一方通行が異世界からくるそうですよ?   作:宇佐木時麻

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衝突

 その後。

 ノーネーム御一行は事の真相を知っているであろう“サウザンドアイズ”二一〇五三八〇外門支店に脚を運んでいた。門前にいた女性定員の案内を受け、客室に向かう。座敷に入ると、そこには“サウザンドアイズ”の幹部である白夜叉とルイオスが待ち構えていた。

 ルイオスの嘗め回すような視線に嫌悪を抱きつつも、彼ら幹部二人と向かい合う形で座る黒ウサギ達。長机によって境目は作られ、“ノーネーム”と“サウザンドアイズ”の会談が開始された。

 

「――――以上が、“ペルセウス”が私達に振舞った無礼の内容です。ご理解いただけたでしょうか?」

「うむ。“ペルセウス”の所有物・ヴァンパイアが身勝手に“ノーネーム”敷地内で荒らした事、及びそれを捕獲する際における“ペルセウス”側の数々の暴挙と暴言、確かに聞き届けた。謝罪を望むのであれば後日」

「結構。あれほどの無礼と暴挙の数々、我々の怒りはそれだけでは収まりません。この屈辱は、両コミュニティの決闘をもって決着を付けるべきです」

 

 両コミュニティの直接対決。それが黒ウサギの狙いだった。

 レティシアが敷地内で暴れ回ったというのはねつ造だ。しかし、そうでもしなければレティシアを助け出すことは出来ない。レティシアは現在“ペルセウス”の所有物だ。勝手に奪うなどすれば、こちらが違法として罰さられる。

 レティシアに勝手な汚名を着させるのは黒ウサギにとって心苦しいことだが、なりふりなど構ってはいられない。使えるものは総て使う必要があった。

 

「“サウザンドアイズ”にはその仲介をお願いしたく参りました。もし“ペルセウス”が拒むようならば“主権者権限(ホストマスター)”の名の下に――」

「――嫌だね」

 

 嘲笑うように、黒ウサギの言葉を遮ってルイオスは唐突に口を開いた。

 

「茶番はそこまでにしてくれよ。そんな戯言、本気にすると思ってるの? あの吸血鬼が暴れたって? ならその証拠は? まさかあの吸血鬼ちゃんに直接訊けばいいだなんて頭の中がお花畑みたいな馬鹿なこと言わないよな、元お仲間さん? そんなの絶対口裏合わせてくるに決まってんじゃん」

 

 はははは! と心底馬鹿にしたように腹を抱えて笑う。ルイオスの言葉に腹を立てるが、しかし筋が通っているため言い返せない。

 

「…………!」

「それに、そもそも逃げ出した原因はそちらにあるんだろう? あ、実は盗んだからだったりしてッ」

「な、何を言い出すのですかッ! 何を根拠に」

「事実、あの吸血鬼ちゃんはあんたのところに居たじゃないか」

 

 ぐっと黙り込む黒ウサギ。それを言われてしまったら言い返せない。黒ウサギの主張も、ルイオスの主張も、結論第三者がいないため真実と断定することが不可能なのだ。そこに黒ウサギは掛けたのだが、やはり相手もその程度は察していた。

 苦悶の表情を浮かべる黒ウサギを眺めながら、ルイオスは嘲笑を浮かべながら呟く。

 

「まあ、そこまで言うならちゃんと調べないとね。あーぁ、あんまり商品は傷つけたくないんだけどなー。吸血鬼ってさ、自白剤とか効くのかね? 効かないとすれば、やっぱ拷問かな? 手足とかもぎ取っても生えるもんなのかな、吸血鬼って。依頼人曰く、なるべく完全な状態で欲しいって言われたけど、それってメンタルも含まれてると思う? 身体だけ無事なら問題ないとすれば、無茶出来るんだけど。気の強い幼い少女を裸体のまま鎖で繋いで組み伏せ啼かしたい、みたいな変態さんだったらご希望に添えずクーリングオフされても僕困るし。あんなガキの身体じゃ全然勃たないし」

 

 そう言って嘲笑うルイオスに、黒ウサギだけでなく飛鳥も怒りを顕にする。ウサ耳を逆立てて、黒ウサギは怒号する。

 

「あ、貴方という人は……!」

「しっかし、あの吸血鬼ちゃんも可哀想な奴だよねー。箱庭から売り払われるだけじゃなく、元お仲間さんの所為でギフトまでも魔王に譲り渡しちゃうんだから、こりゃあ爆笑もんだよ」

「……なんですって?」

 

 ルイオスの独白に飛鳥が戸惑いの声をあげる。黒ウサギも声にはださなかったが、その貌には驚愕が刻まれていた。

 

「“恩恵(ギフト)はこの世界で生きていくのに必要不可欠な生命線、云わば魂の一部だ。それを馬鹿で無能で愚劣なお仲間ちゃんの無茶を止めるために捨てて、ようやく手に入れた自由も所詮偽物。他人の所有物になるだなんて極め付けの屈辱を味合わされてそれでもなお仲間のもとに駆け付けたというのに、そのお仲間さんはあっさり自分を見捨てる! いやー、吸血鬼ちゃんが目を覚ました時にどんな表情を浮かべるか、見物だねッ」

「そ、そんな……」

 

顔面蒼白になり、黒ウサギは震えながら絶句した。

 ようやく理解する。なぜ魔王に奪われていたはずのレティシアがこの東側に居たのか。なぜギフトカードに記されていたネームのランクが暴落していたのか。

 答えは一つ。彼女は、レティシアは――文字通り、魂を砕いてでも黒ウサギ達の元に駆け付けようとしたのだ。

 たとえ、自分がどうなったとしても。

 その事実に打ちのめされた黒ウサギに、ルイオスはにこやかに笑い掛けながら告げる。

 それは、悪魔の囁きだった。

 

「ねえ、黒ウサギちゃん。このまま彼女を見捨てて、本当にそれでいいのかい?」

「…………? それは、どういう……?」

「取引だ。あの吸血鬼ちゃんは君の“ノーネーム”に返してあげよう。その代わり、君は僕のものになれ。生涯、僕に隷属するんだ」

「な――」

 

 ルイオスの言葉に、誰もが息を呑んだ。ルイオスは笑顔のまま、言葉を紡ぐ。

 

「悪い取引じゃないだろう? 君の尊い自己犠牲によって永劫救われなくなる仲間を助けられるんだ。それに、君のことを愛してあげよう。僕が知っている快楽の総てを教えてあげよう。壊れ果てるまで、いや壊れ果てても愛してあげよう」

 

 紡がれた甘い言葉と共にルイオスの手がそっと黒ウサギの頬に伸びていく。絶句する黒ウサギにはそれに反応できず、

 

「――外道とは思っていたけど、ここまでとは思っていなかったわ! 行くわよ黒ウサギ。こんな奴の戯言、聞く価値なんて無いわ!」

 

 ルイオスの手が触れる直前、あまりの暴言に耐えきれなくなった飛鳥が怒号し、黒ウサギの手を引いて立ち去ろうとした。

 しかし。

 

「ま、待ってください飛鳥さん!」

 

 立ち去ろうとする飛鳥を引き留め、黒ウサギは葛藤する。困惑し、躊躇し、どうすればいいか解らず目を伏せる。その申し出を受け入れるか、否か。

 それに気づいたからこそ、ルイオスは口許を歪めながら言葉を紡いだ。

 

「なあ、君は“月の兎”だろう? 仲間のため、大切な人のために自信の命を捨てられる誇り高きモノなんだろう? 君達にとって自己犠牲は自慰行為みたいなもんなんだろ? 誰かのために犠牲になりたいっていう本能なんだろ?」

「…………ッ」

「なあ、何か言ってみなよ。義理とか愛とか信念とか、そういう言葉が大好きなんだろ? 仲間のためとか、君達が最高に好きそうなシチュエーションじゃないか! 献身したいがゆえに帝釈天にそのちっぽけな安い命捧げて、箱庭に招かれたんだろ? だったらほら、その安い命らしく安い喧嘩を安く買っちまえよ。それがお似合いじゃないか、なあ黒ウサギちゃんよ――――」

 

 

 

「――――黙りなさい(、、、、、)!」

 

 

 

 瞬間、ルイオスの口が強引に閉じられた。そして、肩を震わせて激怒する少女が一人。

 

「貴方は不愉快だわ。貴方の貌など一秒たりとも直視したくない、そのまま地に頭を伏せてなさい(、、、、、、、、、、)!」

 

 その言葉通り、ルイオスは身体を前のめりに倒れ込む。

 そう告げた張本人である飛鳥は、嘗て経験したことがないほど激怒していた。憤怒で肩が震え、憎悪で頭を下げている男を殺したくなる。

 初めて出来た、仲の良い友達。今まで己のギフトのせいで簡素で無味な人間関係しか築いてこれなかった飛鳥にとって、友達である黒ウサギを侮辱されることなど許せるはずがなかった。

 そして、怒り狂っていたからこそ飛鳥は気づけなかった。

 

「あーぁ。やっちまったな、お嬢様」

 

 やれやれと仕方なさそうに嘆息する十六夜に。

 

「…………ちッ」

 

 面倒事になったと舌打ちする一方通行(アクセラレータ)に。

 

「――――ははっ」

 

 そして、口許を歪ませて嘲笑うルイオスに。

 久遠飛鳥は気づいていなかった。

 

「……そこの赤いお嬢ちゃん。良いことを教えてやるよ」

 

 ルイオスは頭を下げたまま、誰にも気づかれないままいつの間にか裾からギフトカードを掴み、

 

「手を先に出してきたのはそちらの方だ。つまりこれは正当防衛ってな訳で――殺されても仕方ないよなァッ!」

 

 刹那、その瞬間まで飛鳥のギフトによって微動だに出来ないと思われていたルイオスが瞬間的にギフトカードから光と共に現れた鎌をを手に取り、飛鳥の首目掛けて斬り振った。

 その行動はあまりに刹那的で、しかも今まで誰もが従ってきた己の言葉に抵抗できるとは思わず、飛鳥がそれに気づいたのは目と鼻の先であり、躱すなど不可能だった。

 鎌は見事な軌道を描きながら飛鳥の首元へと吸い込まれていき――傍にあった手に受け止められた。

 

「へえ……。今のに反応するかい。おまえ、何者?」

「十六夜様だよ色男。喧嘩なら利子付けて買うぜ? 勿論トイチだけどな」

「お生憎様。明らかに損する商売はやらない主義なんだ。それに、そんな安い喧嘩じゃ買う気にもなれやしない」

「ハッ、言ってくれるじゃねえか色男」

 

 軽薄そうに笑う十六夜に対し、同じくルイオスも至近距離で不敵に笑う。ギシギシと震える鎌。もはや飛鳥のことなど眼中にないように睨みあう二人に、白夜叉は慌てて止めに掛かる。

 

「止めぬかこの戯け共が! 話し合いで解決できぬというのであれば門前に放り出すぞ!」

「はいはい、解ったからそう怒らないで下さいよ白夜叉様。了解了―解、止めますよっと」

 

 白夜叉の怒号に今までの殺気が嘘のようにルイオスは鎌をしまった。戦闘の構えを解く二人。そのタイミングを見計らって黒ウサギが仲裁した。

 

「……今回の一件は互いに不問という事にしませんか? ……後、先ほどの話ですが……少しだけ、お時間を下さい」

「な――ま、待ちなさい黒ウサギ! 貴女、この男の物になってもいいと言うの!?」

「うんうん、別にいいよ? そっちもそっちで話したいことがあるだろうし、取引ギリギリ日程……そうだな、一週間だけなら待ってあげても良いよ。ほら僕、優しいし?」

「……お気遣い、感謝します」

 

 そう告げて早々と座敷を出る黒ウサギ。それをにこやかに笑いながら手を振って見送るルイオスに、一瞥睨み付けてから飛鳥はその後を追い掛けていった。

 残った二人の内、一方通行は出ていった彼らの様子を見て、嘆息しながら肩を竦めた。

 

「……チッ、次から次へと面倒事を起こしやがって……」

「お主も大変だのぅ……」

「ガキのお世話と部下の尻拭いに翻弄されているオマエに心配される筋合いはねェよ」

 

 一方通行と白夜叉が愚痴を言い合う最中、十六夜はルイオスの前に陣執っていた。しかし先ほどのような殺気はなく、互いに不敵な笑みを浮かべながら談話する。

 

「なあ、“ペルセウス”のリーダーってお前か?」

「ああ、そうだけど。それで、感想は?」

「はっきり言えば、名前負けしすぎ」

「はははは! 随分とはっきり言うね、君。まあ仕方ないんじゃないか? 英雄の子供は英雄とは限らないし、過去の偉人と同じ風に見られてもこっちが迷惑だ。そもそも英雄の子供だから“ペルセウス”のリーダーになるっていうウチの制度あんまり賛同してないんだよね。そんなこと言ってたらほとんどの人類が英雄扱いだし」

「へー、英雄の子孫だからみたいなプライドとか無いのかよ?」

「なにそれ、食えんの? 何で自分には関係ない他人の功績を威張らないといけないのさ。そんなものは母親の子宮の中にでも置いてきたよ。ここにいるのは英雄『ペルセウス』とは何ら関係のない、コミュニティ“ペルセウス”のリーダー、ルイオス=ペルセウスというたった一つの存在だ。それ以上でもそれ以下でもないよ」

「そうかい」

 

 くくくく、と共に笑い合う二人。しかし、二人とも眼だけは一切笑みを浮かべてはいなかった。あるのはただ、相手すらも呑み込んでしまうような灼熱の業火。相手を射殺すような視線のまま、互いに笑い合っていた。

 

「さて、それじゃ僕も帰るとしますか」

 

 ルイオスは唐突に告げると、座敷を後にした。

 その直前、ふと思い出したように振り返り、

 

「ああ、そうそう。帰ったら黒ウサギちゃんに伝えておいて。――いい返事を期待しているよってね」

 

 嘲笑の笑みを浮かべながら、今度こそ“サウザンドアイズ”を後にした。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「どういうつもり、黒ウサギ! 貴女本気であの男の物になっていいというの!?」

「…………」

 

 “サウザンドアイズ”の屋敷から飛び出し、黒ウサギの姿を追い掛けていた飛鳥は黒ウサギを見つけると、猛抗議のように叫んだ。しかし、黒ウサギはそれに反応することなく脚を更に進めていく。

 

「……ッ! 貴女ねえ……!」

 

 その態度に更に飛鳥の怒りは増し、鬼気迫る表情で黒ウサギの背中を掴み、強引に振り向かせた。そしてそのまま胸蔵を掴み、己の憤りを暴露した。

 

「“家族を、友人を、財宝を、世界の全てを捨てて箱庭に来い”――そう焚き付けたのは誰よ。貴女でしょ!? なのに、その貴女がコミュニティから離れるなんて、責任放棄の何ものでもないじゃない!!」

「…………そんな、つもりは」

「いいえ、嘘よ! 今の貴女の顔を見れば分かるわ! 貴女は仲間の為に自分を売り払っても構わないって思っている! だけどそんあ無駄なこと、私達が絶対に許さないわ!」

「……無駄?」

 

 ふと、今まで無感情だった黒ウサギの眼に強い感情が込められた。その感情は憤怒。自分の行おうとしたことを無駄扱いされて、黒ウサギは思わず叫び返した。

 

「無駄って……どうしてそこまでいわれなきゃいけないのですかッ!! コミュニティにとって仲間は大事です。何物にも勝る、コミュニティの宝です。まして魂を削ってまでコミュニティの窮地に駆け付けたレティシア様を見捨てるだなんて、出来るはずがありません!」

「だけどそれは貴女が身代わりになる事じゃない! そんなの無意味だわ!」

「仲間を助けることが無意味なはずない!」

「夜中に騒ぐな喧しい」

 

 と、いつの間に追い付いたのか十六夜が二人の頭をヘッドバットした。突然の衝撃に、彼女達の意識に星が飛ぶ。

 

「「~~~~ッ!」」

「……何コイツらは揃いも揃って頭抱えてンだ?」

「喧しいから黙らせた」

「あァ、こっちに来る途中会話が丸聞こえだったな」

 

 合流した一方通行に十六夜は端的に状況を伝える。それだけで一方通行は十六夜が何をしたのかすぐに理解した。

 

「話は聞かせて貰った。結論を言わせて貰おう。黒ウサギ、お前が悪い」

「ど、どうしてですか!?」

 

 相当痛かったのかオデコを押さえながら涙目で抗議する黒ウサギ。それを冷めたような目でみながら、十六夜は告げる。

 

「あのな、手紙の一件もそうだけどな。レティシアは“ノーネーム”の本拠に来た時、もう覚悟を決めていたはずだ。お前、あの目が助けを求めている者の目だったか?」

「で、ですが……助けを求めていないかた助けないというのは詭弁でございます!」

「そりゃそうだ。けどな、レティシアがギフト失った事を黙っていたのは、お前に身代わりなんかになって欲しくなかったからじゃねえのか?」

 

 十六夜の正論に、黒ウサギは言葉を詰まらせる。それを聞いて、一方通行は思考の海に潜っていた。

 なるほど、確かに十六夜の正論は正しい。この場に於いて間違っているのは黒ウサギの方だろう。自分の守りたいものを誰かに任せていいはずなどない。

 嘗て、一方通行もヒーローに託そうとし、それが過ちだと気づかされたのだから。

 だが、この場に於いてもう一人、過ちを侵した者がいる。そして最悪なことに、その本人は己が過ちを侵したことすら気づいていない。

 悪意ある行為よりも、悪意なき行為の方が人を傷付けるように。

 今言わなければ、将来多くのモノを巻き込んで犠牲にするだろう。その時に気づけたとしても、多くの犠牲を生む。そうすれば、一方通行が元の世界に戻るのに支障をきたす恐れがある。

 これは云わば、ここがターミングポイントなのかもしれない。ここで成長し使いものになるようになるか。或いは、このまま腐って処分するはめになるか。

 本当なら黒ウサギや十六夜が教えてくれると助かるのだが、黒ウサギは気づいておらず、十六夜に関しては教える気は更々ないだろう。あの天邪鬼はそういう奴であることをこの短い間で理解した。

 利用できるものなら何であれ利用する。そのためなら、慣れないことだってしてやろう。

 

「……おい」

 

 ふと、今まで無言だった一方通行は声を掛けた。振り返る彼らの中、彼は飛鳥を指差し告げる。

 

「少しこいつと話がある。オマエらは先に戻ってろ」

「……? それは私達が居ては――」

「あー、なるほど。そうかよ、なら俺達は先に行くぜー」

「ムグ――ッ!?」

 

 一方通行が何を言おうとしたのか理解したのか、十六夜は問い掛ける黒ウサギの口許を塞ぐと黒ウサギを引きずってその場を後にする。

 十六夜と一方通行がすれ違う瞬間、

 

「――――あまりお嬢様を虐めてやるなよ?」

 

 これから一方通行が何をするのか知っているかのような口振りで、笑いながら言った。

 

「……やっぱりあの野郎、分かっていやがったか」

 

 うんざりしたように二人の背後を眺め、嘆息する。予想通りとはいえ、あの男とは馬が合わないと改めて再認識した。

 

「……それで、何の用なの一方通行くん。私いま苛立っているから端的に言って欲しいのだけど」

「そォだな。俺も面倒事はあまり好きじゃねェから率直に言うぞ」

 

 二人っきりになったその場。

 一方通行は面倒臭そうに左手で首筋を掻いて、

 

 

 

「――――オマエ、これ以上足手纏いな真似を見せるなら何もするな。返って迷惑なンだよ」

 

 

 

 断罪するかのように、断言した。

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