エドワードがまだ新米の海賊の頭の頃、一つの海賊団と合同で三隻の商船を襲撃する事になった。だが、この時、海賊団達は誰も知らなかった。この三隻の商船に護衛として付いていた艦艇が傭兵だったと言う事に。
「お頭‼ 前方に目的の商船と護衛の艦艇が五隻います‼」
「他の海賊に通達しろ。我、先行するってな」
「了解‼」
エドワードが他の海賊団に通達する様に伝えた。この時、エドワードが乗艦していた艦艇はサウスカロライナを改良した戦艦に乗艦していた。
改装後のサウスカロライナは、全長が150m、全幅26m。最大速力20.5ノット時速で換算すると38.95㎞である。この当時では、それほど出る艦艇は福本大介が乗艦する播磨型しかいなかった。武装面ではあまり変化は無く、追加兵装として魚雷発射管が二本から六本に変わったぐらいであった。
また、播磨との戦闘で撃沈してしまったメイン級戦艦一番艦メイン、サウスカロライナ級戦艦二番艦ミシガン。負傷こそはしていないが、火力としては弱くなってしまうミズーリ、オハイオの計四隻は、解体される事になりその代わりとしてデラウェア級戦艦一番艦デラウェア、二番艦ノース・ダコタ。フロリダ級戦艦一番艦フロリダ、二番艦ユタが増加されていた。
他の海賊団の艦艇に関しては一つは海賊団シュヴァルツェ・カッツェ(黒猫)はドイツ艦を使用していた。旗艦は
ドイツ戦艦のブラウンシェヴァイク級戦艦一番艦ブラウンシェヴァイク、二番艦エルザース、三番艦ヘッセン。ドイッチュランド級戦艦一番艦ドイッチュランド、二番艦ハノーファーの五隻である。
二つ目の海賊団はチュドーヴィシシェ・イズマルスコーヴァ・ウズィーリシシャ(海檻の怪物)はロシア艦を使用している。旗艦はガングート級戦艦一番艦ガングート、二番艦ペトロパブロフスク、三番艦ポルタワの三隻だけであったが、火力では申し分が無かった。
三つの海賊団の艦艇数は十三隻である。
一方の商船は重量物運搬船が三隻であった。中身は主に食料、弾薬、燃料などであった。傭兵が使用している艦艇に関しては、どこの国家にも製造された形跡が無く、情報が無かった。ただ、艦首には必ずどこの所属なのかを記す為に、所属の頭文字一文字が必ず入っていた。傭兵が使用していた艦艇の船首には『B』と言う文字が入っていた。
「お頭‼ 傭兵から砲撃が始まりました‼」
「なに⁉」
手下からの報告にエドワードは驚く。それもその筈である。まだ45㎞は離れているのだ。
「着弾します‼」
「全員、衝撃に備えろ‼」
エドワードがそう指示すると同時にサウスカロライナの周りに水柱が立った。
「至近弾です‼」
「まだ射程距離に入らないのか‼」
「間も無くです………入りました‼」
「主砲、撃ぇぇぇ‼」
観測員の手下の報告に、エドワードは咆えた。そして、45口径30.5㎝連装砲二基が火を噴く。
「着弾、今‼」
観測員の手下の声にエドワードは当たると思っていた。しかし……
「て、敵傭兵艦隊が進路変更しました‼」
「クソッ‼ 三番、四番主砲用意‼ 他の艦艇にも伝えろ‼ シュヴァルツェ・カッツェは商船を、チュドーヴィシシェ・イズマルスコーヴァ・ウズィーリシシャは我と一緒に傭兵艦隊と対峙するとな‼」
「了解‼」
エドワードは三つの海賊が獲物を逃す事はしない。一つの海賊が商船を狙い、残りの海賊で護衛を潰すと言う算段であった。
エドワードの指示を受け、二つの海賊団は動き出す。シュヴァルツェ・カッツェは商船の方に向かって行き、チュドーヴィシシェ・イズマルスコーヴァ・ウズィーリシシャはブラック・タイガーと共に傭兵艦隊の壊滅に向かった。
しかし、これが間違いだったと言う事に気付かなかった。
「チュドーヴィシシェ・イズマルスコーヴァ・ウズィーリシシャ旗艦ガングート、ペトロパブロフスクが砲撃を開始しました‼」
「良し、砲撃を開始しろ‼」
エドワードが咆える。それにより、ブラック・タイガーとチュドーヴィシシェ・イズマルスコーヴァ・ウジィーリシシャの艦艇が各個砲撃を開始した。しかし、傭兵艦艇も当たる気は無く、細かな操舵により、砲撃を回避していく。しかし、傭兵艦艇の砲撃は面白いぐらいに海賊団の艦艇に命中していた。
「どうしてこちらの攻撃が当たらないんだ‼」
「傭兵艦艇は細かな操舵が可能なようです。ですが、我々は………」
「チュドーヴィシシェ・イズマルスコーヴァ・ウジィーリシシャのポルタワ第三番砲塔破損‼ 火力が墜ちます‼」
「ペトロパブロフスク機関部に被弾‼ 航行不能⁉」
味方の被弾が大きくなるにつれ、旗色が悪くなる海賊団は、どうするか考える。しかし、傭兵艦艇はそんな事を許す事は無かった。
何度も砲撃が襲ってきており、逃げるか、突撃するかの二つの選択肢に絞られていた。
「こうなれば、逃げる他無いのか………」
「お頭⁉ 後方より四隻の艦艇あり‼ これは‼」
「どうした‼」
一人の見張り員がエドワードに悪い知らせをした。
「一隻は播磨です‼」
「は?」
エドワードが驚くのも仕方が無い事である。ここで海軍の播磨を含めた艦艇と戦闘するのには無理があった。
「クソッ‼ ここは逃げるぞ‼ ガングートにも知らせろ‼」
「播磨、砲撃を開始しました‼」
「なに⁉」
エドワードは播磨がいきなり発砲した事に驚く。本来であれば、停戦の発光信号が送られるはずであった。しかし、それが無い状況で撃たれると言う事は、狙いは海賊団だと思っていたのだ。
「これでは、我々は負けだな………」
「お頭………」
エドワードの呟きに右手の手下が顔を俯かせた。
「まぁ、これも仕方が無い事なのかもな………」
「播磨を含めた二隻がこちらに向かってきます‼ 残りは商船の方に向かっています‼ 着弾します‼」
「全員、衝撃に備えろ‼」
エドワードはどうして四隻内、二隻をこちらに。もう二隻を商船に向かわせたのかが判らなかったが、砲撃が来る為、ショックに備えた。しかし、見張り員が言った言葉通りにはならなかった。
なぜならば………
「傭兵艦艇一隻被弾‼」
「どう言う事だ⁉」
自分達では無く、傭兵艦艇に砲撃が当たった事に驚く。
「判りません‼ ッ⁉ 播磨より発光信号‼ 『我、これよりそちらの艦艇の援助を行う』です‼」
播磨から送られてきた発光信号の意味が判らなかったエドワードであったが、後々に播磨と合流して、どうして自分達に味方したのかが判るのであった。