦っておった。さらに、シモンの妻を名乗った黒ニアという女。あのデュナミスが、さらにはナギの話によればガトウや詠春も一目惚れした、シモンの恋人かと思われる綾波フェイ。二人にも会いたいものじゃ。そういえば、綾波フェイを取り合ってデュナミスと壮絶な戦いを繰り広げていたのも懐かしい。あの後、無事に生き延びて誘拐されたテオドラ皇女を救出したという話は聞いている。すっかり皇女もシモンに惚れてしまっていた・・・・・・・・・・・・・・」
アスナ。そこで日記帳を握り締める力がマックスになり、震えた体も爆発して盛大に唸った。
「だああああああああああああ、もう! 限界よォォォォ!! シモンさん、あんた一体何をしてんのよ!!!!」
貴重な日記帳を丸めて、メガホンの形にして、シモンの頭を思いっきりぶっ叩いた。
一応、先輩なのだが今のアスナの鬼のような形相はそんなことをまったく考えてなかった。
「シモンでドリル持ってて妻が黒ニアで恋人綾波フェイとか、この宇宙であんたしかいないでしょーが!! さっきサラっとタイムスリップとか言ってたけど、それって本当だったってことよね!!」
「だだだ、だからそうだって言ったじゃ・・・」
「しかも何ちゃっかり歴史を変えそうなことやってんのよ!! っていうか、デュナミス先生のシモンさんに対する異常な殺意とか綾波フェイへの想いとか、テオドラさんがやけにシモンさんにベタついてんのとか、全部こういう理由だったってこと!!?? それに、さっきのナギが未来から来た友達にドラゴンボールを紹介してもらったとかあったけど、それもシモンさんのことでしょ! まだ、鳥○明先生が原作を世に出す前に教えるなんて何てことしてんのよ!! タイムパラドックス的なことが起こってこの世にドラゴンボールが生み出されなかったらどうすんのよ!」
「い、いや、多分そのころはギリギリやっていたような・・・」
「んな問題じゃないでしょ! 他には!? 他には余計なこと教えたりしてないでしょうね! って・・・何で目を逸らすのよ!!」
「えっと・・・大したことじゃないけど・・・ノストラダムスの大予言とか・・・ワンピースとか携帯電話とか・・・」
シモンの胸ぐら掴んで何ども前後へ揺さぶってシェイクするアスナ。
その後ろでは、焔たちも頭を抱えていた。
「まさか、デュナミス様とはそういう因縁が・・・どうりで・・・」
「それに、フェイト様もニアもちゃっかりタイムスリップしてるみたいだね」
「サウザンドマスターも滅茶苦茶だと思っていましたけど、やはりシモンたちも負けていませんわ」
「は~・・・怖いえ・・・もしシモンさんたちが何かやっとったら、ネギ君も生まれてなかったかもしれないんやない? っていうか、おとーさま・・・フェイトくんの女装にズキューんやったんや・・・」
「詠春様・・・」
ついに発覚した、シモンのタイムスリップ事件。
しかし、その時の出来事は、ちゃんとアリカやナギたちの記憶にも残っていたようだ。
アスナにぶん殴られて、シモンも痛いが、それ以上にナギやアリカの自分への思い出がこんな形ででも知れて嬉しかった。
「それにしても・・・二人共、俺のことを覚えてたんだ・・・そっか・・・不思議な感じだよね」
アルだけじゃなく、二人も自分のことを気にかけてくれていたんだと。
「って、何達観してスカしてんのよ!!」
「ご、ゴメン!? でも、フェイトも居たんだし、本当に余計なことはしてないよ! フェイトにもそういうのは凄い注意されてたしね!」
「~~~~~、ほんとでしょーねー」
「う、うん。ほんとほんと」
多分・・・とだけ、呟いて視線をあさっての方へ向けるシモン。
一応、考えたけど余計なことは本当にしていないはず。
アスナもそれならと、少し落ち着いて日記の続きを読もうとしたら・・・
「今度、久々に地球に戻って日本に行くことになった。京都と麻帆良じゃ。京都の旅行や詠春に会うのも久しぶりじゃな。それと、麻帆良へ行くならテオドラ皇女から頼まれていることがあった。かつて皇女が黒い猟犬(カニス・ニゲル)に誘拐されたとき、皇女を救い出して組織を壊滅させたのが、シモン、綾波、ニア、そしてカミナやヨーコという名の者たち。麻帆良ダイグレン学園の者だと名乗っておったので、調べて来て欲しいと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
まだあった。
「ダイグレン学園フルメンバーのオールスターでタイムスリップして組織一つ壊滅させてんじゃないわよおおおおおおおおおおおお!!」
「そ、それだけは俺の所為じゃないんだよ!?」
アスナも激しく息が上がってきた。
どんだけツッコミ入れさせればいいのだと。
今では世界でも超貴重で重大情報が載っていると思われるアリカの日記帳も折れ曲がってシワだらけになってしまっていた。
シモンへの説教がしばらく続くのだった。