艦これをプレイ中、ふと欲が出ちゃいました。
各連載中の小説はPCにて執筆中ですので気長に待って頂けると幸いです。
事実は小説より奇なり、人生何が起きるか分からない、なんて良く耳にする言葉だ。
どんなに理不尽な出来事に見舞われようと、現実だと言われれば受け入れるしかない…それが、無力な人間に出来る唯一の事だろう。
「…っ」
たとえ...一人の女の子が海上を滑るように駆け、怪物相手に砲撃戦を行っていたとしても。
「あぁ…やっと帰り着いた」
事の始まりは、いつもと同じ日常だった。
夜勤を終え、秋葉原を適当に散策して家に帰宅したのはもう、19時を回っていた頃だったか。
ワンルームの部屋に入った俺は、鞄と戦利品…ゲームセンターで取ったフィギュアを床に置き、敷きっぱなしの布団に身体を投げ出す。
「と…今日の任務を消化しとかないと…」
うつ伏せに寝転び、疲労の溜まった身体を休める中小さく呟き、俺は枕元に置かれたノートPCを立ち上げる。
見慣れたデスクトップが表示されると、慣れた手つきでネットを立ち上げ、2分も経たないうちに複数の少女が映るページが表示された。
【艦隊これくしょん】…艦これ、と縮めて呼ばれるPCのブラウザゲームだ。
プレイヤーは艦隊を指揮する提督となり、軍艦を擬人化した少女【艦娘】を育成、編成して【深海棲艦】と呼ばれる敵と戦っていくといった内容で、サービスが開始してから3年経った今でも根強い人気を誇っている。
『艦これ、始まります!』
ページが表示されると、快活な少女の声がスピーカーから流れるのを耳にしつつ、ゲーム開始のアイコンへカーソルを合わせる。
(昨日は雪風が2人と卯月が来たんだったな…阿武隈は何時になったら来てくれるのやら)
眠気に屈しかけながらも小さく溜息を吐きアイコンをクリックすると、暗い画面に一隻の船が浮かぶ。
『提督が鎮守府に着任しました、これより艦隊の指揮に入ります』
船が揺れる画面と女性の声を聞きながら画面を見ていると、我慢の限界に達した俺はゆっくりと意識を手放した。
「…ん…」
閉じられた瞼に感じる陽光とともに、意識が覚醒していく。
まだハッキリとしない視界で辺りを見ながら今日の予定を思い出す。
昨日が夜勤明けだったから、今日は一日中休みだ。
幸い予定という予定もないし、部屋の片付けをして、vita版の艦これを進めつつデイリー任務を消化。
昼からは…そうだ、昨日ゲーセンで川内と神通、長門のフィギュアを取ったからそれを飾ろう。
そう決めて、まずは起きようとして…。
「…あれ?」
俺は、漸く違和感に気付いた。
俺の使っている布団は安い煎餅布団だから、横になれば硬い床の感触を間接的に感じるものだ。
でも…今背中に感じているのは、柔らかくも適度な硬さのある、マットレスの感触。
(この匂い…消毒液?)
それに加え、微かに漂うエタノールのような匂い。
学校の保健室で嗅いだ覚えのある、消毒液の匂いだ。
「っ?!」
そこまで考え、俺は勢いよく身体を起こした。
次いで、辺りを見回し…。
ソす
「…どこだよ、此処」
つい昨日まで居た自分の部屋じゃない事に、漸く気がついた。
部屋の中は、保健室…或いは、医務室と呼ばれる部屋のそれだった。
板張りの床に白いパイプ製のベッドが四つと、その間を仕切る白いカーテン。
部屋の隅には診察台に薬品の陳列された棚が二つ。
窓から見える風景なんて、俺が住んでいる部屋ではまず有り得ないものだった。
「…海?」
視界に映るのは、道路や町並みなんかじゃなく、何処までも広がる蒼い海。
海から離れた内陸の方に住んでまむまむくかいる俺が見る事のない光景だった。
(どうなってんだよ、コレ…夢か?)
自分の見ている光景に、頬を思い切り抓る。
「…っ、夢じゃない」
抓った頬に鋭い痛みを感じ、指先を離してボンヤリとしていると、背後にある扉が開く音が聞こえた。
「はわわっ?!」
次いで耳に入る、少女の声と倒れる音。
慌てて後ろを振り返ると、開かれた扉の前に一人の女の子が座り込んでいた。
「あうぅ…痛いのです」
小さく呟き、涙目になりながら赤くなった額を摩るのは12、3歳位の少女だ。
肩まで伸びた髪をバレッタで留めた、セーラー服を着た姿に俺は強い既視感と眩暈を感じた。
「…って、目が覚めたのですね!良かったのです!」
額を摩りながら起きた俺に気付いたのか、少女は立ち上がり微笑んだ。
「砂浜に倒れているのを見つけて、守衛さんに救護室へ運んで貰ったのです…もう、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ…問題無いけど…」
少女の質問に答え、喉が渇いてくる感覚を感じながら、俺は口を開いた。
「なぁ…此処って、神奈川県の○○市だよな?」
「?いえ、此処は高知県西部にある宿毛湾泊地なのです」
帰ってきた質問の答えに、俺は目を見開く。
宿毛湾泊地。
その名前に聞き覚えはない…けど、見覚えはあった。
何度も目にしたしつい昨日の夜、寝落ちする直前に見た名前だ。
「…君の名前は?」
「はわわっ、忘れていました」
今の状況を否定したい思いに耐えながら、微かに震える声で問いかける。
それに気付いていないのか、少女は俺を見て気を引き締めた表情を見せ敬礼をした。
「暁型4番艦の
電。
その名前は、何度も耳にした。
艦これを始めた時…5人の初期艦の中から選び、苦楽を共にしてきた俺の相棒と言ってもいい。
その少女が…今、俺の目の前に居る。
今までディスプレイ越しにしか見れなかった相棒が、すぐそこに。
そんな、ゲームやアニメが好きな人だと興奮するような状況の中、俺は血の気が引くのを感じた。
会社や家族は行方不明と騒ぐのは間違いない。
それに…此処が本当に【艦これ】の世界だとして。
俺は、帰れるのか?
家族や知り合いも居ない場所に放り出された恐怖から、俺は思わず膝をついた。
「お兄さん、大丈夫ですか?」
俺の姿を見て、電が駆け寄ってくる。
これは夢だ、そう信じたいのに。
彼女が心配する仕草や肩に触れる温もりが、現実を突きつけていた。
「お兄さん、本当に大丈夫なのですか?」
「あぁ、大丈夫だよ」
信じ難い状況を一応は飲み込み、俺は電に連れられ建物の中を歩いていた。
救護室で落ち着いてきた矢先に腹の虫が鳴り恥ずかしい思いをしたが、笑顔を見れたから足し引きゼロと言った所か。
「あの、電…ちゃん?」
「どうしたのです?」
無意識に呼び捨てしそうになり、訂正して呼びかけると電は小首を傾げて俺を見る。
「その、お兄さんって呼び方は止めてくれないか?」
「?どうしてなのです?」
純粋に理由が分からない、といった表情の電に苦笑しつつ、俺は頬を掻いた。
「どうしてって…これでも俺、三十路手前なんだよ」
「はわっ?!」
俺の言葉に電は信じられない、とばかりに目を見開いた。
俺は28歳の社会人だ…だけど、成人男性の平均より低めの身長と童顔のせいで20代前半、酷い時は高校生に間違われる。
コンビニで酒とタバコを買う時や飲み屋に行った時に身分証の提示は日常茶飯事、挙句一度何処かの高校の生活指導員に補導されかけた。
でも、何度も言うが俺は28歳の社会人、姪と甥も居て戸籍上でも立派な『おじさん』なのだ。
「では…どう呼んだら良いんでしょうか」
俺の言葉を聞いて、電は眉を下げ小さく唸る。
つられて俺も小さく唸ったのち、口を開いた。
「…落合」
「?」
俺が呟いたのは、自分の名字。
中学以降、呼ばれ慣れた呼び方だった。
「落合で良いよ、名前よりそっちの方が呼ばれ慣れてるし」
「落合、さん…了解しましたのです」
俺の言葉に電は小さく、刻み込むように呟いたのち小さく花が咲いたような笑みを浮かべた。
「…そういえば」
建物の中を歩いている時、妙な違和感を感じていた。
これまで歩いていたけど、俺と電は誰とも会っていないしすれ違っていない。
「…なぁ。此処って、他に人は居ないのか?」
「っ…」
俺が呟いた何気ない言葉が聞こえたのか、電は微かに表情に翳りを見せる。
「…此処には、電たちしか居ないのです」
「え?」
電の言葉に、小さく首を傾げる。
「この宿毛湾泊地は、まだ鎮守府として正式に稼働してはいないのです。電は…守衛さんと妖精さん達と、ずっと司令官さんの着任を待っているのです」
寂しげに、スカートの裾を握る電の姿に少し気まずい雰囲気が流れた時だった。
『緊急指令!鎮守府正面海域に深海棲艦の出現を確認、第一艦隊は出撃してください!』
館内にアナウンスが響くのと同時に、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「何だ…出撃…?」
「…!」
思わず耳を塞ぎ辺りを見る俺を他所に、電は意を決した表情を浮かべると何処かへ向かい駆け出した。
「って、おい!電ちゃん?!」
その姿を見て、小さくなっていく背中を追うように俺も走り出した。
…そんな俺たちを見つめる、小さな影にも気づかずに。
「此処は…」
急に走り出した電を追いかけ、俺がたどり着いたのは、薄暗く拓けた空間だった。
海面を照らす照明の灯りを頼りに、辺りを見回し目を凝らすと、電が海面の側に立っているのに気がついた。
「電ちゃん!」
「…落合さん、今…敵の主力艦隊が此方へ向かっているのです」
電に駆け寄って呼びかけると、彼女は意思を固めた表情で俺を見つめる。
「電はこれから…それを迎撃しに行きます」
「迎撃って…一人でなんて無茶だ!」
鎮守府正面海域の主力艦隊…それを、俺は知っていた。
ゲームの1-1-Cに出現する敵で軽巡級を旗艦に4体で構成されているのが特徴だ。
駆逐艦が複数人居れば対抗出来るけど…1人だけで迎え撃つなんて、無謀すぎる。
「…分かってるのです、今の電じゃ沈むかもしれない事は」
俺の言葉に電は小さな身体を震わせ、力無く笑みを浮かべるが、その瞳が揺らぐ事はなかった。
「それでも…電は、此処に居る皆を助けたいのです」
「っ…」
彼女の言葉に、何も返せなかった。
何も言えずにいる俺を他所に、電は着々と出撃の準備を整えていく。
大型船の機関に似た機械を背負い、腰に魚雷発射管を装着した電は、再び俺を見て微笑んだ後…。
「電…出撃するのです!」
その身を、海面へ走らせていった。
「…クソッ!」
俺以外、誰も居なくなった出撃ゲートに声が響く。
胸いっぱいに不快な思いが募るのを感じながら、俺は拳を握りしめた。
あんな小さな子が怖いのに耐えて、戦おうとしているのに何も出来ない自分が歯痒くて仕方ない。
だけど…俺に何が出来る?
この世界の住人じゃない赤の他人に何が…。
そんな、諦めの感情が胸を埋め尽くそうとしていた時だった。
「…ん?」
視界の端に、小さな影が目に入った。
其処に居たのはツナギを着た8cmくらいの小人だった。
彼女…と言えば良いのだろうか、それは、俺をじっと見上げている。
「…君は?」
小さく問いかけるが、小人は首を傾げて辺りを見回した後…驚いたように再び俺を見た。
「にんげんさん、わたしがみえます?」
「あ、あぁ…」
目を見開き、ワナワナと震えながら自分を指差す小人に頷いて答えると、小人は俺の足元へ寄って精一杯に腕を伸ばしてきた。
その様子を見て少し考え、掌に小人を乗せると、彼女は俺に向かい口を開いた。
「にんげんさん…いなづまちゃんを、たすけてくださいです!」
鎮守府から出撃して数分が経った頃…私、電は戦いの最中にいた。
「っ、主砲発射なのです!」
艤装から伸びたアームに備えられた12.7cm連装砲が火を噴き、砲弾が敵の駆逐艦…イ級の胴体に着弾する。
「…!」
砲弾を受け、身体に穴の空いたイ級が断末魔を挙げて沈んでいくのを見て、胸が苦しくなる。
沈んだ敵も、出来れば助けたい…それが、電が抱いている思い。
でも、今は…。
「きゃっ?!」
気を取り直そうとした矢先、敵の軽巡級が放った砲弾が、艤装の装甲に着弾した。
爆炎の所為で服は焦げ、艤装の一部が小破しているのが見える。
「…っ」
敵の砲撃射程から離脱して、状況を確認する。
此方が小破なのに対して、深海棲艦は駆逐を一体撃破、残る3体は健在という、不利な状態。
絶対絶命、まではないけどピンチに変わりはないのです。
そんな時。
『…ちゃ、き…』
通信機から、誰かの声が聞こえます。
聞き慣れない…でも、つい最近聞いた声が。
『電ちゃん、聞こえるか?!』
「落合さん?!」
漸く鮮明に聞こえたのは、切羽詰まった男性の声。
どうして彼が通信機を、そんな疑問が過るも今は回避に専念します。
『電ちゃん、今の状況は小人?から聞いた』
「小人…、っ!落合さん、まさか」
落合さんの言う小人、という言葉に首を傾げ…答えに思い至る。
鎮守府に配属される前…ある艦娘から聞いたことがあるのです。
電たち艦娘を指揮する人…提督になる為の最低条件は、妖精が見える事。
つまり、落合さんは…。
『…電ちゃん、この状況を何とかする方法がある』
微かに困惑するなか、落合さんが言葉を続ける。
『正直言って、分の悪い賭けだし…俺みたいな何も知らない奴の言葉を信じてもらえるかは分からないけど…』
「…落合さん」
言葉の中に感じる、落合さんの深い悩みが伝わってくる。
落合さんは今日初めて会ったばかりの人で、電たちはお互いに何も知りません。
でも。
「…教えてください、電は…どうすればいいですか?」
何故か、彼の言葉を信じよう…そんな思いが、胸の中に生まれていました。
ツナギを着た小人…正確には、工廠妖精って名前らしい。
彼女に案内された俺は、指令室で電と通信を行っていた。
4人掛けの机には交戦中だろう海域の海図と磁石が用意され、海図に置かれた駒を妖精たちが忙しなく動かしている。
「てきかんたい、いなづまちゃんにほうげきをかいししました!」
「電ちゃん、滅茶苦茶で良い。敵の射線に入らないように近づいて!」
『は、はい!』
敵と電の動きを通信機越しに把握し、妖精が駒を動かす。
4つの駒が海図の上を動き、うち一つ…電を表す駒が縦横無尽に動きながら敵を表す駒へと近づいていく。
「水柱に紛れて魚雷を発射、出来るだけ足を止めないで主砲斉射!当たらなくても良い、敵をその場に縫い止めて!」
『了解なのです!』
俺の指示を受け、電は敵艦隊に魚雷を発射し、すぐさま移動を再開する。
砲弾がすぐ近くに着弾したのか小さな悲鳴が聞こえるが、指示通りに敵へ接近していく。
「にんげんさん、これいじょうせっきんしたらよけきれません!」
「いや、これで良い!」
机に乗った妖精たちのうち、俺を案内した工廠妖精が声をあげる。
電と敵の距離はかなり近づいていて、このままじゃ砲撃を避けることが難しくなるだろう。
でも、それで良いんだ。
俺の狙いは…敵の足を出来るだけその場に止めさせる事にあるのだから。
『ぎそうにひだん、ちゅうはすんぜんです!』
「にんげんさん!」
「…今だ、急速旋回!一気に射程から離れて!」
艤装妖精、工廠妖精ともに悲痛な声をあげた刹那、俺は電に退避命令を出す。
その直後だった。
『魚雷命中!駆逐艦2体の撃破、旗艦小破を確認なのです!』
電の声が、指令室に響いた。
その言葉に、指令室にいた妖精たちが喜びの声をあげる。
ただ一人、工廠妖精は目を見開いていた。
「これは…」
「良かった…」
小さく、安堵の声を洩らす。
俺が考えたのは、策と呼ぶには拙過ぎる穴だらけのものだ。
敵を撹乱し、弾が当たらない事で冷静さを欠き、攻撃に紛れて反撃。
それに追従し接近し…特攻すると見せかける。
そして…本能から回避しようとする相手の退路を断ち、此方の攻撃を当てる。
敵が躍起になってくれなければ成功しない、とても危険な賭けだった。
挟み撃ちや面の攻撃をされれば成功しないし、接近する迄に墜ちてしまう可能性もあった。
それでも、運良く成功したのは電の頑張りがあったからだ。
「…電ちゃん、次の一発で全部が決まる」
『…はい』
まだ戦いは終わってない。
頭を切り替え電に声を掛けると、通信機から疲労の混じった…しかし、力強い返事が返ってくる。
「…俺は君の提督じゃないけど、命令する…必ず、生きて帰ってこい」
『!…はい!』
生きて帰ってこい。
落合さんの『命令』に、胸が強く高鳴ります。
それだけじゃない。
身体の奥底から、力が湧いてくるのを感じるのです。
「…電の」
艤装の12.7cm連装砲と、61cm4連装魚雷を構えます。
敵の旗艦…軽巡ホ級が主砲を撃ってきますが、不思議と怖さを感じません。
「本気を…」
身体から溢れそうになる力に耐え、ゆっくりと照準を合わせると、周りの時間がゆっくりと流れるような錯覚を覚えます。
ホ級から放たれた砲弾が、此方に向かって飛んでくる。
でも、大丈夫。
そんな思いが胸にあります。
「見るのです!」
限界まで抑えられた力を解き放つように、主砲と魚雷を一斉に放つ。
互いの砲弾は勢い良くすれ違い、狙った標的へと突き進みます。
そして…残ったのは。
腹部に風穴を開け、魚雷によって沈んでいくホ級と…辛うじて中破寸前の電なのでした。
「てきけいじゅんのげきはをかくにん、こちらのしょうりです!」
妖精たちの歓声を背中に指令室を出て、俺は外を目指し駈け出す。
電が無事に帰るその姿を、どうしてもこの目で確かめたかった。
途中迷いながらも外へ出ると、波止場を歩いている人影が見える。
「電ちゃん!」
「落合さん…!」
鎮守府へ向かってくる人影…電に駆け寄る。
着ていたセーラー服は所々ボロボロになっていて、そこから覗く素肌に浮かぶ傷が痛々しい。
でも、それ以上に。
生きて帰って来てくれた事が、とても嬉しかった。
不意に涙が溢れそうになるのを堪え、改めて電を見ると、彼女の隣に長髪の少女が立っていた。
少女は俺が気付いたのを確認すると姿勢を正し、敬礼して此方を見てきた。
「朝潮型1番艦、朝潮です。司令官、よろしくお願いします!」
少女…朝潮の言葉に、俺と電は固まった。
今…この子、俺を司令官って呼ばなかった?
「…電ちゃん、俺の事…」
「…すみません、忘れていたのです」
「…あ、あの、司令…官?」
俺と電が漏らす気まずい雰囲気に、朝潮はアタフタと俺たちを見始める。
仕方ない、と互いに溜息を吐いた俺たちは、改めて朝潮に自分たちの事情を説明する事になった。
「…そうでしたか」
俺と電の話を聞いた朝潮は、小さく頷くが…しょんぼりと垂れ下がる犬耳と尻尾が見えるのは気のせいか?
「では、貴方は誰ですか?」
「電も気になるのです。落合さん、貴方はどこから来たのですか?」
「っ、それは…」
朝潮と電の質問に言い淀む。
いずれは聞かれる質問だと思っていたが、まさかこんなに早いとは…。
「僕たちも気になるな」
素直に話すか迷っていると、後ろから聞いた事のない低めの声が聞こえる。
不意に掛けられた声に驚き振り向いたその先には…。
白い制服を着た柔和な笑顔を見せる男と、巫女装束のような服を着た黒いショートヘアの女性…金剛型4番艦 霧島が立っていた。