【完結】ミックス・アップ(魔法先生ネギま✖グレンラガン)   作:アニッキーブラッザー

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第93話 誰にでも黒歴史ってのはあるもんだ

「ったく、モンハンじゃないのよ!?」

「やるしかありませんね。竜退治」

「接近戦は不利だ。遠距離の魔法で削るぞ!」

 

正に伝説との対面である。

裏の世界に足を踏み入れたアスナや木乃香、元から居た刹那。

魔法世界というファンタジーの塊のような世界の出身である、焔たちですら、その存在と相対するのは初めてだ。

ただのドラゴンではない。この世でも稀少であり、伝説やお伽噺の中でしか語られないエメラルドドラゴン。

その存在が、牙を向く。

 

「ふふふ、粋がっていても小さいのう。ほれ、パタパタパタ」

 

見下したような口調で、アマテルは巨大な両翼を羽ばたかせる。その風圧だけで、吹き飛ばされそうな威力。

波が荒れ、木々が激しく揺れ、構えが解かれる。

だが、一人だけ揺るがなかった。

 

「今こそ因縁に決着を付けてくれよう、アマテル!」

 

それは、アリカ。

 

「お前に何が出来るのじゃ?」

「私は決して理不尽な力には屈せぬ! 例え相手が誰であろうと!」

 

アリカの全身から闘気の衝撃波が発せられ、風圧と相殺させて消し飛ばした。

 

「うわっ、スゴ!?」

「さすがはアリカ姫・・・ただの色ボケお姫様ではなかったのですね」

 

頼もしきアリカの力に、思わずアスナたちも見とれてしまった。

強く、美しく、そして誇り高い? その姿は、正に戦乙女のごとく。

 

「契約に従い、我に従え、氷の女王。全ての命ある者に等しき死を。其は、安らぎ也」

 

空間が凍てつくまでに急激に温度が下がる。

アリカの詠唱と同時に仮想空間の海が凍りつき、一瞬で世界が氷河と変わる。

 

「ちょっ、ウソ!?」

「こ、これはまずいです!」

 

急いで自分たちも避難しなければならない。

四方に絶対零度に近い極低温空間を発生させる魔法。魔法の世界でも最高ランクの威力を持った力が、放たれる。

 

「上級魔法か。じゃが・・・」

 

だが、

 

 

「おわるせかい!」

 

「無駄じゃ」

 

 

その瞬間、世界は元に戻った。

凍りついた海も、急激に低下した空間の温度も、全てが元に戻った。

アマテルは、ただ手をかざしただけだというのに。

 

「ッ、魔法無効化能力!?」

「そうじゃ。見た目がドラゴンに変わっても、それは変わってないぞ?」

 

アリカが思わず舌打ちする。

魔法無効化能力。それはすなわち、今後すべての魔法がアマテルの前では無力と化す。

こうなってしまえば、魔法に頼った魔法使いたちは手も足も出ない。

 

「ちょっと、魔法無効化って、私と同じじゃん!?」

「アスナさんと同じ・・・まさか、本当にアマテルはアスナさんの・・・」

 

だが、驚いている場合ではない。

アマテルの咆哮が再び皆へと向けられる。

 

「大丈夫。どんなパワーも、戦い方によっては無力にできる」

 

竜族のハーフである環が、向かい風に構わず突き進む。そして、懐から取り出した一枚のカードが輝く。

 

「アデアット・無限抱擁(エンコンパンデンティア・インフィニータ)」

 

その瞬間、周りの風景、いや・・・世界が変わった。

 

「こ、これは・・・」

「ななな、なんやこれーー!? 不思議空間!?」

「ちょっと、タマちゃん、何なのよ、これ!?」

「みんな、安心して。これが環のアーティファクト、無限抱擁(エンコンパンデンティア・インフィニータ)。この無限の広がりを持つ閉鎖空間に出口はない。理論的に脱出は不可能な最強の空間」

 

環がアーティファクトを発動した瞬間、シモンたちの周囲、四方八方が端の見えない無限の広がりを持つ空間へと変わった。

 

「無限の結界空間か。まさか、こんなもので私を閉じこめた気になっているのかな?」

「でも、これであなたはもう逃げられない」

「どうかの?」

 

アマテルが大きく口を開く。開いた口に魔力のエネルギーが凝縮されて、一気に放たれる。

だが、それが皆に直撃したかと思えば、その攻撃は貫通し、シモンたちの姿は陽炎のように揺らいで消えた。

 

「幻術と空間内転移か。流石に反応が速い。テルティウムの小娘共は実戦慣れしているな。さて、少しは遊んでやろうか」

 

無限空間の中で敵を見失った。出口もない。だというのに、アマテルにまったく乱れる様子はない。

ただ、顔を上げ、まるで暇潰しのかくれんぼでもしているかのような態度で、無限空間の中を歩き出した。

一方で、消えたシモンたちは、今のアマテルが居る場所から数十キロ離れた場所に居た。

 

「ねえ、今、何がどうなったの?」

 

あまりにも突然のこと過ぎて頭が追いつかないシモンたち。

焔たちは警戒心を解かないよう、冷静に説明していく。

 

「安心しろ。今、アマテルはここより数十キロ遠くにいる。この空間内であれば一瞬で環は移動することができる」

「マジで!? スゴイじゃん、タマちゃん! 封神演義の十天君もビックリする反則ぶりよ!」

「待て待て、話しが脇道に逸れすぎだ! とにかく、これで一応作戦を練ろう。バカ正直に正面から行って勝てる相手ではない」

 

そうだ、相手はあくまで伝説。いくらこちらは人数が多いとはいえ、質量に差がありすぎる。

この人数、そしてそれぞれの能力を駆使しなければ、決して勝てないだろう。

 

「そうじゃな。そこの娘たちの言うとおりじゃ。私もかつてアマテルと戦ったが、真剣にやらねば命がいくつあっても足りぬぞ?」

 

こういうとき、大人で実戦経験が豊富で、何よりも過去にアマテルと戦った経験のあるアリカが居るのはありがたい。

 

「私の最上クラスの魔法でもあのザマじゃ。作戦を練り、戦い方を変えねば、帰るべき場所へは帰れぬと思え。この戦い、絶対に負けられぬのだからな」

 

そして、過去の戦争を戦い抜いた経験からなのか、その瞳に一切の乱れがない。

同じ女として、アスナたちも思わず見惚れてしまった。

 

「アリカ、それじゃあ教えてくれないか? おれたちはどうすれば勝てる」

 

これだけ女の子が回りに居ては、シモンもいつものように命知らずの特攻をいつまでもするわけにはいかない。

そんなシモンの姿に、アリカも微笑んだ。「成長している」と感じたのだろう。

 

「ふふ、じゃが、肩に力が入りすぎているぞ? 緊張を抜け。力の入りすぎは、勝率を下げることになる」

「う、うん」

「よし、では皆も聞け。まずは冷静に・・・・・・」

 

アリカが皆を集めて作戦を立てようとした。

しかしその時、予想だにしない出来事が起こった。

 

「待って、アマテルが何かをしています! 少し遠すぎて聞き取れませんが・・・」

 

調が何十キロも遠くにいるアマテルの様子を感知した。

ハッとした環が空間に何かを出現させた。それは巨大モニター。

 

「環、モニターを出せ」

「これで様子はバッチリです」

「便利すぎでしょ、この空間!」

 

モニターに映し出されたのは、遠くにいるアマテル。すると、映し出されたアマテルは何か奇妙な動きをしていた。

それは、奇妙な動きというより、踊り? 巨大なドラゴンが、軽快なステップで踊っていた。

 

 

「「「「「はっ??」」」」」

 

 

一同唖然。しかも、アマテルは軽快なステップを取りながら、何かを口ずさんでいる。いや、叫んでいる。

 

 

『1991年8月! ナギの猛々しいエクスカリバーが、愛の蜜で溢れる女の証、私の聖痕(スティグマータ)と交わるとき。私の世界が全て変わった』

 

「!!!!」

 

 

それを見たとき、アリカが激変した。

美人台なし。それどころか、閻魔? 般若? 夜叉? もはや、憎悪に満ちた怪物のような形相へと変わった。

 

 

『くくくく、アリカよ、どうせ聞いておるのじゃろう? 私はこのように、十年近くも読み続けたおかげで、貴様の日記帳の中身は全て暗記した! 貴様の歴史をバラされたくなければ大人しく出てくるが良い! ほれ、さっさとせぬと、次は24時間耐久勝負の話を読み上げるぞ? それとも、11月ごろにやったという・・・アレか?』

 

 

おちょくり顔のアマテルドラゴン。もはやアリカの憎しみは誰にも止められない。

 

「ああああああああああああ!!」

「アリカはんが!?」

「ちょっ、落ち着きなさいよ!」

 

「王女、気を確かに!」

「大丈夫です、女同士ではないですか! 恥ずかしがることはありません! 気持ちは分かります!」

「そうそう、むしろラブラブで羨ましいっていうか!」

「そうですわ! ですから、何も恥じることはありません!」

 

錯乱して暴れるアリカを必死で取り押さえるアスナたち。

誰だ? アリカがクールで氷のような冷たい表情をした王女とか言ったのは? 

王家の魔力が全身から溢れ出て、街の不良よりもタチが悪い。

 

 

『今日はいつも攻めるナギに仕返しじゃ! 年齢詐称薬をナギの食事に混ぜて、成功した。十歳ぐらいの子供になったナギを無理やり寝台へ運び・・・ふふふ・・・至福なひと時じゃった・・・』

 

 

――――ブチッ!!

 

 

その時、何かがブチ切れた。

 

「「「「「う、うわ・・・・・・・それは普通に引く・・・・」」」」」」

 

再びアマテルが口にしたアリカの黒歴史。

必死にフォローしていたアスナたちですら、とうとう庇いきれない歴史まで発覚してしまった。

すると、暴れていたアリカが急に大人しくなった。

全身が脱力し、少しだけ俯いて、何かをブツブツと呟きだした。

 

「・・・・・・誰じゃ・・・誰じゃ・・・私をここまで辱めるのは・・・」

「ア・・・アリカ?」

「憎い・・・・・・・・・憎い・・・・・憎い・・・・この・・・たわけ者め・・・」

 

たわけはオメーだ・・・とは誰も一言も言えず、聞き取れるか聞き取れないかギリギリのアリカの小声が徐々に大きくなる。

 

「憎い! 憎い! 憎い!」

 

その瞬間、アリカの美しくサラサラの長い金髪が、怒髪のごとく逆だった。

 

「憎い! 憎い! 憎い! 憎い!!!!」

 

寒気がするほどの憎しみ。思わずアスナたちはガタガタと震えて座り込んでしまった。

災厄の魔女・・・アリカは自分のことを世界はそう呼ぶと言った。

そして、シモンたちは顔を見合わせて思った。

 

((((災厄の魔女・・・・・・・・ピッタリじゃん・・・・))))

 

意外と、間違ってもいないではないかと、今のアリカを見てそう思い、そして・・・

 

(((((・・・やっぱ、ネギ(先生)(くん)(さん)とは会わせないほうがいいのかも・・・・)))))

 

こんなのが母親ですとか言われても、ネギが可哀想だろうと思うシモンたちだった。

 

「突撃じゃア!!」

 

そして、全身に王家の魔力と憤怒のオーラを身に纏い、アリカは飛ぶ。

 

 

「ぎゃあああああ、アリカ姫がどこかの中国の大将軍みたいに!? つうかダメでしょ! 作戦なんも立ててないんだから、ここは待機じゃあ、でしょ!?」

 

「冷静にとか自分で言うてたやん!?」

 

「一番冷静じゃないといけない人、落ち着いてえええ!」

 

「やっぱ王家の一族は恋をするとアホになるじゃん!!」

 

「っていうか、アリカ姫、怒り具合がデュナミス様クラスになってます」

 

 

超高速の飛翔術。マッハクラスの音速で飛んでいくアリカに追いつけるはずもない。

そして、一同ガックリと項垂れながら映像を見る。

すると、踊っているアマテルに、アリカが怒りの跳び蹴りを食らわせる光景が映し出されたのだった。

 

「ふふ、来たな、色ボケ子孫め」

「黙るがよい、幼老婆。所詮キサマなど太古の遺物。せめて月に墓標を建ててやろう」

「できるか? ただの助平オタク女に成り下がったお前に」

「私は助平ではない! 色々と興味惹かれる年頃なだけじゃ!」

「それを助平というのじゃ、このビッチ姫め!」

 

アリカの手から眩い閃光が飛び、次の瞬間、大きく爆ぜる。

強烈な爆撃を受けてアマテルの体が僅かに揺らぐ。だが、アマテルはすかさず口からブレスを吐いてアリカに返す。

アリカの真っ白いドレスが焦げるが、アリカは魔力の障壁で耐えきる。

僅か一瞬で目にも止まらぬ攻防。二人の口元に好戦的な笑みがこぼれる。

 

「なんだろう、最強クラスの戦いなのに、とてもバカバカしい」

「うん・・・・・・」

 

しかし、どうしても感心できない、シモンたちであった。

だが、それでももはや戦いはどちらかが倒れるまでは終わらない。

アリカもアマテルも、お互いを既に殺す気で向かい合っている。

 

「懐かしいのう。貴様と戦うのは11年ぶりか。しかし今日の貴様は冬眠明け・・・なかなかハンデが大きいな?」

「気にするな、アマテル。私の心の底から無限に溢れるこの気持ちが、貴様を滅っするまでは止まりそうもない」

「ほう」

「それに、ハンデなら11年前からそうじゃった。あの時の私は妊娠と出産により魔力を膨大に失っていたがな・・・」

「懐かしい話じゃ。生まれたばかりの息子と別れたのは我らの所為じゃからな・・・恨んでおるか?」

「戦争をしているのじゃ。いちいち上げればキリがない。だが、私の思い出話を汚い手で踏みにじった貴様を許しはしないがな」

 

アマテルドラゴンの鱗の光が更に増していく。緑色に輝く光は、レーザーのように四方八方に伸びて、隙間なく襲いかかる。

対するアリカは右腕に魔力を込め、発光する右手に何かを出現させた。

それは、白銀のバスターソード。

その剣をひと振りすると、輝く光線を全て斬り裂いて砕いた。

 

 

「ふむ、王家の剣か・・・懐かしい・・・」

 

「そうであろう。貴様から始まり、何千年と受け継がれ、そして歴代の王たちの魔力が込められた聖剣。貴様を刻んでブタモグラの餌にしてやろう。人類の未来のため、ここで決着をつけるぞ!」

 

「やってみよ。エロリカ・・・あっ、間違えたショタリカ・・・いや、アリカ」

 

「ッッ!! 引裂いてくれよう!!」

 

 

もはや、神話に出てくるような光景。

聖剣を携えた美しき王女が、悪しき竜へと立ち向かう光景。

その二人のやり取りやアリカの残念さが全てを台無しにしているためか、シモンたちは画面の向こうでため息つくばかりだった。

 

 

 

 

 

 

地球の時刻は深夜を回った。良い子は寝る時間。少なくとも、外を出歩くのは絶対に許されない。

既に終電もない時間でありながら、雀荘では目の下にくまを作りながらも、指先と瞳に神経を注いでいる男たちの夜は終わらない。

雀荘の閉店時間は曖昧で、ここの店は「~LAST」と表記されている。つまり客さえいれば店は閉まらず、帰宅することを諦めた悪い大人たちの溜まり場と化していた。

そんな中、風営法とか未成年がどうとかの法律に引っかかりそうな子供教師が重いまぶたを擦りながら大声を上げた。

 

「えええええーーー!? 僕、麻帆良女子中に戻っても、女子寮ではもう暮らすことできないんですか!?」

「うん、なんかそういう話が出てる・・・みたい・・・くっ、ね、眠い・・・・・・・やはり二日連続はキツイ・・・昨日のオールが響いている・・・」

「なんでなの、タカミチ!? 僕何かした!?」

「いや・・・した・・・じゃないかな? ・・・ちょっと大声は出さないでくれ・・・頭に響く」

 

ダイグレン学園に来る前までは、ずっとアスナと木乃香と同じ部屋で暮らし、クラスメートの少女たちと同じ女子寮で生活をしてきたネギ。

皆優しく、明るく、そして過ごしやすく、自分にとっても非常に居心地のよい住み慣れた場所であったが、そこにはもう戻れない。

寝落ちしそうなタカミチから発せられた言葉に、ネギは取り乱した。

だが、

 

 

「ほら、会議でも問題になったように、最近女子生徒たちのスカートをめくったり、服を脱がせて、下着姿から全裸にしたり、キスをしたり、女生徒たちとお風呂でもみくちゃになったり・・・・・・が問題に・・・・・・チー」

 

「ご、ごめんなさあああああああああああああああああいい!!」

 

「ううむ、ネギ先生だから許されるというか・・・まあ、我々がやってしまえば懲戒免職程度では済みませんね・・・・刑事告訴されて、ネットにさらされて、家族全員巻き込んで住む場所を追われて野垂れ死にするとか・・・・いやあ、ネギ先生、本当にそれだけで済んでラッキーでしたね・・・・・・ぽ・・・、ポン」

 

「英雄の息子。戦が終わればただのラッキー助平か・・・嘆かわしい。ッ! カン!」

 

 

ネギは頭を抱えて罪悪感に苛まれながら身悶える。

タカミチ、新田、デュナミスも、むしろよくそれだけで済んだものだと、ネギの天運を感じた。

 

 

「ふう・・・・・この様子なら、昨日の負けを取り戻せそうだ。早乙女ハルナという少女の鬼のような地獄の演劇特訓を途中で抜け出して、こちらに合流した甲斐があったというものだ」

 

「それで、ちゃんと本番できるのかい? いちおう、僕も祭りは見に行こうと思うけど」

 

「ああ、当日は大勢の客が予想される。アダイの少年少女たちには無料で特設席で見れるが、その他の者は有料で、既に前売りチケットで婦女子が大勢席を取り合っているとの話を聞いている・・・」

 

「婦女子・・・ハルナくんの監督する演劇の客が・・・婦女子? 腐女子?」

 

 

しかし、女子寮では住めなくなったとはいえ、子供のネギには死活問題。

まずは、食事。女子寮に住んでいたころは、朝昼晩、ルームメートの木乃香が快く作ってくれた。ネギもいつのまにかそれに甘えてしまい、それがどれほど自分を救ってくれたのか、ダイグレン学園に来て心から実感した。

あと、風呂嫌いのネギを無理やりアスナが風呂に連れて行くことで、いつも清潔でいられ、何よりもいつも楽しく明るい生活を送ることができた。

そして、これは口に出しては言えないが、やはり一番の問題は夜寝る時だ。

異国の地で寂しかったネギだが、アスナは嫌々ながらもネギを自分の布団に入れて、安心感を与えてくれていた。

 

(ど、どうしよう・・・・じゃあ、今度からは僕ひとりで全部やらなきゃ・・・お風呂も炊事洗濯も・・・寝るのも・・・)

 

ネギの涙腺に涙が溜まっていく。

一人だけの生活、不安、心細さ、その全てが一気に押し寄せて寂しさが募っていく。

 

「リーチ!」

 

デュナミスは大人気なく、リーチを宣言。だが、ネギの集中力は完全に乱れていた。

 

「・・・まったく、これしきのことで乱すとは、情けない。昨日までの威勢はどうした? 昨日の負けを全て取り返すまでは、終われぬぞ?」

 

あまりにも歯ごたえがなくなったと、デュナミスが腕組んでネギに発破をかけようとするが、ネギは情けなくオロオロするばかりだった。

 

 

「っ、だって、だって、僕、一人暮らしって何だか怖くて・・・それに、住む場所も探さないと・・・通勤時間も考えてなるべく近いところに・・・ああ、でもでも、僕は減給されてるからあまり家賃の高いところは泊まれないし・・・」

 

「やれやれ。そもそもそなたは父とも母とも物心ついたころには暮らしていなかったであろう? ならば、一人暮らしにはなれていよう?」

 

「だだ、だって、その頃は近所のおじさんや、ネカネお姉ちゃ・・・えっと、親戚のお姉ちゃんがいつも面倒を見てくれたし、ぼ、僕一人なんて無理ですよ~!」

 

「ならば、一足早い独立と思って諦めよ。シモンもカミナも、そして今度のアダイの子達も境遇は似たようなものだ」

 

「あう・・・そ、そうですよね・・・シモンさんもカミナさんも、ずっと一人暮らしで・・・・・・・・・あっ、シモンさんは同棲ですよね?」

 

 

そう、シモンやカミナも幼い時から両親とは暮らしておらず、施設で育ち、今では独り立ちして自分の身の回りのことは全て自分の力でやっている。

アダイの施設の子達も、いずれシモンやカミナと同じように、施設を出て自分一人で生きていくことになる。

だがら、ネギも甘えて情けないところばかりを見せていられない。それは分かっている、分かっているがしかし、それでも心細さに嘘は付けなかった。

 

「これではサウザンドマスターだけでなく、アリカ姫も悲しむぞ?」

 

情けないネギを見て、デュナミスが何気ない一言。

すると、その言葉に眠気覚ましのコーヒーを飲んでいたタカミチが、コーヒーを口から吐き出した。

 

「ぶっ!? デュナミス、それは!その話はまだ早い!」

「む・・・なんだ? ひょっとして、貴様らはまだ何も話していないのか?」

 

タカミチが慌てて止めるが、もう遅かった。

ネギは呆然としたまま、今のデュナミスの言葉を口にした。

 

「アリカ・・・姫?」

 

その名をこれまで一度も聞いたことは無かった。そして、その名は自身の父親と並べて出てきた。

タカミチが止めようとする理由は分からない。だが、それでもネギは自分の思いを止められなかった。

 

「あの、アリカ姫って誰ですか!? あの、お父さんだけじゃなくって・・・それってまさか・・・アリカ姫って、まさか僕の!?」

 

まさか? その問いかけに、タカミチは俯く。デュナミスは無言。新田は無視して自分の手配と睨めっこ中。

タカミチは何も言わない。ただ、複雑そうな顔を浮かべながら、小さく頷くだけだった。

だが、それで十分だった。眠くて不安だったネギの心も瞳も一瞬で覚醒し、ネギは立ち上がった。

 

「タカミチ!!」

 

聞かずには居られない。全てを問いただそうとするネギだったが、タカミチは申し訳なさそうに首を横に振った。

 

 

「待て、ネギ君。この話は・・・その・・・まだ早い。いつかは、君も知らなくちゃいけないことではあるが・・・それは今ではない。話さないんじゃなくて、話せないんだ」

 

「で、でも!?」

 

「分かってくれ、ネギ君。あの方のことは・・・それほどまでに重い真実なんだ。今の君では耐えられるものではない。だから・・・お願いだ、もう少しだけ待ってくれないか?」

 

 

タカミチは、理由もなくこのようなことはしない。

逆にタカミチが「言えない」というからには、それこそ普通ではない、口では言い表せぬ何かがあるのではないか?

だが、そう思うと逆に気になる。

アリカ姫・・・一体、どのような人物なのか。

 

「タカミチ・・・だったら、だったら! これだけは・・・これだけは教えて」

 

言えないなら言えないでも構わない。だが、言えるところまでなら教えて欲しい。

ずっと知らなかった、ずっと聞いたこともない女性。

自分に深く関わりがあるその人物は、どのような女性だったのか。

 

「そのアリカ姫って・・・・・・どんな人だったの?」

 

問われたタカミチは、思わず目頭を抑える。

何度も小さく「スマナイ、ネギ君」と呟き、複雑そうに微笑みながら、答える。

 

 

 

「アリカ姫は・・・少し感情の表し方が苦手で不器用な性格ではあったが・・・・美しく、誰よりも優しく・・・可憐で、争いや憎しみを好まない、誇り高い女性だった」

 

 

 

 

 

・・・美しく、誰よりも優しく・・・可憐で、争いや憎しみを好まない、誇り高い女性・・・

 

 

その女性は今、月の大地にて・・・

 

 

 

「あああああああ 憎い! この遺物が憎い!! 憎い、憎い! 心の底からわきあがるこの感じ!! すべてを破壊し尽くすことでしか収まらぬ芽生えは~~~!!!! ジェラララララララララララララララ!!!」

 

 

 

憎しみに囚われまくった悪鬼羅刹の魔人と化していた。

 

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