「─―――俺も、ずっと一緒にいたかった」
雪に覆われた白の世界。白い翼を生やした少年は、まるで子供のような笑みを浮かべ、幼い少女に微笑んだ。
ゆっくりと、少年を
一本一本、彼を縛っていた鎖が解かれていくように。
少女の眼に涙が溜まっていく。行かないで、と心から望んでいるように。
だが、
(……これでイイ)
少年は心の中で思った。最後の指がほどかれ、白い少年は無重力にいる宇宙飛行士のように、ふわり、と宙に浮かび上がった。一度彼の翼が大きくはばたく。
瞬間、彼の体は一瞬で上空3000メートルに跳ね上がった。
雲を切り裂き、圧倒的速度でさらに彼は上昇する。向かう先はただ一つ。空に君臨する天空の要塞。
空に浮かぶ巨大な岩の城は、その下部に黄金の光を集束させていく。不思議な光、この世界の法則を掌握する能力を持つ彼でさえ理解できない未知の力の塊。あれが地上に落ちれば大惨事となるかもしれない。
そして、地上にはあの少女がいる。
だからこそ少年は
危険かもしれない、死ぬかもしれない。
けれど、
「だからどォした」
ふと、白い少年は思った。
ここに来るまで、色々な事があった。
能力に目覚めてから多くの人々を傷つけた。『無敵』になれば誰も傷つけずに済むと思って『
そして今。
長かったと思う。苦しかったと思う。辛かったと思う。
けど、それでもここまで来れた。
何度も諦めそうになっても、何度絶望の闇に突き落とされようと、
だから自分は今、ここにいる。
天空の要塞から不思議な力が宿った光が地上へ放たれた。彼は理解する。あれは自身の能力など簡単に貫くことを。
危険かもしれない、死ぬかもしれない。
それを分かって尚、彼は白い翼を動かし、更に上昇速度を跳ね上げる。防御の姿勢を一切取らず、ただ愚直なまでに黄金の光へ突っ込む。
守るために。彼に残されたたった一つの幻想を守り抜くために。
「そォか」
今さら彼は思った。その口元には優しい微笑み。黄金の光が迫り来る中、白い少年は子供のような笑みを浮かべたまま、ふと思ったことを呟いた。
「これが、何かを守るための戦いか」
瞬間。
上昇80000メートルで、二つの巨大な力が激突した。
☆☆☆
10月30日。
この日、白銀の雪が積もった大地に、ヒラヒラと一枚の紙が揺れていた。
そこにはこう記されていた。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その才能を試すことを望むのならば、
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
我らの“箱庭“に来たれし」
学園都市による捜索隊が派遣されたが、生存者は発見されなかった。
彼の行方を知っているのはその手紙に関わる者たち。
この日、この時、この瞬間。
────学園都市最強の