【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第9話 部活でもやるか

ネギがダイグレン学園に来て2日目。

まだまだ来たばかりといえばそれまでだが、それでもたった一日で濃密な時間をシモンたちと過ごした。

心から吼え、気合を燃やし、魂を開放し、そして皆で一つになった。

その時は、例え一緒に戦って居なくても、ネギは紛れも無く自分たちと共に居たと、口には出さないが誰もが思っている。

だからこそ、眠い目を擦りながらも、普段は絶対に来るはずの無い早朝のホームルームにも不良生徒たちは登校したのだ。

 

「さあ、以下の英文ですが、ここの文法は非常に重要ですので皆さん覚えておいてください」

 

ネギも心置きなく授業をし、教師としての仕事を着実に・・・・・・

 

「ローーン! っしゃあ、綺麗に来たァ!!」

「げっ、緑一色!?」

「っか~~、ゾーシイ、テメエまぐれだろ!?」

「ちっ、俺から上がられたか~」

 

・・・着実に教師の仕事を出来ているわけではなかった。

 

「・・・ゾーシイさん! キタンさん! キッドさん! アイラックさん! 授業中に麻雀なんかしないでください!!」

 

授業中に卓を囲んで堂々と麻雀する4人。

しかしネギに怒られても、四人はジャラジャラと手を止めない。それどころか開き直る。

 

「いーじゃねーか、ちゃんと授業に出席してるんだから麻雀ぐらい」

「今朝は喧嘩もしてねーし」

「そんなの当たり前じゃないですかァ! 大体ゾーシイさん、高校生がタバコを吸っちゃダメですよ!」

「俺は留年しまくって既に未成年じゃないからいーの」

「まあまあ、怒るな先生。喧嘩をやらずに出席するのはある意味試練なんだ。少しぐらいの息抜きも必要だ」

「息抜きばっかりじゃないですかァ! 他の人たちに迷惑ですよ!」

 

牌をジャラジャラとさせる音は非常に響くため、真面目に授業をしている人たちに迷惑だとネギは叫ぶが・・・

 

「って、・・・ショーガンさん! バリンボーさん! 授業中に早弁しないでください!」

「なに!? 腹が減ったら何も出来ねえぞ」

「そうだ、出来ねえぞ!」

 

真面目に授業を受けている奴は・・・

 

「おっしゃあ、ドンジャラ! グランドライン成立だ!」

「あ~ん、上がられちゃった~」

「げっ、それ狙ってたのかよ、カミナ~」

「うう、てっきり麦わら海賊団を狙っていると思ったのに~」

 

真面目に受けている奴は・・・

 

「カミナさん! キヨウさん! キヤルさん! キノンさん! あなたたちも麻雀ですか!?」

「何言ってんだよ、先公。これはワンピースドンジャラだよ。こいつらキタンの妹のクセに麻雀のルール知らねえって言うから仕方なくだな~」

「どっちにしろ授業中にやってはダメです~~!!」

 

真面目に・・・

 

「ヨーコさんも堂々と授業中に爆睡しないでください!」

「う~ん・・・zzz~」

「シモ~ン、先ほどキヨウさんが貸してくださったこの、えろほん? というものですが、この裸エプロンというものを私にして欲しいですか?」

「えっ!? ニア、そんなの読んじゃダメだって!」

「でも、キヨウさんも絶対にシモンが喜ぶと・・・どうです、シモン。私がこういう・・・」

「授業中にそんなエッチな話をしないでくださーーーーーーい!! うううう~~~、ロシウさんは!? こういう時、一番頼りになるロシウさんは!?」

「ああ、デコ助なら保健室だぞ? なんか、ニアの弁当の試食をしたら体調崩したらしいからよ~」

 

授業の妨害で迷惑を被るものなど一人もこの教室にいなかった

 

「何でこうなるんだ~~~!? 皆さんあんなに昨日は凄かったのに、心を入れ替えて真面目になってくれると思ったのに~~!」

 

考えが甘すぎたと今更ながら思わずにはいられない。

結局あんまり問題は改善されていないどころか、不良の彼らの恐ろしさを改めてネギは思い知ってしまった。

 

「しかしドンジャラも飽きたな。テツカンとアーテンボローたちは今日もサボりか? シモンもニアも麻雀できねーし、こうなったらヨーコを起こしてダヤッカでも呼んで面子に入れるか」

「あっ、じゃあダーリンに電話してみるわ。今なら授業も無いだろうし」

「って、授業があろうが無かろうが、先生を呼んじゃダメですよーーーー!!」

 

ダメだこりゃ・・・

昨日の一軒でカミナたちを知った気になっていたのでは駄目だ。

やはり彼らにはネギのこれまでの経験や知識は何も通用しない。

 

(うう~、でも僕は負けない・・・生徒を正しく導いて上げられなく、何が先生だ! こんな試練に打ち勝てずに、何が立派な魔法使い(マギステル・マギ)だ!)

 

どんな説教も彼らには通用しない。力に物を言わせるのは論外だ。

こうなったら・・・

 

 

「なら、僕が相手になります!」

 

「「「「「「「なにい!?」」」」」」」

 

 

ネギが卓に座った。

その瞬間、これまで言っても何も聞かなかった連中も手を止めた。

 

「その代わり、僕が勝ったらまともに授業を受けてもらいますからね!!」

 

一教師として生身でぶつかる。

相手の土俵に立って、真正面からぶつかってみせる。

それがこの学園に来てネギが導き出した教育方法だった。

 

「ほう、おもしれえじゃねえか、先公。俺を誰だと思ってやがる。よし、キタン、ゾーシイ、お前らがここに座れ」

「よっし、なら面子はカミナ、俺、ゾーシイと先生だな」

「へっ、泣いたって知らねえぞ。大体ルール知らねえんだろ?」

「や、やりながら覚えます。だからルールを簡単に教えてください」

「上等だ」

 

ネギは授業を放棄して人生初の麻雀対決に身を投じることになる。

残りの生徒たちもギャラリーとなって周りを囲む。卓上では真剣に牌と睨めっこして役を覚えるネギがいる。

 

「すごいな・・・あんなこと・・・俺には出来ないよ」

 

ネギの姿を眺めながら、シモンはポツリと呟いた。

 

(あんな風に・・・どうなるかとか、結果を恐れないで、自分がやったことの無いものでも正面から挑戦しようとするなんて・・・俺にそんな勇気なんて無い・・・)

 

やはりネギは、10歳の子供ではあるが、ただの子供ではない。

その心は、誰よりも真っ直ぐで、シモンにはとても眩しく映った。

 

(昨日の麻帆良女子中の女の子たち・・・あれが先生の教え子なんだよな~、あの子達、最初凄い俺たちを睨んでた・・・それだけ先生のことが好きなんだ・・・)

 

10歳の可愛らしい少年。

そんな少年が女子校に放り込まれたら、愛玩動物のようにもみくちゃにされているのは目に見えている。

しかし自分たちを睨んできた彼女たちの目は、ペットを取られた飼い主とは違う。

まるで、自分たちの大切な仲間を取り返しに来たような目だった。

それはネギと彼女たちがただの教師や生徒としてでなく、しっかりとした絆で結ばれているからだろう。

 

(俺もアニキや先生みたいになりたいな・・・結果を恐れないで・・・何にでも真っ直ぐに突き進めるような男に・・・)

 

自分より一回りも年下の少年に、シモンは心の中で尊敬しているのかもしれなかった。

 

 

「あ・・・僕・・・いきなり揃ってます・・・これ・・・天和っていうんじゃないですか?」

 

「「「なにいいいいいいい!?」」」

 

 

そしてネギの天運も恐ろしかった。

 

 

 

 

 

昼休みのダイグレン学園。

といっても、ほとんどものが授業も無視して昼飯も勝手に取るためにさほど意味があるわけでもない。

しかし真面目に授業に出ている者たちには貴重な休み時間。

そんな休み時間、学園の美術室の中から何かの音が聞こえてくる。

それは、何かが削られている音。

 

「はあ~~、俺何をやってるんだろうな~」

 

部屋の中には、ゴーグルをつけ、片手で持てるハンドドリルで黙々と作業しているシモンが居た。

昼休みの美術室に一人篭ってシモンは、大きな石を削っていた。

ただ意味も無く、石を手に持っているハンドドリルで彫り続け、彫り出された石像が何かの形になっていく。

それに意味なんて無い。ただシモンの趣味のようなものだ。

シモンは一人になって時間が余ると、小さい頃からずっとドリルで何かを彫る癖が身についていた。

 

「あの~・・・シモンさん?」

「ッ!? せ、先生? 何でここに?」

「えっ・・・あっ・・・いえ、廊下まで作業している音が聞こえて気になって・・・何をやってるんですか?」

 

作業に集中していたために、シモンはネギが美術室に入ってきたことに気づかなかった。

少し恥ずかしそうにしながら、持っていた石の作品を隠そうとするが、もう遅い。ネギはそれを目にした瞬間、目を輝かせてそれに飛びついた。

 

「す、すごい! これ・・・シモンさんが石から作ったんですか?」

「えっ・・・う、うん・・・」

「すごいです! それにこれ、凄いカッコイイ! この石像の名前、なんて言うんですか?」

「あ、え~っと、グレンラガンっていうんだ」

「グレンラガンですか! 凄そうな名前ですね!」

 

グレンラガンという名の手に収まる石の人形をネギは目を輝かせて色々な角度から眺める。

それは素直にシモンの作品に関心を持って、凄いと思っている目だ。

 

「あの~、先生・・・」

「はい?」

「先生は・・・気持ち悪いって思わないの?」

「えっ、何でですか? そんなことあるはずないじゃないですか?」

 

ネギは何を言っているんだと、シモンの言っていることが分からなかった。

だが、シモンは少し言いづらそうにその思いを語る。

 

「部屋に一人でこんなことやって・・・みんなは昔から言ってたんだ。気持ち悪いとか、こんなことしか取り柄の無い奴ってバカにされてたんだ・・・」

 

シモンの中のコンプレックス。それがシモンが堂々としない理由だった。だが、ネギは憤慨する。

 

「何でそんなこと言うんですか! こんな凄いことできるシモンさんが、何でバカにされなきゃいけないんですか!」

「・・・えっ?」

「大体、それならカミナさんとかニアさんは何て言ってるんです? シモンさんをバカにしたりするんですか?」

「う・・・ううん。アニキとニアだけは俺をバカにしないで、いつも褒めてくれるけど」

「やっぱり凄いじゃないですか! だったらコソコソしないで、むしろ堂々としましょうよ! それにシモンさんはこういうこと以外にも、たくさんの凄いところがあるじゃないですか!」

 

ネギはまるで自分がバカにされているかのように怒ってシモンに食いかかる。

 

「あのドッジボールだってシモンさんの力や技が無ければ勝てませんでした。カミナさんがやられても、シモンさんがいなければ、皆さんは絶対にあそこまでいけなかったと思います」

「それは・・・」

「それに、あんなに大勢の仲間が信頼してくれてるじゃないですか。ニアさんっていう素敵な女性にあそこまで愛されてるじゃないですか。そんなシモンさんに取り柄が無いだなんて、僕怒っちゃいますよ?」

 

頬を膨らませてぷんぷんと怒る可愛らしいネギの姿に、シモンは思わず噴出してしまった。

そして自分が何故ネギのような子供に憧れたのか、ようやく分かった。

 

(そうか・・・先生は・・・心が広いんだ・・・)

 

相手の良いところを見つけ、相手を純粋に心から認められるほど器が大きいのだ。

それがシモンにもようやく分かった。

 

「ところで聞いてくださいよ、シモンさん。僕、せっかく麻雀のルール覚えて戦略も完璧だったのに、一回目の上がり以降、まったく上がれなくなったんですけど、何故だか分かります?」

「えっ? ああ・・・それは、多分アニキたちはイカサマしたんじゃないかな? 三人対一人だし、先生は初心者だし」

「ええーーッ!? やっぱりイカサマ使われてたんですか!? 僕も今麻雀のこと勉強してて、そうじゃないかと思ったんです。う~・・・さっきパソコンで調べたんですが、このエレベーターっていう技が怪しいと思うんです。でも知らなかったな~~。こういう技も勉強しとかないと、皆さんに勝てないんだ・・・」

 

プリントアウトした紙と睨めっこしながら10歳の少年が麻雀とイカサマの勉強をしている。

どこか奇妙な光景ではあるが、ネギの顔は真剣そのもの。

 

「先生・・・なんでそんなに一生懸命なの?」

 

今度はネギ自身のことに、シモンは素朴な疑問を告げる。

 

「えっ? だって、勝負して勝ったら授業を聞いてもらう約束ですし・・・」

「でも、先生は僅かな期間だけなんでしょ? だったらそこまで真剣にやらなくてもいいじゃないか。それに、こういう騙し合いみたいなゲームは先生も苦手でしょ?」

 

純粋すぎるがゆえに、ネギは直ぐに思ったことが顔に出てしまう。

 

「そうですね。そうかもしれません。でも出来ないからって逃げたくないんです。それに僕は先生って言っても子供だから、多分皆さんも、先生の言うことを聞いてください~っとか、怒りますよ? って言っても効果がないと思ったんです。だから、皆さんと同じ土俵に立って立ち向かう・・・そうやって自分を認めてもらえないかと思っているんです」

 

出来ないからといって逃げたくない。それはシモンが正に自分がなりたいと思っている人間だ。

 

「ほら、この学園の教育理念は、無理を通して道理を蹴っ飛ばせですよね? だったら僕も常識に囚われたやり方じゃなくて、こういう生徒との接し方もあるんじゃないかな~って・・・ど・・・どうでしょうか?」

 

最後は少し不安そうに尋ねてきたが、シモンにとってネギの言葉は全てが自分の中で胸を高鳴らせるものであった。

 

(そうだ・・・自分もこうなりたい・・・無理を通せる男になりたい)

 

そう思った瞬間、シモンも笑ってネギの言葉に頷いたのだった。

 

「うん、いいと思う」

「へへへ、ありがとうございます。僕、がんばります」

 

10歳の少年とこんな会話をしているというのに、年上の自分が情けないと思うどころか、むしろ話をしてみて良かったとシモンは思うことが出来たのだった。

 

「・・・ん? そういえばシモンさん、ニアさんは? いつもニアさんと一緒なのに」

「えっ? ああ、今日はキヨウたちとその・・・勉強しながらゴハンを食べるって・・・あっ、勉強って言ってもその・・・いやらしい話の勉強だけど。ほら、キヨウって結婚してるしイロイロと・・・」

「あっ/////」

 

ニアが居ないことがちょっと気になったが、理由を聞いてネギも納得した。

 

「でで、でも、そ、そういう勉強をするのはシモンさんのためなんですよね? ニアさんって本当にシモンさんが好きなんですね?」

「う、うん・・・ニアはウソつかないから・・・真っ直ぐな気持ちを俺にぶつけてくれるし、買いかぶり過ぎだって思うくらいに俺をいつだって信じてくれる・・・」

「うわ~、素敵ですね~。因みにお二人はどういう・・・その・・・経緯で? 僕も参考のために聞きたいんですが・・・」

 

ネギは自身の恋愛経験ゼロだが、少し前に宮崎のどかという生徒に好きだと告白されたことがある。

まだ、恋というものが何なのかは知らないが、ゆくゆくは立ち向かっていかねばならない問題だけに、興味心身にネギは尋ねてきた。

 

「え~っと、ニアの家は凄い金持ちで小さい頃からお姫様みたいに育てられてたんだけど、それが窮屈になって家出したんだ。その時逃げているニアと俺がばったり会って・・・」

「うわ~~、まるで映画みたいな運命の出会いじゃないですか」

「う、うん、ニアも会った瞬間にそんなこと言って・・・それ以来俺とずっと一緒に居て・・・学校も元々テッペリン学院だったのに転校までしてきて・・・」

「す、すごい行動力ですね・・・でも、それだけシモンさんのことが好きなんですね」

 

ニアの行動力からシモンへの愛情の深さが感じられた。しかし話しながらもシモンは少し表情を暗くしていった。

 

「でも・・・先生もアニキも・・・そしてニアもそうだけど、俺は皆が思うほどそんなに凄くない」

「そ、そんなことッ!?」

「いや・・・俺が一番分かってるんだ。でも、だからこそ俺・・・先生を見て思ったんだ。俺も変わりたいって。アニキの期待に・・・ニアの信頼に応えられるような男になりたい・・・俺はそう思うようになってるんだ」

 

そしてシモンは再び顔を上げる。いつもオドオドしているシモンにしては、力強く決意を秘めた目。

それは昨日のドッジボール対決で見せたシモンと同じ目をしている。

 

「だから俺・・・俺も先生みたいに何かに挑戦してみるよ。まだ何をやるかは決めてないけど・・・俺も変わりたい」

 

ネギはうれしかった。

自分の生き方を見て、見ている人が自分も変わりたいと思うきっかけになったと言ってくれたのだ。

カミナたちにはまだまだ時間がかかるかもしれないが、シモンが言ってくれた言葉は、教師としての確かな自信となった。

 

「よーーーーし、なら僕にいい考えがあります!!」

 

ネギはうれしさのあまり、全身にやる気が漲った。

 

「いい考え?」

「そうです。シモンさんも何か打ち込んで努力できるもの、充実できるものを探すんです! 熱くなれるものを、僕と一緒に探しましょう!」

「でも探すって・・・そんな簡単には・・・」

「いいえ。一つだけあります・・・その方法は・・・・」

 

ネギはふふふふふ、と笑みを浮かべて答えをもったいぶる。

シモンもゴクリと息を飲み込み、その答えを待つ。

そして、ネギが出した考えとは・・・・

 

 

「部活動です!!」

 

「・・・・えッ? ・・・・ええええええッ!? 部活ーーーッ!?」

 


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