海賊共が集う酒場で海賊団ブラック・タイガーのお頭であるエドワードが、海賊の敵と呼ばれた男【福本大介】の話をし出す。
「あれは俺がまだ海賊に入った頃に商船を一隻狙っていた。だが、その商船には一隻の戦艦が護衛についていた。それが福本大介が艦長を勤めていた戦艦初代の播磨だ。播磨はその当時では最高峰と言われていた46㎝三連装砲を搭載していた。俺達海賊は五隻で一隻の商船と戦艦を相手にした。だがな…」
海上では戦艦五隻、商船の前方に一隻の戦艦が対峙していた。
五隻の戦艦の主砲が火を噴くが、どれも至近弾には程遠い物であった。しかし、播磨は精密射撃補助装置が搭載されているかの様に、戦艦五隻に至近弾を食らわせてた。
「何をしている‼ たかが一隻の戦艦に俺達ブラック・タイガーが遣られるわけにはいかんぞ‼」
「ですが、お頭⁉ なぜか敵の砲弾は至近弾ばかりなんですよ⁉」
俺が手下達に激を飛ばすが、手下共は悲鳴の様な声を上げて嘆き始めていた。
「考えてみろ‼ 敵はまだ俺達の戦艦には弾が当たっていない‼ と言う事はまだ勝機はあると言う事だ‼」
「わ、判りました‼」
俺が正論を述べたらコロッと変わりやがった。まぁ、これで良い。これ以上、こいつらが戦意喪失してしまったらこれからの海賊の活動の支障になる。
「オラぁ‼ 弾の装填が終了次第に撃ち放て‼」
俺が手下に指示を出したが、まだまだ鵯っ子のこいつらには装填速度を上げる事が出来やしない。
「敵戦艦、砲撃来ます‼」
「回避‼」
見張り員の手下が告げたからな、俺は何としてでも手下達にはケガをさせたくなかった。だが、神は非情な者だ。回避した先には砲弾が迫って来ていたからな。
「メイン直撃‼」
「クソッ‼ なんとしてでも乗員を助けてやれ‼」
「ミーズリが行きました‼」
「こっちはあいつをやるぞ‼」
俺達ブラック・タイガーはメイン級戦艦三隻とサウスカロライナ級戦艦二隻の五隻で海賊をしていた。だが、メイン級のネームシップがやられた時には既に遅かった。二番艦のミーズリが救援に向かったが、なぜかミーズリには砲撃をしなかった。
俺はこれが勝機だと思った。だからオハイオ、サウスカロライナ、ミシガンの三隻で播磨に攻撃した。だが、奴の速力はおかしかった。こっちは18ノットが最大だと言うのに、俺達よりも速かった。推定でも25ノットはあったんじゃないだろうか?
「敵戦艦より発光信号‼」
「なに⁉」
「『我、播磨なり。貴艦の名前を述べよ』です‼」
「ふざけやがって‼ 気にするな‼ 俺達は海賊をする為にここに来たんだ‼」
敵の戦艦播磨はそれでも尚、砲撃を止めなかった。
「撃て撃て‼ なんとしてでもあの戦艦を撃沈させるぞ‼」
俺は播磨と言う戦艦が嫌に気になった。どうも、何かを抱えている様な感じがしたんだ。当時は男が戦艦の艦長を務めていた。だが、播磨から感じさせられるものは女が艦長を務めているんではないかと思った。
その時だった。ミシガンがいきなり爆発したんだ。播磨からの攻撃じゃなかった。俺達、海賊も含め播磨の方も驚いて砲撃を中止していた。
「何があった‼」
「ミシガンの第二砲塔がいきなり爆発しました‼」
「こんな時に‼ クソッ‼ 救助に向かうぞ‼」
俺は手下達にミシガンの救助に向かうように指示を出した。ミーズリは囮になる形で播磨と一対一での戦闘に入った。だが、奴はミーズリの攻撃を判っているかの様に、回避して俺達に近付いて来た。
「主砲、播磨に向かせろ‼」
「ムリです‼ 砲塔角度の死角に入っています‼」
俺はこの時に覚悟したよ。撃沈させられるってな。だが、奴は砲塔をこっちには向けていなかった。嫌正確には、どの艦艇にも砲塔を向けていなかったんだ。
「播磨からの発光信号‼ 『我、救助の手伝いに入る』です」
「なっ⁉」
おかしいだろ? 普通ならこの時に海賊を葬るのが先決なんだぜ? だが、奴は俺達海賊を助けるって言うんだ。俺もこの時は、播磨の艦長は頭がおかしいんじゃないかって思ったぜ。するとさ、播磨のマストに救難救助用の旗が上ったんだ。
俺はこん時ばかりは感謝したぜ。そしたらよ、播磨から一人の男が出て来やがった。しかも一人でだぞ?
「初めまして、播磨艦長の福本大介だ」
「………海賊団ブラック・タイガーの頭、エドワード・アルベルンだ。救助の手助けには感謝している。だが、どうして俺達海賊を助けるんだ?」
俺は聞いてやったぜ。海軍からしたら海賊は目の敵の筈なのに俺達を助けるのかってな。すると、福本大介は俺から目を離さずに言ってきた。
「海賊であろうとなんであろうと、助けられる命は助ける」
ってな。俺はこいつとの出会いだった。俺達は、海賊と海軍での小競り合いでは有名だった。だがな、いつの間にかあいつは消えていた。福本大介は今は生きているのかは知らん。
「これが俺が語る事が出来る福本大介との思い出だ。なんだかんだ言って、俺と福本大介はいつの間にか酒を飲む仲間になってしまった。そして、俺達は最悪の敵と戦う事になった」
エドワードはそう言うと真剣な顔つきに変わるのであった。