特に注意事項はありません
『靴』『かぼちゃ』『王子さま』
条件:シンデレラは無しで
とある国の城下町に、可愛らしい仲の良い男の子と女の子がいました。
男の子は少し気弱でいつも女の子に手を引かれて歩いていました。何をするにも、どこへ行くにも二人は一緒でした。
「あなたはみぎね、わたしががひだりめをほるから」
ある秋の日です。女の子の家の畑で大量のかぼちゃが取れたから、二人はそれを彫って仮面を作ることにしました。
少女は右目を、少年は左目を。
最初は仲良く話し合いながらナイフでかぼちゃの皮を削っていましたが、集中するにつれ、二人の間に会話は無くなっていました。
そして、二人はいつの間にか力尽きて、眠ってしまいました。
次の日も、二人で昨日のかぼちゃを削って、疲れたらいつの間にか寝てしまうという作業をくりかえしていました。
そして、秋もようやく終わる頃、二人は歪な形のかぼちゃのお面を作り上げました。
「やったぁ!かんせいだ!」
「やったね!」
「たのしいね!」
「たのしかったね!」
そして、二人は三年間年秋が来るたびにかぼちゃを削って遊ぶようになりました。
この国は少し貧しく、兄弟がいれば、服や物は皆兄弟や親からのおさがりが一般的でした。
しかし、子供が生まれた時は、その子の成長を願って、新しい物を何か一つ与えるのが一般的でした。
少女は皮の靴を、少年も同じように靴がピカピカの新品でした。
そして、月日が経つに連れて、二人は成長していきました。
少女の靴はいつしかおさがりの履き慣れた柔らかさがある少しボロボロの靴に、少年はいつまでも新品のような靴でした。
それでも二人は大きくなるまでは仲良く二人で遊んでいました。
風に乗ってブランコを漕いだり、丘の上まで競争したり、秋にはかぼちゃを彫りました。
「あなたはみぎね、わたしはひだりね」
少年はいつも少女に手を引かれていたから右側がいつもの居場所でした。
そして、かぼちゃを削ったあの時から三回目の秋になりました。二人はいつものようにかぼちゃを削っていました。
「あなたは右目ね、わたしは左目をほるわ」
「うん」
「来年からは学校ね!お姉さまがいっつもじまんしていたからわたしも行くのが楽しみだわ!」
「うん」
「そういえばあなたは兄弟がいないんだったわね、いいなぁいつも物がピカピカで」
「うん」
「……ねえ、聞いてるの」
「聞いてるよ」
「じゃあなんで今日はいつもより静かなの!」
「実は、ぼく秋が過ぎたらもう会えないかもしれないんだ」
「ええっ!?」
「だから、少し、悲しくて」
「じゃあ今年のかぼちゃはわたしの顔をほるわよ!」
「な、なんで?」
「そうすればあなたが一人になってもかぼちゃのわたしがあなたを引っぱっていけるわ!あなたはわたしがいないと何も出来ないんだから!」
「……ありがとう!」
「それじゃああなたはわたし用のお面をほってね!わたしの顔は私がほるんだから!」
「ええ!?それじゃあ二人で遊べないよぉ……」
「ずっとお話していればいいじゃない!」
そして、二人は今まで以上に笑い合いながらかぼちゃをほっていきました。
さいごの会話を慈しみながら。
「できたわよ」
「あはは、変なよこがお!」
「しつれいね、わたしの顔を見れないんだから少し変になってもいいじゃない」
「だったらぼくがほれば良かったんじゃないかな……」
お別れの時も二人はお腹を抱えて笑い合いながら別れていきました。
お互いの目から出ている雫には気付かないふりをしながら。
二人が別れて十年が過ぎた秋の日の事です。少女の家にいきなり少年がやってきました。
「さあ、遊ぼう!」
「え……うん」
そして少女の手を取り街をめぐりました。ブランコが壊れて空き地になった公園、あの時と変わらない丘、そして、最後にはかぼちゃ畑へ向かいました。
「君は右目~、僕は左目~」
「うん」
「実はさ、僕王子さまだったんだよ、この国の」
「うん」
「だからかな、周りは大人ばっかりだったし、子供には構ってもらえなかったし、いつも一人で寂しかったんだ」
「うん」
「そんな時にさ、君が僕の手を引いてくれたんだ、『一緒に遊ぼう』って」
「うん」
「あの時僕は君を好きになったんだ。ってこれじゃあ告白みたいだよね」
「うん」
「でも、まあ、あの時君がいてくれたから僕はこうして父さんの跡を継げるくらいになれたよ。君に救われたんだ」
「うん」
「ねえ、聞いてる?」
「聞いてるよ、でも、久しぶり過ぎて……」
「あはは、あの時とは正反対だね、僕ら。それなら色んな事を話そうよ」
「うん……」
「髪、長くなったよね」
「まあ、女の子だしね?」
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「出来た!」
「出来たね!」
「懐かしいね!」
「楽しかったよね!」
「じゃあもう一個作ろうか」
「ええー?」
「お願い!」
「しょうがないなぁ」
少年にせがまれるままに、少女は何個もかぼちゃのお面を二人で作っていきました。
そして、いつの間にか疲れて眠ってしまいました。
「さようなら、僕の――」
少女が目を覚ますと、そこは家の中でした。
(夢……だったのかな?)
そして、枕元にあるかぼちゃに気が付きました。
(これって……)
枕元に置いてあったかぼちゃには、少女の横顔と向かい合うように笑っている少年の顔が彫られていました。
バイト先でも内容の構成を考えていたからか文字数が多い。